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デジタル製品パスポート(DPP)とは?EU規制と日本企業の対策

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デジタル製品パスポート(DPP)とは?EU規制と日本企業の対策

デジタル製品パスポート(DPP)とは、製品の原材料調達から製造、使用、廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体の情報を電子的に記録・追跡する仕組みです。EUの新たなエコデザイン規則(ESPR)で義務化が進んでおり、EU市場でビジネスを行う日本企業にとっても対応が急務となっています。本記事では、DPPの概要からEUの規制動向、そして日本企業が取るべき具体的な対策までを網羅的に解説します。

INDEX

デジタル製品パスポート(DPP)とは?目的とEU規制

デジタル製品パスポート(DPP)は、製品のライフサイクルに関する情報を電子的に集約し、サプライチェーン上の関係者や消費者がアクセスできるようにする仕組みであり、EUの環境政策における重要な要素です。

DPPの定義:製品の電子的な履歴書

デジタル製品パスポート(DPP)とは、製品の原材料の調達から製造、流通、使用、そして廃棄・リサイクルに至るまでの全ライフサイクル情報を追跡可能にする電子的な記録のことです。 まるで製品の「履歴書」のように、その製品がどこから来て、何でできていて、どのように扱われるべきかの情報が一元管理されます。 消費者や事業者、規制当局は、製品に付与されたQRコードなどを通じて、これらの情報にアクセスできます。

目的はサーキュラーエコノミーの実現

DPP導入の最大の目的は、製品の長寿命化、修理、再利用、リサイクルを促進し、持続可能な循環型経済(サーキュラーエコノミー)を実現することにあります。 製品の透明性を高めることで、消費者はより環境に配慮した製品を選びやすくなり、事業者は製品の修理やリサイクルを効率的に行えるようになります。 これにより、資源の消費を抑え、環境負荷を低減することを目指しています。

根拠となるエコデザイン規則(ESPR)の概要

DPPを法的に規定しているのが、2024年7月18日に発効したEUの「持続可能な製品のためのエコデザイン規則(ESPR)」です。 この規則は、EU市場で販売されるほぼ全ての物理的製品に対し、従来のエネルギー効率だけでなく、耐久性、修理可能性、リサイクル性といった、より広範な環境配慮設計を義務付ける包括的な規制です。 DPPは、このESPRが定める様々な要件を、サプライチェーン全体で透明性をもって伝達するための重要な情報伝達手段として位置づけられています。

DPPの対象製品と導入スケジュール【最新情報】

DPPは、まずバッテリーを対象に導入が開始され、その後、他の製品分野へも段階的に拡大していくことが予定されています。

2027年からバッテリー規則で先行開始

DPPが最初に義務化されるのは、EUバッテリー規則の対象となる製品です。 具体的には、電気自動車(EV)用バッテリー、2kWhを超える産業用バッテリー、軽輸送手段(LMT)用バッテリーなどが対象となり、2027年2月18日から適用が開始される予定です。 これはDPPが実際に運用される初のケースとなり、他の製品分野におけるモデルケースとして注目されています。

繊維、建設、電子機器などへの段階的拡大

バッテリーを皮切りに、DPPの対象は他の製品群へと段階的に拡大される見込みです。欧州委員会が2025年4月に採択した作業計画(2025-2030)では、鉄、鉄鋼、アルミニウム、繊維(特に衣類と履物)、家具、タイヤ、マットレスが優先製品群として特定されています。一方で、当初検討されていた化学製品(洗剤、塗料、潤滑油など)は今回の作業計画からは除外されました。ICT製品は個別の製品群としては挙げられていませんが、修理可能性やリサイクル性に関する水平的要件の対象となる見込みです。

今後のワーキングプランで対象製品が追加

具体的な対象製品のリストや、各製品に求められる詳細な情報要件は、今後、欧州委員会が製品グループごとに発表する「委任法令(Delegated Act)」によって定められていきます。例えば、先の作業計画によると、鉄鋼の委任法令は2026年、繊維は2027年に採択される見込みです。通常、委任法令の採択から適用までには18ヶ月以上の移行期間が設けられるため、実際の義務化は鉄鋼が2028年頃、繊維が2029年頃になる可能性があります(2026年8月時点の予測)。したがって、EU市場に関連する企業は、自社製品がいつ対象になるのか、どのような情報開示が求められるのかについて、欧州委員会の発表を継続的に注視していく必要があります。

