「地熱発電」とは、地下1,000〜3,000メートルにあるマグマだまりの熱エネルギーを利用し、地熱流体(高温・高圧の蒸気や熱水)でタービンを回転させて発電する、再生可能エネルギーの一つです。CO2排出量が極めて少なく(13.1g-CO2/kWh)、天候に左右されず安定的に発電できるため、純国産エネルギーとして注目されています。
日本の地熱資源量は約2,300万kWで世界第3位(米国・インドネシアに次ぐ)。2025年2月閣議決定の「第7次エネルギー基本計画」では、2040年度に地熱発電の設備容量を150万kW以上に拡大する目標が示されました。本記事では、地熱発電の仕組み・種類・メリット・デメリット・最新動向(次世代地熱発電・EGS)を2026年最新情報で徹底解説します。
INDEX
地熱発電の仕組みをわかりやすく解説
地熱発電の仕組みは、地下深くにあるマグマだまりの熱エネルギーを利用して、蒸気でタービンを回転させ電気を作るというものです。基本原理は火力発電と同じ「蒸気でタービンを回す」ですが、燃料を燃やす代わりに地球内部の熱を使うため、CO2排出量が非常に少ないのが特徴です。
1-1. 地熱とは何か
「地熱」とは地球内部に存在する熱エネルギーのことで、地球の中心温度は約6,000℃に達します。火山地帯の地下には「マグマだまり」と呼ばれる熱源があり、その周辺では地下水が高温・高圧の蒸気や熱水(地熱流体)となって溜まっています。
1-2. 地熱貯留層とは
地熱貯留層とは、地下1,000〜3,000メートルにある、蒸気・熱水・岩石が混在する熱エネルギーの貯まり場所です。透水性のある岩盤層の中に地熱流体が溜まっており、ここから蒸気を取り出して発電に利用します。
1-3. なぜ地熱発電はCO2排出量が少ないのか
地熱発電は、化石燃料を燃焼させず、地下の熱で発生した蒸気を使うため、燃焼に伴うCO2排出がほぼありません。電源別ライフサイクルCO2排出量は13.1g-CO2/kWhで、太陽光(58.6g)・風力(25.7g)と比べても少なく、水力(10.9g)に次ぐ低水準です。
出典:資源エネルギー庁『地熱発電の開発』
出典:資源エネルギー庁『「CO2排出量」を考える上でおさえておきたい2つの視点』
地熱発電の3つの種類(ドライスチーム・フラッシュ・バイナリー)
地熱発電は、地熱流体の温度・状態によって主に3種類に分類されます。
2-1. ドライスチーム発電方式
地下から噴き出る蒸気を直接タービンに送り発電する最もシンプルな方式。地熱流体が高温の蒸気で構成されている場合に採用されます。世界で最初の地熱発電所(イタリア・ラルデレロ、1904年)もこの方式でした。日本国内では稀少です。
2-2. フラッシュ発電方式(蒸気発電方式)
200℃以上の高温熱水を地下から汲み上げ、気水分離器で蒸気と熱水に分離し、蒸気でタービンを回転させる方式。日本で最も採用されている方式です。
・シングルフラッシュ発電:気水分離器で1回だけ分離する方式。日本国内で主流。
・ダブルフラッシュ発電:分離した熱水をさらに減圧してもう一度蒸気を取り出す方式。シングルフラッシュより出力が10〜25%向上。
2-3. バイナリー発電方式
地熱流体が150℃以下の中低温の場合、水よりも沸点の低い媒体(アンモニア・代替フロンなど)を熱交換で蒸発させ、その蒸気でタービンを回す方式。温泉地など中低温熱源を利用できるため、近年の新設地熱発電所で増えています。
出典:資源エネルギー庁『地熱発電の開発』
地熱発電の発電プロセス4ステップ
地熱発電の発電プロセスは、以下4つのステップで構成されます。
ステップ①:生産井(せいさんせい)の掘削
地下1,000〜3,000メートルまで生産井(井戸)を掘り、地熱貯留層に達します。掘削には数か月から1年以上かかる場合もあります。
ステップ②:地熱流体の汲み上げ
地熱貯留層から、高温・高圧の蒸気や熱水を汲み上げます。
ステップ③:タービンの回転による発電
汲み上げた蒸気でタービンを回転させ、接続された発電機で電気を発生させます。
ステップ④:還元井(かんげんせい)への熱水戻し
発電に使用した後の熱水は、還元井(別の井戸)から地下に戻します。これにより地熱貯留層が枯渇しないように資源を循環させます。
地熱発電の4つのメリット
4-1. CO2排出量が極めて少ない
地熱発電のライフサイクルCO2排出量は13.1g-CO2/kWhで、再生可能エネルギーの中でも最も低水準(水力10.9gに次ぐ)です。石炭火力(942.7g-CO2/kWh)の約72分の1で、脱炭素電源として極めて優れています。
4-2. 天候・季節・時間帯に左右されない安定供給
