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TCFD開示とは|義務化の現状と4要素の対応ポイント

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TCFD開示とは|義務化の現状と4要素の対応ポイント

TCFD開示とは、企業が気候変動に関するリスクと機会を「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4要素で開示する国際的な枠組みです。日本ではプライム市場上場企業に実質義務化されており、後継であるSSBJ基準への移行も進んでいます。本記事ではTCFD開示の最新動向と4要素の具体的な対応方法、SSBJ基準との関係まで解説します。

INDEX

    1. TCFD開示とは|気候関連財務情報を開示する国際枠組み

    TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース/Task Force on Climate-related Financial Disclosures)とは、G20の要請を受けて金融安定理事会(FSB)が2015年に設立した、企業の気候関連情報開示を促進する国際組織です。2017年6月に最終報告書(TCFD提言)を公表し、企業に対して気候変動が事業に与える財務的影響を開示することを推奨してきました。

    TCFDは2023年10月12日のステータスレポート発表をもって解散しましたが、TCFD提言に基づく開示の枠組みは引き続き有効です。現在は国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)がTCFDの議論を引き継いでおり、ISSBが2023年6月に公表したIFRS S2号「気候関連開示」はTCFD提言を基礎として開発されています。

    1-1. TCFD開示が求められる背景

    気候変動が企業経営に与える影響は、洪水や台風による物理的損失といった「物理リスク」と、低炭素経済への移行に伴う「移行リスク」に大別されます。これらのリスクは中長期的に企業の財務パフォーマンスを左右するため、投資家にとって重要な意思決定情報となります。

    TCFD開示は、こうした気候関連リスクと機会を投資家やステークホルダーに対して透明性高く伝えるための共通フレームワークとして、世界各国の企業や金融機関に活用されてきました。

    1-2. TCFD賛同企業数と日本の状況

    TCFDコンソーシアム公表情報によれば、TCFD解散時点で世界4,800以上の組織が賛同を表明しており、日本は1,400を超える賛同機関で世界最多となっています。日本企業はプライム市場上場会社を中心にTCFD開示の実務を積み重ねており、その経験はSSBJ基準への対応にも生かされています。

    2. TCFD開示の4要素|ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標

    TCFD提言は、企業が開示すべき気候関連財務情報を4つの中核的要素(コア・コンテンツ)に整理しています。SSBJ基準もこの4要素を引き継いでおり、日本企業のサステナビリティ開示実務の基本構造となっています。

    2-1. ガバナンス

    気候関連のリスクと機会に関する取締役会の監督体制、および経営者の役割を開示する要素です。具体的には、気候関連課題の監督機関、報告頻度、経営層の責任範囲、気候関連目標の達成状況のモニタリング体制などを明確にします。

    2-2. 戦略

    気候関連リスクと機会が事業・戦略・財務計画に与える実際および潜在的な影響を開示する要素です。短期・中期・長期の時間軸ごとに識別したリスクと機会、それらが事業戦略に与える影響、そして1.5℃や2℃などの異なるシナリオを用いた事業の強靭性評価(シナリオ分析)を含みます。

    2-3. リスク管理

    気候関連リスクの識別・評価・管理プロセスを開示する要素です。どのような手法でリスクを識別し、重要性を判断し、優先順位をつけて管理しているかを示します。さらに、こうした気候関連リスクの管理プロセスが全社的なリスクマネジメント体制にどのように統合されているかも開示が求められます。

    2-4. 指標と目標

    気候関連リスクと機会を評価・管理するために用いる指標と目標を開示する要素です。Scope1(自社直接排出)、Scope2(エネルギー使用に伴う間接排出)、Scope3(バリューチェーン全体の間接排出)の温室効果ガス排出量、内部炭素価格、削減目標とその進捗などが代表的な開示項目です。2021年10月の改訂で開示が推奨される7つの指標が示されました。

    3. TCFD開示の義務化動向|プライム市場とSSBJ基準への移行

    日本国内のTCFD開示は、コーポレートガバナンス・コードの改訂と有価証券報告書のサステナビリティ記載欄新設を通じて段階的に整備されてきました。今後はSSBJ基準への移行という大きな転換点を迎えます。

    3-1. プライム市場での実質義務化

    東京証券取引所が2021年6月に改訂したコーポレートガバナンス・コードでは、プライム市場上場企業に対して「TCFDまたはそれと同等の枠組みに基づく開示の質と量の充実を進めるべきである」と明記されました。コンプライ・オア・エクスプレインの原則のもと、TCFDに沿った開示は実質的に義務化された状態です。

    3-2. 有価証券報告書での開示

    2023年1月31日の企業内容等の開示に関する内閣府令改正により、2023年3月期決算企業から有価証券報告書に「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄が新設されました。記載必須となるのは「ガバナンス」と「リスク管理」の2項目で、「戦略」と「指標及び目標」は重要性に応じた開示が求められます。

