温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)とは、地球の大気に存在し、太陽光で温められた地表からの熱を吸収することで地球の気温を保つ役割を持つガスの総称です。代表的なものに、二酸化炭素(CO2)・メタン(CH4)・一酸化二窒素(N2O)・代替フロン類(HFC・PFC・SF6・NF3)の7種類があり、地球温暖化対策推進法でも算定対象として明記されています。
18世紀の産業革命以降、化石燃料の大量消費により大気中の温室効果ガス濃度が急増し、地球の平均気温は約1.1℃上昇しました(IPCC第6次評価報告書)。日本では2025年2月に閣議決定された地球温暖化対策計画で、2035年度に2013年度比60%削減、2040年度に73%削減という新たな目標が示され、2026年度からはGX-ETS(排出量取引制度)の本格稼働も始まります。本記事では、温室効果ガスの種類・影響・最新の削減動向と、企業が取り組むべき方法を徹底解説します。
INDEX
温室効果ガスとは?定義と国際的な位置づけ
日本は、2030年までに温室効果ガスを2013年度比で46%削減することを目標として掲げており、多温室効果ガスとは、大気中の熱を吸収して地表付近の気温を維持する性質を持つガスの総称で、「GHG(Greenhouse Gas)」とも呼ばれます。1992年の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)と1997年の京都議定書において、削減対象となる温室効果ガスが国際的に定義されました。
現在、京都議定書および地球温暖化対策推進法(温対法)で算定対象とされている温室効果ガスは、二酸化炭素(CO2)・メタン(CH4)・一酸化二窒素(N2O)・ハイドロフルオロカーボン類(HFCs)・パーフルオロカーボン類(PFCs)・六フッ化硫黄(SF6)・三フッ化窒素(NF3)の7種類です。これらは「地球温暖化係数(GWP)」を用いて二酸化炭素換算(CO2e)で合算され、企業の温室効果ガス排出量算定の基本単位となっています。
温室効果ガスは、大気中のごく一部(CO2は約0.04%)でありながら、地球の気温維持と気候変動の両面で極めて大きな影響を及ぼします。温室効果ガスがなければ地球の平均気温は約マイナス19℃になると試算されており、生命の維持に欠かせない一方、その急増は地球温暖化の最大要因となっています。
出典:環境省『地球温暖化対策推進法』/IPCC『AR6 Climate Change 2021:The Physical Science Basis』(2021年8月)
温室効果ガスの7種類と特徴(最新IPCC AR6準拠)
温室効果ガスは、京都議定書および温対法に基づき以下の7種類が算定対象として定められています。各ガスにはIPCC第6次評価報告書(AR6)に基づく地球温暖化係数(GWP100)が設定されており、温室効果の強さが二酸化炭素を「1」とした倍率で示されます。
1. 二酸化炭素(CO2)
温室効果ガスの中で最も代表的なガスで、日本の総排出量(2023年度)のうち約92.3%を占めています。化石燃料の燃焼(発電・産業・運輸・家庭)が最大の発生源です。地球温暖化係数は「1」(基準値)ですが、絶対量の多さから温暖化への寄与度は最大です。
2. メタン(CH4)
天然ガスの主成分で、水田・家畜の腸内発酵(牛のげっぷ)・廃棄物埋立地などから発生します。温対法対象の温室効果ガスの中ではCO2に次ぐ排出量で、地球温暖化係数は約28倍(IPCC AR6のGWP100)と高く、短期的な温暖化対策で削減効果が大きいガスとして注目されています。
3. 一酸化二窒素(N2O)
農業用肥料の使用、燃料の燃焼、工業プロセスから発生します。地球温暖化係数は約273倍(IPCC AR6のGWP100)で、大気中の寿命は約109年と長く、長期的に温暖化に影響を及ぼし続けます。
4. ハイドロフルオロカーボン類(HFCs/代替フロン)
エアコンや冷蔵庫の冷媒、スプレーの噴射剤として使用されます。オゾン層を破壊する特定フロンの代替品として開発されましたが、地球温暖化係数は数百〜数万倍と極めて高く、フロン排出抑制法による回収・破壊が義務化されています。
5. パーフルオロカーボン類(PFCs)
半導体製造プロセスや金属精錬で使用されます。地球温暖化係数は数千〜1万倍超で、大気中の寿命が数千年と極めて長いのが特徴です。
6. 六フッ化硫黄(SF6)
電力設備の絶縁ガスとして使用されます。地球温暖化係数は約25,200倍(IPCC AR6)と、温室効果ガス全7種の中で最も高い数値です。
