「次世代エネルギー」とは、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、従来の化石燃料に代わる新たな脱炭素技術として注目を集めるエネルギー源の総称です。代表的なものに、水素エネルギー・燃料アンモニア・CCS/CCUS技術・ペロブスカイト太陽電池・浮体式洋上風力発電・次世代原子力(SMR/核融合)などがあります。
2025年2月閣議決定の「第7次エネルギー基本計画」では、再エネを最大の電源とし、原子力・水素・アンモニアなどの脱炭素電源を最大限活用する方針が示されました。次世代エネルギーの実用化は、企業の脱炭素経営・エネルギー戦略にも直結する重要テーマです。本記事では、次世代エネルギーの種類・特徴・最新動向と、企業の取り組み事例をわかりやすく解説します。
INDEX
次世代エネルギーとは?意味と注目される背景
次世代エネルギーとは、化石燃料に代わって脱炭素社会を支える新たなエネルギー技術や燃料の総称です。明確な学術定義はありませんが、一般的に「2050年カーボンニュートラル実現に向け、CO2排出の大幅削減や排出ゼロを可能にする革新的なエネルギー技術」を指します。
従来の再生可能エネルギー(太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス)に加え、水素・アンモニア・CCS/CCUS・ペロブスカイト太陽電池・浮体式洋上風力・SMR(小型モジュール炉)・核融合発電などが含まれます。
次世代エネルギーが注目される主な背景は以下の3つです。
・2050年カーボンニュートラル目標:化石燃料からの脱却が不可欠で、既存の脱炭素電源だけでは不十分。
・エネルギー安全保障:ウクライナ情勢や中東不安定化を受け、輸入依存型から国産技術重視へのシフト。
・GX投資と国際競争:2023年5月成立のGX推進法に基づき、今後10年間で官民150兆円規模のGX投資が見込まれる。
出典:経済産業省『第7次エネルギー基本計画』(2025年2月閣議決定)
日本の電源構成と今後の方針
日本は脱炭素社会を実現させるために、今後どのような方針を固めているのでしょうか。ここでは、日本の電源構成と今後の方針についてご紹介します。
日本の電源構成の割合は?
2023年度における日本の電源構成の割合は、以下の通りです。
- ・LNG:約32.9%
- ・石炭:約28.3%
- ・再生可能エネルギー:約22.9%(太陽光9.8%・水力7.6%・バイオマス3.7%・風力1.1%・地熱0.3%)
- ・原子力:約8.5%
- ・石油等:約7.0%
2025年2月閣議決定の「第7次エネルギー基本計画」では、2040年度の電源構成として、再生可能エネルギー4〜5割、原子力2割、火力3〜4割(うちアンモニア・水素混焼を1〜2割)を目指す方針が示されました。次世代エネルギーは、この目標達成の中核技術として位置づけられています。
日本が脱炭素社会を実現させるためには?
