CO2算定

CBAM計算とは|体化排出量と証書費用の算定方法を解説

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CBAM計算とは|体化排出量と証書費用の算定方法を解説

CBAM計算とは、EUへ輸入する対象製品の体化排出量を求め、これにEU-ETSと連動した証書価格を掛け合わせて納付費用を算出する一連の手続きを指します。計算は「製品に含まれる排出量(体化排出量)の算定」と「納付すべき証書費用の算定」という2段階で進みます。2026年1月のCBAM本格適用開始により、移行期間中は報告のみで済んでいた排出量が、実際の金銭的負担に直結するようになりました。本記事では、CBAM計算の基本式から対象範囲、体化排出量と証書費用それぞれの算出方法、数値を用いた具体例、2025年の簡素化規則による変更点までを、一次情報をもとに体系的に解説します。

INDEX

CBAM計算の全体像|何をどの順番で計算するのか

CBAM計算は、製品に含まれる「体化排出量」を求める第1段階と、その排出量に対応する「証書費用」を求める第2段階に分かれます。この2段階を分けて理解することが、計算を正しく進める出発点になります。

CBAM(炭素国境調整メカニズム)は、EU排出量取引制度(EU-ETS)に基づいてEU域内の生産品に課される炭素価格に対応する負担を、域外から輸入される対象製品にも求める制度です。EUは2021年7月にFit for 55の一環として規則案を発表し、規則は2023年5月17日に施行されました。2023年10月1日から2025年12月末までが報告のみの移行期間、2026年1月1日からが金銭的負担を伴う本格適用期間です(出典:日本貿易振興機構〈ジェトロ〉『EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の解説(基礎編)』2024/2)。

CBAM計算の基本となる考え方は、次の式に集約されます。

CBAM費用 = 輸入量(トン)× 体化排出量(tCO2e/トン)× 証書価格(EU-ETS連動)× CBAM係数

ここで体化排出量は「製品1トンあたりに含まれる温室効果ガス排出量」、証書価格は「EU-ETSの排出枠価格に連動して設定される1トンあたりの炭素価格」、CBAM係数は「無償割当の段階的削減を反映した負担割合」を指します。第3章で体化排出量、第4章で証書価格とCBAM係数を順に解説します。

移行期間と本格適用期間では、計算の位置づけが大きく異なります。移行期間中は体化排出量を四半期ごとに報告するだけで金銭的負担は生じませんでしたが、本格適用後はEUが定める算定方法に従って排出量を確定し、それに応じた証書を購入・納付する義務が発生します。同じ「計算」でも、報告のための計算から費用負担のための計算へと意味が変わった点を押さえておく必要があります。

CBAM計算の対象となる製品と排出量の範囲

CBAM計算の対象は6つの品目に限定され、計算に含める排出量の範囲は品目ごとに定められています。自社の製品がどの範囲を計算すべきかを最初に確認することが重要です。

現在のCBAM対象は、鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料、電力、水素の6分野です。これらは排出原単位が大きく、生産拠点が域外へ移転するカーボンリーケージのリスクが高い分野として選定されました。鉄鋼にはねじ・ボルト・ナットといった下流製品も含まれており、日本国内では中小企業比率の高いねじ・ボルト等業界への影響が想定されています(出典:経済産業省『CBAM(炭素国境調整措置)』2026年時点)。

計算に含める排出量は、次の3区分で整理されます。

(1)直接排出量:生産工程そのものから生じる排出量です。燃料の燃焼、化学反応(セメントの石灰石の焼成など)、施設内での熱生成が該当します。GHGプロトコルのScope 1に相当し、6分野すべてで計算対象です。

(2)間接排出量:生産時に消費した電力の発電に伴う排出量です。Scope 2に相当し、CBAMではセメントと肥料の2分野のみが対象となります。鉄鋼・アルミニウム・水素では、CBAMの証書負担の計算上は間接排出量を含めません(出典:経済産業省 産業構造審議会資料『CBAMの論点と対応状況』2025/5)。

(3)前駆体排出量:複合財を構成する原材料(前駆体)に含まれる排出量です。たとえば鋼管は、素材である鋼材の体化排出量に加えて、管に加工する工程の排出量を積み上げて計算します。前駆体の連鎖は複数段階にわたることがあり、アンモニアから尿素、さらに複合肥料へと続く例もあります。

このように、自社製品が直接排出のみを計算すればよいのか、間接排出や前駆体まで含める必要があるのかは品目によって異なります。計算範囲を取り違えると、鉄鋼で電力分を過大に含めてしまったり、セメントで電力分を計上し忘れたりといった誤りにつながるため、最初の確認が欠かせません。

