CO2算定

【イベント×サステナビリティ】企業と生活者をつなぐイベントの役割。社会課題の解決を広げる共創とは

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【イベント×サステナビリティ】企業と生活者をつなぐイベントの役割。社会課題の解決を広げる共創とは
【登壇者】(写真右より) - 森 正志 氏(日比谷音楽祭 / 制作委員長、以下「音楽祭」) - 関 学 氏(サントリーホールディングス株式会社 サステナビリティ経営推進本部 副本部長、以下「サントリー」) - 渡瀬 丈弘 氏(アスエネ株式会社 上級執行役員 CPO、以下「アスエネ」)

気候変動の影響は、音楽フェスやスポーツ大会など、屋外イベントの開催にも及んでいます。猛暑や豪雨など異常気象の発生が増加するなか、多くの人が安心して楽しめる場を、将来に渡ってどのように残していくのか。

日比谷音楽祭が掲げるのは、「フリーでボーダーレス」というコンセプトです。チケット代を必要とせず、子どもから祖父母世代まで3世代で誰もが音楽を楽しめるイベントとして2019年に始まりました。将来に渡ってこのイベントを続けていきたいという想いから、持続可能な社会への視点を取り入れるために、2026年、アスエネを初の環境パートナーに迎え、CO2排出量をScope1-3まで算定、開示する試みを実施しました。

しかし、環境への取り組みは、主催者だけでは進められません。算定によって環境負荷を見える化し、理念に共感する企業と知見や技術を持ち寄ることで、より効果的な改善につなげられます。また、こうした取り組みを来場者に届けることも重要な役割です。

今回は、日比谷音楽祭、イベントの特別協賛企業であるサントリー、そしてアスエネが、それぞれの立場からイベントと企業活動、サステナビリティをどのようにつなげられるのかを語りました。

写真提供:日比谷音楽祭実行委員会

INDEX

CO2排出量から読み解く、街に開かれた音楽祭の環境負荷

――イベント終了後、事後算定の結果からどんな発見がありましたか。

音楽祭:イベント実施前には、昨年の実績をもとにCO2排出量を事前算定しました。事後算定と比べて、特に大きな違いが表れたのが、来場者の移動と飲食に伴う排出量です。

日比谷音楽祭は日比谷公園を中心に開催しており、チケット代を必要とせず、無料で誰もが自由に参加できます。銀座や有楽町への買い物の途中で、聞こえてきた音にひかれて立ち寄る方もいます。その一方で、来場者数は天候に大きく左右されます。

昨年は初日の午前が雨で、来場者は14万5,000人でした。今年は天候に恵まれ、22万3,000人にお越しいただきました。その結果、事前算定と比べて、来場者の移動や飲食に伴う排出量が増えました。

今年は日比谷野外大音楽堂が改修工事中だったため、東京国際フォーラムを新たに使用するなど、会場構成も変わりました。2025年の開催時のデータを元にした事前算定と事後算定を比較したことで、天候や来場者数、会場構成が排出量にどのように影響するのかが見えてきました。

私は、東京ドームで開催された「ap bank fes」*の制作にも携わり、CO2排出量の算定を経験しました。チケットを購入した方が来場する東京ドームのイベントと、買い物の途中でも立ち寄れる日比谷音楽祭では、来場者の行動が異なります。今回の事前・事後算定の結果を比較することで、日比谷音楽祭ならではの特徴を数字から捉えられたことに、大きな意味があると感じています。

アスエネ:CO2排出量の算定では、最初からすべての実態に沿った正確なデータがそろうわけではなく、平均値などを用いた推計も含まれます。それでも、まず全体像を数字にし、排出量の大きい領域や改善できるポイントを見つけることが重要です。


「算定する」「比べる」「改善する」という流れの第一歩を踏み出せたことは、今後のイベント運営にとって大きな価値があります。


サントリー:企業がCO2排出量を算定し、進捗を開示することはすでに当たり前になっており、当社にとっても算定したデータは環境活動の推進の要です。実際、今後さらなる高度化が求められるCO2排出量算定に向けて、アスエネ社と共にシステム構築を行っています。このような流れからも、今回の音楽イベントのScope1-3を算定し、改善につなげようとする取り組みは先進的だと感じました。当社は複数年にわたり日比谷音楽祭の特別協賛をしていますが、協賛企業として今回の取り組みを心強く受け止めています。


来場者が増えればCO2排出量の総量も増えるのは当然のことです。サントリーが活動量当たりのCO2排出量、すなわちCO2排出原単位を管理するように、イベントでも「参加者1人あたり」という単位で見ることで別の側面が見えてきます。


近隣から徒歩や電車で立ち寄る方が増えれば、来場者数が増えても、1人あたりのCO2排出量を抑えられる可能性があります。どのような方に、どのように楽しんでいただきたいのかというイベントの目標と、CO2排出量のデータが結びついてくるのです。


*ap bank fes:「ap bank fes」:環境や社会課題をテーマに2005年から開催されている音楽フェス。2025年2月には東京ドームで開催。
参照: ASUENEが「ap bank fes ’25 at TOKYO DOME 〜社会と暮らしと音楽と〜」におけるイベント全体のCO2排出量算定を実施

会場でも配信でも。進化する技術がCO2排出量を変える

――多くの人に楽しんでもらうことと、環境への配慮をどう両立しますか。

音楽祭:一つの選択肢が、会場と配信の両方を用意することです。
全国の方に楽しんでいただきたい一方、必ずしも遠方から会場へ来ていただかなくても、配信を通じて参加できるようにイベントを設計しています。近隣の方は、徒歩や電車で気軽に立ち寄れる。技術の進化によって、都市型の音楽祭らしいハイブリッドな参加方法を提示できるようになりました。


