「排気ガス(exhaust gas)」とは、自動車や工場などでガソリン・軽油・重油などの燃料を燃焼させた際に排出されるガスの総称です。一酸化炭素(CO)・炭化水素(HC)・窒素酸化物(NOx)・粒子状物質(PM)・二酸化硫黄(SO2)・二酸化炭素(CO2)など多くの有害物質を含んでおり、大気汚染・地球温暖化・酸性雨・人体への健康被害など、深刻な環境問題の原因となっています。
2025年2月閣議決定の「第7次エネルギー基本計画」と「地球温暖化対策計画」では、運輸部門の脱炭素化が重要な柱として位置づけられ、EV・FCV普及や2035年新車販売の電動車100%目標が示されました。本記事では、排気ガスの成分・環境問題・人体への影響・最新の対策動向と、企業が脱炭素経営の観点からできる取り組みを2026年最新情報で解説します。
INDEX
排気ガスとは?意味と仕組みをわかりやすく解説
排気ガスとは、英語で「exhaust gas」と呼ばれ、ガソリンや軽油等の燃料を燃焼させた際に発生し、自動車のマフラーや工場の煙突から大気中に排出されるガスの総称です。「排ガス」「排出ガス」と表記されることもあります。
排気ガスの発生源は大きく以下の2つに分けられます。
・移動発生源:自動車・船舶・航空機・鉄道など、燃料を燃焼させて移動する装置
・固定発生源:火力発電所・工場・ボイラー・焼却炉など、特定の場所に設置された施設
中でも自動車の排気ガスは身近で、私たちの健康と地球環境に最も直接的な影響を与えるため、本記事では主に自動車の排気ガスについて解説します。日本では大気汚染防止法に基づき、自動車排出ガスの規制値が定められており、新車には厳しい排出基準が課されています。
出典:環境省『大気汚染防止法の概要』
排気ガスに含まれる主な成分6つ
自動車の排気ガスには、水蒸気や二酸化炭素以外にも、人体や環境に有害な様々な化学物質が含まれています。代表的な6つの成分を解説します。
2-1. 一酸化炭素(CO)
不完全燃焼によって発生する無色・無臭の有毒な気体です。人体に入ると血液中のヘモグロビンと結合し、酸素の運搬機能を阻害して中毒症状を引き起こします。最悪の場合、死に至ることもあります。
2-2. 炭化水素(HC)
燃料を構成する炭素と水素が不完全燃焼により結合した物質です。大気中で紫外線と反応して光化学スモッグの原因物質「光化学オキシダント」を生成し、目やのどの粘膜を刺激します。
2-3. 窒素酸化物(NOx)
高温燃焼時に空気中の窒素と酸素が結びついて生成される物質で、一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO2)の総称です。光化学スモッグや酸性雨の原因となり、呼吸器疾患の原因にもなります。
2-4. 粒子状物質(PM・PM2.5)
ディーゼル車から多く排出される微粒子で、特に粒径2.5μm以下の「PM2.5」は呼吸器の奥深くまで入り込むため、肺がん・心疾患・呼吸器疾患のリスクを高めます。
2-5. 二酸化硫黄(SO2)
軽油などに含まれる硫黄分が燃焼することで発生します。酸性雨の主要原因物質で、森林や農作物に被害を及ぼし、人体には呼吸器系の障害を引き起こします。
2-6. 二酸化炭素(CO2)
化石燃料の燃焼で大量に発生する温室効果ガスで、地球温暖化の最大の原因物質です。直接的な有害性は低いものの、気候変動を通じて間接的に大きな環境影響を及ぼします。
出典:環境省『自動車排出ガス対策』
排気ガスが引き起こす環境問題
排気ガスが引き起こす環境問題
排気ガスは、以下の3つの深刻な環境問題を引き起こします。
3-1. 地球温暖化
排気ガスに含まれるCO2は、温室効果ガスの代表的なものです。大気中のCO2濃度上昇により、地球の表面温度が上昇しています。IPCC第6次評価報告書(2023年)では、世界の平均気温は産業革命前と比べてすでに約1.1℃上昇しており、現在の排出ペースが続けば2030年代前半に1.5℃を超える可能性が高いと警告されています。気温上昇は海面上昇・異常気象・生態系への被害を引き起こします。
3-2. 大気汚染と光化学スモッグ
窒素酸化物(NOx)と炭化水素(HC)は、大気中で紫外線と反応して光化学オキシダントを生成し、光化学スモッグを発生させます。視界の悪化、目やのどの刺激、呼吸器疾患などの被害を引き起こします。特に夏季の都市部で深刻化しやすい問題です。
3-3. 酸性雨
二酸化硫黄(SO2)と窒素酸化物(NOx)が大気中の水分と反応すると、硫酸や硝酸となって酸性雨を引き起こします。酸性雨は森林の立ち枯れ、湖沼の生態系破壊、土壌の劣化、建造物(特に石灰岩や金属)の腐食など、自然環境と人工構造物の双方に被害を及ぼします。