体化排出量(特定体化排出量)の計算方法

CBAM計算の中核は、製品1トンあたりの「特定体化排出量(SEE:Specific Embedded Emissions)」を求めることです。この数値が証書の枚数と費用を直接決定します。

特定体化排出量は、施行規則(EU)2025/2547に定められた次の式で算定します。

特定体化排出量(tCO2e/トン)=(直接排出量 + 間接排出量)÷ 純生産量(トン)

間接排出量を計算しない鉄鋼・アルミニウム・水素では、間接排出量がゼロとなり、式は「直接排出量 ÷ 純生産量」に簡略化されます。重要なのは、この数値が企業単位や国単位ではなく、製品を生産した「生産施設」単位で求められる点です。同じ国の同じ企業でも、工場ごとに技術や燃料構成が異なれば排出原単位は変わるため、複数の施設から調達する場合は施設ごとに数値を取得する必要があります。

直接排出量は、計算ベースの手法では次の式で求めます。

直接排出量 = 活動量 × 排出係数 × 酸化係数

活動量は消費した燃料や原料の量(トン、立方メートル、GJなど)、排出係数は単位あたりに排出されるCO2量、酸化係数は不完全燃焼を補正する係数(天然ガスで0.99〜1.0、石炭で0.98程度)です。セメントの石灰石焼成のような燃焼を伴わない工程排出(プロセス排出)には、化学反応の量論比に基づく係数を用います。

間接排出量は、次の式で求めます。

間接排出量 = 電力消費量(MWh)× 電力排出係数(tCO2/MWh)

電力排出係数は、実際に使用した電力の炭素強度です。実測値が優先され、系統電力を使う場合は原産国の系統平均排出係数を用います。再生可能エネルギーの専用調達を、時間的・地理的な対応関係を示す証憑とともに立証できる場合には、より低い係数を適用できます。

実務上の計算手順は、次の5ステップに整理できます。(1)生産ルートとシステムバウンダリーの特定、(2)バウンダリー内の全排出源の活動量データの収集、(3)排出係数を掛けて直接排出量を算定、(4)セメント・肥料については間接排出量を算定、(5)合計を純生産量で割って特定体化排出量を確定。鉄鋼であれば高炉・転炉法、電炉法、直接還元鉄法などルートによって排出プロファイルが大きく異なるため、第1ステップの生産ルートの特定が計算精度を左右します。

生産ルートの違いがどれほど排出量に影響するかは、鉄鋼の例で明確になります。鉄鉱石から製造する高炉・転炉法はおおむね粗鋼1トンあたり約2.0 tCO2、鉄スクラップを用いる電炉法は約0.4〜0.6 tCO2、天然ガスを用いる直接還元鉄法は約0.9〜1.4 tCO2、水素還元による製法では約0〜0.1 tCO2と、ルートによって数倍の差が生じます。同じ鉄鋼でも、どのルートで生産されたかを特定しなければ、計算の出発点が定まりません。

システムバウンダリーの設定も重要です。CBAMの体化排出量は生産施設のゲートまでを範囲とし、施設から域外港やEUの国境までの輸送に伴う排出量は含めません。原材料の採掘や製品の廃棄といったスコープ3の上流・下流排出も計算対象外です。CBAMが対象とするのは、あくまで生産工程内の直接排出と、セメント・肥料における電力由来の間接排出に限られます。この範囲を正しく区切ることが、過大・過小の両方の計算誤りを防ぐ前提になります。

CBAM証書費用の計算方法

体化排出量が確定したら、それに証書価格とCBAM係数を掛けて費用を算定します。費用の大きさは、証書価格の水準と、年ごとに上昇するCBAM係数によって決まります。

証書費用の基本式は次のとおりです。

証書費用 = 体化排出量(tCO2e)× 証書価格 × CBAM係数 −(域外で支払った炭素価格分の控除)

証書価格は、EU-ETSの排出枠価格に連動して設定されます。2026年は四半期ごとの平均価格、2027年以降は週ごとの平均価格を基準に価格が定められます。参考として、2026年第1四半期の証書価格はCO2 1トンあたり約75ユーロの水準でした(出典:cbamguide.com 価格トラッカー、2026/4時点)。証書価格は市場価格に連動して変動するため、費用見積もりでは複数の価格シナリオを置いておくことが現実的です。

価格が市場連動である以上、CBAM費用は固定費ではなく変動費として捉える必要があります。EU-ETSの排出枠価格は、EUの気候政策の強化やエネルギー需給、景気動向などによって変動します。証書価格が上昇すれば、同じ体化排出量でも納付費用は増加します。したがって、計算にあたっては現在の価格水準だけで判断せず、価格が上振れした場合の負担も併せて試算しておくことが、予算管理上は安全です。

