道路・トンネル・ダム・建築物の施工を通じて、150年以上にわたり日本の社会インフラを支えてきた西松建設株式会社。2026年5月に公表した「西松-Vision2035」では、2035年のありたい姿として「魅力あるゼネコンNo.1」を掲げ、国際事業や環境・都市開発事業を新たな収益基盤として育てる変革に踏み出しています。
今回は、再生可能エネルギーをはじめとする新規事業を担う地域環境ソリューション事業統括部 事業創生1部の橋本守部長にインタビュー。事業の展望や直面する課題、西松建設に根付く「現場力」というカルチャー、そして今求める人材像について伺いました。
INDEX
150年以上インフラを支えてきた総合建設会社の、次なる姿
――はじめに、西松建設の事業について教えてください。
橋本氏:西松建設は、道路やトンネル、ダム、建築物などの施工を通じて、長年にわたり社会インフラを支えてきた総合建設会社です。企業理念には「価値ある建造物とサービスで安心して暮らせる持続可能な社会をつくる」を掲げています。従来の建設だけでなく、企画・設計・施工から維持管理、修繕、運営まで、建物やインフラのライフサイクル全体に関わっていくことを目指しています。
当社は150年以上の歴史を持つ企業ですが、現在はこれまで培ってきた技術力や信頼を基盤に、変革期を迎えている会社だと考えています。
――企業理念には、どのような想いが込められているのでしょうか。
橋本氏:持続可能な社会を目指すことは、インフラを支えてきた総合建設会社としての使命だと考えています。もともと当社は建造物を対象に仕事をしてきましたが、そこに「サービス」という言葉を加えました。請負だけでなく、私たちが取り組んでいる環境・都市開発事業なども視野に入れた表現です。
また、国土強靱化の流れや、災害が多発する昨今の状況を踏まえ、「安心して暮らせる」社会こそ私たちが目指すべきところだという想いを強く表すために、このキーワードを入れています。
――「サービス」について、もう少し具体的に教えてください。
橋本氏:私が所属する環境・都市開発事業本部には、環境・再エネを担当する地域環境ソリューション事業統括部のほかに、アセットバリューアッド事業統括部があります。そちらでは開発不動産事業を10年以上前から一つの柱として展開しています。
例えば開発不動産事業では、まちの賑わいを創出することを掲げ、ホテルやショッピングセンター、学生寮などの事業に参画しています。つくるだけでなく、運営まで手がけているのが特徴です。

「西松-Vision2035」が描く、魅力あるゼネコンNo.1への道筋
――2026年5月に公表された「西松-Vision2035」について教えてください。
橋本氏:西松-Vision2035では、2035年のありたい姿として「魅力あるゼネコンNo.1」を掲げました。ステークホルダーから最も評価され、選ばれる会社になりたいという想いが込められています。その実現に向けて、国内建設事業を引き続き強化しながら、国際事業や環境・都市開発事業を将来の新たな収益基盤として育成していく方針です。
中期経営計画2028では、基本方針として、積極的な投資・M&Aによる新たな収益基盤の創出、人財の確保・育成・活躍を促進する仕組みづくり、DXによる全社効率化、AIによる効率的な組織への変革を掲げています。
――「魅力あるゼネコンNo.1」の実現に向けて、どのような点を重視していますか。
橋本氏:その一つが、エンゲージメントスコアと一人当たり付加価値額をゼネコントップクラスに引き上げることです。ステークホルダーとのエンゲージメントやウェルビーイングの向上という観点では、社員の待遇向上や入職者の増加、協力会社への豊富な案件の確保、そして持続的な株主還元と成長期待を掲げています。
また、社員のエンゲージメントと一人当たり付加価値の向上に向けては、挑戦意欲や人的ポテンシャルを高めるとともに、筋肉質な組織を実現し、効率的に事業を行っていくことを考えています。
――挑戦意欲を高めるために、どのような施策に取り組んでいますか。
橋本氏:数年前から、人事評価の中に挑戦に関する項目を設けています。各人が何に挑戦するかを掲げ、1年間を通してどのような成果を出したかを評価する仕組みです。
――DXやAIの取り組みについても教えてください。
橋本氏:DXについては、2022年度に専門部門を設けて、重要な生産拠点である建設現場の「スマート現場」への変革を目指し、品質や生産性の向上に向けた取組みを強化しています。さらに2025年度からは、全社効率化プロジェクトとして、DXサポートを担う外部人材を配置して、生産性向上をより強力に推進しています。また、設計・計画のDXとしてBIM/CIMの活用を進めているほか、働き方のDXとして社内文書参照システムの導入など、業務の細かな効率化にも取り組んでいます。
AIについては、今年度から専門部署を設け、業務への導入をより積極的に進めています。特に管理部門でAIを活用して業務を効率化し、そこで生まれた人員を生産現場へ再配置していくことを考えています。
