経営・戦略

CSV経営とは?意味・CSRとの違い・メリット・実践方法・企業事例を徹底解説【2026年版】

  • xのアイコン
  • facebookのアイコン
CSV経営とは?意味・CSRとの違い・メリット・実践方法・企業事例を徹底解説【2026年版】

「CSV経営」とは、企業が本業を通じて社会課題の解決と経済的価値の創出を両立させる経営手法です。2011年にハーバード大学のマイケル・ポーター教授とマーク・クラマー氏が『ハーバード・ビジネス・レビュー』で提唱した「Creating Shared Value(共有価値の創造)」を経営戦略に落とし込んだ考え方で、ネスレ・キリン・トヨタ・ユニクロなど世界中の大手企業が導入しています。

2025年3月のSSBJ(サステナビリティ基準委員会)によるサステナビリティ開示基準公表、SDGs・ESG投資の本格化を背景に、CSV経営は企業の競争力強化と持続可能性を両立する経営手法として、ますます注目を集めています。本記事では、CSV経営の意味・CSRとの違い・メリット・実践方法・企業事例・最新動向を2026年版で徹底解説します。

INDEX

CSV経営とは?意味と定義をわかりやすく解説

CSVという言葉の意味するところ

CSVとは「Creating Shared Value」の略であり、日本語では「共有価値の創造」という意味です。この言葉は、2011年にハーバード大学のマイケル・E・ポーター教授とマーク・R・クラマー氏が発表した論文により社会に広く認識されました。ポーター教授は「社会のニーズや問題に取り組むことで社会的価値を創造し、かつ経済的価値も創造されるというアプローチである」とCSVを定義しています。

出典:『Harvard Business Review』

CSV経営の概念

CSV経営は、企業の事業を通じて生まれる「社会価値」と「企業価値」の両立を目指します。従来「企業の利益追求」と「社会貢献」はトレードオフ(一方を立てるともう一方が立たない関係)と考えられていましたが、CSV経営はこの2つを両立可能と捉える革新的なアプローチです。

ポーター教授の理論はその後発展し、SDGs(2015年採択)・ESG投資の世界的普及と相まって、現代の企業経営における必須の概念となっています。

出典:Michael E. Porter, Mark R. Kramer『Creating Shared Value』Harvard Business Review(2011年1月)

 CSV経営とCSRの違い

CSV経営と混同されやすい概念にCSRがあります。両者の最大の違いは、社会課題への向き合い方と本業との関係性です。

CSR(Corporate Social Responsibility/企業の社会的責任)

CSRは「企業の社会的責任」を意味し、自社の利益追求だけでなく、社会・環境への配慮を企業の責務として果たす考え方です。地域の清掃活動・被災地支援の募金・植林活動など、本業のビジネスと分けて行われることが多く、必ずしも経済的利益を生むことを目的としません。日本では2000年頃から広く浸透しました。

CSV(Creating Shared Value/共有価値の創造)

CSVは、自社の経営資源・専門性・強みをもとに「本業のビジネス」として社会課題の解決を目指し、その結果として経済的利益も得る考え方です。社会課題の解決と利益獲得を両立する点が最大の特徴です。

両者の主な違い

・目的:CSR=社会的責任を果たすこと/CSV=社会課題解決と利益獲得の両立

・取組内容:CSR=本業と別の活動(寄付・ボランティア等)/CSV=本業を通じた価値創造

・経済的利益:CSR=必ずしも利益を生まない/CSV=利益獲得が前提

・位置づけ:CSR=コスト・社会的責務/CSV=戦略・競争優位の源泉

出典:経済産業省『CSR研究会』

CSV経営が注目される背景

CSV経営が世界的に注目される背景には、3つの大きな潮流があります。

3-1. 環境・社会課題の深刻化

気候変動・生物多様性損失・経済格差・少子化・食料自給率の低下など、世界規模で社会課題が深刻化しています。これらの多くは企業の経済活動に起因するため、企業自身が解決の担い手となることが社会から強く求められるようになりました。