CBAM係数は、EU-ETSの無償割当が段階的に削減されるスケジュールに対応します。本格適用初期は負担割合が小さく、年を追って上昇します。具体的な割合は、2026年が2.5%、2027年が5%、2028年が10%、2029年が22.5%、2030年が48.5%、2031年が61%、2032年が73.5%、2033年が86%、2034年に100%です(出典:ジェトロ『CBAMの解説(基礎編)』2024/2)。つまり2026年の実質的な証書負担は、体化排出量から計算される総額の2.5%にとどまりますが、2034年には全額負担となります。計算上、現在の負担が小さく見えても、将来に向けて負担が約40倍に拡大していく点を見込んでおく必要があります。

域外炭素価格の控除は、対象製品の生産国ですでに炭素価格を支払っている場合に、その相当分を証書納付の負担から差し引ける仕組みです。ただし日本の地球温暖化対策税はCO2 1トンあたり289円相当であり、EU-ETSの市場価格と比べて極めて小さいため、仮に完全に控除対象となっても差し引かれるのは一部にとどまるとみられます(出典:ジェトロ『EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)に備える』2023/8)。なお、域外制度が控除対象として正式に認定されるには欧州委員会の承認が必要で、2026年時点で正式承認を受けた第三国制度はまだ確定していません。

数値で見るCBAM計算の具体例

ここまでの式を、具体的な数値にあてはめて確認します。セメントと鉄鋼の例を通じて、計算の流れと費用感をつかむことが目的です。

例として、トルコのセメント工場から輸入するポルトランドセメントの特定体化排出量を計算します。セメントは直接排出と間接排出の両方が対象です。年間の純生産量を50万トン、石灰石焼成によるプロセス排出を約21.5万トン、石炭燃焼による排出を約13.3万トン、補助燃料の天然ガスによる排出を約1.7万トンとすると、直接排出量の合計は約36.6万トンです。電力消費量を7.5万MWh、トルコの系統排出係数を0.452 tCO2/MWhとすると、間接排出量は約3.4万トンとなります。

これを式にあてはめると、特定体化排出量 =(36.6万 + 3.4万)÷ 50万 = 約0.80 tCO2/トンとなります。証書価格を1トンあたり75ユーロとすると、2026年の実質負担は0.80 × 75ユーロ × 2.5%(CBAM係数)= 1トンあたり約1.5ユーロです。一方、同じ計算を2030年のCBAM係数48.5%で行うと、1トンあたり約29ユーロまで負担が拡大します。係数の上昇が費用に与える影響の大きさが、この比較からも読み取れます。

鉄鋼の例も見てみます。インドの高炉・転炉法の製鉄所から、ホットコイルを年間1万トン輸入する場合を考えます。検証済みの実測値で特定体化排出量を1.78 tCO2/トンとすると、総排出量は1万 × 1.78 = 1.78万tCO2です。証書価格を75ユーロとした2026年の実質負担は、1.78万 × 75ユーロ × 2.5% = 約3.3万ユーロとなります。鉄鋼は間接排出量を計算に含めないため、電炉法であっても消費電力分は証書負担の計算には反映されない点が、セメントとの違いです。

これらの数値はあくまで前提条件を置いた試算ですが、計算の構造そのものは「数量 × 体化排出量 × 証書価格 × CBAM係数」というシンプルな形に収まります。費用の振れ幅は、体化排出量の精度と証書価格の変動、そして年ごとのCBAM係数によって生まれます。

デフォルト値と実測値|計算結果を左右するポイント

CBAM計算では、実測した排出量データを使うか、欧州委員会が公表するデフォルト値を使うかで、費用が大きく変わります。効率的な生産者ほど、実測値を使うほうが負担を抑えられる傾向があります。

デフォルト値は、生産者から実測データが得られない場合に用いる代替値です。国ごと・製品ごとの平均排出原単位に、追加のマークアップ(上乗せ)を加えて設定されます。施行規則(EU)2025/2621によるマークアップは、2026年が国別平均値に対して+10%、2027年が+20%、2028年以降が+30%です(肥料は+1%)。年を追ってデフォルト値が割高になっていくため、自社の実排出量が国の平均を下回る効率的な生産者ほど、実測値を使う金銭的メリットが拡大します。

