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IFRSと日本基準の違いとは?主な相違点と適用判断を解説

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IFRSと日本基準の違いとは?主な相違点と適用判断を解説

IFRSと日本基準の違いを正しく理解することは、海外投資家への説明や自社に適した会計基準の選択を進めるうえで欠かせません。両者の最も大きな違いは、IFRSが「原則主義・資産負債アプローチ」を採るのに対し、日本基準が「細則主義・収益費用アプローチ」を採る点にあり、その思想の違いがのれんの会計処理や損益計算書の構成にまで表れます。本記事では、IFRSと日本基準の主な相違点を体系的に整理したうえで、のれん会計やIFRS第18号による最新動向、適用判断の考え方までを、省庁や業界団体の一次情報をもとにわかりやすく解説します。

INDEX

IFRSと日本基準の違いをめぐる前提知識

IFRSと日本基準の違いを理解するうえでは、そもそもIFRSがどのような基準で、日本でどのような位置づけにあるのかを押さえておく必要があります。ここでは、IFRSの定義、日本で適用できる会計基準の全体像、そして日本における適用の現状という3つの観点から整理します。

IFRS(国際財務報告基準)とは

IFRS(International Financial Reporting Standards)とは、国際会計基準審議会(IASB)が策定する世界共通の会計基準で、日本語では「国際財務報告基準」または「国際会計基準」と訳されます。各国がそれぞれ独自の会計基準を用いていると、グローバルに事業を展開する企業の財務情報を国境を越えて比較することが難しくなります。こうした課題を解消し、財務情報の比較可能性と透明性を高め、投資家の意思決定を支援することを目的に整備されてきたのがIFRSです。

EU域内では2005年に上場企業へのIFRS適用が義務づけられ、その後も採用する国・地域が広がってきました。世界の資本市場で共通言語として機能しつつある点が、IFRSを理解する出発点になります。

日本で適用できる4つの会計基準

意外に思われるかもしれませんが、日本の上場企業が連結財務諸表の作成に用いることができる会計基準は1つではありません。現在、日本では次の4つの会計基準が並存しています。

会計基準概要
日本基準(J-GAAP)日本独自の会計基準。多くの国内企業が採用している
米国会計基準(US-GAAP)米国市場に上場する企業などが用いてきた基準
IFRS(国際財務報告基準)IASBが策定する国際基準。2010年から任意適用が可能
修正国際基準(JMIS)IFRSの一部を日本の考え方に合わせて修正した基準

このうち修正国際基準(JMIS)は、企業会計基準委員会(ASBJ)が2015年に公表し、2016年3月期末から適用が可能になった基準です。ピュアなIFRSから「のれんの会計処理」と「その他の包括利益のノンリサイクリング処理」の2点を修正している点が特徴ですが、これを実際に適用する日本企業はほとんど見られないのが実情です。そのため、実務上の比較対象としては「日本基準」と「IFRS」の2つが中心になります。

日本におけるIFRS適用は任意適用にとどまる

日本では2010年3月期の決算から、上場企業の連結財務諸表に対してIFRS(指定国際会計基準)の任意適用が認められました。当初は将来的な強制適用も視野に入れて議論が進められましたが、現在に至るまで強制適用はされておらず、適用するかどうかは各企業の判断に委ねられています。

適用企業は緩やかに増加しています。東京証券取引所の集計によれば、IFRS適用会社数は適用決定・適用予定の会社を含めて2025年6月末時点で300社に達しました。一方で、東証上場企業約4,000社全体に占める割合はおおむね7%前後にとどまっており、依然として日本基準を採用する企業が大多数を占めています。つまり、IFRSは「広がりつつあるが、まだ主流ではない」段階にあると言えます。

IFRSをめぐる日本のこれまでの経緯

日本がIFRSと向き合ってきた背景を押さえておくと、両基準の現在地がより立体的に見えてきます。2005年にEUが域内の上場企業へIFRS適用を義務づけたことを大きな契機として、日本も自国の会計基準をIFRSへ近づける「コンバージェンス(収斂)」の方針を固めました。2009年には企業会計審議会が、IFRSの任意適用を認める内容を盛り込んだ「我が国における国際会計基準の取扱い(中間報告)」、いわゆる日本版IFRSロードマップを公表しています。