出典:IPCC『第6次評価報告書(AR6)統合報告書』(2023年3月)
排気ガスが人体に与える影響
排気ガスは環境だけでなく、人体にも深刻な健康被害を及ぼします。WHO(世界保健機関)の報告によると、大気汚染は世界で毎年約700万人の早期死亡の原因となっています。特に子どもや高齢者など、抵抗力の弱い人々への影響が大きいことが知られています。
主な健康被害
・呼吸器疾患(喘息・慢性気管支炎・COPDなど):NOx・PM2.5・SO2が原因
・循環器疾患(心疾患・脳卒中):PM2.5の長期暴露によりリスク上昇
・肺がん:ディーゼル排気ガスはWHO国際がん研究機関(IARC)により「グループ1(人に対する発がん性あり)」に分類
・中毒症状(頭痛・めまい・吐き気):CO中毒、重度では死に至る
・粘膜刺激(目・のどの炎症):光化学オキシダント・HC
特にPM2.5は粒径が極めて小さく、肺の奥まで入り込んで血管にまで到達する可能性があるため、近年最も警戒されている大気汚染物質の一つです。
出典:WHO『Compendium of WHO and other UN guidance on health and environment』
日本の運輸部門CO2排出量と推移(2026年最新)
2023年度の日本のCO2排出量は、運輸部門が約1億9,000万トン(前年度比0.7%減)で、日本全体のCO2排出量(約9億8,900万トン)に占める運輸部門の割合は約18.5%となっています。運輸部門のうち、自家用車は約45%を占め、引き続き運輸部門の主要排出源です。
運輸部門のCO2排出量は1996年度をピークに、京都議定書発効後の取り組みやエコカー普及、燃費規制強化により減少傾向が続いています。2023年度は2013年度比で約23%減と、着実な削減が進んでいます。第7次エネルギー基本計画では、2040年度の運輸部門CO2排出量を2013年度比で約60%削減することが目標とされています。
出典:環境省『2023年度(令和5年度)温室効果ガス排出・吸収量について』(2025年4月公表)
排気ガス削減への取り組みと規制
6-1. 自動車排出ガス規制の強化
日本では「大気汚染防止法」と「自動車NOx・PM法」に基づき、自動車の排出ガス規制が段階的に強化されてきました。新車には現行で最も厳しい「2018年規制(ポスト・ポスト新長期規制)」が適用されており、世界トップクラスの排出基準が課されています。
6-2. 2035年新車販売の電動車100%目標
2020年12月の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」で、2035年までに乗用車の新車販売を100%電動車(EV・PHV・FCV・HV)にする目標が示されました。これに沿って、エンジン車(ガソリン車・ディーゼル車)から電動車への置き換えが急速に進んでいます。
6-3. エコドライブとゼロカーボン・ドライブ
環境省は「エコドライブ10のすすめ」を推奨し、ふんわりアクセル「eスタート」・適切な車間距離・早めのアクセルオフ・適切なエアコン使用などを呼びかけています。さらに「ゼロカーボン・ドライブ」では、再生可能エネルギー由来の電力でEVを走らせることでCO2排出をゼロにする取り組みが推進されています。
6-4. 国際的な規制動向
EUは2035年までに内燃機関車の新車販売を原則禁止する方針を決定しました(2026年時点で一部見直し議論あり)。米国・カリフォルニア州や中国も類似の規制強化を進めており、世界的にエンジン車から電動車へのシフトが加速しています。
出典:経済産業省『2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略』環境問題への対策として、法的規制と政策的支援の両面で取り組みが進んでいます。
エコカーの種類と最新動向
排気ガス削減の中核となるのが、環境に配慮した「エコカー」の普及です。主な種類と特徴を整理します。
7-1. EV(電気自動車)
バッテリーに蓄えた電力でモーターを駆動する自動車で、走行時のCO2・有害排気ガス排出はゼロです。中国・欧州・米国を中心に世界で急速に普及が進んでおり、日本でも日産・トヨタ・ホンダなどが多様なモデルを展開しています。
7-2. PHV(プラグインハイブリッド車)
ガソリンエンジンとモーターを組み合わせ、外部充電にも対応する自動車。日常の短距離はEV走行、長距離はガソリン走行と使い分けでき、航続距離不安を解消した実用性の高いエコカーです。
7-3. HV(ハイブリッド車)
エンジンとモーターを組み合わせた自動車で、低燃費が特長。日本ではトヨタ・プリウスが代表格で、現在でも国内エコカー販売の主要モデルです。
7-4. FCV(燃料電池自動車)