日本企業への影響:サプライチェーン全体での対応が必須

DPPの導入は、EUに製品を輸出する日本企業だけでなく、そのサプライチェーンを構成する国内企業にも広範囲な影響を及ぼします。

EU市場における新たな非関税障壁

DPPへの対応は、事実上、EU市場でビジネスを行う上での必須条件となります。 DPPを付与していない、あるいは要求される情報を適切に開示できない製品は、EU市場への投入が制限される可能性があります。 これは、規制の要件を満たせない企業にとって、関税以外の形で貿易を阻害する「非関税障壁」として機能する可能性を指摘されています。

サプライヤーにも求められる情報開示

DPPが要求する情報は、製品のライフサイクル全体にわたるため、最終製品メーカー1社だけで完結することは不可能です。 例えば、製品のカーボンフットプリントやリサイクル材含有率といった情報を提供するためには、部品メーカーや素材メーカーなど、サプライチェーンの上流に位置する企業からの正確なデータ提供が不可欠となります。 そのため、直接EUと取引がない国内の中小企業であっても、取引先を通じて情報開示を求められるケースが増加すると予測されます。

対応しない場合のリスクと戦略的メリット

DPPに対応しない、あるいは対応が遅れた場合、EU市場からの事実上の撤退や、サプライチェーンからの除外といったビジネス上の大きなリスクを負うことになります。 一方で、積極的にDPPへ対応することは、コンプライアンスコストという側面だけでなく、企業の競争力強化に繋がる戦略的なメリットももたらします。 製品の透明性を高めることで、環境意識の高い消費者や投資家からの信頼を獲得し、ブランド価値の向上や市場での差別化を図ることが可能になります。

【競合との差別化】DPP実現の技術とデータ連携基盤

DPPを実現するためには、製品と情報を紐付ける技術や、サプライチェーン全体でデータを共有するための仕組みが不可欠です。

データキャリア(QRコード/NFC等)の役割とは

DPPの情報を製品自体に紐付け、消費者がスマートフォンなどで容易にアクセスできるようにするのが「データキャリア」です。 代表的なものにQRコードやNFCタグ、RFIDなどがあります。これらのデータキャリアを製品や包装に付与することで、一意の製品識別子とDPPに記録された電子情報を接続します。 どのデータキャリアを選択するかは、製品の特性やコスト、求められる情報の更新頻度などによって異なります。

データ連携基盤「Catena-X」等の重要性

サプライチェーンを構成する多数の企業間で、機密性を保ちながら安全かつ効率的にデータを共有するためには、業界横断的なデータ連携基盤が重要な役割を果たします。 特に自動車業界では、ドイツが主導する「Catena-X」が注目されています。 Catena-Xは、参加企業が主権を保ったまま、標準化されたフォーマットでデータを交換できるプラットフォームであり、DPPの要求に応えるための基盤として機能することが期待されています。 日本においても、経済産業省が主導する「ウラノス・エコシステム」が構築され、Catena-Xとの連携も進められています。

プラットフォーム参加のメリットと選び方

Catena-Xのようなデータ連携基盤に参加することで、企業はDPP対応のコンプライアンスコストを削減できるだけでなく、サプライチェーン全体のトレーサビリティを向上させ、新たなビジネス価値を創出する機会を得られます。 プラットフォームを選ぶ際には、自社が属する業界での普及度、国際標準への準拠、セキュリティの堅牢性、そして既存の社内システムとの連携のしやすさなどを考慮することが重要です。