――AIへの期待は大きいようですね。
橋本氏:社長の細川が率先して、AIを積極的に活用しようと旗を振っています。経営者がAIの有用性を理解しなければなかなか普及しないという考えから、経営層や、私のような部長以上の管理職を対象にAI研修を実施しています。
若い人たちは放っておいてもAIを使います。しかし、上司がAIの利活用について理解がない環境では使いづらくなってしまいます。まずは経営者や管理職がAIを正しく理解し、実際に使って有用性を確かめる。そこから全社的な普及につなげていく方針です。
サステナビリティを「経営課題」として位置づける
――西松建設のサステナビリティに対する考え方を教えてください。
橋本氏:当社のサステナビリティは、単に環境負荷を減らすための活動ではありません。事業そのものを通じて社会課題を解決し、持続的に成長していくための経営課題として位置づけています。サステナビリティスローガンは「みんなでつくる みんなが輝く」です。人・まち・自然を大切につなぎ、人々が生き生きできる場をつくることで、みんなが輝く社会を実現するという考え方を掲げています。
建設事業では、施工時のCO2削減や省エネ、資源循環、生物多様性への配慮などを進めています。一方、私たち地域環境ソリューション事業統括部では、再生可能エネルギーやまちづくりを、環境対応であると同時に、継続的に収益を生み出す事業として成立させることを目指しています。
――具体的には、どのような分野で事業を展開しているのでしょうか。
橋本氏:私が部長を務める事業創生1部は主に再エネ分野を担当しています。部門全体としては、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー、地域インフラ、建設ソリューションといった分野で新しい事業を創出していきたいと考えています。
例えば再生可能エネルギー事業では、単に発電設備をつくるだけでなく、脱炭素電力の供給、コスト削減、BCP対策、地域活性化といった課題を総合的に解決するサービスとして提供していきたいと考えています。まだ道半ばではありますが、今後は建設会社という枠を超え、地域や企業の環境課題・社会課題を解決する「環境インフラサービス事業者」へと進化していくことを目指しています。
――サステナビリティを経営の中心に据えている背景には、何があるのでしょうか。
橋本氏:数年前に脱炭素に向けた目標を掲げ、取り組みを進めてきたことが出発点です。現在は、2030年度までの脱炭素計画をロードマップとして会社で掲げているほか、TNFD提言への対応なども環境部門として進めています。サステナビリティ経営については2023年に専門部署を設けて強化してきました。2050年に向けたKGIとその達成に向けたKPIツリーも設定しています。
推進体制としては、サステナビリティ戦略会議を設け、そこから経営会議へ付議・報告・提言し、さらに経営会議から取締役会へ付議・報告します。特にサステナビリティ関連の重要事項は、取締役会の諮問機関であるサステナビリティ委員会の諮問・答申を経て、取締役会で決定します。
事業の創出から運営まで一気通貫――地域環境ソリューション事業統括部
――地域環境ソリューション事業統括部の組織構成を教えてください。
橋本氏:今年度の組織再編で、昨年度までの地域環境ソリューション事業本部とアセットバリューアッド事業本部が統合され、現在の本部になりました。その中の地域環境ソリューション事業統括部は、事業創生1部、事業創生2部、事業推進部、企画部の4つの部で構成されています。
事業創生1部では、国内外のカーボンニュートラル事業、サーキュラーエコノミー事業、建設ソリューション事業を対象に、それぞれ専門の課を設けています。事業創生2部では、建物のバリューアップ、太陽光PPAや蓄電所の開発、インフラPPP、官民連携事業を担当しています。事業推進部は、事業創生1部・2部でつくった事業を確実に運営していく役割を担い、企画部は事業収支のチェックなどの管理機能や総務全般などのアドミン業務を担っています。
このように、事業開発だけを行う組織ではなく、事業の創出から事業化、運営までを一気通貫で担っている点が特徴です。自分が企画した事業が、最終的に収益を生み出すところまで関与できることは大きな魅力だと思います。
――まさに新規事業開発を担う組織なのですね。
橋本氏:建設会社の中で新規事業に取り組むとなれば、私たちの部署が担うことになります。私たちは脱炭素や資源循環といった価値を世の中に提供していますが、CSR的に取り組んでいるわけではなく、収益化を目指しています。そのため、その価値を見出してくださるお客様を対象に、どのようなニーズがあるのかを常に考えながら事業をつくっています。
――お客様のニーズに変化は感じますか。
