SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」とは、気候変動とその影響を軽減するための緊急対策を、すべての国・企業・個人が講じることを求めるSDGsの17番目の目標です。具体的な到達点を示す3つのターゲット(13.1~13.3)と、実現手段を示す2つのターゲット(13.a・13.b)で構成されます。企業に求められるのは、自社の排出量を減らす「緩和策」と、気象災害に備える「適応策」の両輪での対応です。
出典:外務省「JAPAN SDGs Action Platform/13 気候変動に具体的な対策を」
INDEX
気候変動対策に取り組む企業が目指すべき「SDGs目標13」とは?
気候変動が世界に及ぼす影響
IPCC第6次評価報告書によると、世界の平均気温は工業化以前(1850〜1900年)と比べて約1.1℃上昇しています(2011〜2020年平均)。
その理由として人間の経済活動が進み化石エネルギーなどの大量消費による温室効果ガスの排出増加が挙げられます。温室効果ガスの増加により、地球の大気は不安定になり、地表の温度は上昇しています。これらが複合的に作用して地球の温暖化を生み、それに伴う気候変動が異常気象を誘発しているのです。
出典:環境省『環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書』(2019.6.7)
SDGsの5つの柱・5Ps
SDGsは「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」のことで「人類がこの地球で暮らし続けていくために2030年までに達成すべき17の目標」を掲げています。「持続可能な社会」を実現するための人類が目指すべき具体的な行動計画です。
出典:外務省「SDGsとは? 持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けて日本が果たす役割」(2021.8)(p.2)
SDGsの17の目標を5つのキーワードに分けるとより相互に持つイメージが理解しやすくなります。以下がその5つの柱になるキーワードです。
- People (人)
- Prosperity (繁栄)
- Planet (地球)
- Peace (平和)
- Partnership (協力)
目標13はこの中のPlanet (地球)により深く関わる分野です。
出典:日本ユニセフ協会「17の目標をいろんな視点で見てみよう」
SDGs目標13のターゲット|13.1~13.bでめざす到達点
SDGs目標13は、達成目標を示す3項目と、実現手段を示す2項目の計5つのターゲットで構成されます。結論として、企業が押さえるべきは「13.1=災害への強靱性(適応)」「13.2=政策・戦略への気候変動対策の統合」「13.3=啓発と能力構築」の3点です。
13.1:気候関連災害や自然災害に対する強靱性(レジリエンス)と適応能力を、すべての国で強化する。
13.2:気候変動対策を国の政策・戦略・計画に組み込む。
13.3:気候変動の緩和・適応・影響軽減に関する教育・啓発と、人的・制度的対応能力を改善する。
13.a:開発途上国の緩和行動を支えるため、先進国が資金を動員し緑の気候基金を始動させる。
13.b:後発開発途上国・小島嶼開発途上国の気候変動計画策定・管理能力を高める仕組みを推進する。
出典:外務省「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ(仮訳)」
気候変動対策の二本柱|緩和策と適応策の違い
気候変動対策は、原因となる温室効果ガスの排出量そのものを減らす「緩和策(mitigation)」と、すでに進行している気候変動の悪影響を回避・軽減する「適応策(adaptation)」の2つに大別されます。結論として、企業はこの両輪を同時に進める必要があります。
緩和策の例:再生可能エネルギー由来電力への切り替え、省エネ設備の導入、サプライチェーン全体での排出量の見える化と削減。
適応策の例:豪雨・熱波・浸水を想定したBCP(事業継続計画)の整備、調達先の分散、施設の浸水対策。
出典:環境省「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」
SDGsの目標13は『気候変動に具体的な対策を』とは何か
現在起きている気候変動に対して、「気候変動における災害や自然災害が発生した際にはそれに対応したり立ち直ったりできるよう全ての国は対策を取る」などの達成の目標と、「開発途上国が気候変動のスピードをゆるめるための行動を取れるよう先進国が協力する」などの具体的な実現のための方法を提示しています。SDGs目標13は地球環境に対してより緊急な対応を必要とするための対策と言えます
なぜ中小企業が気候変動対策やSDGsに取り組まなくてはならないのか
早急に進めなくてはならない温室効果ガス削減
温室効果ガスの排出が人類の経済活動と無縁でない限りは、地球環境をこれ以上悪化させないためにも、これを削減する努力をしていかなくてはいけません。CO2排出量は世界の経済活動に比例し増加しています。大企業・中小企業に関係なく温室効果ガスの削減に務めることは世界的に見ても急務であり、企業にはその責任があります。
出典:環境省「気候変動の国際交渉 世界のエネルギー起源CO2排出量(p.1)(2018)
SDGsによって中小企業が受ける影響は?