7. 三フッ化窒素(NF3)
液晶パネルや半導体製造の洗浄ガスとして使用されます。地球温暖化係数は約17,400倍で、2013年の京都議定書改正で算定対象に追加された比較的新しい温室効果ガスです。
出典:IPCC『AR6 Climate Change 2021:The Physical Science Basis』(2021年8月)/環境省『算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧』
日本の温室効果ガス排出量と部門別シェア(2023年度最新)
環境省によると、2023年度の日本の温室効果ガス排出量はCO2換算で約10億1,700万トンで、2013年度比で27.1%減少しました。主な温室効果ガスの内訳は、以下のように公表されています。
・二酸化炭素(CO2):約9億8,870万トン(約92.3%)
・メタン(CH4):約2,940万トン(約2.7%)
・一酸化二窒素(N2O):約1,920万トン(約1.8%)
・代替フロン類(HFC・PFC・SF6・NF3):約3,330万トン(約3.1%)
部門別シェアの最新動向
2023年度のエネルギー起源CO2の部門別排出量シェアは、産業部門が約34.7%、運輸部門が約18.9%、業務その他部門が約17.1%、家庭部門が約14.6%、エネルギー転換部門が約8.2%となっています。事業者由来(産業+運輸+業務その他+エネルギー転換)は合計約79%と、依然として企業活動由来の排出が支配的です。
出典:環境省『2023年度の我が国の温室効果ガス排出量及び吸収量について』(2025年4月)
国際的な温室効果ガス削減の枠組み(京都議定書〜パリ協定〜2025年NDC)
2023年12月のCOP28(UAE・ドバイ)では、初めて「化石燃料からの脱却(transitioning away from fossil fuels)」が成果文書に明記され、2030年までに再生可能エネルギー設備容量を世界全体で3倍にする目標が合意されました。さらに2024年11月のCOP29(アゼルバイジャン・バクー)では、先進国から途上国への気候資金を年間3,000億ドルに引き上げる新たな目標が採択されています。各国は2025年2月までに2035年目標を含む新NDC(国が決定する貢献)を国連に提出することが求められており、日本も2025年2月に新NDCを国連に提出しました。
出典:外務省『国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)の最新動向』/UNFCCC『New Collective Quantified Goal on Climate Finance』
日本の温室効果ガス削減目標と最新政策(GX推進法・GX-ETS)
日本政府は2025年2月、地球温暖化対策計画と新NDC(国が決定する貢献)を閣議決定し、以下の温室効果ガス削減目標を国際公約しました。
・2030年度:2013年度比46%削減(従来目標を維持、努力目標として50%の高みも継続)
・2035年度:2013年度比60%削減(新規)
・2040年度:2013年度比73%削減(新規)
・2050年:カーボンニュートラル(実質ゼロ)
GX推進法・GX-ETSの本格稼働
これらの目標達成に向け、2023年5月に成立した「GX推進法」に基づき、今後10年間で官民150兆円規模のGX投資の促進が図られています。中でも企業実務に最も大きな影響を与えるのが、2026年度から本格稼働する「GX-ETS(排出量取引制度)」です。GX-ETSでは、年間CO2排出量10万トン以上の特定事業者(約300〜400社)に排出量取引が義務化される見通しで、企業の温室効果ガス削減対応は待ったなしの状況となっています。
出典:環境省『地球温暖化対策計画』(2025年2月閣議決定)/経済産業省『GX推進法・GX-ETSの概要』(2025年)
企業が温室効果ガスを削減する5つの方法
日本の温室効果ガス排出の約8割が事業者由来であり、企業の削減取り組みは脱炭素社会実現の鍵を握ります。2026年度のGX-ETS本格稼働を控え、企業に求められる温室効果ガス削減の方法を5つに整理します。
1. 温室効果ガス排出量の可視化(Scope1・2・3算定)
削減の第一歩は、自社の温室効果ガス排出量を正確に把握することです。GHGプロトコルに基づき、Scope1(自社の直接排出)・Scope2(電力等の間接排出)・Scope3(サプライチェーン全体)を算定することで、削減余地が明確になります。CO2排出量見える化クラウドなどのツール活用により、効率的に算定を進められます。
2. 再生可能エネルギーの導入(Scope2削減)
