GHGとは「Greenhouse Gas(グリーンハウスガス)」の略で、日本語では温室効果ガスを指します。GHGには二酸化炭素(CO2)・メタン(CH4)・一酸化二窒素(N2O)・代替フロン類(HFC・PFC・SF6・NF3)など7種類が含まれ、大気中の熱を吸収して地球温暖化を引き起こす主な原因となっています。企業活動においては、GHG排出量を国際基準「GHGプロトコル」に基づきScope1・2・3で算定・開示することが、脱炭素経営の基本となっています。
世界に深刻な影響を与えている温暖化を食い止めるには、温室効果のあるGHG(温室効果ガス)排出量削減が重要な鍵を握っています。この記事では、企業から排出されるGHGに関する基本的な知識をご紹介します。GHGに関する理解を深め、企業でGHG排出量削減に向けた取り組みを始めましょう!
INDEX
GHG(温室効果ガス)とは?
気候変動を引き起こす主な原因として、世界各国でGHG排出量削減に向けた取り組みが行われています。ここでは、GHGと温暖化の関係やGHG排出量割合などGHGに関する基本的な知識についてご紹介します。
GHGと温暖化の関係
GHGとは、Greenhouse Gasの略称であり、温室効果ガスと訳されています。人間の活動により排出される主なGHGは、二酸化炭素とメタン、一酸化二窒素、フロンガスです。GHG排出量が増えるとなぜ気温が上昇するのかについて、環境省は次のように説明しています。『太陽光により暖まった地表面は、赤外線として熱を宇宙空間に放射する。大気中に温室効果ガスがあるとそれが熱の一部を吸収し、地球温暖化につながる。』温室効果ガスには大気中にある熱を吸収する性質があるため、大気中の濃度が高いほど気温を上昇させます。

出典:気象庁『温室効果』とは
GHG排出量の割合
経済産業省によると、2019年度の日本におけるGHG排出量はCO2換算で12億1200万トンです。主なGHGの内訳は、以下のように公表されています。
- 二酸化炭素:11億800万トン(91.4%)
- メタン:2840万トン(2.3%)
- 一酸化二窒素:1980万トン(1.6%)
- ハイドロフルオロカーボン類(代替フロン):4700万トン(4.1%)
出典:環境省『2019 年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について』(2021/4/16)(p.2)
GHG排出量算定の国際基準「GHGプロトコル」とは
GHGプロトコルとは、企業がGHG排出量を算定・報告する際の国際的な共通基準です。WRI(世界資源研究所)とWBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)が1998年に共同で発足させたイニシアチブで、現在は世界中の企業・政府・NGOが採用する事実上の標準となっています。
GHGプロトコルでは、企業活動に伴うGHG排出量をサプライチェーン全体で捉え、排出源によってScope1・Scope2・Scope3の3区分に分類します。Scope1〜3の合計を「サプライチェーン排出量」と呼び、これが企業のGHG排出量の全体像を示します。
日本でも、地球温暖化対策推進法(温対法)に基づき特定排出者にScope1・2の算定・報告が義務付けられているほか、SBT・CDP・TCFD・RE100など主要な国際イニシアチブもGHGプロトコル準拠の報告を求めており、企業の脱炭素対応の前提として浸透しています。
出典:環境省『グリーン・バリューチェーンプラットフォーム:Scope1、2排出量とは』
GHGプロトコルにおけるScope1・2・3の違い
GHGプロトコルは企業のGHG排出を、その発生源に応じて以下の3つに区分します。それぞれの定義と算定対象を理解することが、GHG排出量の可視化の第一歩です。
3-1. Scope1:自社からの直接排出
Scope1は、企業が所有・管理する設備からの直接排出を指します。具体的には、工場の燃料燃焼(重油・都市ガス・LPG等)、社用車のガソリン消費、工業プロセスからのCO2排出などが該当します。算定式は「活動量×排出係数」で、自社で直接把握できるため、Scope1〜3の中で最も算定しやすい区分です。
3-2. Scope2:購入エネルギー使用に伴う間接排出
Scope2は、他社から購入した電力・熱・蒸気の使用に伴う間接排出です。電力会社の発電所で排出されたGHGも、その電力を使用する企業の責任として計上します。Scope2には「ロケーション基準(地域の平均排出係数で算定)」と「マーケット基準(契約電力会社の排出係数で算定)」の2種類があり、GHGプロトコルでは両方の開示が求められています。
3-3. Scope3:サプライチェーン全体の間接排出
Scope3は、Scope1・2以外の間接排出すべてを指し、原材料調達・物流・販売した製品の使用・廃棄・従業員の通勤や出張・投資などを含みます。15のカテゴリに細分化されており、多くの企業ではScope3が排出量全体の8〜9割を占めます。算定の難易度は高いものの、サプライチェーン全体での削減を進めるうえで欠かせない区分です。
出典:環境省『サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン』
GHG排出量で最も多い二酸化炭素
日本が排出するGHGの9割以上を占めているのが二酸化炭素です。二酸化炭素排出量を削減することは、温暖化を食い止めるために欠かせない取り組みです。ここでは、二酸化炭素が発生する原因や削減する方法、日本における二酸化炭素排出量の推移をご紹介します。