大企業は社会がどのようなことを求めているのかに常に敏感です。世界的に見てSDGsに取り組み始めた企業は多く、「自社の営業が社会にどのような影響を与えているか」を問い続け、その中に環境に対しての影響が多大な場合は改善を行うという取り組みが始まっています。具体的な例で言えば使用している電力を再生可能エネルギー由来のCO2フリー電力に変更する、海洋プラスチック問題をきっかけに「脱プラスチック」を掲げるなどです。
中小企業は大企業のサプライチェーンの輪の中にいるため、大企業が受ける影響を直接受けます。環境に対する取り組みは中小企業にとっても重要な課題となっているのです。
世界的課題の地球温暖化・気候変動対策への貢献は重要
世界的に発生している異常気象は各国に多大なる被害をもたらしています。広範囲にわたるゲリラ豪雨や集中豪雨からの大規模水害や今までにはなかったような熱波など。このような災害の頻発は温室効果ガス排出増加による気候変動が原因と言われています。
企業ではこのような現状から、二酸化炭素排出をゼロにしようという「脱炭素(ゼロエミッション)」への関心が急速に高まっておりカーボンニュートラルをはじめとした「脱炭素」の取り組みを始めているところが増えています。日本は2050年カーボンニュートラルの実現を掲げ、2025年(令和7年)2月18日に閣議決定した地球温暖化対策計画で、温室効果ガスを2013年度比で2035年度に60%、2040年度に73%削減する新たなNDC(国が決定する貢献)を国連へ提出しました。2030年度の46%削減目標と合わせ、企業には中間目標に沿った段階的な削減が求められています。
出典:環境省「地球温暖化対策計画(令和7年2月18日閣議決定)」(2025/2)/IPCC「第6次評価報告書 統合報告書」(2023/3)
SDGsや気候変動対策への取り組みは中小企業の新ビジネスチャンス
気候変動対策で新たなビジネスをリードする企業に
ビジネスの世界では自社の環境価値を高めようという動きが高まっています。環境価値を高めるだけではなく、新たなビジネスチャンスとして捉えている企業も多く、「次世代によりよい世界を」をミッションとして、クリーンエネルギーを提供する電力会社や、またデータとサイエンスの力で社会課題を解決することを目指して温室効果ガス観測技術衛星のデータを活用し環境モニタリングのサービスを提供するなどの新たなベンチャー企業が生まれています。今後環境問題に取り組みそれをビジネスとする企業はますます増えるでしょう。
日本の企業の参加も増加・環境イニシアチブとは何か
また世界的に地球温暖化や脱炭素にむけて注目されているのが環境イニシアチブです。環境イニシアチブとは温室効果ガス削減に向けて取り組む国際機関で、「RE100」「SBT(Science Based Targets)」「WMB(We Mean Business)」が存在します。このような国際的な環境イニシアチブは大手の企業の参加がメインではありますが、「SBT」には中小企業を対象としたコースも用意されており、環境対策に取り組む中小企業の参加が増えつつあるのです。
新電力事業に参入・再生可能エネルギーの可能性
脱炭素にむけて注目されているのはCO2を排出しない再生可能エネルギーによる新電力です。再生可能エネルギーとは、太陽光、風力など自然界に常に存在するエネルギーのことを指します。自然環境を生かした非化石エネルギーのため環境負荷が少なくCO2の削減に取り組めるということで、自社の電力を再生可能エネルギー電力に切り替える企業が増えているのです。
また国も積極的に再生可能エネルギー事業を推し進めており、太陽光発電など新電力事業に取り組む企業は多くなっています。下記のグラフの通り、依然として化石燃料依存率は高いものの、再エネ電力の割合は少しずつ増加しています。
出典:資源エネルギー庁「「法制度」の観点から考える、電力のレジリエンス ⑤再エネの利用促進にむけた新たな制度とは?」(2020.10.8)
SDGs目標13に取り組む企業の気候変動対策事例
再生可能エネルギー100%目標の企業
(1)株式会社リコー
