水力発電は、水の流れる力を利用して電気を作る再生可能エネルギーの一種で、太陽光・風力・地熱・バイオマスと並ぶ主要な脱炭素電源です。日本では明治時代から開発が進み、2023年度時点で電源構成の約7.6%を占めています。再エネ全体に占める比率は約33%と、太陽光に次ぐ主要再エネ電源です。
2025年2月閣議決定の「第7次エネルギー基本計画」では、2040年度の電源構成で再生可能エネルギー比率を4〜5割に高める方針が示され、その中でも水力発電は天候に左右されない安定電源として重要な役割を担います。特に未開発地点が残る中小水力発電は、地域分散型エネルギーの担い手として導入が活発化しています。本記事では、水力発電の仕組み・種類・メリット・デメリット・最新の制度動向と、企業が再エネに取り組む方法までを2026年最新情報で解説します。
INDEX
水力発電とは?再生可能エネルギーとしての位置づけ
水力発電とは、水の流れる力(位置エネルギー)を利用して水車を回転させ、その回転エネルギーを発電機で電気エネルギーに変換する発電方式です。「再生可能エネルギー特別措置法」では、太陽光・風力・地熱・バイオマスとともに、水力発電は再生可能エネルギーの一種として正式に位置づけられています。
再生可能エネルギーとは「太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなど、永続的に利用できる自然エネルギー」を指し、CO2を排出しない脱炭素電源として、2050年カーボンニュートラル実現の中核技術となっています。水力発電は再エネの中でも最も歴史が長く、技術的に成熟しており、安定供給が可能な点で特に重要視されています。
水力発電の最大の特徴は、太陽光や風力のように天候に左右されず、24時間365日安定的に発電できる「ベースロード電源」として機能できる点です。さらに、揚水式や調整池式は需要に応じて出力を素早く調整できるため、再エネ大量導入時の系統安定化にも不可欠な役割を果たしています。
出典:資源エネルギー庁『再生エネルギーとは|水力発電』https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/renewable/water/index.html
日本の電源構成における水力発電の割合(2023年度最新)
地球温暖化の原因となる温室効果ガス削減の必要性から、世界的に再生可能エネルギーへの転換が広がっています。政府は2050年カーボンニュートラルを表明し、実現に向けて現在の輸出に頼る化石燃料を減らし、再生可能エネルギーを主たる電源とすることを決めました。
太陽光発電だけでない、再生可能エネルギーの種類
再生可能エネルギーといえば、太陽光発電や風力発電を思い浮かべますが、ほかにも水力発電、地熱発電、バイオマス発電等があります。太陽光はさまざまな場所に設置ができ、災害に強い。風力は海の上でも設置が可能で夜間でも発電できるというメリットがあります。一方で、どちらも発電量が天候に左右されるというデメリットがあります。
全体の7.6%。再エネの3割以上を占める水力発電
水資源が豊かな日本では、水力発電が明治時代から発展し、2022年は水力発電導入量では世界第7位でした。また、2023年度の国内における電源構成では、水力発電は全供給量の7.6%となっています。
2023年度の日本の電源構成は、LNG約32.9%、石炭約28.3%、再生可能エネルギー約22.9%(太陽光9.8%・水力7.6%・バイオマス3.7%・風力1.1%・地熱0.3%)、原力約8.5%、石油等約7.0%となっています。
水力発電は、再生可能エネルギー全体(約22.9%)の中で約33%を占めており、太陽光(約43%)に次ぐ主要再エネ電源です。さらに2025年2月閣議決定の「第7次エネルギー基本計画」では、2040年度に再エネ比率を4〜5割に高める方針が示されており、水力発電もその一翼を担う見込みです。
出典:経済産業省『第7次エネルギー基本計画』(2025年2月閣議決定)https://www.meti.go.jp/press/2024/02/20250218001/20250218001.html
出典:資源エネルギー庁『エネルギー白書2025』(2025年)https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2025/html/
出典:資源エネルギー庁『令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)』第2部 エネルギー動向
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2023/pdf/2_2.pdf
現在では、中小水力発電の建設が活発化しており、再生可能エネルギーとして一般にもひろがりを見せています。

出典:資源エネルギー庁『【第213-2-21】日本の水力発電設備容量及び発電電力量の推移』(2021)

出典:資源エネルギー庁『【第213-2-22】水力発電導入量の国際比較(2019年末):IRENA「Renewable Energy Statistics 2019」を基に作成』(2021)