実測値を使うメリットは、平均より優れた生産実績を費用に反映できる点にあります。先のインドの鉄鋼の例で、デフォルト値が2.10 tCO2/トン(+10%のマークアップで2.31 tCO2/トン)であるのに対し、実測値が1.78 tCO2/トンであれば、実測値を使うことで証書負担を抑えられます。デフォルト値とのこの差は、CBAM係数が上昇する2028年以降にさらに大きな金額差として表れます。

ただし、実測値を計算に用いるには第三者検証が必須です。生産者が提出する排出量データは、認定検証者による検証報告書を伴わなければCBAM申告に使えません。検証が間に合わない、あるいは生産者がデータ提供に協力しない施設については、デフォルト値を適用することになります。検証には施設ごとに費用がかかりますが、実測値による負担軽減効果が検証費用を上回るかどうかが、実測値とデフォルト値の選択を判断する基準になります。なお、この選択は生産施設ごとに行うことができ、一部の施設は実測値、別の施設はデフォルト値という使い分けも認められています。

検証体制には準備期間が必要です。認定検証者は、欧州認定協力機構のネットワークに属する国別認定機関の認定を受けた者で、初回の検証期間には生産施設への現地訪問が求められます。世界中の多数の生産施設を限られた期間で検証する必要があるため、輸出者である生産者が早期にデータと体制を整えておくことが、取引先である輸入業者の申告を滞りなく進めることにつながります。検証が間に合わずデフォルト値を使えば、マークアップの分だけ取引先の負担が増えるため、データ整備の遅れは商談上の不利にもなり得ます。

2025年オムニバス簡素化によるCBAM計算ルールの変更点

2025年に採択されたオムニバス簡素化規則により、CBAM計算が必要となる事業者の範囲が変わりました。特に免除基準の刷新は、計算義務の有無を判断するうえで重要です。

EU理事会は2025年9月29日にCBAMオムニバス簡素化規則を採択し、2025年10月に施行しました。最大の変更点は、免除を決める「デミニミス(僅少)基準」の刷新です。従来は1回の輸送あたり150ユーロ未満が免除対象でしたが、新基準では暦年におけるCBAM対象製品の総輸入量が年間50トン以下(輸入者単位)であれば、報告義務および証書購入義務から完全に免除されます。この閾値により、影響を受ける輸入事業者を約90%削減しながら、排出量ベースでは約99%をカバーできるとされています(出典:EY Japan『EU、炭素国境調整メカニズム(CBAM)オムニバス簡素化パッケージを採択』2025)。

この50トンの基準には、計算上の注意点があります。閾値は対象となる全品目の合算値で判定されます。たとえば鉄のボルトを40トン、アルミ板を15トン輸入していれば合計55トンとなり、免除は適用されません。また、電力と水素はこの50トンの閾値の対象外とされています。自社が免除に該当するかどうかは、品目を合算した年間輸入量で確認する必要があります。

日本企業にとって、この簡素化を単純な朗報と捉えるのは早計です。免除によって小規模な輸入事業者が制度の外に出る一方、規制当局は監視リソースを、排出量の大半を占める少数の大口輸入業者に集中させます。その結果、制度の対象として残る大口輸入業者は、これまで以上に厳格な監査に直面し、取引先である日本の輸出企業に対して、より精密で第三者検証に耐えうる排出量データの提供を求めてくることが想定されます(出典:ジェトロ『EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の簡素化規則の解説』2026/2)。つまり、輸出者である日本企業にとっては、CBAM計算に必要なデータ整備の重要性がむしろ高まっているといえます。

CBAM計算を実務で進めるステップと注意点

CBAM計算を実務に落とし込むには、データ収集、スケジュール管理、罰則の把握という3点を押さえる必要があります。これらは輸出者である日本企業のデータ提供体制にも直結します。

まずデータ収集です。生産者は、施設内の各排出源について測定方法、データ収集の頻度、測定機器の校正計画、直接測定できない場合の推計手順、データ管理と記録保持の方法を定めた「モニタリング計画」を整備する必要があります。これは検証報告書の裏付け資料となるため、計算の前提として欠かせません。排出量を測定した経験のない施設では、この体制構築自体に時間を要する点に留意が必要です。

次にスケジュールです。2026年に輸入した製品分の証書は、2027年2月から購入が可能となり、2027年9月30日までに納付する必要があります。加えて、四半期保有要件があり、各四半期末の時点で、その年の1月1日以降に累積した体化排出量の50%以上に相当する証書を保有していなければなりません(出典:SAP『EUのCBAMとは』2026年時点)。体化排出量を過小に見積もって証書購入が不足すると、四半期末のチェックポイントで保有不足に陥るため、計算の精度がキャッシュフロー管理にも影響します。