当初は将来的な強制適用も含めて議論が進められましたが、リーマンショック後の景気低迷や東日本大震災の影響もあり、強制適用に向けた動きは停滞しました。2013年には企業会計審議会が「当面の方針」を示し、その後の金融庁の方針としては「IFRS任意適用企業の拡大促進」が掲げられてきました。強制ではなく、企業が自発的に選択する形でIFRSの裾野を広げていく、というのが現在の日本のスタンスです。新規上場の場面でもIFRSを採用する企業が現れており、IPO準備と並行してIFRS導入を進める例も見られます。

IFRSと日本基準を分ける2つの基本思想

IFRSと日本基準の細かな相違点は数多くありますが、その大半は2つの根本的な思想の違いから派生しています。ここを理解しておくと、個別の違いも「なぜそうなるのか」という因果でとらえられるようになります。

原則主義(IFRS)と細則主義(日本基準)

1つ目の違いは、ルールの定め方です。IFRSは「原則主義」を採用しています。会計処理の基本的な考え方や原則を示すにとどめ、具体的な数値基準や判断基準の多くを企業の経営者の判断に委ねます。実態に即した柔軟な財務報告ができる一方で、企業側には合理的な判断と、その判断根拠を説明する責任が求められます。

これに対して日本基準は「細則主義」を採用しています。のれんの償却期間のように、個別の会計処理について数値基準や具体的な処理手順を細かく定めている点が特徴です。判断の余地が小さいぶん処理が画一的になりやすく、企業間の比較や実務の運用がしやすいという利点があります。

資産負債アプローチと収益費用アプローチ

2つ目の違いは、利益をどう測るかという考え方です。日本基準は「収益費用アプローチ」に重きを置き、一定期間の収益から費用を差し引いて当期純利益を導く損益計算書を重視します。「その期にいくら稼いだか」という経営成績を中心に見る考え方です。

一方、IFRSは「資産負債アプローチ」を採用し、貸借対照表(IFRSでは財政状態計算書)における資産と負債の評価を起点に、そこから導かれる包括利益を重視します。「期末時点で企業の価値がどれだけ増減したか」を中心に見る考え方であり、当期純利益だけでなく、その他の包括利益を含めた包括利益が重視されます。資産・負債を公正価値で評価する場面が日本基準より多いのも、この思想に由来します。

IFRSと日本基準の主な違い7選

2つの基本思想を踏まえると、具体的な相違点も整理して理解できます。ここでは実務で押さえておきたい主な違いを7つの観点でまとめます。

観点IFRS日本基準
基準の考え方原則主義細則主義
利益観資産負債アプローチ(包括利益重視)収益費用アプローチ(当期純利益重視)
のれん規則的償却を行わず、減損テストで対応20年以内で規則的に償却し、必要に応じ減損
特別損益特別損益の区分表示なし特別利益・特別損失を区分表示
開発費一定の要件を満たせば資産計上原則として発生時に費用処理
資産評価公正価値評価を用いる場面が多い取得原価主義を重視
財務諸表の名称財政状態計算書・包括利益計算書など貸借対照表・損益計算書など

財務諸表の名称と構成の違い

IFRSと日本基準では、財務諸表の呼び方や構成にも違いがあります。日本基準でいう「貸借対照表」はIFRSでは「財政状態計算書」と呼ばれ、損益に関する計算書も包括利益を表示する形が基本になります。名称の違いは形式的なものに見えますが、その背後には前述の資産負債アプローチの考え方があり、「期末時点の財政状態」を起点に企業をとらえる姿勢が反映されています。財務諸表を読み解く投資家やアナリストにとっては、同じ企業でも基準が異なれば着目すべき指標や数値の意味合いが変わるため、どの基準で作成された財務諸表なのかを最初に確認することが欠かせません。

また、損益計算書の構成面では、日本基準が経常的な営業活動による損益と、臨時的・異常な事象による損益(特別利益・特別損失)を区分して表示するのに対し、従来のIFRSには特別損益という区分が設けられていません。利益をどの段階で区切って見せるかという点に、両者の発想の違いが表れています。

のれん・開発費・特別損益などの処理の違い

個別の会計処理にも、思想の違いが具体的に現れます。代表的なのが「のれん」で、日本基準では規則的に償却するのに対し、IFRSでは償却せず減損テストで価値の低下に対応します(詳細は次章で解説します)。

開発費の扱いも異なります。IFRSでは、技術的な実現可能性など一定の要件を満たした開発局面の支出は無形資産として資産計上できます。一方、日本基準では研究開発費は原則として発生時に費用処理されます。研究開発投資の大きい企業ほど、この違いが利益や資産の見え方に影響します。

