「火力発電」とは、石炭・石油・LNG(液化天然ガス)などの化石燃料を燃焼させて蒸気を作り、その蒸気でタービンを回して電気を作る発電方式です。日本の電源構成の約7割を占める主力電源で、安定供給・出力調整の柔軟性・発電効率の高さといった多くのメリットがある一方、CO2排出量の多さ・燃料の輸入依存・有限資源という課題も抱えています。
2025年2月閣議決定の「第7次エネルギー基本計画」では、2040年度に再生可能エネルギー比率を4〜5割に高める一方、火力発電も水素・アンモニア混焼やCCUSと組み合わせて段階的に脱炭素化する方針が示されました。本記事では、火力発電の仕組み・種類・メリット・デメリット・最新動向と、企業ができる対応策を2026年最新情報で解説します。
INDEX
火力発電とは?仕組みをわかりやすく解説
火力発電とは、化石燃料(石炭・石油・LNGなど)を燃焼させて発生する熱エネルギーで水を沸騰させ、その蒸気でタービン(蒸気機関)を回転させて電気を作る発電方式です。19世紀後半に実用化されて以来、世界中で最も普及している発電方式となっています。
火力発電の基本的なプロセスは以下のとおりです。
①ボイラーで化石燃料を燃焼させ、高温・高圧の蒸気を発生させる
②蒸気でタービンを高速回転させる
③タービンに接続された発電機が電気を作り出す
④使い終わった蒸気は復水器で水に戻し、再びボイラーへ循環させる
近年では、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた「コンバインドサイクル発電(複合発電)」も普及しており、最新型のLNG火力発電所では発電効率63%以上を達成しています。これは従来型火力発電(40%程度)から大幅に向上した数値です。
出典:資源エネルギー庁『火力発電について』
火力発電の3つの種類(石炭・石油・LNG)
火力発電は、使用する燃料によって主に3種類に分類されます。それぞれ特徴と長所・短所が異なります。
2-1. 石炭火力発電
石炭を燃焼させて発電する方式。燃料コストが3種類の中で最も安く、可採年数も153年と長いため経済性に優れます。一方、ライフサイクルCO2排出量はLNG火力の約2倍と多く、脱炭素化に向けて段階的な縮小が進められています。
2-2. 石油火力発電
重油・原油などを燃焼させて発電する方式。燃料の貯蔵が容易で、需要に応じた供給弾力に優れます。価格変動の影響を受けやすく、CO2排出量も比較的多いため、近年は割合が縮小傾向にあります。
2-3. LNG(液化天然ガス)火力発電
液化天然ガスを燃焼させて発電する方式。化石燃料の中でCO2排出量が最も少なく、現代の最新型LNG火力(コンバインドサイクル発電)は発電効率も最高水準です。日本の電源構成で最も大きな割合を占めています。
出典:資源エネルギー庁『なぜ、日本は石炭火力発電の活用をつづけているのか?』
日本の電源構成における火力発電の割合(2026年最新)
2023年度の日本の電源構成は、化石燃料(火力発電)が約68.2%を占め、依然として主力電源の地位を保っています。内訳は以下のとおりです。
・LNG火力:約32.9%
・石炭火力:約28.3%
・石油等:約7.0%
・再生可能エネルギー:約22.9%(太陽光9.8%・水力7.6%・バイオマス3.7%・風力1.1%・地熱0.3%)
・原子力:約8.5%
日本のエネルギー自給率は2023年度時点で約15%と、OECD加盟38か国中37位の低水準です。火力発電の燃料(石油・石炭・LNG)のほぼ全量を輸入に依存しており、国際情勢や為替変動の影響を強く受ける構造になっています。
2025年2月閣議決定の「第7次エネルギー基本計画」では、2040年度に再エネ比率を4〜5割、原子力2割、火力(水素・アンモニア混焼含む)3〜4割を目指す方針が示されました。火力発電は段階的に縮小されますが、安定供給を担う重要電源として水素・アンモニア混焼との組み合わせで脱炭素化が進められます。
出典:経済産業省『第7次エネルギー基本計画』(2025年2月閣議決定)
出典:資源エネルギー庁『エネルギー白書2025』(2025年6月)
火力発電の5つのメリット
火力発電が日本の主力電源として長年活用されてきた理由は、以下の5つの大きなメリットがあるためです。
4-1. 安定した電力供給が可能
火力発電は燃料さえあれば24時間365日、天候に左右されず安定的に発電できます。太陽光や風力のように出力が変動しないため、電力需要を支える「ベースロード電源」として機能します。
4-2. 需要に応じた出力調整が容易
火力発電は出力を素早く調整できるため、電力需要の変動に柔軟に対応できます。特にLNG火力は出力調整が速く、再エネ大量導入時の系統安定化の重要な役割を担います。
4-3. 発電効率が高い
最新型のLNGコンバインドサイクル発電では、発電効率63%以上を達成しています。これは原子力(約30%)や太陽光(約15〜20%)と比較しても高水準で、少ない燃料で多くの電気を作れます。
4-4. 大規模な発電が可能