日本のGHG排出量で最も多い二酸化炭素排出量の推移
日本は2013年度をピークに二酸化炭素排出量が減少しており、2023年度は2013年度比で約25%減少しています。減少した背景には、省エネの取り組みや再生可能エネルギーの拡大などがあります。
2019年度における二酸化炭素排出量の内訳は以下のようになっています。
エネルギー起源9億1,490万トン:内産業部門2億7900万トン、運輸部門1億9900万トン、業務その他部門6470万トン、家庭部門5340万トン、エネルギー転換部門4330万トン
非エネルギー起源792万トン:内工業プロセス及び製品の使用452万トン、廃棄物309万トン、その他31万トン
出典:環境省『2023年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量について』(2025年4月)(p.3)
GHG排出量で最も多い二酸化炭素が発生する主な原因と削減方法
二酸化炭素は、石炭・石油・LNG(天然ガス)の燃焼時に多く排出されます。再生可能エネルギーは、燃焼時においては二酸化炭素を排出しませんが、発電所が建設されてから廃棄まではライフサイクルを通して排出されます。
しかし化石燃料使用による二酸化炭素排出量と比較すると、少ない量です。再生可能エネルギーの使用割合を増やすことや、省エネに取り組むことで、企業は二酸化炭素排出量を削減することができます。
2019年度のIEA省エネレポートによると、自動車の省エネ性能の向上や製造プロセスの改善などにより、世界的に二酸化炭素排出量が大幅に削減しています。企業が省エネを実践する方法として、LEDや産業用ヒートポンプの導入などがあります。
出典:資源エネルギー庁『「CO2排出量」を考える上でおさえておきたい2つの視点』(2019/6/27)
出典:資源エネルギー庁『省エネルギー政策の進捗と今後の方向性-省エネから需要高度化への転換-』(2020/8/7)(p.9)
二酸化炭素に次ぐGHG排出量メタン
メタンは、二酸化炭素に次ぐ排出量が多いGHGです。日本におけるメタンの排出量の推移や、メタンが発生する主な原因や削減方法などについてご紹介します。
日本の二酸化炭素に次ぐGHG排出量メタン排出量の推移
メタンが発生する要因は、湿地や水田、家畜、天然ガスの生産やバイオマス燃焼など様々です。メタンの温室効果作用は二酸化炭素の約28倍(IPCC第6次評価報告書のGWP100値)もあるため、二酸化炭素と比較して排出量が少なくても、削減に取り組む必要があります。
日本におけるメタン排出量は、1990年以降減少しており、以下のように推移しています。メタン排出量が減少している背景には、農業・家畜分野におけるメタン削減に向けた取り組みがあります。
出典:IPCC『AR6 Climate Change 2021: The Physical Science Basis』(2021年8月)
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出典:環境省『2023年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量について』(2025年4月)
出典:経済産業省『温室効果ガス排出の現状等』(p.12)
出典:気象庁『メタン』
二酸化炭素に次ぐGHG排出量メタンが発生する主な原因と削減方法
日本における2019年度のGHG排出量は12億1200万トンで、メタンが占める割合は2.3%の2840万トンです。メタンを最も多く排出しているのは農業・家畜分野で、77%にあたる2190万トンです。
次に多いのが廃棄物の470万トンで、16%を占めています。燃料の燃焼で排出されるメタンの量は4%の110万トンです。日本は、農業・家畜分野におけるメタン排出量を削減するために、メタン発生の少ない稲や家畜の開発、農地・家畜の管理技術、メタン削減量を可視化するシステム開発などに取り組んでいます。
出典:環境省『2019 年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について』(2021/4/16)(p.9)
出典:農林水産省『気候変動に対する農林水産省の取組』(2020/11/20)(p.7)
GHGの一酸化ニ窒素とは
海洋や土壌など自然界にも存在する一酸化二窒素は、大気中の寿命が121年と長く、温室効果が高いガスです。ここでは日本における一酸化二窒素排出量の推移や発生する主な原因、削減方法などについてご紹介します。
日本の一酸化ニ窒素排出量の推移
日本における一酸化二窒素排出量は減少傾向にありましたが、2018年度と2019年度は横ばいです。

出典:環境省『2019 年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について』(2021/4/16)(p.2)を元にアスエネが作成
出典:経済産業省『温室効果ガス排出の現状等』(p.5)
一酸化二窒素が発生する主な原因と削減方法
一酸化二窒素は主に、海洋や土壌、窒素肥料、工業活動などから排出されます。2019年度における日本の一酸化二窒素排出量1980万トンの内、排出量が最も多いのは農業・家畜分野の47%で、燃料燃焼による28%、廃棄物の21%が続きます。
日本では一酸化二窒素の除去設備の設置や適切な土壌管理などによる取り組みにより、一酸化二窒素排出量の削減が行われています。
