国内有数の総合シンクタンクとして、経済・ITから科学技術まで幅広い領域で社会課題の解決に取り組む株式会社三菱総合研究所(MRI)。同社のエネルギー・サステナビリティ事業部門は、約180名のコンサルタント・研究員を擁し、GX・脱炭素、再エネ大量導入、電力市場改革、資源循環といった現代社会の重要課題に挑んでいます。今回は、同部門の部門長を務める田中宏氏に、部門の事業内容や組織文化、そして「Compass for green future(グリーンな未来への羅針盤)」というビジョンに込めた想い、求める人物像までを伺いました。
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総合シンクタンクとして社会課題の解決に挑む三菱総合研究所
――まずは、三菱総合研究所という会社について教えてください。
田中氏:当社のミッションは「社会課題を解決し、豊かで持続可能な未来を共創する」、ビジョンは「未来を問い続け、変革を先駆ける」というものです。これは当社が長年大切にしてきた価値観であり、多くの社員にとっての共通の拠り所になっています。
特徴としては、経済・ITから科学技術まで幅広い領域をカバーする「総合シンクタンク」であることが挙げられます。複雑かつ複数の領域にまたがる課題に対して、横断的に解決策を提示できることが、お客様から見た強みであり、働く側にとっても魅力になっていると感じています。
社員構成としては理系出身者が6〜7割を占めていますが、文系の社員もあらゆる学部・学科の出身者が活躍しており、そこも当社が「総合シンクタンク」と呼ばれる所以かもしれません。中途採用も毎年積極的に行っており、ここ数年は新卒採用とほぼ同数規模で採用しています。現在、社員の3〜4割が中途入社者です。バックグラウンドの多様な人材が集まる組織です。
――会社全体としての特徴や強みはどこにあるとお考えでしょうか。
田中氏:歴史的に官公庁向けの仕事に強みを持っており、現在も全社で見ると官の比率が高めです。とはいえ民間が弱いわけではなく、両方をバランスよく展開しています。
また、社内文化としては、役職にあまり関係なくフラットな雰囲気の中で、一人ひとりの裁量が大きいことが大きな特徴です。年功序列ではなく、若い人でも上の役割を担える人を積極的に登用していく一方で、「アップ・オア・アウト」のような厳しさはありません。長期的にキャリアを形成できる仕組みを意識しています。実際、平均年齢がそれなりに高いのは、長く勤めてくれる方が多いということの裏返しでもあります。
入社後の研修・育成にも力を入れており、社内組織「MRIアカデミー」を立ち上げています。キャリア入社の方には入社後3日間の導入研修を実施し、人事部による入社時と半年後の面談も行うなど、キャリア形成への支援は手厚いと自負しています。

エネルギー・サステナビリティ事業部門の組織と事業領域
――田中様が率いる「エネルギー・サステナビリティ事業部門」について教えてください。
田中氏:当部門は約180名のコンサルタント・研究員を擁する組織で、「GX本部」「電力・エネルギー本部」「新事業開発センター」という2つの本部と1つのセンターで構成されています。
全社のコンサルティング・サービス機能は5つの事業部門に分かれていますが、当部門は「医療・介護事業部門」「BA・AI事業部門」と並んで「集中領域」として位置づけられており、今後の成長を期待されている事業部門です。
「GX本部」は、サーキュラーエコノミー、サステナビリティ経営を担う「サーキュラーエコノミーグループ」水素・バイオ燃料などの脱炭素燃料、カーボンプライシングを担う「脱炭素イノベーショングループ」、太陽光・風力といった再生可能エネルギーの普及促進を担う「再エネ産業戦略グループ」、そしてエネルギー・サステナビリティ事業分野の海外事業を担う「海外事業推進グループ」の4グループで構成されています。官公庁・民間事業者双方の仕事を幅広く手掛けています。
「電力・エネルギー本部」は3つのグループに分かれており、エネルギーを使う需要家側を担う「デマンドサイドイノベーショングループ」、電力を運ぶ送配電・電力市場側を担う「電力システムイノベーショングループ」、そして電気事業者の経営改善やシステムモダナイズを担う「電力システムソリューショングループ」があります。電力システム工学を専攻していた人材が多数在籍しているのも、当部門ならではの特徴です。
――「新事業開発センター」というのは独特な存在ですね。
田中氏:おっしゃる通り、これは当社の中でもちょっと変わった部署です。他部門・本部は基本的にクライアントワーク中心ですが、新事業開発センターはサービスや製品を自ら先行投資して作り、それを販売していくというスタイル。事業会社のような事業創出に挑戦している組織です。