水力発電の仕組みと4つの種類
水力発電は、ダムを思い浮かべることが多いですが、どのように電気が作られ、どのような種類があるのでしょうか。
水力発電のしくみ
水力発電は、水が高いところから低いところへ流れ落ちる勢いによって水車を回して電気を作ります。落差が大きいほど、流れ落ちる水の量が多いほど作られる電気の量は増えます。
出典:資源エネルギー庁『電気の出来る仕組み – 水力発電について』
水力発電の種類
- 貯水池式
大きな池に河川水を貯め、その貯めた水を使って発電します。河川の水の量は季節によって変わりますが、大きな池に溜め込むことによって、電力需要が大きくなる時期でも安定した発電ができます。
- 調整池式
電気の消費量の増減に合わせて池に溜める河川水量を調整し発電します。
- 流れ込み式
河川を流れる水を貯めずに、流れをそのまま発電に利用します。
- 揚水式
電力消費の少ない夜間に下池から上池に水をくみ上げ、日中のピーク時に上池から下池に水を落として発電します。池の水を繰り返し使用する発電方法です。
貯水池式、調整池式、揚水式は需要の変動に応じて稼働量を調整できるのに対し、流れ込み式はほぼ一定の出力で稼働するという特徴があります。
水力発電の4つのメリット
水力発電は再生可能エネルギーの中でも、特に以下の4つの大きなメリットがあります。
4-1. 発電時にCO2を排出しないクリーンな再エネ
水力発電は水の流れる力を利用するため、発電時にCO2を排出しません。設備建設・運用も含めたライフサイクル全体でのCO2排出量は約0.011kg-CO2/kWhと、再生可能エネルギーの中でも最も低い水準にあります。これは石炭火力(約0.975kg-CO2/kWh)の約90分の1で、脱炭素電源として極めて優れています。
4-2. 天候に左右されない安定発電が可能
太陽光や風力は天候に左右されますが、水力発電は河川の水量がある限り安定的に発電できます。さらに貯水池式・調整池式・揚水式は需要のピークに合わせて出力を素早く調整できるため、再エネ大量導入時の系統安定化にも貢献します。
4-3. 純国産エネルギーで燃料費がかからない
水力発電は燃料を必要としないため、化石燃料のような輸入リスク・価格変動リスクがありません。水資源が豊富な日本にとって、エネルギー安全保障の観点からも極めて重要な国産再エネ電源です。
4-4. 設備寿命が長く長期運用が可能
水力発電所は適切なメンテナンスを行えば、設備寿命が60〜100年と非常に長く、初期投資は大きいものの長期的に見れば経済合理性の高い発電方式です。日本には100年以上稼働を続けている水力発電所もあります。
出典:環境省『エネルギー供給GW資料』https://www.env.go.jp/earth/report/h24-03/ref12.pdf

水力発電の4つのデメリット
一方で、水力発電には以下の4つのデメリットも存在します。
5-1. 適地が限られている
水力発電は十分な落差と水量がある場所にしか建設できません。日本国内の大規模水力発電適地はほぼ開発済みで、新規大規模水力発電所の建設余地は限られています。
5-2. 初期投資・建設コストが大きい
ダム建設や発電所建設には数百億円〜数千億円規模の初期投資が必要で、建設期間も10年以上を要するケースが少なくありません。中小水力発電も奥地での建設が中心となるため、地点開発コストが高くなる傾向があります。
5-3. 環境への影響と地域住民の合意
ダム建設は河川生態系・水量バランス・周辺環境への影響が大きく、河川法に基づく環境影響評価や地域住民との合意形成に長い時間を要します。中小水力でも水利権の調整が必要となるため、事業化までのハードルが高い側面があります。
5-4. 河川流量変動による発電量への影響
流れ込み式は河川の流量に発電量が直接影響を受けるため、渇水期・豪雨期で発電量が変動します。気候変動による降水パターンの変化も中長期的な懸念材料となっています。
出典:資源エネルギー庁『再エネガイドブックweb版』
中小水力発電の特徴と導入事例
狭い国土に高低差のある河川が豊富な日本は、130年以上に及ぶ水力発電の歴史があります。大規模ダム水力はすでに開発済みのため、近年は大規模な構造物を必要としない中小水力発電の導入が活発化しています。
一般に出力30,000kW以下のものを「中小水力発電」、うち1,000kW以下を「小水力発電」と呼びます。中小水力発電は河川の流水だけでなく、農業用水・ダムの未利用水・上下水道なども活用できるため、地域分散型の再生可能エネルギー電源として注目されています。
・水の戸沢小水力発電所
水の戸沢の高低差を利用した、東京都檜原村の地元の企業による水力発電です。ノウハウや課題は国の施策を活用した支援を受け、事業化を実現しました。売電収入は次の小水力発電事業の資金や、地域の雇用、課題解決に活用することが検討されています。

