2026年6月5日、アスエネ株式会社は「第2回 ASUENE Sustainability Roundtable」を赤坂インターシティコンファレンスで開催しました。本イベントは、「SSBJ対応の課題と取り組みを学び、つながる場」をテーマに、大企業・東証プライム上場企業を中心としたサステナビリティ実務責任者など約60名が参加しました。前回を上回る規模での開催となり、SSBJ対応が本格化するなか、企業の関心の高さがうかがえる結果となりました。
当日は、KDDI株式会社 地域共創・SX推進本部 サステナビリティ企画部 兵田氏、日立建機株式会社からサステナビリティ本部 サステナビリティ推進部 村山氏をゲストに迎え、SSBJ対応を見据えた開示・保証対応、環境データ管理、グローバル規制対応の実務について共有しました。
イベント後のアンケートでは、全体セッション満足度96%、9割以上の参加者が次回も参加したいと回答しました。制度理解にとどまらず、実務責任者同士が課題を共有し、次の一手を考える場としての価値が示されました。
SSBJ対応が理論から実装へと移る今、企業はどのような課題に直面し、何を優先すべきなのでしょうか。本レポートでは、当日交わされた議論と実務のリアルを振り返ります。
SSBJ対応の本格化で問われる、非財務データ基盤の整備

はじめに、アスエネ株式会社 アスエネ事業・アスエネサプライチェーン事業 営業部統括 ゼネラルマネージャー 橋本 真一郎 ミヒャエルより、「最新の脱炭素外部環境とASUENEの戦略方向性」をテーマに講演を行いました。
SSBJ基準の適用開始により、企業のサステナビリティ対応は、任意の情報開示から、経営・財務と接続した開示実務へと移行しています。求められるのは、CO2排出量の算定だけではありません。連結グループ全体でのデータ収集、Scope3を含むサプライチェーン情報の管理、マテリアリティに基づく開示項目の整理、第三者保証を見据えたデータ統制まで、対応範囲は広がっています。気候変動や生物多様性、エネルギー価格の上昇、国際情勢の不安定化など、外部環境が大きく変化するなか、非財務情報を正確かつ継続的に管理できる体制づくりは、企業の信頼性や競争力にも直結するテーマになっています。
橋本は、限られた開示スケジュールのなかで、グループ・連結ベースのデータを早期に集め、開示に耐えうる形で整理することの重要性を説明しました。アスエネは、CO2排出量の算定・削減・報告に加え、「ASUENE SUPPLY CHAIN」や「ASUENE VERITAS」との連携を通じて、サプライチェーン管理、開示設計、第三者保証対応までを一気通貫で支援するプラットフォームとして進化を続けています。本講演では、SSBJ対応を単なる制度対応にとどめず、非財務データを経営判断に活用するための基盤づくりとして捉える視点が提示されました。
SSBJ対応で問われる、開示・保証に耐える実務体制
続いて、アスエネヴェリタス株式会社 取締役CCO 小池 心平より、「SSBJに備えた開示・保証対応」をテーマに解説を行いました。講演では、温対法報告データの活用可能性やScope3の扱い、保証基準の最新動向などを踏まえ、企業が開示・保証対応を進めるうえで押さえるべき実務上のポイントが共有されました。
小池は、サステナビリティ開示においては、情報を開示するだけではなく、第三者保証に耐えうるデータ管理や内部統制の整備が重要になると説明しました。保証基準は国際的にも新たな枠組みへ移行しており、企業側には、プロセスの網羅性と、判断根拠・記録の整備の双方を意識した実務対応が求められます。
また、Scope3開示では、サプライヤーからのデータ収集や将来予測を含む算定の不確実性が大きな課題となっています。こうした実務上の難しさを踏まえ、一定の確認手続きを行った場合に虚偽記載とみなされるリスクを抑えるセーフハーバールールの検討も進んでいます。小池は、SSBJ対応では、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標を分断せず、経営戦略からリスク・機会を特定し、指標や目標へ落とし込む「縦のライン」を意識することが重要であると強調しました。
東証プライム上場企業が進めるSSBJ対応の現在地
SBJ対応を実務に落とし込むうえでは、制度理解だけでなく、企業ごとの事業構造や組織体制に即したデータ管理、社内統制、保証対応が求められます。ここからは、KDDIと日立建機の実務事例をもとに、大企業が直面する課題と取り組みを紹介します。
KDDI | データ統制とエビデンス管理には、現場への感謝と会話が大事

「サステナビリティ情報開示と環境データ管理の実務」と題し、KDDI株式会社 地域共創・SX推進本部 サステナビリティ企画部 環境グループ グループリーダー 兵田 聡氏が登壇しました。講演では、SSBJ対応を単なる制度対応にとどめず、通信インフラを支える企業として、環境データの正確性と説明責任をどう担保していくかという視点が示されました。
同社では、国内外150社以上のグループ会社を対象に、CO2排出量の算定・管理を進めています。通信設備やデータセンターの電力使用に起因するScope2が排出量の大きな割合を占める一方、通信端末の製造などを含むScope3も重要な管理対象となっています。Scope3は「ASUENE」をはじめとする外部システムを活用しながら、グループ全体の環境データを集約する体制を構築しています。
SSBJ対応や第三者保証を見据えるうえで、大きな論点となるのがデータ統制とエビデンス管理です。現場が数値を入力して終わりではなく、請求書や伝票などの根拠資料、所属長の承認プロセス、確認記録まで含めて、保証に耐えうる形で残す必要があります。兵田氏は、全国に広がる基地局の電力契約や請求書データについて、フォーマットの異なるPDFを格納し、システム会社の支援も受けながら毎月データ化している実務を紹介しました。こうしたエビデンス管理と、現場への感謝と会話が、開示の信頼性を支えています。
また、兵田氏は、SSBJ対応で難しい点として、明確な正解がないなかで自社としての判断軸を定めることを挙げました。他社事例や専門家の意見を参考にしながらも、自社として何を重視し、どの水準を目指すのかを決めることが重要になります。KDDIでは、長年の環境への取り組みを経営層にも説明できるプロセスとして再整理し、環境領域に加え、人的資本などの社会領域も含めた開示体制の高度化を進めています。
日立建機 | Excel管理からの脱却。SSBJ・CSRD対応を見据えたグローバル製造業のデータ基盤づくり

