セメント製造における脱炭素は、製造プロセス特有のCO2排出への対策が不可欠であり、令和8年5月22日に主要規定が施行された「二酸化炭素の貯留事業に関する法律(CCS事業法)」に基づき、安全な貯留事業の推進が図られています。本記事では、セメント業界におけるCCSの重要性と、同法が定める規制のポイント、および建築物LCA制度の現状について解説します。
INDEX
セメント製造における脱炭素の重要性とCCS
セメント製造において脱炭素化を進めるためには、エネルギー起源のCO2削減だけでなく、プロセス由来の排出を抑制するCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)の導入が不可欠です。
セメント製造の脱炭素が困難な理由
セメント産業のCO2排出量の約60%は、原料である石灰石の熱分解に伴うプロセス由来のものです(出典: セメント産業の知見(2026年10月時点))。この排出は、製造工程における化学反応に起因するため、燃料や電力の脱炭素化といった一般的な対策だけでは削減が極めて困難です。そのため、排ガスからCO2を回収し、物理的に大気中へ放出させない技術の活用が求められています。
CCSの役割とカーボンニュートラル
我が国は2020年10月に2050年カーボンニュートラルを宣言しました(出典: 国土交通省(2026年10月時点))。脱炭素化が難しいセメント産業等の分野において、化石燃料・原料利用後のCO2を回収し、地下に貯留するCCSは、GX(グリーントランスフォーメーション)実現のための不可欠な手段と位置づけられています(出典: 環境省「CCSの安全」に関する公開情報(2026年10月時点))。
セメント製造の脱炭素には、プロセス由来の排出を捕捉するCCS技術の社会実装が不可欠であり、これが業界の持続可能性を左右する鍵となります。
CCS事業法で定められた貯留事業の規制
CCS事業法は、CO2貯留事業の安全性と信頼性を担保するための包括的な枠組みです。
令和8年5月22日施行の法制度
令和8年5月22日に主要規定が施行された「二酸化炭素の貯留事業に関する法律(CCS事業法)」に基づき、安全な貯留事業の推進が図られています。(出典: 経済産業省プレスリリース(2026年4月24日))。本法は、貯留権の登録や適正な事業運営を義務付けるものであり、試掘に関する一部規定は既に令和6年11月18日より施行済みです(出典: 経済産業省「二酸化炭素の貯留事業に関する法律の一部の施行期日を定める政令等」より)。
貯留事業者のモニタリングと資金確保
CCS事業法の施行により、貯留事業者は貯留したCO2の漏えいの有無等を確認するためのモニタリングを義務付けられています(出典: 環境省「CCSの安全」に関する公開情報(2026年10月時点))。また、CO2注入停止後のモニタリング業務等に必要な資金を確保するため、引当金の積立てが必須です。さらに、挙動が安定した後に貯留場の管理業務をJOGMECへ移管する場合の費用として、拠出金の納付も義務化されています(出典: 環境省「CCSの安全」に関する公開情報(2026年10月時点))。
CCS事業法は、貯留事業者によるモニタリングや資金準備などを通じて、長期的な安全性の確保や被害者救済を図る仕組みとされています。
CCS貯留層の基準と輸送に関する規定
貯留されるCO2の品質管理と、円滑な輸送のための導管網の公平利用が法制度の柱です。
CO2濃度99%以上の原則と例外
海域の貯留層に貯蔵するCO2は、原則として濃度99%以上である必要があります(出典: 経済産業省プレスリリース(2026年4月24日))。一方で、不純物が海洋環境への影響が少ないものとして主務省令で定める基準を満たす場合には、濃度99%未満での貯留も可能とする弾力的な運用が定められています(出典: 経済産業省プレスリリース(2026年4月24日))。
CO2導管輸送の適正な運用
CO2を貯留層まで運ぶ導管輸送事業者は、経済産業大臣への届出が義務付けられています(出典: 環境省「CCSの安全」に関する公開情報(2026年10月時点))。また、正当な理由のない輸送依頼拒否や、特定のCO2排出者に対する差別的取扱いは禁止されており、料金の届出義務も課されています(出典: 環境省「CCSの安全」に関する公開情報(2026年10月時点))。
CCS事業法は、CO2の品質基準を明確化し、輸送網の公平な利用を担保することで、効率的かつ安全な貯留事業のインフラ基盤を整備しています。
建築物LCA制度と脱炭素の今後の展望
建設・建築分野においても、ライフサイクル全体での排出削減が強く意識されるようになっています。
建築物ライフサイクルカーボン評価制度
建築物分野は我が国におけるCO2排出量の約40%を占めており(出典: 国土交通省(2026年10月時点))、ライフサイクルカーボン(LCA)の算定・評価が極めて重要です。この動きを受け、令和8年7月に成立した改正建築物省エネ法により、建築物ライフサイクルカーボン評価制度が創設されました(出典: 国土交通省(2026年10月時点))。
2028年度開始に向けた検討
現在、大規模事務所を対象とした届出制度等の2028年度開始を目途に、統一的な算定ルールの設計など具体的な制度設計が進められています(出典: 国土交通省「建築物のライフサイクルカーボンの算定・評価等を促進する制度に関する検討会」より)。
建築物LCA制度の創設は、セメントをはじめとする建材・資材分野に対しても、製品そのもののカーボンフットプリントを可視化・削減する圧力を強めることになり、脱炭素経営の重要性はさらに高まる見込みです。
FAQ
Q1: セメント製造におけるプロセス由来のCO2削減はなぜ重要ですか?
A: セメント製造時の石灰石の熱分解によるプロセス由来排出が、セメント産業の排出量の約6割を占めるためです。燃料転換などの一般的な対策だけでは限界があり、CCSによる直接的な削減が不可欠です。
Q2: CCS事業法で貯留事業者に求められる義務は何ですか?
A: 主に「モニタリングによる漏えい確認」「注入停止後のモニタリング費用の積立て」「JOGMEC移管時の拠出金納付」が義務付けられています。
Q3: 建築物ライフサイクルカーボン(LCA)制度の今後のスケジュールを教えてください。
A: 改正建築物省エネ法により制度が既に創設されており、2028年度を目途に、大規模事務所を対象とした届出制度等の開始を目指して具体的なルール形成が進められています。
まとめとNextAction
セメント製造の脱炭素化は、技術的な困難と法的規制への対応の両面から戦略的な取り組みが求められます。
まずは自社のScope1〜3の排出量を可視化し、サプライチェーン全体での削減ポテンシャルを特定することから始めましょう。
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