出典:資源エネルギー庁『檜原水力発電株式会社(水の戸沢小水力発電所)』
出典:資源エネルギー庁『国の支援施策活用等事例集 | 再エネガイドブックweb版』
・百村第一・第二発電所
栃木県那須塩原市に設置されている百村第一・第二発電所は農業用水路の落差を利用した発電です。発生した電力は一旦電力会社に送電され、運営する野ヶ原土地改良区連合の送・配電線を利用して供給されます。最大出力は合計で120kWです。
出典:国土交通省『小水力発電設置のための手引き』PDF p.14
このように河川の流水を利用するだけでなく、農業用水やダムの未利用水、上下水道を利用したものもあります。また、発電の構造では、低落差でも高効率な”らせん”水車や、減圧バルブによる水圧を利用するもの等があります。中小水力発電はまだまだ開発の余地があり、発展性、将来性が期待されています。
水力発電を支えるFIT制度・FIP制度(最新動向)
FIT制度と、2022年度から始まるFIP制度。水力発電は適性が高い
・FIT制度
FIT制度とは、再生可能エネルギーの固定価格買取制度で、再生可能エネルギーの普及のため、電力会社が電気を一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。買取の対象となる再生可能エネルギーは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスの5つです。買取に要した費用は再生可能エネルギー発電促進賦課金として一般の電気使用者から広く集められています。

・FIP制度
2022年度から、売電時の価格が市場連動型となるFIP制度が導入されることになりました。再エネ発電事業者は自身で卸電力取引市場や相対取引において売電した価格に「プレミアム」を上乗せされた合計分を収入として受け取ることができる制度です。
これは、電力需要と発電量のピークのずれを解消するとともに、再エネ発電事業者に対し、投資インセンティブを確保し、蓄電池併設等によって、電力需要に応じた電力供給を促すことを目的としています。また、賦課金の国民負担を抑制することにもつながります。
この制度を導入することによって、再生可能エネルギーが競争力を伴う産業へと進化し、ひいては主力電源となることが期待されています。
太陽光や風力発電は天候の影響で供給量の調整が難しく、FIP制度を上手に活用するには蓄電池などの調整設備が必要になります。一方で、水力発電は比較的安定した供給力と、需要に合わせた出力調整が可能です。そのため需要・市場価格が高いタイミングでの売電が可能となり、FIP制度への適性が高いとされています。