さらに資産の評価方法でも、IFRSは公正価値(時価に近い概念)で評価する場面が多いのに対し、日本基準は取得原価主義を重視します。取得原価主義は取得後の市場変動の影響を受けにくく評価額が安定する反面、最新の市場価値を反映しにくいという特徴があります。

このほかにも、有給休暇に対する引当金の計上のように、IFRSでは費用・負債として認識する一方、日本基準では明確な計上が求められてこなかった項目など、細部を見ていくと相違点は多岐にわたります。ただし、いずれの違いも「原則主義か細則主義か」「資産負債アプローチか収益費用アプローチか」という2つの軸に立ち返ると理解しやすくなります。個別の処理を丸暗記するのではなく、思想の違いから逆算してとらえることが、IFRSと日本基準の違いを正しく押さえるコツです。

日本基準とIFRSのコンバージェンスは進んでいる

IFRSと日本基準は別々の基準ですが、両者の差は固定的なものではなく、年々縮まってきている点も見逃せません。日本基準は、投資家が企業を国境を越えて比較しやすくする観点から、IFRSの考え方を取り入れながら整備が進められてきました。大枠では似た方向に向かいつつ、なお残る差異が前述のような項目だと理解すると、全体像をつかみやすくなります。

具体例として、収益をいつ・いくら計上するかを定める収益認識の分野では、日本でも国際的な基準を踏まえた収益認識に関する会計基準が整備され、上場企業などに適用されています。また、リース取引の会計処理についても、国際的な基準を参考にした新しい日本基準の整備が進められてきました。こうした流れを受けて、「近年の新しい日本基準の多くがIFRSをベースに作られているのなら、いっそIFRSを適用してしまおう」と考える企業が出てくるなど、コンバージェンスの進展が任意適用の後押しにつながる側面もあります。

のれん処理に表れるIFRSと日本基準の違い

数ある相違点のなかでも、企業経営に与える影響が特に大きいのが「のれん」の会計処理です。M&Aを検討する企業にとっては、会計基準の選択そのものを左右する論点になり得ます。

日本基準は規則的償却、IFRSは非償却+減損テスト

のれんとは、M&A(企業の買収・合併)の際に、買収先の純資産額を上回って支払った金額に相当する無形の価値を指します。買収先のブランド力や顧客基盤、技術力など、貸借対照表に個別計上されない超過収益力を表す資産です。

日本基準では、のれんは効果が及ぶ期間にわたり20年以内で規則的に償却することが求められます。のれんの効果は時間の経過とともに薄れていくという考え方に基づくもので、毎期一定額が費用として計上されます。これに加え、収益性が著しく低下した場合には減損処理を行います。

一方、IFRSではのれんを規則的に償却しません。その代わり、毎期、のれんの価値が低下していないかを確認する減損テストを実施し、回収可能価額が帳簿価額を下回った場合に減損損失を計上します。償却費が毎期発生しないぶん、平常時の利益は日本基準より大きく見えやすい一方、価値が大きく毀損した際には多額の減損損失が一度に表れるという特徴があります。

M&A戦略への影響と企業の選択

この違いは、M&Aを積極的に行う企業の選択に直結します。日本基準では、買収が期待どおりの効果を上げていても、のれんの償却費が毎期利益を押し下げます。M&Aを繰り返すほど償却負担が積み上がり、収益を圧迫して次の投資判断に影響する可能性があります。

そのため、M&Aを成長戦略の柱とする企業では、のれんを規則的に償却しなくてよいIFRSを選択するケースが見られます。実際に、国内でも経済団体から、のれんの規則的償却が収益を圧迫しスタートアップのM&Aを妨げる要因になり得るとして、処理を見直すべきだという主張が示されています(経済同友会の提言、2022年4月)。のれんの会計処理は、単なる技術論ではなく企業の成長戦略と密接に結びついた論点だと言えます。

ただし、IFRSを選べばのれんの負担がなくなるわけではない点には注意が必要です。償却費が毎期計上されない代わりに、買収した事業の収益性が想定を下回れば、ある期にまとめて多額の減損損失を計上することになります。利益が平常時には大きく見えやすい反面、業績の振れ幅が大きくなりやすいという側面があります。どちらの基準にも一長一短があるため、自社のM&Aの頻度や規模、投資家にどのような利益の姿を示したいかを踏まえて、のれんの処理がもたらす影響を見極めることが求められます。