橋本氏:カーボンニュートラルの分野では、国内の事業は収支面で厳しくなってきており、お客様のコスト感覚も非常にシビアになっていると感じます。今後の鍵は、環境に対する価値をお客様にどの程度評価していただけるかです。期待半分ではありますが、その評価が高まっていけば、より事業化しやすくなるだろうと考えています。
新規事業を「育てる」ために向き合う4つの課題
――現在、どのような課題に向き合っていますか。
橋本氏:大きく4つあると考えています。1つ目は事業創生人財の確保です。当社として事業創生の領域を強化していく中で、必要な専門人財の採用を進めています。再エネや資源循環、事業投資・M&A、海外事業など、従来の建設業にはなかった知見を持つ人財が、今後ますます重要になると考えています。
2つ目は事業のスケールアップです。事業をつくることと、それを計画的に収益事業へと育てることは別物です。国内だけでなく海外も含めて、複数の案件を同時並行で拡大できる体制の整備が課題になります。これは経営資源としての人財体制の整備にもつながります。
3つ目は建設と新規事業の融合です。当社の最大の強みは施工力と顧客基盤だと考えています。これらを再エネや資源循環ソリューションと組み合わせることで、他社にはない事業モデルをつくっていく。ここはまだ十分にできていないと感じています。
4つ目は、新しい挑戦とリスク管理の両立です。再エネや海外事業には成長機会がある一方で、制度変更や電力価格、為替・金利、建設費、現地パートナーなど、さまざまなリスクがあります。重要なのは、リスクがあるから取り組まないのではなく、リスクを特定し、適切に管理・分担して許容できる形にした上で事業化することです。建設会社として培ってきた慎重さやリスク管理力を活かしながら、意思決定をして新たな分野へ踏み出すことは、まだまだ課題があると考えています。
――専門人財の確保が1つ目に挙がった背景を教えてください。
橋本氏:時代の変化というよりも、そもそも私たちが新規事業に取り組もうとしていることが大きいです。土木・建築の人財だけでは、海外の再エネやM&A、事業投資などに慣れている人財がなかなかいません。そのため、外部から専門人財を確保した上で事業を進めていきたいと考えています。
――事業のスケールアップに伴い、組織の歪みが生じる懸念はありますか。
橋本氏:今のところ歪みはありません。ただ、例えば海外で太陽光PPAを手がけたり、国内のさまざまな地域で事業を展開したりするとなれば、それを管理する人財が必要になり、地域ごとに人を配置することも求められます。東京の本社から、ガバナンスも含めてどのようにコントロールしていくかは、今後課題として出てくるかもしれません。
とはいえ、当社は全国に営業所や現場を持っていますから、そうしたコントロールには意外と慣れているのではないかと思います。課題にはなっても、うまくクリアできるだろうと考えています。
――建設と新規事業の融合がまだ十分ではないとのことですが、その背景を教えてください。
橋本氏:融合の一例として、熱中症対策を事業化しています。ベンチャー企業と協業したウェアラブルデバイスによる熱中症の検知サービスで、2年前から当社の現場に導入し、今年度から外販を始めました。現場の課題である熱中症を減らしたいという想いから生まれたもので、建設と新規事業の融合を体現した大きな事業だと考えています。こうした取り組みをどんどん進めていきたいですね。
ただ、建設の課題は、なかなか解決できないからこそ課題として残っているのであって、簡単に解決できるものではない。数年事業に取り組む中で、そう実感しています。熱中症以外にも、生産性向上や人手不足、外国人労働者の増加、労働災害の削減など、さまざまな課題があります。それを事業につなげていくには、競合状況や技術の新規性が重要になります。良い技術だと思っても価格が高くて導入できないこともあり、課題と技術のマッチングをいかにうまく行うかが、今まさに残されている課題です。
――解決に向けては、どのような方向性を考えていますか。
橋本氏:ここでもやはり人財が必要だと考えています。この分野を担う人員が非常に少なく、どうしても現在動いているウェアラブルデバイスの事業や、そのほかの複数の事業に注力しがちで、新しい事業を生み出す余力がない状態です。頭の柔らかい若い人財に加わってもらい、一緒に考えていきたいと思っています。あわせて、技術研究所やDX部門との連携も、より強化していく必要があると考えています。

困難から逃げず、最後までやり遂げる。西松建設に根付く「現場力」
――西松建設が大切にしているカルチャーや価値観について教えてください。
橋本氏:当社が長年大切にしてきたのは、中期経営計画でも「現場力」と表現しているものです。粘り強さ、堅実さ、誠実さ、そして多くの関係者をまとめ上げる力。これが私たちの強みであり、職員が大切にしているカルチャーにもつながっていると考えています。
建設プロジェクトでは、計画通りに進まないことも少なくありません。そうした中でも現場の職員は、困難から逃げずにお客様や協力会社と向き合い、最後まで責任を持って完成させます。これが西松建設の文化として根底にあると思います。