水素と酸素の化学反応で発電してモーターを駆動する自動車。走行時の排出物は水のみで、究極のクリーンカーと呼ばれます。トヨタMIRAIなどが代表的で、商用車(トラック・バス)での導入が加速しています。
出典:経済産業省『次世代自動車の現状と将来展望』
企業が排気ガス削減に取り組む方法
企業が排気ガス削減・脱炭素経営に取り組む方法は、以下の段階的なアプローチが効果的です。
8-1. 社用車・営業車のCO2排出量算定(Scope 1)
自社で保有する社用車・営業車・トラックなどの燃料使用に伴うCO2排出は、Scope 1(自社の直接排出)に該当します。CO2排出量見える化クラウドなどのツールで燃料使用量から正確にCO2排出量を算定し、削減目標を設定することが第一歩です。
8-2. 社用車のEV・PHV・FCVへの切替
社用車のエンジン車から電動車への計画的な切替により、Scope 1排出を大幅に削減できます。経済産業省・環境省の補助金(CEV補助金など)の活用で、初期投資負担を軽減することも可能です。
8-3. 物流の効率化と共同配送
配送ルートの最適化、積載率の向上、共同配送、モーダルシフト(トラック→鉄道・船舶)などにより、物流由来の排気ガス・CO2を削減できます。
8-4. サプライチェーン全体の排出量管理(Scope 3)
自社の取り組みだけでなく、調達先・配送業者のCO2排出(Scope 3カテゴリ4・9)も管理対象となります。サプライヤーへのEV化要請、低排出物流業者の選定などが2026年時点で重要な経営課題です。
出典:環境省『サプライチェーン排出量算定の考え方』
排気ガスに関するよくある質問
9-1. 排気ガスと排ガスはどう違いますか?
基本的に同じ意味で、英語の「exhaust gas」に由来します。日常的には「排気ガス」、法令や行政文書では「排出ガス」や「排ガス」と表記されることが多いです。「自動車排出ガス規制」「ばい煙・排ガス規制」など、規制関連の文脈では「排ガス」「排出ガス」が一般的に使われます。
9-2. ガソリン車とディーゼル車の排気ガスはどう違いますか?
ガソリン車は主にCO・HC・NOx・CO2を排出する一方、ディーゼル車は軽油の特性上、NOx・粒子状物質(PM・PM2.5)・SO2を多く排出する傾向があります。ディーゼル車はトルクが大きく燃費が良い反面、大気汚染物質の排出量が多いことが課題で、近年は欧州を中心にディーゼル離れが進んでいます。
9-3. 企業が排気ガス削減に取り組むメリットは何ですか?
①Scope 1・Scope 3排出量の削減によるESG評価向上、②燃料費・物流コストの削減、③CDP・SBTなど国際イニシアチブへの対応、④EU CBAMなど国際規制への適合、⑤投資家・取引先からの信頼獲得など、多くのメリットがあります。ASUENEのCO2排出量見える化クラウドの活用により、社用車・物流由来のCO2排出を可視化し、効率的に削減施策を進められます。
出典:環境省『令和7年版 環境・循環型社会・生物多様性白書』(2025年)
まとめ:排気ガス問題への理解を深め、脱炭素経営の一歩を踏み出そう
自動車は、生活に欠かせないものであるからこそ、排気ガスの環境問題に対して無関心ではいけません。現在、CO2を排出しない再エネ利用のEV車の開発やシェアカーなど、自動車産業は、脱炭素に向けて新たな動きを開始しています。このように急速に自動車産業の脱炭素が進歩しているのは、世界の環境ビジネスの動きをいち早く察知しているからでもあります。
企業は、世界の環境問題に対して敏感になり、自社の環境価値を高める行動を起こす必要があります。ぜひ、持続可能なエネルギー導入を検討し、自社の環境価値をアップしてください!
・排気ガスとは燃料燃焼で発生する有害物質を含むガスの総称で、主成分はCO・HC・NOx・PM・SO2・CO2の6種類。
・排気ガスは①地球温暖化②大気汚染(光化学スモッグ)③酸性雨の3つの環境問題と、呼吸器・循環器疾患などの人体への健康被害を引き起こす。
・日本の運輸部門CO2排出量は2023年度約1.78億トン(全体の18.5%)で減少傾向。2035年までに新車販売を電動車100%とする目標が掲げられている。企業はScope1・Scope3算定→社用車のEV切替→物流効率化→サプライチェーン管理の4ステップで、排気ガス削減と脱炭素経営を同時に推進することが可能。
排気ガス由来のCO2排出量を可視化する「ASUENE」
社用車・物流などScope 1・Scope 3の排出量を見える化し、EV切替や物流効率化など脱炭素施策の優先度づけを支援するクラウドサービスです。 アスエネの詳細を見る
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