IFRS第18号で変わる損益計算書と日本基準

IFRSと日本基準の違いを考えるうえで、近年見逃せないのがIFRS第18号の公表です。損益計算書の表示を大きく変える内容で、IFRS適用企業にとっては今後の対応が必要になります。

営業・投資・財務の3区分と新たな小計

IFRS第18号「財務諸表における表示及び開示」は、2024年4月にIASBから公表され、従来のIAS第1号「財務諸表の表示」に置き換わる基準です(日本公認会計士協会の公表資料による)。最大の特徴は、損益計算書に「営業」「投資」「財務」という3つの区分を新たに導入し、営業利益を含む新たな小計の表示を求める点にあります。

これまでは、損益計算書の構成や小計の取り方が企業によって異なり、財務業績を企業間で比較しにくいという課題が指摘されていました。3区分と小計を共通化することで、損益計算書の構造が統一され、比較可能性が高まると期待されています。あわせて、企業独自の業績指標である「経営者が定義した業績指標(MPM)」について、その内容や算定根拠を開示し、監査の対象とすることも求められます。これにより、企業が独自に用いる調整後利益などの指標についても、どのように算定されたのかが投資家に伝わりやすくなります。

なお、IFRS第18号は損益計算書の「表示」と「開示」のルールを見直す基準であり、個々の取引の認識・測定の方法そのものを一律に変えるものではありません。とはいえ、3区分への組み替えや新たな小計の算定、MPMの開示は、会計システムや連結パッケージ、開示資料の作成プロセスに広く影響します。早期に影響範囲を洗い出し、対応方針を固めておくことが重要です。

適用時期と日本企業への影響

IFRS第18号は、原則として2027年1月1日以後に開始する事業年度から適用され、早期適用も認められています。日本でIFRSを任意適用している3月決算の企業の場合、2027年4月に始まる2028年3月期から適用される見込みです。比較年度の修正再表示が求められるなど経過措置への対応も必要となるため、対象企業は会計システムや連結プロセスの見直しを早めに進めておくことが望まれます。

注目すべきは、こうした国際的な基準改正が、日本基準にも影響を及ぼし得る点です。近年の日本基準は、収益認識やリースなどの分野でIFRSをベースに整備が進められてきました。今後、損益計算書の表示についても国際的な動向を踏まえた議論が広がる可能性があり、現時点でIFRSを適用していない企業にとっても、動向を把握しておく意義は小さくありません。

IFRS適用のメリットと選択の判断軸

ここまで見てきた違いを踏まえ、自社がIFRSを適用すべきかどうかをどう考えればよいのでしょうか。最後に、メリット・デメリットと判断の視点を整理します。

IFRS適用の主なメリット

IFRSを適用する代表的なメリットは、財務情報の国際的な比較可能性が高まることです。海外の投資家や金融機関に対して、同じ物差しで自社の財務状況を説明できるため、国際的な資金調達やグローバルな投資家との対話を進めやすくなります。海外売上比率が高い企業や、海外の機関投資家の保有比率が高い企業ほど、この恩恵は大きくなります。

また、海外子会社を多く持つ企業では、グループ全体の会計基準をIFRSに統一することで、連結決算の効率化や経営管理の高度化につながります。各国でばらばらの基準に基づいて作成された数値を組み替える手間が減り、グループ全体を共通の尺度で管理できるようになる点は、実務上の大きな利点です。前述のとおり、M&Aを積極的に行う企業にとっては、のれんを規則的に償却しなくてよい点も、買収後の利益が押し下げられにくいという意味でメリットになります。

IFRS適用の主なデメリット・注意点

一方で、IFRSの適用には相応の負担が伴います。導入時には、会計方針の見直しや過年度数値の組み替え、会計システムの改修、社内人材の育成など、多くのコストと工数が発生します。導入後も、国際的な基準改正に継続的に対応していく必要があり、運用面の負担は日本基準に比べて重くなりがちです。

さらに、原則主義であるがゆえに、個別の会計処理について企業自身が判断し、その根拠を説明する責任が重くなります。判断のための専門知識を持つ人材の確保や、監査法人との十分な協議も欠かせません。判断の幅が広いということは、裏を返せば社内で一貫した方針を定め、説明できる体制を整えなければならないということでもあります。近年では、IFRSをいったん任意適用した企業が日本基準への再変更を検討する事例も一部にあり、適用は「メリットがあるから一律に進めるべきもの」ではなく、自社の状況に照らして慎重に判断すべきものだと言えます。