地熱発電は地下の熱源を利用するため、太陽光(夜間・曇天で発電不可)や風力(無風時発電不可)と異なり、24時間365日安定的に発電できます。設備利用率は約70〜80%と再エネの中で最高水準で、火力発電のベースロード電源代替として期待されています。
4-3. 純国産エネルギー(資源量は世界第3位)
日本の地熱資源量は約2,300万kWで、米国(3,000万kW)・インドネシア(2,800万kW)に次ぐ世界第3位。火力発電の燃料(石油・石炭・LNG)は99%以上を輸入に依存していますが、地熱は100%純国産で、エネルギー安全保障に大きく貢献します。
4-4. 燃料コストがかからない
地熱は地下の熱を継続的に利用するため燃料費が不要。原油・LNG価格の高騰や為替変動の影響を受けにくく、長期的に安定したコストで電力を供給できます。
出典:資源エネルギー庁『「CO2排出量」を考える上でおさえておきたい2つの視点』
地熱発電の4つのデメリット
5-1. 開発コストが高く時間がかかる
地熱発電の開発には、地質調査・地盤調査・試掘・本掘削など膨大なプロセスが必要で、開発開始から運転開始まで10〜15年、初期投資は数百億円規模に達します。掘削しても想定通りの蒸気量が得られない「掘削リスク」も存在します。
5-2. 立地が限定される(火山地帯のみ)
地熱発電は火山地帯近くでしか開発できないため、日本では北海道・東北(八幡平・湯沢など)・九州(大分・霧島など)に集中しています。立地条件の制約が大きいデメリットです。
5-3. 国立公園・温泉地との調整が必要
日本の地熱資源の8割は、国立・国定公園内に存在します。自然公園法による開発制限や、温泉地住民との調整、景観保全への配慮が必要で、社会的受容性の確保が課題です。
5-4. 温泉枯渇・地盤沈下のリスク
過剰な地熱流体の取水は、温泉源の枯渇や地盤沈下を引き起こすリスクがあります。還元井による熱水戻しや、適切な持続可能採取量の管理が必須です。
日本の地熱発電の現状(2026年最新)
2024年度時点で、日本の地熱発電設備容量は約61万kW、年間発電電力量は約26億kWh(電源構成の0.3%)です。世界第3位の地熱資源量(2,300万kW)に対し、開発が進んでいるのは2.6%程度にとどまります。
6-1. 主要な地熱発電所
国内最大は岩手県の葛根田地熱発電所(出力80MW、1978年運転開始)。九州電力の八丁原発電所(出力110MW)、東北電力の松川地熱発電所(日本初の地熱発電所、1966年運開)などが稼働中です。
6-2. 第7次エネルギー基本計画の目標
2025年2月閣議決定の「第7次エネルギー基本計画」では、2040年度の地熱発電設備容量を150万kW以上に拡大する目標が示されました。これは現状の約2.5倍に相当します。
6-3. 自然公園法の規制緩和(2015年)
国立・国定公園内での地熱発電開発に関し、2015年に環境省が規制緩和(特別地域内での開発許可の運用見直し)を行い、地熱開発の道が広がりました。
出典:経済産業省『第7次エネルギー基本計画』(2025年2月閣議決定)
出典:資源エネルギー庁『エネルギー白書2025』(2025年6月)
電源別ライフサイクルCO2排出量の比較
地熱発電のCO2排出量の少なさは、他電源と比較すると明確になります。
・石炭火力:942.7g-CO2/kWh
・石油火力:738g-CO2/kWh
・LNG火力:473.5g-CO2/kWh
・太陽光(事業用):58.6g-CO2/kWh
・風力発電:25.7g-CO2/kWh
・原子力発電:19.4g-CO2/kWh
・地熱発電:13.1g-CO2/kWh
・水力発電:10.9g-CO2/kWh
地熱発電のCO2排出量は石炭火力の約72分の1、太陽光(事業用)の約4分の1。再エネの中でも水力と並び最低水準で、2050年カーボンニュートラル実現に欠かせない電源です。
出典:資源エネルギー庁『「CO2排出量」を考える上でおさえておきたい2つの視点』
地熱発電の最新動向(次世代地熱・EGS)
地熱発電は、従来型の制約を超える新技術の実用化が世界で進んでいます。2026年時点の主要な3つの動向を紹介します。
8-1. EGS(高温岩体発電・拡張地熱システム)
EGS(Enhanced Geothermal System)は、地熱流体がない高温の乾燥岩体に水を注入し人工的に蒸気を作る次世代地熱発電技術。火山地帯以外でも開発可能となり、地熱発電の立地制約を大幅に解消します。米国・アイスランドで実証が進んでいます。
8-2. 超臨界地熱発電