この価値観は、新規事業にも共通するものです。一方で新規事業では、従来の方法だけにとらわれず、異なる業界の知見や外部人財の考え方を取り入れることも必要だと感じています。誠実さや現場力といった西松建設の良さを残しながら、新しい提案を歓迎し、小さく試し、学びながら事業を育てていく。これは個人的な想いでもありますが、そんな文化をさらに強くしていきたいと考えています。
――「現場力」は、どのように培われていくのでしょうか。
橋本氏:当社に入社すると、事務系の職員も含めて、まず現場を経験することが第一歩になります。最近は不動産事業や再エネ事業などを専門に担う開発職の採用も始めていますが、技術系の職員や研究職、事務職は、基本的に現場を経験しながら育っていきます。
現場を仕上げるという経験は、誰もが実感できるものです。工事が終わらずにお客様に迷惑をかけるようなことは、私たちは絶対にしません。そうした姿勢は、現場に入り、先輩たちの働く姿を見ながら培われていくものだと思います。
――日々の業務の中でも「現場力」を実感する場面は多いですか。
橋本氏:言葉に出して「現場力だ」と言うことは、あまりないかもしれません。ただ、現場の関係者をまとめ上げる、誠実に対応する、根気強く対応するといったことは、日々の現場で皆が感じていることだと思います。
――社員の方々のお人柄については、どのような印象をお持ちですか。
橋本氏:いろいろな人がいますが、真面目な人が多いと感じます。
会社の基盤を活かして、社会的意義の大きい事業を自らつくる
――西松建設、そして地域環境ソリューション事業統括部で働く魅力を教えてください。
橋本氏:一番の魅力は、一定の規模を持つ西松建設の基盤を活かしながら、新しい事業づくりに挑戦できることです。案件の発掘から、事業採算の検討、技術面・財務面の確認、パートナーとの交渉、投資判断、運営まで、事業全体に関わる機会があります。
しかもテーマは、エネルギーや脱炭素、防災、地域活性化、海外インフラなど、社会的意義の大きいものばかりです。自分が携わった事業が実際の発電設備や地域サービスとして形になり、長期にわたって社会に価値を提供していく。そこに大きなやりがいがあると感じています。
また、当社には全国の自治体や協力会社とのネットワークがあり、海外にも事業基盤があります。個人や小規模な組織では接点を持つことが難しい企業や地域と一緒に、新しい事業をつくれる可能性がある会社です。
――「会社の変革期」とのお話がありましたが、具体的にはどのような方向性でしょうか。
橋本氏:中期経営計画でも示している通り、従来の建物の請負だけでなく事業領域を広げ、将来の新たな収益基盤として国際事業と環境・都市開発事業を育てていくことが、会社としての大きな方向性です。M&Aなどの積極投資も含めて会社を成長させていく方針が示されています。
国内建設以外の事業領域を拡大し、新たな収益の柱を構築していく。西松建設で働くことを考えてくださっている方にとっては、この会社の変革に直接関われる良いタイミングだと思います。
――どのような方に仲間になってほしいとお考えですか。
橋本氏:新規事業をつくっていく部署ですので、受け身ではなく、できるだけアクティブに考えられる人を求めています。単に手を動かすだけではなく、どのような事業をやりたいのか、どうすればうまくいくのかを自ら考えられる人財です。
新規事業では、与えられた業務を着実に進めるだけでは十分ではありません。例えば英語でお客様と会話をしながら新しい事業を見出していくといった、自らアクティブに行動することは、専門性がなければなかなか難しい。そうした専門性と主体性を兼ね備えた方を求めています。
読者へのメッセージ
――最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。
橋本氏:西松建設は今、建設会社としての強みを活かしながら、再エネや海外事業を次の収益基盤に育てようとしています。完成された事業に加わるのではなく、自分の経験や専門性を活かして新しい事業の形を一緒につくりたい方には、大きな活躍の機会があると思います。
新しい事業を一緒につくりたいという方に、ぜひ関心を持っていただきたいと思っています。
会社概要
会社名:西松建設株式会社
設立:1937年9月
代表者:代表取締役 細川 雅一
所在地:東京都港区虎ノ門一丁目17番1号 虎ノ門ヒルズビジネスタワー
事業内容:建設事業、開発事業、不動産事業 ほか
従業員数:3,036名(2026年3月末現在 / 臨時従業員 330人を含む)
URL:https://www.nishimatsu.co.jp/
【インタビュー協力】
西松建設株式会社 地域環境ソリューション事業統括部 事業創生1部 橋本守 氏
「GX・ESG特化型転職サービス ASUENE CARRER利用企業インタビュー」