脱炭素社会を2050年までに実現させるためには、CO2排出量の8割以上を占めているエネルギー分野の取り組みが特に重要です。電力部門においては、再生可能エネルギーや原子力など脱炭素電源を着実に普及させるだけでなく、水素やアンモニア、CCS・CCUSなどのイノベーションを追求し脱炭素化を進めていく方針を固めています。
出典:経済産業省『第7次エネルギー基本計画』(2025年2月閣議決定)https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250218001/20250218001.html
出典:資源エネルギー庁『令和6年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2025)』(2025年6月)https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2025/html/
次世代エネルギーの種類一覧
次世代エネルギーは、用途や技術領域によって以下のように分類できます。本記事では、特に注目度の高い6つを順に解説します。
【発電・燃料系】
・水素エネルギー:燃焼してもCO2を排出しない次世代燃料
・燃料アンモニア:石炭火力との混焼で短期実装可能
・ペロブスカイト太陽電池:軽量・柔軟な日本発の次世代太陽電池
・浮体式洋上風力発電:水深50m超の海域での大規模発電が可能
・SMR(小型モジュール炉)/核融合発電:次世代原子力技術
【CO2回収・利用系】
・CCS・CCUS技術:CO2を回収・貯留・再利用する技術
・DAC(直接空気回収):大気中からCO2を直接回収する技術
水素エネルギー
第6次エネルギー基本計画において、水素は脱炭素社会実現のために重要なエネルギーであると位置づけられています。ここでは、水素エネルギーが注目される理由や水素エネルギーの活用例、企業の取り組み事例をご紹介します。
水素エネルギーが注目される理由
水素エネルギーは、以下のようなメリットがあることから、脱炭素社会実現の鍵を握る次世代発電として注目を集めています。
- 環境に配慮したエネルギーである。
水素は大きくグレー水素・ブルー水素・グリーン水素に分類されます。化石燃料ではなく再生可能エネルギーで製造された水素はグリーン水素と呼ばれており、発電時にCO2を排出しません。化石燃料で製造された水素は発電時にCO2を排出しますが、CCS・CCUS技術などにより実質ゼロにすることができます。

- 様々な資源から製造することができる。
水素は石油や天然ガス、メタノールやエタノール、下水汚泥、廃プラスチックなど様々な資源から製造することができます。輸入に頼らずに国内で資源を調達し水素を製造することができます。
2024年5月成立の「水素社会推進法」に基づき、水素の価格差支援・拠点整備支援が本格稼働しました。経済産業省は2030年に水素導入量300万トン、2050年に2,000万トンを目指す方針を示しています。
出典:経済産業省『水素社会推進法に基づく基本方針』(2025年)https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/hydrogen_society/carbon_neutral/
企業の取り組み事例
- パナソニック株式会社
パナソニックが開発・販売している『H2 KIBOU』は、5kWの家庭用燃料電池エネファームです。業界最高の発電効率を誇り、停電時にも水素だけで発電できることから、災害時にも活用することができます。
出典:Panasonic『家庭用燃料電池「エネファーム」』https://panasonic.biz/appliance/FC/hydrogen/index.html
- トヨタ自動車株式会社
トヨタは燃料電池自動車の開発を積極的に続けており、『MIRAI』を販売しています。燃料電池自動車は、酸素と水素を燃料電池に取り込むことで発電し、車を走らせます。エネルギー効率が良く、補充に時間がかからない、空気を汚さないなどのメリットがあります。
出典:トヨタ自動車株式会社『トヨタの燃料電池自動車(FCEV) MIRAIと水素のFAQ』https://toyota.jp/mirai/station/faq/

燃料アンモニア
第6次エネルギー基本計画において、燃料アンモニアも水素と同様に、脱炭素社会実現のために重要なエネルギーであると位置づけられています。燃料アンモニアが注目される理由や活用例、企業の取り組み事例をみていきましょう。
燃料アンモニアが注目される理由
燃料アンモニアは、燃焼した時にCO2を排出しません。燃料アンモニアの生産・運搬・貯蔵などの技術やサプライチェーンも確立されていることから、実用化しやすい次世代エネルギーとして注目を集めています。

企業の取り組み事例
日本では燃料アンモニアの実用化に向けて企業が中心となり実証実験が行われています。
・JERA
国内最大の火力発電会社JERAは、2024年4月から愛知県の碧南火力発電所4号機で、石炭にアンモニア20%混焼の実証試験を開始しました。世界初の大型商用機での実証で、2030年代の本格運用を目指しています。
出典:株式会社JERA『碧南火力発電所におけるアンモニア20%混焼実証試験』(2024年4月)