自社に合った会計基準を選ぶ視点

会計基準の選択は、海外売上比率やグローバル投資家の関心、M&A戦略の有無、対応に充てられる人材・予算といった要素を総合的に勘案して行うことが重要です。海外展開やM&Aを重視し、国際的な比較可能性を高めたい企業にはIFRSが適し、国内中心で安定した実務運用を重視する企業には日本基準が引き続き有力な選択肢になります。

判断にあたっては、現時点のメリットだけでなく、数年先を見据えた視点も欠かせません。IFRS第18号のように国際基準は継続的に改正され、日本基準もそれに歩調を合わせて変化していきます。自社が将来的にどの市場で資金を調達し、どのような投資家と対話していきたいのかを描いたうえで、その姿に整合する基準を選ぶことが望まれます。会計情報は、自社の状況を適切に表すだけでなく、投資家やステークホルダーにどう見えるかという観点でも活用できます。両基準の違いを理解したうえで、自社の戦略と整合する基準を選ぶことが、結果として企業価値の適切な伝達につながります。

よくある質問(FAQ)

IFRSと日本基準の違いに関して、特に質問の多い項目をまとめました。

Q. IFRSと日本基準の一番大きな違いは何ですか。

A. 最も根本的な違いは、IFRSが原則主義・資産負債アプローチを採るのに対し、日本基準が細則主義・収益費用アプローチを採る点です。この思想の違いから、のれんの処理や損益計算書の構成など、個別の相違点が派生しています。

Q. 日本企業はIFRSを必ず適用しなければならないのですか。

A. いいえ。日本ではIFRSは任意適用であり、強制適用はされていません。日本基準、米国会計基準、IFRS、修正国際基準の4つから選択できます。多くの国内企業は引き続き日本基準を採用しています。

Q. のれんの処理はIFRSと日本基準でどう違いますか。

A. 日本基準ではのれんを20年以内で規則的に償却し、必要に応じて減損処理を行います。IFRSでは規則的な償却を行わず、毎期の減損テストで価値の低下を確認し、必要に応じて減損損失を計上します。

Q. IFRS第18号とは何ですか。日本企業に影響はありますか。

A. IFRS第18号は2024年4月に公表された、損益計算書の表示を見直す基準です。営業・投資・財務の3区分や新たな小計の表示などを求めます。2027年1月1日以後に開始する事業年度から適用され、IFRSを任意適用している3月決算企業はおおむね2028年3月期から対応が必要になります。

Q. 修正国際基準(JMIS)とは何ですか。

A. ASBJが2015年に公表した、IFRSの一部(のれんの会計処理とその他の包括利益のノンリサイクリング処理)を日本の考え方に合わせて修正した基準です。適用する日本企業はほとんどいないのが実情です。

まとめ:IFRSと日本基準の違いを踏まえた基準選択が重要です

IFRSと日本基準の違いは、原則主義と細則主義、資産負債アプローチと収益費用アプローチという2つの基本思想の違いに集約されます。そこから、のれんの非償却と規則的償却、特別損益の区分の有無、開発費の扱いといった個別の相違点が生まれています。さらに、IFRS第18号による損益計算書の表示変更など、国際的な基準の動きは今後も続き、日本基準にも影響を及ぼしていく可能性があります。

日本ではIFRSは任意適用にとどまり、適用企業は緩やかに増えながらも全体の一部にとどまります。だからこそ、自社の海外展開やM&A戦略、対応リソースを見極めたうえで、両基準の違いを理解して基準を選択することが重要です。会計基準の国際化は、財務情報をどう正確に、そして魅力的に伝えるかという経営課題そのものだと言えます。

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出典一覧

  • 金融庁「事務局説明資料(国際会計基準に関する対応)」(2023年6月)
  • 日本取引所グループ(東京証券取引所)「IFRS(国際財務報告基準)への対応」「IFRS適用済・適用決定会社一覧」
  • 日本公認会計士協会「IASBがIFRS第18号『財務諸表における表示及び開示』と新基準の内容紹介動画を公表」(2024年)
  • 企業会計基準委員会(ASBJ)「修正国際基準(JMIS)」
  • EY Japan「IFRS第18号『財務諸表における表示及び開示』の概要」(2025年)
  • IFRS Foundation/IASB「IFRS 18 Presentation and Disclosure in Financial Statements」(2024年)
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