具体的には、蓄電池の最適運用サービス「MERSOL」、送配電網の負荷予測サービス「BlueGrid」、電力市場の分析プラットフォーム「MPX」(こちらはすでにMRIからカーブアウトし、オランダ企業とのJVとして別会社化済み)など、自社でのサービス開発・事業創造を進めています。
また事業投資・事業運営として、福島県浪江町、新潟県阿賀野市、兵庫県多可町、熊本県阿蘇のメガソーラー事業に出資参画しているほか、最近では系統用蓄電池が注目されていることもあり、北海道札幌市の蓄電所事業にも出資しています。さらに、東大発の蓄電池ベンチャーであるエクセルギー・パワー・システムズや、再生可能エネルギーファンド運営会社であるZエナジーといった企業にも出資しています。シンクタンクやコンサルティングファームとしては珍しい取り組みだと思います。
30年以上の歴史と、未来を見据えた新事業開発への挑戦
――これだけ幅広い領域を手掛けていらっしゃいますが、これはお客様の要望に応えて積み上がってきたのか、それとも会社の戦略として広げてきたのでしょうか。
田中氏:当部門の源流は1990年頃にさかのぼります。最初の気候変動枠組条約やリオ・サミットといった時代に、当社は国内シンクタンクとしてもかなり早期にエネルギー・環境の部署を立ち上げました。そこから約30年、ずっとこの分野を続けてきたという歴史があります。
ただ、最近のトレンドとして特徴的なのは、新事業開発センターのように自ら投資して事業を作っていく動きです。これは10年〜15年前にメガソーラー事業を始めたところからの延長線上にあり、「新事業を作るんだ」という意志を持って取り組んできた結果です。
――自ら投資してサービスを生み出す部署を部門内に置いた背景には、どのような着眼点があったのでしょうか。
田中氏:従来型のクライアントワーク、つまり受託型の仕事がこの先いつまで続くのだろうかという危機感が大きな背景にあります。とりわけ生成AIが台頭する中で、「シンクタンク・コンサルティングとは何か」という問いがいよいよ突きつけられている。今までと同じやり方では生き残れないのではないか、という問題意識を強く持っています。
もう一つ、10年前にメガソーラー事業に踏み出した結果、実際に事業をやってみないと分からない実情が見えてきました。その経験が回り回って調査やコンサルティングの質を高めることにもつながる。だからこそ、一歩踏み出さないと、調査やコンサルティング自体が陳腐化してしまうのではないか。両方の問題意識から、新事業への取り組みを加速させています。
中長期的には事業環境は変わっていくだろうとみんな薄々感じていましたが、ここ数年の生成AIの動きを見ていると、もっと加速していかなければならないと感じます。
GXは「振れ幅はあるが、底流は変わらない」対応が必然の領域
――GX(グリーントランスフォーメーション)という分野そのものの将来性について、どのようにお考えですか。
田中氏:GXを取り巻く環境は、今、確かに難しい局面にあると思います。しかし、たとえばホルムズ海峡の状況を見ても、我が国としては、化石燃料への依存を減らしていくこと、そのために再エネを主力電源として位置づけたり、サーキュラーエコノミーへ移行することは、避けて通れないテーマです。
ですから、GX自体を推進していくことは、もはや必然であろうと認識しています。短期的な「振れ幅」はあったとしても、「底流」、つまり進むべき方向自体は変わらない。長期的には欧米も中国も同じ方向に進むことになると見ています。
――サステナビリティという、より広い文脈での取り組みについてもお聞かせください。
田中氏:会社全体としてのサステナビリティ推進は経営企画部が担当していますが、当部門からも兼務メンバーを出すなど、一緒に取り組んでいます。
ただ、当社自身の消費電力量などはそもそも大きくないため、自社のサステナビリティを進めるよりも、エネルギー・サステナビリティに関する調査・コンサルティングや自社事業開発を通じて、実際に世の中のサステナビリティを進めていくことの方がはるかに社会へのインパクトは大きい。実効的に「変革を先駆ける」こと自体に、すごく意味があると考えています。
差別化の鍵は「海外」「システムソリューション」「新事業」
――コンサルティングファームやシンクタンクが増える中、今後の事業展開で重視されているポイントは何でしょうか。
田中氏:ベースとなるクライアントワークをしっかり伸ばしていくことはもちろんですが、それと同時に当社ならではの差別化要素を磨いていく必要があると考えています。それが「電力システムソリューション」「新事業」「海外事業」の3つです。
海外事業については、ドバイとハノイに拠点を設けており、特にドバイ拠点では環境・エネルギー分野を中心に、中東の各国政府等からの直接受託が広がってきています。ASEANでは、日本企業が海外、特にエネルギー・環境関連で展開する際の支援も行っています。とりわけ気候変動やエネルギートランジション関連は、日本政府がプログラムに予算をつけ、日本企業がそこに応募する、というケースが多いため、我々が一緒になって支援するスキームがフィットしています。