・東北電力グループ
LNG火力の脱炭素化を目指し、東北電力グループは新潟火力発電所において水素およびアンモニア混焼実証を進める計画を策定しています。実証は2024〜2025年度に実施される予定です。
CCS・CCUS技術
工場などから排出されるCO2を回収・貯留・再利用により実質ゼロにするというのがCCS・CCUS技術です。CCS・CCUS技術が注目される理由や活用例、企業の取り組み事例をみていきましょう。
CCS・CCUS技術が注目される理由
CCS・CCUS技術はCO2を回収・貯留・再利用することから、大気中のCO2を削減できる技術として注目されています。
CCSは、工場などから排出されたCO2を回収し、地中深くに貯留することで大気中のCO2を削減します。CCUSは、分離・貯留したCO2を資源として再利用することで大気中のCO2を削減します。

ペロブスカイト太陽電池(日本発の次世代技術)
ペロブスカイト太陽電池は、桐蔭横浜大学の宮坂力特任教授が2009年に開発した日本発の次世代太陽電池技術です。ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を持つ材料を、フィルムなどの基板に塗布するだけで作製できるため、製造コストを抑えやすく、軽量・柔軟性に優れることが最大の特徴です。
ペロブスカイト太陽電池のメリット
・軽量・柔軟:曲面・壁面・耐荷重の低い屋根などに設置可能
・低製造コスト:塗布技術で大量生産が可能
・国産資源活用:主材料のヨウ素は日本が世界シェアの約3割を占める
・変換効率の急速な向上:直近10年で約2倍に向上
実用化に向けた動向
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、2030年に既存シリコン太陽電池並みの発電コスト(1kWhあたり14円以下)達成を目標に、積水化学・東芝・アイシンなどの研究開発を支援しています。国内では2025年から実証導入が進み、2030年代の本格普及が期待されています。
出典:NEDO『グリーンイノベーション基金事業:次世代型太陽電池の開発』
浮体式洋上風力発電
浮体式洋上風力発電は、水深50mを超える海域に浮体(フローティング基礎)を設置し、その上に風車を設置する次世代の風力発電方式です。日本は四方を海に囲まれ、近海の水深が深いことから、固定式洋上風力が難しく、浮体式の活用ポテンシャルが非常に大きいとされています。
浮体式洋上風力のメリット
・海洋面積活用:陸地が限られる日本でも大規模導入が可能
・安定発電:陸上より風が強く安定的
・大型化に対応:1基あたり10〜15MWクラスの大型風車を設置可能
日本の取り組み
経済産業省と国土交通省は、2030年までに10GW、2040年までに30〜45GWの洋上風力導入を目標に掲げており、浮体式の本格商用化に向けた実証事業が進められています。2024年には五島市沖や入善町沖で大規模実証が進展しています。
出典:経済産業省・国土交通省『洋上風力産業ビジョン(第2次)』
次世代原子力(SMR・核融合)
従来型の大型原子炉に加え、次世代原子力として「SMR(小型モジュール炉)」と「核融合発電」が注目を集めています。
SMR(小型モジュール炉)
SMRは出力30万kW以下の小型原子炉で、工場でモジュール製造して現地で組み立てるため、建設期間とコストを大幅に削減できます。安全性も従来型より高く、米国・カナダ・英国を中心に商用化が進展しています。日本でも経済産業省が国際協力プロジェクトへの参画を表明しています。
核融合発電
核融合は、水素などの軽い原子核同士を融合させてエネルギーを得る技術で、核分裂と異なり高レベル放射性廃棄物がほとんど発生しないクリーンエネルギーです。フランスで建設中の国際熱核融合実験炉(ITER)に日本も参画しており、2030年代の実証炉、2050年代の商用化が見込まれています。
出典:内閣府『フュージョンエネルギー・イノベーション戦略』(2023年4月)
企業が次世代エネルギーに取り組む方法
次世代エネルギーは技術段階にあるものも多く、企業がすぐに全面導入するのは難しい状況です。しかし、段階的な取り組みは2026年時点でも十分可能です。
ステップ1:自社のCO2排出量を可視化(Scope1・2・3算定)
脱炭素対応の第一歩は、Scope1(自社の直接排出)、Scope2(電力等の間接排出)、Scope3(サプライチェーン全体)の算定です。CO2排出量見える化クラウドなどのツール活用で、削減施策の優先度が明確になります。
ステップ2:再生可能エネルギー電力プランへの切替
既存技術でできる施策として、契約電力会社を再エネ由来プランへ切り替えることでScope2排出を大幅に削減できます。
ステップ3:次世代エネルギー導入の中長期計画策定
水素・アンモニア・ペロブスカイト太陽電池などの導入検討、補助金(GX推進機構の支援等)の活用を組み合わせた中長期計画を策定します。
ステップ4:国際イニシアチブへの参画
SBT(科学的根拠に基づく削減目標)・RE100・TCFDなどへの参画で、投資家・取引先からの評価向上につながります。
出典:環境省『サプライチェーン排出量算定の考え方』
次世代エネルギーに関するよくある質問
1. 次世代エネルギーと再生可能エネルギーの違いは何ですか?