続いて、日立建機株式会社 サステナビリティ本部 サステナビリティ推進部 ESG推進グループ 部長代理 村山 邦雄氏より、グローバル製造業における算定・開示実務について講演が行われました。日立建機は、世界各国で事業を展開する建設機械メーカーとして、国内のSSBJ対応に加え、欧州のCSRD対応も見据えた開示体制の整備を進めています。規制対応のスケジュールが前倒しとなる可能性もあるなか、全社横断プロジェクトを立ち上げ、国内外の拠点を巻き込みながら準備を進めていることが共有されました。
同社ではこれまで、環境情報の取りまとめをExcelで行っていました。しかし、SSBJやCSRDへの対応を見据えると、拠点ごとに異なるデータを継続的に収集し、開示や保証に耐えうる形で管理する仕組みが不可欠になります。少数精鋭の体制でグローバル規制に向き合うため、村山氏は、システムの使いやすさに加え、制度理解や実務判断を支える伴走支援の重要性を説明しました。そのうえで、「ASUENE」について、CO2排出量管理システムとしての操作性だけでなく、現実的なロードマップの提示や、課題に寄り添う支援体制を評価したと話しました。
実務上の課題としては、拠点ごとに異なる報告単位や入力ルールをどのように整え、グローバル全体で連携させるかが挙げられました。また、海外拠点では担当者の交代も起こりやすく、前提知識の維持や継続的なコミュニケーションも重要になります。第三者保証に向けては、監査法人の指摘を受け身で捉えるのではなく、アスエネのコンサルティングチームと連携しながら、どこまでの開示が必要かを精査し、理論武装したうえで対話する姿勢が示されました。制度対応を目的化せず、自社の承認プロセスやグローバル体制に即した実装へ落とし込む姿勢が印象的なセッションとなりました。
実務責任者同士がリアルな課題を共有し、次の一手を考える場に

後半のラウンドテーブルでは、アスエネ社員が各テーブルのファシリテーターを務め、参加者同士が自社の取り組み状況や課題を共有しました。普段は交わることの少ない他社の実務責任者同士が、SSBJ対応や開示・保証に向けた悩みを率直に話し合う、密度の高い時間となりました。
各テーブルでは、「社内体制をどのように構築しているか」「保証対応で最も難しい点は何か」「マテリアリティとどのように接続すべきか」といった、制度解説だけでは得られない実務起点の議論が交わされました。参加者からは、KDDIや日立建機の実務事例が参考になったことに加え、グループ替えを通じて多くの担当者と情報交換できた点も高く評価されました。
本セッションは、正解を提示する場ではなく、各社が自社の課題を整理し、次に取るべきアクションを考えるための場として設計されています。サステナビリティ経営の高度化に向け、企業を越えて実務知を共有する“横のつながり”の価値を改めて実感する機会となりました。
実務者同士のネットワーキングを通じ、継続的な学びの場へ
講演およびラウンドテーブルの後には、参加企業による懇親会を実施。SSBJ対応やサステナビリティ情報開示という共通のテーマを背景に、実務責任者同士が立場を越えて対話する機会となりました。
制度対応が本格化するなか、同じ課題に向き合う企業担当者同士が率直に意見を交わせる場は決して多くありません。業種や課題感が近い参加者同士の会話では、各社が直面する運用上の論点やデータ管理の悩み、社内調整の工夫など、実務に踏み込んだ意見交換が行われました。
参加者からは、「話しやすい雰囲気だった」「実務の本音を共有できた」といった声も寄せられました。単なる名刺交換にとどまらず、次のアクションや継続的な学びにつながる対話が生まれる時間となりました。
サステナビリティ経営のパートナーとしてSSBJ対応と実装を支援

本イベントの参加者アンケートでは、全体セッション満足度96%、9割以上の参加者が次回も参加したいと回答しました。特に、KDDIや日立建機による実務事例講演に加え、他社担当者との情報交換や、自社課題に直結する議論への評価が高く、制度理解にとどまらない実務的価値がうかがえる結果となりました。
参加者からは、次回開催に向けた具体的なテーマの要望も寄せられました。保証取得に向けた内部統制の設計、Scope3算定の高度化、海外拠点を含むデータ統合、サプライヤー巻き込みの実践例など、より踏み込んだ論点への関心が高まっています。SSBJ対応が、情報収集の段階から本格的な実装フェーズへ移りつつあることを示しています。
SSBJ対応は、一時的なプロジェクトではなく、継続的な体制構築を要する取り組みです。算定、開示、保証、サプライチェーン管理までを包括的に設計できるかどうかが、企業の信頼性を左右します。アスエネは今後も、サステナビリティAIプラットフォーム「ASUENE」、サプライチェーンマネジメントAIプラットフォーム「ASUENE SUPPLY CHAIN」、第三者保証/検証・開示アドバイザー「ASUENE VERITAS」を通じて、企業のサステナビリティ経営の実装支援を加速します。