気候変動領域には専門家を擁しており、国連の専門家パネルに日本から唯一のメンバーを当社から出しているほか、航空業界の国際的な排出削減の枠組み等、国際的なルール形成の場において複数のメンバーがポジションを担っている点は他社に類を見ません。長年の実績の積み重ねが、専門家集団としての厚みにつながっていると認識しています。
――電力システムソリューションについても、もう少し詳しく教えてください。
田中氏:電力市場は今、AIの普及も含めてダイナミックに動いていますが、システム面では2つの動きがあります。1つは、蓄電池などの最適制御にAIを使う新しい動き。これは新事業開発センターでサービスを開発しています。
もう1つが、全国大の電力運営・電力市場を担うシステム、電力会社の根幹である送配電網に関わるシステムや基幹システムを変えていくという、より大規模なシステムの変革の話です。金融システムと同じく簡単にAIベースに変えられるものではなく、政策・制度との密な関係性と事業性を踏まえたグランドデザインの設計、PMOといった上流での支援を私たちは強みとしています。また、発・送・販のいずれの領域でもAIのフル活用を通じた業務変革が進んでいきます。これらの課題に対して、政策・制度、業務・技術、IT/OT/AIに明るいメンバーが一緒になって取組みを進めています。
電力市場制度はこれからも改革が続きますし、その都度システムの開発・改修が必要になります。当社が長年蓄積してきたノウハウを活かしつつ、最新の動向も捉えながら、システム化も含めた領域でビジネスを伸ばしていきたいと考えています。
「Compass for green future」に込めた、現場発のMVV
――部門独自のミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を策定されたとお伺いしました。どのような経緯で作られたのでしょうか。
田中氏:前期に、全社のミッション・ビジョン・コミットメントを我々の部門に落とし込んだら、どんな言葉が当てはまるのかを議論しようということで、部門独自のMVV策定に取り組みました。
各グループから代表者を1名ずつ選び、ラインマネージャーと合わせてワーキンググループを作り、各グループに持ち帰ってメンバーがどう感じるか、どちらの方向性がいいかなどを丁寧に議論してきました。半年以上の時間をかけて、ようやくここまで到達したという形です。広報部からの兼務者がリードしてくれたことも大きな支えになりました。
ミッションは「エネルギーと資源の自律・循環を実現し、未来の世代が安心できる社会へ」。ビジョンは「Compass for green future」、グリーンな未来に向けた羅針盤になろう、という想いを込めています。バリューは「官民に通ずる価値創造」「連携のハブに自覚的たろう」「グリーン具現化の道筋づくり」「オーナーシップを持ち、先導」「現場に立ち、想いに寄り添う」という5つです。
――策定の過程で、皆さんが特に共感した言葉はありましたか。
田中氏:ミッションは比較的すんなり決まりました。ビジョンの方は、日本語にするか英語にするかも含めてさまざまな議論があったのですが、「コンパス」「羅針盤」という言葉は早い段階から共通要素として出てきていたので、それを軸に最終形に至りました。
我々はシンクタンカー、コンサルタントですから、お客様との議論や打ち合わせで「あなたはどう思うか」と日々問われる仕事です。その問いに答えるということは、何かしらの指針を相手に与えているということ。日常の業務そのものが、まさに「コンパス」「羅針盤」という言葉とフィットしている。だからこそ、この言葉に違和感がなく、北極星のような共通の指針が定まったことの意義は大きいと感じています。

フラットで自律的な組織が育む、互いに尊敬し合える仲間
――部門の組織文化や雰囲気についてお聞かせください。
田中氏:当社のメンバーは、本当に「人がいい」人が多いというのが、誰もが感じるところです。プロジェクトにおいてもプロジェクトリーダーの言うことに従わなければならないということはなく、フラットにみんなで意見を出し合う「わいがや」の雰囲気があります。
一般的な事業会社では、ラインの課長や部長が指針を示し、メンバーは従うという構造かもしれませんが、当社では一人ひとりが「自分が指針を出さなければ、自分が羅針盤にならなければ」という意識を持っている人が多い。ここが特徴的なところだと思います。
他社から来られた方が、当社の組織文化と前職を比較してプレゼンしてくれたことがあったのですが、前職では成果に対するプレッシャーから時に非常に自他に対して厳しい振る舞いになってしまうこともあったのに対して、当社では互いを尊重しようという空気が強い印象だという話がありました。もちろん緩いだけでは意味がないのでバランスは重要ですが、メールの文面ひとつをとっても、配慮ができる人が多く、殺伐とした空気が一切ないというのは、当社らしさだと思います。