アスエネ:大切なのは、来場者を減らすことではありません。CO2排出量の総量と参加者1人あたりの排出量を継続的に見ながら、イベントの理念に合った改善策を考えることです。


今回は来場者の移動が排出量の大きな割合を占めましたが、排出量が大きい領域と、実際に改善しやすい領域は必ずしも同じではありません。次は、より実態に近いデータを集め、実行可能な施策を見極める。「見える化」は、よりよい意思決定をするための基盤になります。

イベントの理念に共感する企業が集まり、生活者との接点が生まれる

――イベントのコンセプトは、企業との共創にどうつながっていますか。

サントリー:サントリーが参画する最大の理由は、「フリーでボーダーレス」という理念への共感です。

サントリーには「オールフリー」などのノンアルコール飲料があります。お酒を飲める方も飲めない方も、同じ場で楽しさを共有できる商品です。誰もが分け隔てなく音楽を楽しめる日比谷音楽祭と、非常に相性がよいと感じています。

お客様からも大変好評で、今年はブースで用意した商品がすべてなくなり、急きょ追加手配しました。

音楽祭:日比谷公園には、子どもの遊具のあるエリアなど会場の規定でアルコールを提供できないエリアもあります。ノンアルコール飲料があることで、親子が遊具で遊びながら飲み物を楽しみ、近くのステージで一緒に踊るという、通常のフェスではなかなか見られない空間が生まれました。

日比谷音楽祭には、毎年約80社の企業に協賛いただいています。音楽祭が大切にする理念や環境への姿勢を明確にすることで、そこに共感する企業が集まり、企業同士や生活者との新たな接点が生まれると考えています。

アスエネ:アスエネは普段、企業向けにCO2排出量の見える化・削減などのサービスを提供しており、生活者と直接対話する機会は多くありません。一方、気候変動は企業の担当者だけでなく、私たち一人ひとりに関わる問題です。

当社のブースでは、子どもたちも楽しめる環境クイズや体験企画を実施しました。「CO2は測ることができるんだ」とゲーム感覚で学ぶ姿を見て、イベントには、企業の取り組みを生活者へ届ける力があると感じました。

イベントを通じて広がる、サステナビリティへの理解と行動

――CO2排出量の見える化や企業との取り組みは、現場にどんな変化を生みましたか。

音楽祭:算定にあたり、スタッフには「誰が、どこから、どのように会場へ来たか」という移動データを記録してもらいました。作業は一つ増えますが、関係者一人ひとりが環境への影響を意識するきっかけになります。

また来場者にとっても、好きなアーティストや音楽を楽しんだ時に一緒に触れた情報は、記憶に残ります。フェスは、音楽だけではなく、食や移動、企業との出会いも含む一つのメディアです。来場者にそこで得た体験や気づきを、暮らしや仕事に持ち帰り、日々の中で役立てたり実践してもらったりすることも、イベントの役割だと思います。

サントリー:企業は、イベントに商品を提供するだけでなく、自社が持つ技術や知見をイベントの環境負荷を減らすことに生かすこともできます。

現在、サントリーの国内清涼飲料事業では、使用済みペットボトルを新しいペットボトルに再生させた「100%リサイクルペットボトル」を2本に1本以上使用しています。使用済みペットボトルを資源として循環させるには、中身を飲みきり、キャップを外し、ラベルをはがし、きれいに分別することが重要です。

また、国内の自社生産・研究拠点では、購入電力を再生可能エネルギー由来に切り替え、山梨県ではグリーン水素を天然水工場の熱エネルギーとして活用する実証にも取り組んでいます。こうした技術を、将来的にイベントでどう生かせるかを考えていきたいと思います。

音楽祭:今年の日比谷音楽祭でも、トヨタ自動車の協力により、水素で発電する車両と蓄電池を活用し、一部のフード出店へグリーン電力を供給しました。

ステージ音響などへの導入にはまだ課題がありますが、企業の技術をイベントの現場で試し、改善を重ねることで、新しい取り組みを社会へ広げることができます。

サステナビリティを社会に広げる、それぞれの役割

――異なる立場の3者が、サステナビリティを社会に広げるために担う役割とは何でしょうか。

サントリー:サントリーの役割は、商品を通じてお客さまに楽しさや潤いを届けることです。同時に商品の製造や提供に伴うCO2排出量や資源の使用を減らし、事業に関わる人々にも無理な負担がかからないようにすることです。

環境を守りながら事業を成長させ、次の世代も飲料や音楽祭を楽しめる社会をつくる。それが、企業として果たすべき役割だと考えています。

アスエネ:アスエネは、企業やイベントにおけるサステナビリティの取り組みを見える化し、生活者へ分かりやすく届ける役割を担っています。

環境に配慮してつくられた商品でも、企業の取り組みや想いが生活者に伝わらなければ、選択にはつながりません。当社の役割は、企業やイベントの取り組みを数字や体験を通じて分かりやすく伝え、企業が持つ情報と生活者に届いている情報の差を埋めることです。誰もが正確な情報をもとに、商品やサービスを選べる社会をつくりたいと考えています。

音楽祭:イベントには、行政や企業、エンターテインメントに携わる人々、そして来場者をつなぎ、新しい技術や考え方を社会へ伝える役割があります。

今回、CO2排出量を見える化できたことは、そのための重要な一歩でした。商品や技術を提供する企業、取り組みを見える化する環境パートナー、多様な人々をつなぐイベント。それぞれの役割が重なることで、サステナビリティを社会全体へと広げる活動をこれからも続けていきます。

写真提供:日比谷音楽祭実行委員会

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