【実践】日本企業が今すぐ始めるべきDPP対策ロードマップ

DPPへの対応は一朝一夕には実現できません。自社の状況を把握し、段階的に準備を進めることが成功の鍵となります。

ステップ1:自社製品とサプライチェーンの現状把握

まず取り組むべきは、自社製品がDPPの対象となりうるかの確認です。EUバッテリー規則やESPRの優先製品群に該当するか、あるいは将来的に対象となる可能性はあるかを評価します。次に、製品のライフサイクル全体(原材料調達、製造、輸送、使用、廃棄)において、どのようなデータが、どこで、どのように発生・管理されているかを洗い出し、サプライチェーン全体の可視化を行います。これにより、DPPで要求される情報に対して、現状でどの程度対応できるのかというギャップを明確にすることができます。

ステップ2:情報収集・管理体制の構築

次に、ギャップを埋めるための情報収集・管理体制を構築します。製品情報管理(PIM)や製品ライフサイクル管理(PLM)といった既存のシステムを見直し、DPPに必要なトレーサビリティ情報を収集・管理できるよう改修または新規導入を検討します。 特に、サプライヤーから正確な情報を効率的に収集するための連携方法(データフォーマットの標準化、共有プラットフォームの利用など)を確立することが不可欠です。 部門間に分散しがちな情報を一元管理し、全社横断で対応できる体制を整えることが求められます。

ステップ3:中小企業向けDPP対応ソリューションの検討

自社だけで全ての対応を行うことが難しい、特にリソースが限られる中小企業にとっては、外部のソリューションを積極的に活用することが現実的な選択肢となります。DPP対応を支援するSaaS型のクラウドサービスや、専門的な知見を持つコンサルティングサービスが増えています。例えば、CO2排出量の算定・可視化サービスなどを活用することで、DPPで要求されるカーボンフットプリント情報の収集を効率化できます。自社の課題や予算に合わせて、これらのソリューションを組み合わせ、段階的に対応を進めていくことが重要です。

FAQ

Q1: デジタル製品パスポートはいつから義務化されますか?

A1: 最も早いものでは、EUバッテリー規則に基づき、EV用バッテリーなどが2027年2月18日から対象となります。 その他の製品については、今後、製品ごとの「委任法令」によって順次義務化の対象と時期が定められます。例えば、鉄鋼は2028年頃、繊維は2029年頃に義務化される可能性があると見込まれています(2026年8月時点)。

Q2: デジタル製品パスポートの対象製品は何ですか?

A2: 先行してバッテリーが対象となり、将来的には鉄、鉄鋼、アルミニウム、繊維(特に衣類と履物)、家具、タイヤ、マットレスなどが優先製品群として特定されています。詳細なリストは、欧州委員会のエコデザイン規則(ESPR)作業計画で更新されていく予定です。

Q3: ESPRとは何ですか?

A3: ESPRは「Ecodesign for Sustainable Products Regulation(持続可能な製品のためのエコデザイン規則)」の略です。 EU市場で販売されるほぼ全ての製品に対し、従来のエネルギー効率だけでなく、耐久性、修理可能性、リサイクル性など、環境配慮設計を包括的に義務付ける規則です。 DPPは、この規則が求める情報を伝達するための重要な手段として位置づけられています。

Q4: 日本企業はデジタル製品パスポートにどう対応すればよいですか?

A4: まずは、欧州委員会の発表など規制の最新動向を注視し、自社製品が対象になるかを確認することが第一歩です。次に、製品のライフサイクル全体の情報を収集・管理できるよう、サプライヤーと連携したトレーサビリティ体制の構築を進める必要があります。 必要に応じて、外部の専門家やITソリューションの活用も検討することが有効です。

まとめ

デジタル製品パスポート(DPP)は、EUのサーキュラーエコノミー戦略の中核をなす制度であり、日本企業にとっても避けては通れない規制となりつつあります。2027年のバッテリー規則適用開始を皮切りに、対象製品は順次拡大していく見込みです。

この動きは、単なる規制対応のコスト増と捉えるのではなく、サプライチェーンの透明性を高め、製品の付加価値を向上させることで、企業の競争力を強化する好機と捉えることが重要です。

今すぐ始めるべきことは、自社製品への影響を調査し、サプライチェーン全体の情報を可視化することです。その上で、情報管理体制の構築や、必要に応じたITソリューションの導入を計画的に進めていきましょう。

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