出典:資源エネルギー庁『再エネ | 日本のエネルギー 2020年度版 「エネルギーの今を知る10の 質問」』
出典:資源エネルギー庁「『エネルギー白書2021』第3部 第3章 第1節 競争力のある再エネ産業への進化 」
FIP制度は2022年4月から施行され、2026年5月時点で運用5年目に入りました。当初は太陽光・風力・バイオマスなどを中心に適用されてきましたが、近年は中小水力発電にも徐々に拡大されています。
水力発電は需要に合わせた出力調整が可能なため、FIP制度との親和性が特に高いとされています。電力需要・市場価格が高いタイミングで売電することで、再エネ事業者の収益性向上が期待されます。さらに、2023年5月成立のGX推進法に基づき、再エネ導入加速化のための支援策が拡充されており、中小水力発電も支援対象となっています。
出典:資源エネルギー庁『なっとく!再生可能エネルギー:FIP制度』
企業が再生可能エネルギー(水力含む)に取り組む方法
企業が脱炭素経営の観点から再生可能エネルギー(水力発電含む)に取り組む方法は、段階的に進めることが可能です。
8-1. CO2排出量の可視化(Scope 1・2・3算定)
脱炭素対応の第一歩は、Scope 1(自社の直接排出)、Scope2(電力等の間接排出)、Scope3(サプライチェーン全体)の算定です。CO2排出量見える化クラウドなどのツール活用により、削減施策の優先順位が明確になります。
8-2. 再エネ電力プランへの切替
水力発電を含む再生可能エネルギー由来の電力プランへの切替は、企業のScope2 排出量を大幅に削減できる即効性の高い施策です。多くの電力会社が「水力100%プラン」「再エネ指定オプション」を提供しており、契約変更だけで企業のScope2排出を実質ゼロにできます。
8-3. 国際イニシアチブへの参画
RE100(事業活動で使用する電力の100%を再エネで賄う)、SBT(科学的根拠に基づく削減目標)、CDPなどの国際イニシアチブへの参画により、投資家・取引先からのESG評価が向上します。RE100加盟企業は水力発電由来の電力も対象として算定でき、調達手段の一つとして広く活用されています。
出典:環境省『再生可能エネルギーの導入支援に係る情報』
水力発電に関するよくある質問
9-1. 水力発電は再生可能エネルギーですか?
はい、水力発電は「再生可能エネルギー特別措置法」で正式に定められた再生可能エネルギーの一種です。水の循環という自然のプロセスによって繰り返し利用できるため、太陽光・風力・地熱・バイオマスと並ぶ主要な脱炭素電源として位置づけられています。発電時にCO2をほとんど排出せず、ライフサイクル全体でのCO2排出量も最低水準(約0.011kg-CO2/kWh)です。
9-2. 中小水力発電と大規模水力発電の違いは何ですか?
出力規模で区別され、一般に出力30,000kW以下のものを「中小水力発電」、うち1,000kW以下を「小水力発電」、30,000kWを超えるものを「大規模水力発電」と呼ぶことが多いです。大規模水力はダム建設を伴うのに対し、中小水力は河川の流水や農業用水・上下水道などを活用でき、環境負荷と建設コストを抑えられる点が特徴です。
9-3. 企業が水力発電を再エネ調達に活用するメリットは何ですか?
①Scope2排出量の大幅な削減、②投資家・取引先からのESG評価向上、③RE100やSBTなど国際イニシアチブの目標達成への貢献、④電力コストの長期的な安定化、⑤地域経済の活性化への貢献、などのメリットがあります。水力由来の電力プラン契約は、最も実施しやすい再エネ調達手段の一つです。ASUENEのCO2排出量見える化クラウドの活用により、再エネ切替の効果を定量的に把握できます。
出典:環境省『RE100、SBT、TCFDなど国際イニシアチブ情報』
まとめ:水力発電は再生可能エネルギー普及の重要な選択肢
水力発電はCO2を発生しない環境にやさしいエネルギーです。水資源が豊富な日本では、今後中小水力の発展が大いに期待されます。
水力発電は天候や季節に関わらず、安定的な発電が見込まれ、災害時にも事業を継続することが可能となります。太陽光発電は立地に適した土地が少なくなりつつあると言われています。導入費用が割高でも、稼働年数は数十年と長期間に渡り、今後FIP制度において投資回収の予見可能性も高いことを考慮すると、水力発電は選択肢の一つになるのではないでしょうか。
地域や事業形態に合わせ、エネルギーも分散させることは、リスクの軽減になるでしょう。自治体と協力することで電気の地産地消を可能にし、地域活性化への貢献もなしえるでしょう。再生可能エネルギーの導入を検討されるなら、事業形態、周辺環境、自治体の連携等を考慮し、選択肢を広げてみてはいかがでしょうか。
・水力発電は「再生可能エネルギー特別措置法」に定められた再生可能エネルギーの一種で、2023年度時点で電源構成の約7.6%、再エネ全体の約33%を占める主要電源。
・メリットは①CO2排出ゼロ、②天候に左右されない安定発電、③純国産エネルギー、④長い設備寿命の4点。デメリットは①適地の制約、②高い初期投資、③環境影響と合意形成、④流量変動の4点。
・水資源が豊富な日本では中小水力発電の発展が期待され、FIP制度との親和性も高い。企業はScope算定→再エネ電力切替→国際イニシアチブ参画の3ステップで、水力を含む再生可能エネルギー導入による脱炭素経営が実現可能。
水力含む再エネ電力への切替を、シンプルな契約変更で実現する
水力発電など再エネ由来電力への切替は、企業のScope2排出を大きく削減できる即効性ある施策です。アスエネは、CO2排出量の見える化に加え、再エネ電力の調達支援や太陽光発電の導入など、企業の脱炭素化を支える削減ソリューションを提供しています。 アスエネの詳細を見る
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