出典:環境省『一酸化二窒素に係る地球温暖化対策大綱に基づく取組の進捗状況の評価について』(p.6)
フロンガスもGHG
フルオロカーボンが一般的にフロンと呼ばれる物質です。フロンの1つである代替フロンのハイドロフルオロカーボンに、強い温室効果があります。ハイドロフルオロカーボンには塩素が含まれないためオゾン層を破壊しませんが、温室効果は二酸化炭素の数百倍~数万倍あります。
ここでは、日本におけるハイドロフルオロカーボン排出量の推移と発生する主な原因、削減方法などについてご紹介します。
日本のハイドロフルオロカーボン類排出量の推移
日本におけるハイドロフルオロカーボン排出量は、2005年以降増加しています。オゾン層を破壊する原因物質であるフロンガスの代わりに、ハイドロフルオロカーボンが冷媒分野で使用されるようになったためです。

出典:環境省『2019 年度(令和元年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について』(2021/4/16)(p.2)を元にアスエネが作成
ハイドロフルオロカーボンが発生する主な原因と削減方法
2019年度における日本のハイドロフルオロカーボン排出量は4970万トンですが、冷媒分野が9割以上を占めています。今後はハイドロフルオロカーボンに代わるノンフロンガスの技術開発が求められます。
企業がGHG排出量を削減する方法
日本のGHG排出の約7割が事業者由来であり、企業のGHG削減は脱炭素社会実現の鍵を握ります。2026年度からはGX-ETS(排出量取引制度)が本格稼働し、年間CO2排出量10万トン以上の企業約300〜400社に排出量取引が義務化される予定で、企業の対応が急務となっています。
7-1. GHG排出量の可視化(Scope1・2・3算定)
GHG削減の第一歩は、自社のGHG排出量を正確に把握することです。Scope1(直接排出)、Scope2(電力等の間接排出)、Scope3(サプライチェーン全体)を算定することで、削減余地が明確になり、効果的な施策を打てるようになります。CO2排出量見える化クラウドなどのツールを活用すれば、効率的に算定を進められます。
7-2. 再生可能エネルギーの導入と省エネ施策
Scope2削減には、太陽光発電の自家消費、再エネ由来電力プランへの切替、非化石証書の活用などが効果的です。Scope1削減にはLED照明・産業用ヒートポンプ・電動車への切替が有効で、省エネ法に基づく補助金の活用で初期投資を軽減できます。
7-3. SBT・RE100・CDPなどの国際イニシアチブへの参画
SBT(科学的根拠に基づく削減目標)の認定取得、RE100(再エネ100%宣言)、CDPへの気候変動情報開示は、投資家・取引先からの評価向上に直結します。これらはすべてGHGプロトコル準拠の算定が前提となるため、Scope1・2・3の可視化が必須条件です。
出典:経済産業省『GX推進法・GX-ETSの概要』(2025年)
GHGに関するよくある質問
1. GHGとCO2は同じ意味ですか?
いいえ、異なります。CO2(二酸化炭素)はGHGの一種であり、GHG全体に占める割合が約92%と最も大きいため混同されがちですが、GHGにはCO2のほかにメタン(CH4)・一酸化二窒素(N2O)・代替フロン類(HFC・PFC・SF6・NF3)の合計7種類が含まれます。算定の際は、それぞれのGHGに「地球温暖化係数(GWP)」を掛けてCO2換算(CO2e)で合算します。
2. GHG排出量はどう計算しますか?
GHG排出量の基本算定式は「活動量×排出係数」です。活動量は燃料使用量・電力使用量などの活動規模を示す数値、排出係数は単位活動量あたりのGHG排出量を示す係数で、環境省が公表しています。CO2換算する場合は、さらに各GHGの地球温暖化係数を掛けます。
3. 中小企業もGHG排出量を算定する必要がありますか?
温対法上の義務は「特定排出者(年間エネルギー使用量原油換算1,500kL以上等)」に限られますが、サプライチェーンのGHG開示を求める大手取引先が増えており、中小企業にもScope1・2の算定が事実上求められるケースが拡大しています。早めの対応が取引機会の確保につながります。
出典:環境省『算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧』
まとめ:GHG排出量への理解を深め、温暖化を食い止めよう!
GHG排出量削減の取り組みに関心のある法人の皆さまが知っておくべき、GHGに関する基礎知識をお伝えしました。GHGには二酸化炭素の他に、少量でも高い温室効果を持つメタンや一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボン(代替フロン)があります。企業がどんなGHGを多く排出しているかを可視化し、削減に向けた取り組みを行いましょう!
・GHGは二酸化炭素・メタン・一酸化二窒素・代替フロン類の合計7種類で、企業のGHG排出量はGHGプロトコルに基づきScope1・2・3で算定するのが国際標準。
・2026年度からのGX-ETS本格稼働により、年間CO2排出量10万トン以上の企業約300〜400社に排出量取引が義務化される見通しで、企業のGHG削減対応は待ったなしの状況。
・GHG削減の第一歩は排出量の可視化。Scope1・2・3の算定から始め、再エネ導入・省エネ・SBT等の国際イニシアチブ参画へと段階的に取り組むことが、脱炭素経営の王道。
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