2026年11月、トルコのアンタルヤでCOP31が開催されます。同時期に開かれるパリ協定の締約国会合では、世界全体の気候変動対策の進捗を点検する「第2回グローバル・ストックテイク(GST2)」が始まる予定です。
日本企業にとっても、国際的な議論を把握し、自社の排出量管理や削減計画を見直す機会となります。本記事では、COP31とGST2の概要、日本の2035年度の削減目標、企業が取り組みたい具体策を解説します。
※本記事は2026年10月28日時点の公表情報に基づいています。
COP31の開催概要と重要性
開催地とスケジュール
COP31(第31回国連気候変動枠組条約締約国会議)は、2026年11月9日から20日まで、トルコのアンタルヤで開催される予定です。あわせて、パリ協定の締約国会合であるCMA8なども開かれます。
各国が気候変動対策について交渉するほか、企業や研究者、市民社会なども参加し、取り組みや知見を共有する場となります。(出典:UNFCCC「COP31」)
トルコとオーストラリアの役割
COP31では、トルコが開催国として会議を受け入れ、同国の代表がCOP31議長を務める予定です。一方、オーストラリアの代表は「交渉議長(President of Negotiations)」として交渉を主導します。
両国の取り決めでは、それぞれの役割を分担し、相互に協議する体制が示されています。開催・議長職と交渉の主導という役割の違いを押さえることで、会議の運営体制を理解できます。(出典:UNFCCC「Türkiye–Australia Partnership Modalities」)
第2回グローバル・ストックテイクとは
世界全体の進捗を点検する仕組み
グローバル・ストックテイク(GST)は、パリ協定の目的や長期目標に向けた世界全体の進捗を点検する仕組みです。排出削減だけでなく、気候変動への適応や、その取り組みを支える支援なども扱います。
点検結果は、各国が気候変動対策や支援を更新・強化する際の参考となります。第1回は2023年に結論が取りまとめられ、その後も5年ごとに実施されます。(出典:UNFCCC「Global Stocktake」)
実施日程と対象期間の違い
GST2は、2026年11月のCMA8で開始し、2028年11月のCMA10で結論を得る予定です。UNFCCCは、GST2が対象とする期間を「2024~2028年」と説明しています。
ここでいう「2026年11月~2028年11月」は点検プロセスの実施日程、「2024~2028年」は点検の対象期間です。両者は意味が異なるため、区別して理解する必要があります。(出典:UNFCCC「The second global stocktake」)
今後の主なプロセス
GST2は、情報収集・準備、技術的評価、成果の検討という3つの段階で構成されます。UNFCCCの案内では、技術的評価は2027年6月の第66回補助機関会合(SB66)から始まる予定です。情報収集・準備段階への提出に関する案内も公開されています。(出典:UNFCCC「The second global stocktake」)
これらはGST2に向けた国際的な手続きです。企業は、自社に適用される排出量報告などの手続きと区別しながら、議論の進捗を確認するとよいでしょう。
日本の2035年度の削減目標と企業の対応
日本は2013年度比60%削減を目指す
日本政府は2025年2月18日、新たなNDC(国が決定する貢献)を国連気候変動枠組条約事務局に提出しました。温室効果ガスを2013年度比で、2035年度までに60%、2040年度までに73%削減することを目指しています。(出典:環境省「日本のNDC」)
企業が削減計画を検討する際には、こうした国の中長期目標を踏まえつつ、自社の排出構造や設備更新の時期、事業計画に応じて対策を具体化することが重要です。
国際的な議論と自社の実務をつなぐ
COP31やGST2の動向を経営に生かすには、会議の議論と、自社に適用される国内制度・開示基準を分けて確認する必要があります。国際会議の開催だけを根拠に、企業の算定方法や報告義務が変わると判断することはできません。
実務では、関連制度の公表内容や取引先からの要請を確認し、自社の対応範囲と期限を整理しましょう。そのうえで、次の3つの取り組みを進めることをおすすめします。
日本企業が進めたい3つの取り組み
1.Scope1~3の算定体制を整える
まずは、自社とサプライチェーンのどこで排出が発生しているかを把握します。
Scope1は自社による直接排出、Scope2は購入した電気・熱などの使用に伴う間接排出、Scope3はそれ以外の事業活動に関連する間接排出を指します。(出典:環境省「サプライチェーン排出量全般」)
算定を継続できるよう、対象範囲、データの収集担当、更新頻度、計算の根拠を整理しておきましょう。
2.削減施策に優先順位をつける
排出量を把握したら、排出の多い工程や拠点から対策を検討します。省エネ設備への更新、運用改善、電力調達の見直しなどについて、削減効果・費用・実施時期を比較すると、投資判断につなげやすくなります。
計画には担当部門と実施期限を設け、実施後の効果も確認できる形にすることが大切です。
3.取引先とのデータ連携を進める
Scope3の管理では、取引先との連携も重要です。環境省は、取引先から提供される一次データを活用した算定方法や、削減努力を算定結果に反映するためのガイドを公開しています。(出典:環境省「各種ガイドライン」)
まずは排出量の大きい調達品や主要な取引先から、収集する情報と算定条件をすり合わせるとよいでしょう。
FAQ
Q1:COP31によってScope1~3の算定ルールは変わりますか?
A:COP31の開催だけで算定ルールが変更されるとはいえません。会議の決定内容に加え、自社が利用する算定基準や適用制度の改定内容を確認する必要があります。
Q2:2035年度の削減目標に向け、企業は何から始めるべきですか?
A:自社の排出量と、排出の多い活動を把握することから始めましょう。その結果をもとに、削減効果や費用、設備更新の時期を踏まえて施策の優先順位を決めると、実行可能な計画に落とし込めます。
Q3:GST2の結果を企業はどう活用できますか?
A:本記事では、GST2の結果を、自社の削減計画や事業上のリスク・機会を見直すための参考情報として活用することを提案します。各国がその結果を受けて示す政策も確認し、自社に関係する変更を見極めることが重要です。
まとめ
COP31と同時期に開かれるCMA8では、GST2が始まる予定です。国際的な議論の進捗を把握するとともに、日本企業には、自社の排出量を継続的に把握し、実行可能な削減計画につなげる取り組みが重要になります。
まずはScope1~3の算定体制を整え、削減施策の優先順位を明確にしましょう。取引先とのデータ連携も進めながら、計画・実行・効果検証を継続することが、脱炭素経営の基盤となります。
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