    3-3. SSBJ基準への移行スケジュール

    サステナビリティ基準委員会(SSBJ)が2025年3月5日に公表した「サステナビリティ開示基準」は、TCFD提言とISSB基準を基礎に開発された日本版の開示基準です。金融庁は段階的な義務化スケジュールを示しており、2027年3月期から時価総額3兆円以上のプライム市場上場企業を対象に適用が開始される予定となっています。

    2028年3月期からは時価総額1兆円以上、2029年3月期からは時価総額5,000億円以上の企業が対象となり、2030年代にはプライム上場全企業への拡大が見込まれます。経過措置として適用開始から2年間は二段階開示が認められ、第三者保証は適用翌年度から限定的保証として導入される方針です。

    4. TCFD開示の進め方|5ステップで対応すべき内容

    TCFD開示を初めて実施する企業や、SSBJ基準への移行準備を進める企業は、次の5ステップで対応を進めることが効率的です。

    4-1. ガバナンス体制の構築

    まず取締役会と経営層の気候関連課題に対する監督・管理体制を整備します。サステナビリティ委員会の設置、CSO(最高サステナビリティ責任者)の任命、気候関連事項の取締役会への報告フローの明確化などを進めることで、開示の前提となる体制が整います。

    4-2. リスクと機会の識別

    自社事業に関連する気候関連リスクと機会を、短期・中期・長期の時間軸ごとに洗い出します。物理リスク(急性・慢性)、移行リスク(政策・法規制、技術、市場、評判)、機会(資源効率、エネルギー源、製品・サービス、市場、レジリエンス)の5カテゴリで網羅的に識別します。

    4-3. シナリオ分析の実施

    1.5℃シナリオや4℃シナリオなど、異なる気候シナリオを設定して事業への影響を定量的に評価します。IEA(国際エネルギー機関)のNet Zero by 2050、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の各シナリオなどが参照されます。シナリオ分析の結果は戦略の強靭性評価につながります。

    4-4. GHG排出量の算定

    Scope1・Scope2・Scope3の温室効果ガス排出量を算定します。GHGプロトコルに準拠した算定が一般的で、Scope3の15カテゴリのうち重要性の高いカテゴリから優先的に算定範囲を広げていきます。SSBJ基準ではGHGプロトコル以外の測定方法での結果も併せて開示することが認められています。

    4-5. 開示文書の作成と継続的改善

    有価証券報告書、統合報告書、サステナビリティレポートなど開示媒体に応じて記載内容を整理します。一度の開示で完了するものではなく、毎年の数値更新、リスク・機会の見直し、目標の再評価を継続することで、開示の質と量を高めていく必要があります。

    5. TCFD開示でよくある質問(FAQ)

    5-1. TCFD開示の義務化はいつからですか

    日本ではプライム市場上場企業に対してコーポレートガバナンス・コードを通じて2022年4月から実質義務化されています。法令上の義務化はSSBJ基準として進められており、2027年3月期から時価総額3兆円以上の企業から段階的に開始される予定です。

    5-2. TCFDが解散した後も開示は必要ですか

    TCFDは2023年10月に解散しましたが、TCFD提言に基づく開示の枠組みは引き続き有効です。プライム市場のコーポレートガバナンス・コードでも「TCFDまたはそれと同等の枠組み」と規定されており、後継であるISSB基準・SSBJ基準もTCFDの4要素を引き継いでいます。

    5-3. 中小企業もTCFD開示が必要ですか

    中小企業に直接の開示義務はありません。ただしSSBJ基準ではScope3排出量の開示が求められるため、サプライヤーとして大企業と取引のある中小企業も、自社のGHG排出量データを取引先に提供する必要が生じます。早期の算定体制構築が望まれます。

    5-4. TCFD開示とSSBJ開示はどう違いますか

    TCFD開示は4要素(ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標)を中心とした任意ベースの枠組みで、SSBJ開示は法令に基づく強制適用の枠組みです。SSBJ基準はTCFDの4要素を引き継ぎつつ、より詳細な定量開示や産業別指標を求める点で要求水準が高くなっています。

    6. まとめ|TCFD開示はSSBJ基準を見据えた継続対応が重要

    TCFD開示は、気候関連リスクと機会を「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4要素で開示する国際的な枠組みです。プライム市場で実質義務化されており、2027年3月期からSSBJ基準による段階的な法令義務化が始まります。要点を整理します。

    (1)TCFDは2023年10月に解散したが、TCFD提言の4要素はISSB基準・SSBJ基準に引き継がれている。

    (2)日本ではプライム市場上場企業にコーポレートガバナンス・コードを通じて実質義務化されている。

    (3)2027年3月期から時価総額3兆円以上のプライム市場上場企業を皮切りにSSBJ基準が段階的に適用される。

    (4)開示準備はガバナンス体制構築、リスク機会の識別、シナリオ分析、GHG排出量算定、文書作成の5ステップで進める。

    TCFD開示の経験は、SSBJ基準への対応の土台となります。まず着手すべきNextActionは、自社のGHG排出量算定(Scope1・2・3)の現状把握と、ガバナンス体制の整備状況の確認です。継続的な情報収集と段階的な対応強化により、開示義務化の波に確実に備えていくことが重要です。

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