地下3〜5km、400℃以上の超高温超高圧領域から「超臨界水」を取り出し発電する技術。通常の地熱発電の数倍の出力が得られる可能性があります。日本では2018年から国家プロジェクトとして研究開発が進んでいます。
8-3. 温泉発電(小型バイナリー)
既存の温泉(70〜100℃程度)を活用した小規模バイナリー発電の導入が、地方自治体・観光事業者で広がっています。FIT制度の対象として、別府温泉・草津温泉などで実例が増加中。
出典:NEDO『超臨界地熱発電技術の研究開発』
企業が地熱発電を含む再エネに取り組む方法
企業が脱炭素経営の観点から、地熱発電を含む再生可能エネルギーに取り組む方法は段階的に進めることが可能です。
8-1. CO2排出量の可視化(Scope1・2・3算定)
脱炭素対応の第一歩は、Scope1(自社の直接排出)、Scope2(電力等の間接排出)、Scope3(サプライチェーン全体)の算定です。CO2排出量見える化クラウドなどのツール活用により、削減施策の優先順位が明確になります。
8-2. 再エネ電力プランへの切替
地熱発電を含む再生可能エネルギー由来の電力プランへの切替は、企業のScope2排出量を大幅に削減できる即効性の高い施策です。多くの電力会社が「地熱100%プラン」「再エネ指定オプション」を提供しており、契約変更だけで企業のScope2排出を実質ゼロにできます。
8-3. 国際イニシアチブへの参画
RE100(事業活動で使用する電力の100%を再エネで賄う)、SBT(科学的根拠に基づく削減目標)、CDPなどの国際イニシアチブへの参画により、投資家・取引先からのESG評価が向上します。地熱発電由来の電力も対象として算定可能で、調達手段の一つとして活用されています。
出典:環境省『再生可能エネルギーの導入支援に係る情報』
地熱発電に関するよくある質問
9-1. 地熱発電の仕組みを簡単に教えてください
地下1,000〜3,000メートルにあるマグマだまりの熱で発生した蒸気(地熱流体)を地上に汲み上げ、その蒸気でタービンを回して発電する仕組みです。基本原理は火力発電と同じですが、燃料を燃やさないためCO2排出量が極めて少ない(13.1g-CO2/kWh)のが特徴です。日本での主流はシングルフラッシュ発電方式です。
9-2. 地熱発電と火力発電の仕組みの違いは何ですか?
最大の違いは「熱源」です。火力発電は化石燃料(石炭・石油・LNG)を燃焼させて蒸気を作るのに対し、地熱発電は地下のマグマだまりの熱で天然に発生した蒸気を利用します。火力発電のCO2排出量はLNG火力で473.5g-CO2/kWhですが、地熱発電は13.1g-CO2/kWhと約36分の1。脱炭素電源として優れています。
9-3. 企業が地熱発電を利用するメリットは何ですか?
①Scope2排出量の大幅削減によるESG評価向上、②電力コスト変動リスクの低減(燃料費不要のため)、③RE100・SBT等への対応、④国内エネルギー安全保障への貢献など、多くのメリットがあります。地熱由来電力プランやJ-クレジット(地熱由来)の活用で、企業の脱炭素経営を効率化できます。ASUENEのCO2排出量見える化クラウドで、再エネ切替効果を可視化することが可能です。
出典:資源エネルギー庁『2030年度におけるエネルギー需給の見通し』
まとめ:地熱発電のメリットを理解し、脱炭素経営の一歩を踏み出そう
メリット・デメリットを含めて、あらゆる角度から地熱発電を解説しました。まだまだ課題もある地熱発電ですが、本格的な開発も進められており、再エネの中でも重要なエネルギーであることは間違いありません。
企業の環境価値を高めるためにも、可能性の高い再エネは常に注目する必要があります。地熱発電を含めた再エネの導入を検討し、ぜひ未来に貢献する企業へと踏み出してください!
・地熱発電の仕組みは、地下1,000〜3,000mのマグマだまりの熱で発生した蒸気でタービンを回し発電するというもの。発電方式はドライスチーム・フラッシュ・バイナリーの3種類。
・CO2排出量は13.1g-CO2/kWhと再エネ中最低水準(水力に次ぐ)。日本の地熱資源量は世界3位の2,300万kWで、純国産エネルギーとして安全保障にも貢献。
・第7次エネルギー基本計画では2040年度に150万kW以上を目指し、EGS・超臨界地熱発電など次世代技術も実用化に向け開発が進む。企業はScope2再エネ切替や地熱由来J-クレジット活用で脱炭素経営を加速できる。ASUENEのCO2排出量見える化クラウドが、その第一歩を効率化する。
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