1基あたり100万kW級の大規模発電所を建設でき、都市部の高い電力需要に効率よく対応できます。建設用地の制約も比較的少なく、大量の電力を一カ所で供給可能です。
4-5. 技術的に確立されており信頼性が高い
火力発電は100年以上の運用実績があり、技術的に成熟しています。設備の信頼性が高く、故障やトラブルへの対応ノウハウも豊富なため、安定運用が可能です。
エネルギー自給率の低さの他にも、火力発電が持つメリットのために、日本では化石燃料への依存率が高くなっています。以降では、火力発電の主な電源別にメリットをご紹介します。
石油火力発電のメリット
資源エネルギー庁は、石油火力発電のメリットは「燃料貯蔵が容易であり、供給弾力に優れていること」であると説明しています。供給弾力とは価格が上昇したときにどれくらい供給量が上がるかのことで、大きいほど良いとされます。価格が上昇した時に供給量が増えるため、供給曲線が緩やかになるためです。
出典:資源エネルギー庁『火力発電について』(2012/2)(p.2)
石炭火力発電のメリット
資源エネルギー庁は、石炭火力発電のメリットについて「安定供給や経済性において優れている」と説明しています。石炭は、石油やLNGと比較すると採掘できる年数が153年で、この数値は石油やLNGの約3倍です。また価格面でも石炭やLNGより安く、採掘できる地域も分散しています。これらの理由から、日本では石油発電の割合は減少していますが、石炭発電割合が増加しています。
出典:資源エネルギー庁『なぜ、日本は石炭火力発電の活用をつづけているのか?~2030年度のエネルギーミックスとCO2削減を達成するための取り組み』(2018/4/6)
LNG(液化天然ガス)火力発電のメリット
LNG火力発電は、石油や石炭と比較すると、ライフサイクル二酸化炭素排出量が少ないという特徴があります。資源エネルギー庁によると、石油火力発電のライフサイクル二酸化炭素排出量が738g-CO2/kWh、石炭火力発電の排出量が942.7g-CO2/kWhであるのに対して、LNG火力発電の二酸化炭素排出量は473.5g-CO2/kWhです。
出典:資源エネルギー庁『「CO2排出量」を考える上でおさえておきたい2つの視点』(2019/6/27)

火力発電の4つのデメリット
一方、火力発電には以下の4つの大きなデメリットも存在します。
5-1. CO2排出量が多く地球温暖化の要因
火力発電は化石燃料を燃焼させるため、大量のCO2を排出します。日本のCO2排出量の約4割は電力部門が占めており、火力発電の比率縮小がカーボンニュートラル実現の最大の課題となっています。
5-2. 燃料を輸入に依存している
日本は石油・石炭・LNGのほぼ全量を海外から輸入しています。原油海外依存度は99.7%、石炭は99.5%、LNGは97.7%(2023年度)と極めて高く、国際情勢の影響を強く受けるエネルギー安全保障上のリスクがあります。
5-3. 化石燃料は有限な資源
石油・石炭・LNGはいずれも有限な資源で、可採年数は石油約47年、LNG約49年、石炭約153年とされています。長期的には枯渇リスクがあり、再生可能エネルギーへの転換が世界的に求められています。
5-4. 大気汚染物質を排出する
CO2以外にも、燃焼によって硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、粒子状物質(PM)などの大気汚染物質が排出されます。日本では脱硫装置・脱硝装置の設置により大幅に削減されていますが、依然として環境負荷の要因となっています。
出典:資源エネルギー庁『エネルギー白書2025』(2025年6月)
電源別ライフサイクルCO2排出量の比較
発電方式によるCO2排出量の差を理解することは、火力発電のデメリットを正しく把握する上で重要です。資源エネルギー庁が発表する電源別のライフサイクルCO2排出量は以下のとおりです。
【化石燃料系】
・石炭火力発電:942.7g-CO2/kWh
・石油火力発電:738g-CO2/kWh
・LNG火力発電:473.5g-CO2/kWh
【脱炭素電源】
・太陽光(事業用):58.6g-CO2/kWh
・風力発電:25.7g-CO2/kWh
・原子力発電:19.4g-CO2/kWh
・地熱発電:13.1g-CO2/kWh
・水力発電:10.9g-CO2/kWh
石炭火力は水力発電の約86倍のCO2を排出します。LNG火力は化石燃料の中で最もCO2が少ないものの、それでも水力発電の約43倍です。2050年カーボンニュートラル実現には、火力発電比率の段階的縮小と、残存する火力発電の脱炭素化(水素・アンモニア混焼、CCUS)が不可欠です。
出典:資源エネルギー庁『「CO2排出量」を考える上でおさえておきたい2つの視点』
火力発電の最新動向(水素・アンモニア混焼・CCUS)
火力発電は段階的縮小と並行して、脱炭素化に向けた新技術の実用化が急速に進んでいます。2026年時点の主要な3つの動向を紹介します。
7-1. アンモニア混焼の本格化