環境イニシアチブRE100に日本で初参加した企業です。2050年までに自社の温室効果ガス排出ゼロを目指しています。2030年までには自社で使用する電力の30%を再生可能エネルギーに切り替え2050年までには100%可能にすることを推し進めています。
(2)パナソニック株式会社
「パナソニック環境ビジョン2050」を掲げ、生産時に使用のエネルギーを減らしCO2ゼロの工場や省エネの製品の開発に積極的に取り組んでいます。太陽光発電や水素エネルギーなどのクリーンエネルギーの活用により、より良い社会作りを目指しています。
住宅・建築物関連の省エネ・スマートシティへの企業取り組み
(1)積水ハウス
2016年からの新築販売棟数の74%がZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)になります。2050年までの受託ライフサイクルでCO2の排出ゼロを目標に脱炭素社会の構築の貢献を目指しています。
(2)清水建設株式会社
「シミズエコロジー・ミッション2030-2050」においてSDGs目標13に伴い、すべての事業活動において建築物の運用時からライフサイクルに渡るまでのCO2排出を2050年までに1990年比でマイナス80%目標を推進し、気候変動対策に貢献することを目指しています。
出典:外務省「気候変動をリードする日本企業1」(2018.11.13)
カーボン・オフセットプロジェクト
中小企業においては様々な要因により、すぐにはCO2削減を進めることのできない場合もあります。そのような企業には「カーボンオフセット・プロジェクト」に参加するという選択も可能です。
カーボンオフセットとは経済活動や日常の生活において避けることができない温室効果ガスの排出をできるだけ減らす努力をしつつ、どうしても避けることのできない温室効果ガスをその排出に見合った分の削減活動に投資することで埋め合わせをするという方法です。日本では「富士フィルム株式会社」「株式会社資生堂」等多くの企業が参加し取り組んでいます。
企業がSDGs目標13に取り組む3つのメリット
結論として、SDGs目標13への取り組みは、コストではなく企業価値を高める投資です。具体的には次の3点が挙げられます。
1. 取引機会の維持・拡大:大手企業はサプライチェーン全体(Scope 3)での排出削減を求めており、対応が取引継続の前提になりつつあります。
2. 資金調達・評価の向上:気候関連情報の開示が投資判断やESG評価に直結し、資金調達条件の改善につながります。
3. コスト削減と人材獲得:省エネ・再エネ転換は中長期の電力コストを抑え、脱炭素への姿勢は採用競争力にも寄与します。
出典:環境省「サプライチェーン排出量算定の考え方」
SDGs目標13に関するよくある質問
Q. SDGs目標13は中小企業も対象ですか。
A. 対象です。企業規模を問わず、サプライチェーンを通じて大企業の削減要請が中小企業にも及ぶため、早期の対応が取引維持の観点で重要になります。
Q. 緩和策と適応策のどちらから着手すべきですか。
A. まずは自社の排出量を把握する緩和策から始め、並行して気象災害に備える適応策を整えるのが現実的です。
Q. SDGs目標13と「脱炭素」「カーボンニュートラル」は同じ意味ですか。
A. 同義ではありません。脱炭素・カーボンニュートラルは温室効果ガスの排出実質ゼロをめざす考え方で、目標13を達成するための具体的な手段の一つに位置づけられます。
まとめ:SDGs目標13は企業の競争力を左右する経営テーマへ
温室効果ガス排出による気候変動が全世界的に緊急な課題となっている現在、いちはやくそれに取り組む企業は社会から大きく注目されることとなるでしょう。SDGsはすでに経済活動においても企業のあり方においても無縁の存在ではないのです。SDGs目標13に向かって真摯に取り組み気候変動に対して貢献を果たす企業として一歩リードしてみませんか。
排出量の見える化からはじめるSDGs目標13対応
SDGs目標13への取り組みは、自社のCO2排出量を正確に把握することから始まります。アスエネは、Scope 1〜3の排出量算定から削減、情報開示までを一気通貫で支援します。