最後に罰則です。納付すべき証書が不足した場合、不足分のtCO2あたり100ユーロの罰金が科され、しかも罰金を払っても証書を納付する義務自体は残ります。罰則の存在は、計算の正確性が単なる事務上の問題ではなく、直接的な金銭リスクであることを意味します。

輸出者である日本企業の立場では、CBAM計算の義務を負うのはEU域内の輸入業者ですが、計算の前提となる製品単位の排出量データは生産者が提供しなければなりません。検証に耐えうるデータを整備できるかどうかが、取引継続や価格交渉における競争力に直結します。経済産業省は、ねじ・ボルト等の業界向けに算定ガイドラインを公表し、簡素化規則を踏まえた改訂も行っています(出典:経済産業省『CBAM(炭素国境調整措置)』2026年時点)。

よくある質問(FAQ)

CBAM計算とは何をどう計算するものですか。

CBAM計算とは、EUへ輸入する対象製品に含まれる体化排出量(製品1トンあたりの温室効果ガス排出量)を算定し、これにEU-ETS連動の証書価格と年ごとのCBAM係数を掛けて、納付すべき証書費用を求める手続きです。「体化排出量の算定」と「証書費用の算定」の2段階で進みます。

CBAM計算の対象となる製品は何ですか。

鉄鋼、セメント、アルミニウム、肥料、電力、水素の6分野です。鉄鋼にはねじ・ボルト・ナットなどの下流製品も含まれます。直接排出量は6分野すべてが対象で、間接排出量(電力分)はセメントと肥料のみが対象です。

体化排出量はどのように計算しますか。

特定体化排出量は「(直接排出量 + 間接排出量)÷ 純生産量(トン)」で求めます。直接排出量は「活動量 × 排出係数 × 酸化係数」、間接排出量は「電力消費量(MWh)× 電力排出係数」で算定します。数値は企業単位ではなく生産施設単位で求める必要があります。

デフォルト値と実測値はどちらを使うべきですか。

自社の排出量が国の平均値を下回る効率的な生産者であれば、第三者検証を経た実測値を使うほうが負担を抑えられます。デフォルト値には2026年で+10%、2028年以降で+30%のマークアップが上乗せされるため、年を追って実測値のメリットが拡大します。実測値を使うには認定検証者による検証が必須です。

2026年のCBAM費用負担は大きいのですか。

2026年のCBAM係数は2.5%であり、体化排出量から計算される総額の2.5%が実質負担です。初期の負担は小さいものの、係数は段階的に上昇し、2030年に48.5%、2034年に100%に達します。将来に向けて負担が大きく拡大する点を見込んでおく必要があります。

まとめ:CBAM計算は正確な一次データの整備が競争力を左右します

CBAM計算は、「製品に含まれる体化排出量の算定」と「証書費用の算定」という2段階で構成されます。体化排出量は「(直接排出量 + 間接排出量)÷ 純生産量」で生産施設単位に求め、証書費用は「体化排出量 × 証書価格 × CBAM係数」で算定します。2026年の本格適用開始により、これまで報告のみだった排出量が実際の費用負担に直結するようになりました。

計算の精度は、そのまま費用とリスクに跳ね返ります。実測値を使えば効率的な生産実績を費用に反映でき、デフォルト値のマークアップを回避できますが、そのためには第三者検証に耐えうるデータの整備が不可欠です。2025年の簡素化で大口輸入業者への監査が厳格化したことを踏まえれば、輸出者である日本企業にとって、正確な一次データを整備できるかどうかが取引先からの信頼と価格交渉力を左右します。

次のアクションとして、まずは自社製品がどの計算範囲に該当するかを確認し、生産施設ごとの排出量データの収集体制とモニタリング計画の整備に着手することをおすすめします。CBAM係数が年々上昇する以上、データ整備を早く始めるほど、将来の負担増に対する備えが厚くなります。

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参考文献・出典

  • 日本貿易振興機構(ジェトロ)『EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の解説(基礎編)』(2024/2)
  • 日本貿易振興機構(ジェトロ)『EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の簡素化規則の解説』(2026/2)
  • 日本貿易振興機構(ジェトロ)『EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)に備える』(2023/8)
  • 経済産業省『CBAM(炭素国境調整措置)』(2026年時点)
  • 経済産業省 産業構造審議会『CBAMの論点と対応状況』(2025/5)
  • EY Japan『EU、炭素国境調整メカニズム(CBAM)オムニバス簡素化パッケージを採択』(2025)
  • 欧州委員会 Regulation(EU)2023/956、施行規則(EU)2025/2547・2025/2621
  • SAP『EUのCBAMとは』(2026年時点)

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