再生可能エネルギーは「自然界に常に存在し、繰り返し利用できるエネルギー(太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス等)」で、すでに広く実用化されているものを含みます。一方、次世代エネルギーは「2050年カーボンニュートラル実現に向け、新たに実用化が進められているエネルギー技術や燃料」を指し、水素・アンモニア・ペロブスカイト太陽電池・浮体式洋上風力・SMR・核融合などが含まれます。両者は重なる部分もあります(ペロブスカイト太陽電池は次世代の再エネに該当)。
2. 次世代エネルギーはいつ実用化されますか?
技術ごとに実用化の時期は異なります。アンモニア混焼や水素・CCUSは2020年代後半に商用化が進展、ペロブスカイト太陽電池は2030年前後の本格普及、浮体式洋上風力は2030〜2040年代に大規模展開、SMRは2030年代の商用化、核融合は2050年代の実証フェーズと、段階的に普及が進む見込みです。
3. 企業が次世代エネルギーに早期に取り組むメリットは何ですか?
①投資家・取引先からのESG評価向上、②GX投資の対象になる可能性、③エネルギーコスト変動リスクの低減、④国際的なサプライチェーン要件への対応、などのメリットがあります。まずはCO2排出量の可視化から始めることで、無理なく段階的な脱炭素対応が可能です。ASUENEのCO2排出量見える化クラウドなどのツールが、その第一歩を支援します。
出典:経済産業省『GX推進法に基づくGX-ETSの概要』(2025年)
まとめ:次世代エネルギーへの理解を深め、脱炭素経営の一歩を踏み出そう
次世代発電方法として期待されている水素エネルギーと燃料アンモニア、火力発電などで排出されてしまうCO2を回収することで実質ゼロにする技術であるCCS・CCUS技術についてご紹介しました。脱炭素化への取り組みが加速する中、エネルギーのあり方にも変化が出てくることが予想されます。注目の次世代発電方法への理解を深め、今後の取り組みの検討につなげていただければと思います。
・次世代エネルギーには、水素・アンモニア・CCS/CCUS・ペロブスカイト太陽電池・浮体式洋上風力・SMR/核融合など多様な技術があり、それぞれ異なる実用化時期と特徴を持つ。
・2025年2月閣議決定の第7次エネルギー基本計画では、2040年度の電源構成で再エネ4〜5割、原子力2割、火力(水素・アンモニア混焼含む)3〜4割を目指す方針が示されている。
・企業はScope1・2・3の可視化→再エネ電力切替→次世代エネルギー導入計画→国際イニシアチブ参画の4ステップで、段階的な脱炭素経営が可能。ASUENEのCO2排出量見える化クラウドの活用が、その第一歩を効率化する。
次世代エネルギー時代の脱炭素経営を、CO2排出量の見える化から始める
水素・アンモニア・ペロブスカイトなどの実用化を見据えた中長期計画には、まず現状のCO2排出量の正確な把握が起点。アスエネはScope1〜3算定をクラウドで支援します。 アスエネの詳細を見る
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