――一方で、自律性が強いがゆえの課題もあるのでしょうか。
田中氏:一人ひとりが自分の領域を持って自律的に動くことの裏返しで、ときに視座が高まりにくくなる人もいる、という課題は感じています。これに対して当部門では、ラインマネージャーとの1on1だけでなく、別グループのマネージャーが面談を行う「クロス1on1」、あえて違う分野のプロジェクトに入ってもらう「クロスアサイン」、部門全体での会議や研修などを通じて、いつもの仕事とは違う刺激を受けていただく機会を設けるなど、いくつかの仕掛けを用意しています
――中途入社で加わった方へのサポートはどのようなものがありますか。
田中氏:新卒に近い年齢で入っていただいた方は、新卒入社社員と同様に、仕事をしていく中で自然と身についていく部分もあります。一方で、ある程度の経験を持って入ってこられた方には、その方が持つ業務経験や考え方を率直に擦り合わせながら、一緒に進めていきたいと考えています。
サポート体制としては、入社後3日間の全社研修に加えて、現場では指導役の社員を任命し、人によっては週次でのミーティングを行うなど、キャッチアップに心を配っています。コンサルティング経験がなく事業会社から来られた方でも自身の経験を生かして活躍いただけるように丁寧にコミュニケーションを取っています。

求める人材像と、これからチャレンジしたい方へのメッセージ
――率直に、どのような方に入っていただきたいですか。
田中氏:当部門には人柄の良いメンバーが多いため、まずは「素直な人」が一番フィットすると個人的には感じています。もちろんエッジが立っていて「いや、こうじゃないよ」と言ってくれる人もありがたいですが、ベースとして素直に取り組める方が活躍しやすい環境です。
そのうえで、しっかりコミュニケーションが取れること、ロジカルシンキングができること。この3つ――人柄、コミュニケーション、論理的思考――が揃っていれば、たいていのことはできると考えています。
――田中様ご自身が感じる、この部門で働く魅力を教えてください。
田中氏:エネルギーや環境という領域は、長期的な視座で仕事をしている人が集まっており、また、本気でこの分野の課題解決に向き合っている人が多いというのが当部門の大きな特徴です。「社会課題の解決と言いつつ自社の利益を優先」というのではなく、本当にミッション・ビジョンの実現に強い想いを持っている。そういう仕事をしたい人にとっては、本気で取り組める職場です。
そして、その仕事を一緒にやる仲間が、信頼でき、尊敬できる人ばかりであることも大きな魅力です。互いに切磋琢磨し、自分自身も磨かれる環境がここにあると感じています。
また、当社はこの分野で約30年の実績を積み上げてきており、官公庁・民間事業者の双方から評価をいただいているところがあります。この信頼や実績は、短期的に他社が逆転できるものではありません。関係ステークホルダーの皆さんと長年気脈を通じた信頼感を背負ってビジネスができるということも、メンバーの誇りやモチベーションにつながっていると思います。
――最後に、この記事を読んでくださっている方へのメッセージをお願いします。
田中氏:AIがこれだけ世の中を変えている中でも、AIに代えられないものは必ずあると信じています。その「代えられないもの」の核心にあるのは、信頼であったり、想いに寄り添う姿勢であったりします。
環境やエネルギーの問題を本気で実現したい――そう思っている方には、ぜひ当部門で、信頼をベースにした新しい時代づくりにチャレンジしていただきたい。単純な調査・コンサルだけではなく、新しいサービスや事業を一体となって創り出している今のフェーズだからこそ、新しい提供価値を一緒に作っていける方を心からお待ちしています。
企業概要
商号: 株式会社 三菱総合研究所(略称:MRI)
本社所在地 :東京都千代田区永田町二丁目10番3号
代表者: 代表取締役社長 籔田 健二
資本金: 63億円
従業員数 :4,573名(連結)、1,202名(単体)
上場市場 :東京証券取引所プライム市場(証券コード:3636)
事業内容 :総合シンクタンクとして、経済・IT・科学技術まで幅広い領域でリサーチ・コンサルティング・ソリューションサービスを提供
部門:エネルギー・サステナビリティ事業部門(約180名)/GX本部・電力・エネルギー本部・新事業開発センター
ミッション :社会課題を解決し、豊かで持続可能な未来を共創する
ビジョン :未来を問い続け、変革を先駆ける
URL :https://www.mri.co.jp/
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