石炭火力にアンモニア(NH3)を混ぜて燃焼させることで、CO2排出量を削減する技術です。アンモニアは燃焼してもCO2を排出しないため、混焼率を高めるほど排出削減効果が大きくなります。国内最大手のJERAは、2024年4月から愛知県の碧南火力発電所4号機でアンモニア20%混焼の商用実証を開始しました。世界初の大型商用機での実証で、2030年代の本格運用を目指しています。
7-2. 水素混焼・水素専焼
LNG火力に水素を混ぜて燃焼させる「水素混焼」と、水素100%で発電する「水素専焼」の技術開発も進んでいます。2025年6月施行の「水素社会推進法」に基づき、水素の価格差支援・拠点整備支援が本格稼働しました。経済産業省は2030年に水素導入量300万トン、2050年に2,000万トンを目指しています。
7-3. CCUS(CO2回収・利用・貯留)
火力発電所から排出されるCO2を回収し、地中に貯留(CCS)したり、化学品・燃料・建材として再利用(CCU)する技術です。日本では北海道苫小牧沖の実証試験を経て、2030年代以降の本格運用が見込まれています。CCUSの実装により、火力発電を継続しながらCO2排出を実質ゼロに近づけることが可能になります。
出典:株式会社JERA『碧南火力発電所におけるアンモニア20%混焼実証試験』(2024年4月)
企業ができる火力発電依存からの脱却方法
企業は電力消費を通じて、間接的に火力発電のCO2排出に関与しています。脱炭素経営の観点から、以下の4つのアプローチで火力発電依存から脱却することが可能です。
8-1. CO2排出量の可視化(Scope1・2・3算定)
脱炭素対応の第一歩は、Scope1(自社の直接排出)、Scope2(電力等の間接排出)、Scope3(サプライチェーン全体)の算定です。電力使用量とCO2排出量を可視化することで、削減施策の優先度が明確になります。CO2排出量見える化クラウドなどのツール活用で効率化が可能です。
8-2. 再生可能エネルギー電力プランへの切替
契約電力会社を再エネ100%プラン、または水力・太陽光・風力指定プランへ切り替えることで、Scope2排出量を大幅に削減できます。即効性が高く、実施しやすい施策の一つです。
8-3. 自家消費型太陽光・PPAモデルの導入
自社の屋根・遊休地に太陽光発電を設置(自家消費型)すれば、火力発電由来の電力購入を減らせます。第三者所有モデル(オンサイトPPA)の活用で初期投資負担を軽減することも可能です。
8-4. 国際イニシアチブへの参画
RE100(再エネ100%宣言)、SBT(科学的根拠に基づく削減目標)、CDP・TCFDなどの国際イニシアチブへの参画は、投資家・取引先からのESG評価向上につながります。
出典:環境省『令和7年版 環境・循環型社会・生物多様性白書』(2025年6月)
火力発電に関するよくある質問
9-1. 火力発電のメリットは何ですか?
主なメリットは①安定した電力供給②需要に応じた出力調整の柔軟性③高い発電効率(LNGコンバインドサイクルで63%以上)④大規模発電が可能⑤技術的成熟と高信頼性の5点です。これらの特長から、日本の電源構成の約7割を占める主力電源として活用されてきました。
9-2. 火力発電はなくなりますか?
2025年2月閣議決定の「第7次エネルギー基本計画」では、2040年度の電源構成で火力(水素・アンモニア混焼含む)を3〜4割と見込んでおり、完全にゼロになる見通しはありません。再エネは天候・季節に左右される変動電源のため、安定供給を担う火力発電は段階的縮小しつつも、水素・アンモニア混焼やCCUSと組み合わせて脱炭素化していく方針です。
9-3. 企業が火力発電依存を減らすメリットは何ですか?
①Scope2排出量の大幅削減によるESG評価向上、②電力コスト変動リスクの低減、③RE100・SBTなど国際イニシアチブへの対応、④EU CBAM等の国際規制への適合、⑤投資家・取引先からの信頼獲得など、多くのメリットがあります。ASUENEのCO2排出量見える化クラウドの活用により、効率的に脱火力・脱炭素経営を進められます。
出典:資源エネルギー庁『2030年度におけるエネルギー需給の見通し』
まとめ:火力発電の理解を深め、脱炭素経営の一歩を踏み出そう
この記事では、法人の皆さまが知っておくべき火力発電の基礎知識についてお伝えしました。火力発電のデメリットを理解し、再生可能エネルギーの取り組みにつなげていただければと思います!
・火力発電は石炭・石油・LNGの3種類があり、日本の電源構成の約68%(2023年度)を占める主力電源。
・メリットは①安定供給②出力調整柔軟性③高い発電効率④大規模発電可能⑤技術的成熟の5点。デメリットは①CO2排出量過多②燃料輸入依存③有限資源④大気汚染物質排出の4点。
・第7次エネルギー基本計画では、2040年度に火力比率3〜4割(水素・アンモニア混焼含む)を目指し、段階的縮小と脱炭素化を並行して進める。企業はScope算定→再エネ電力切替→自家消費型太陽光・PPA→国際イニシアチブ参画の4ステップで脱火力経営が可能。ASUENEのCO2排出量見える化クラウドが、その第一歩を効率化する。
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