Scope2削減には、太陽光発電の自家消費(オンサイトPPA)、再エネ由来電力プランへの切替、非化石証書の活用などが効果的です。契約電力会社を再エネ100%プランへ切り替えるだけで、Scope2排出を実質ゼロにできます。
3. 省エネ施策と燃料転換(Scope1削減)
Scope1削減には、LED照明・産業用ヒートポンプ・高効率ボイラーへの更新、社用車の電動車・ハイブリッド車への切替、化石燃料からの燃料転換(水素・アンモニア・電化)などが有効です。省エネ法に基づく補助金(中小企業向けには「省エネ補助金」「ものづくり補助金」など)の活用で初期投資を軽減できます。
4. サプライチェーン全体での削減(Scope3対応)
Scope3は多くの企業で排出量全体の8〜9割を占めるため、サプライヤーへの算定要請・削減支援(サプライヤーエンゲージメント)が不可欠です。2025年に環境省が公表した「サプライヤーエンゲージメント実践報告」では、要請型・支援型の両アプローチが解説されています。
5. 国際イニシアチブへの参画と情報開示
SBT(科学的根拠に基づく削減目標)の認定取得、RE100(再エネ100%宣言)、CDP気候変動情報開示、TCFD/ISSB対応は、投資家・取引先からの評価向上に直結します。2025年3月に公表されたSSBJサステナビリティ開示基準も人的資本・気候関連指標の開示を求めており、温室効果ガス排出量データの可視化が必須条件です。
出典:環境省『グリーン・バリューチェーンプラットフォーム』/経済産業省『GX推進法・GX-ETSの概要』
温室効果ガスに関するよくある質問
1. 温室効果ガスとCO2は同じものですか?
いいえ、CO2(二酸化炭素)は温室効果ガスの一種です。温室効果ガスにはCO2のほかに、メタン(CH4)・一酸化二窒素(N2O)・代替フロン類(HFC・PFC・SF6・NF3)の合計7種類が含まれます。日本の温室効果ガス全体に占めるCO2の割合は約92.3%(2023年度)と最大ですが、メタン(GWP約28倍)や代替フロン(GWP数百〜数万倍)など、CO2より温室効果の強いガスも多く存在します。温室効果ガスは「CO2換算(CO2e)」で合算するのが国際標準です。
2. 温室効果ガスはなくなったほうがよいですか?
いいえ、温室効果ガス自体は地球の気温維持に必要不可欠なものです。温室効果ガスがなければ地球の平均気温は約マイナス19℃となり、生命が存在できる環境ではなくなります。問題は、産業革命以降の人為的な排出によって温室効果ガス濃度が急増し、自然のバランスが崩れていることです。目指すべきは「温室効果ガスのゼロ化」ではなく、「人為的な排出を吸収量と均衡させる=カーボンニュートラル」の達成です。
3. 中小企業も温室効果ガスを算定する必要がありますか?
温対法上の義務は「特定排出者(年間エネルギー使用量原油換算1,500kL以上等)」に限られますが、サプライチェーンを通じた排出開示を求める大手取引先が急増しており、中小企業にもScope1・2の算定が事実上求められるケースが拡大しています。2026年度のGX-ETS本格稼働で大手企業の排出削減圧力が高まると、サプライヤーである中小企業への要請も一層強まる見込みです。ASUENEのCO2排出量見える化クラウドなど、中小企業向けの簡易算定ツールの活用で、無理なく早期対応が可能です。
出典:環境省『算定・報告・公表制度における算定方法・排出係数一覧』
まとめ:温室効果ガスへの理解を深め、脱炭素経営の一歩を踏み出そう
・温室効果ガスは二酸化炭素・メタン・一酸化二窒素・代替フロン類(HFC・PFC・SF6・NF3)の合計7種類で、IPCC AR6の地球温暖化係数(GWP100)で換算・合算するのが国際標準。
・日本の2023年度温室効果ガス排出量は約10億1,700万トン(2013年度比27.1%減)で、事業者由来が約8割を占める。CO2の割合は約92.3%と最大。
・2025年2月閣議決定の地球温暖化対策計画では、2035年度60%・2040年度73%削減という新目標が設定された。2026年度からはGX-ETS(排出量取引制度)の本格稼働により、年間CO2排出量10万トン以上の企業約300〜400社に排出量取引が義務化される見通し。
・企業の温室効果ガス削減は、①Scope1・2・3算定の可視化 ②再エネ導入 ③省エネ・燃料転換 ④サプライチェーン削減 ⑤国際イニシアチブ参画の5ステップが基本。早期の取り組み開始が、投資家・取引先からの評価向上と事業継続性の確保につながる。
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