3-2. SDGsとESG投資の本格化

2015年9月に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、企業が貢献すべき17のゴールを示し、企業経営の前提を大きく変えました。ESG投資(環境・社会・ガバナンス重視の投資)も急拡大しており、CSV経営に取り組む企業は投資家・取引先からの評価も高まりやすくなっています。

3-3. サステナビリティ情報開示の義務化

2025年3月に日本のSSBJ(サステナビリティ基準委員会)がサステナビリティ開示基準を公表し、企業のサステナビリティ情報開示が本格化しました。EUのCSRD(企業サステナビリティ報告指令)も本格運用に入り、日本企業のサプライチェーンにも影響を与えています。CSV経営の実践は、こうした情報開示要件への対応にも直結します。

出典:SSBJ(サステナビリティ基準委員会)『サステナビリティ開示基準』(2025年3月)

CSV経営の5つのメリット

CSV経営を実践することで、企業には以下の5つの大きなメリットがあります。

4-1. ブランドイメージの向上

社会課題の解決に取り組む姿勢を消費者・ステークホルダーに示すことで、企業のブランドイメージが向上します。エシカル消費の広がりにより、社会的価値を提供する企業への支持は年々高まっています。

4-2. 競合との差別化

本業を通じた社会課題解決は、模倣困難な独自の競争優位を生み出します。CSV経営に基づく事業戦略は、価格競争に巻き込まれにくく、長期的な市場地位の確立につながります。

4-3. 新規事業・新市場の創出

社会課題は新たなビジネス機会の源泉です。環境配慮型製品の開発、社会的弱者向けサービス、低炭素ソリューションなど、CSV視点で事業を見直すことで、これまで気付かなかった新市場を発見できます。

4-4. ESG投資・SDGsへの対応

CSV経営は、ESG投資の評価軸(環境・社会・ガバナンス)とSDGsの17ゴールに高い親和性があります。投資家・金融機関からの資金調達、取引先からの選定で有利になります。

4-5. 優秀な人材の獲得・定着

ミレニアル世代・Z世代を中心に、自社の社会的意義を重視する就職観が広がっています。CSV経営への取り組みは、採用ブランディングと社員エンゲージメントの双方を強化します。

出典:経済産業省『CSRで会社が変わる、社会が変わる』

CSV経営の4つのデメリット・課題

CSV経営にはメリットだけでなく、実践にあたって以下の4つの課題があります。

5-1. 長期的視点が必要で短期成果が出にくい

社会課題の解決は短期間で成果が出るものではなく、CSV経営の効果が業績に表れるまでには通常3〜5年以上を要します。短期利益志向の経営からの転換には、経営層の強いコミットメントが不可欠です。

5-2. 効果測定・評価基準が難しい

社会的価値と経済的価値の双方を測定する基準が確立されておらず、CSV経営の進捗を定量的に評価することが難しい場合があります。SROI(社会的投資収益率)など新しい評価手法の活用が求められます。

5-3. 単独企業では取り組めない課題が多い

地球温暖化や貧困問題など、CSV経営が対象とする社会課題は単独企業の力では解決できない規模のものが多く、他社・NPO・自治体・政府との連携が不可欠です。

5-4. ステークホルダーへの説明責任が重い

CSV経営は事業内容と社会的意義を明確に説明する必要があり、株主・投資家・消費者に対するコミュニケーション負担が大きくなります。ESG情報開示・統合報告書などの整備が求められます。

出典:内閣府『価値創造経営に関する研究』

CSV経営を実践するための3つの共有価値とは

CSVでは共有価値を創造するための3つの方法が提唱されています。

(1)自社製品やサービスの見直しをかける

 企業は自社製品や技術によって社会問題を解決する事業を行うことが求められるため、まずは自社の製品やサービスが社会課題解決に向けてどのように役立つのかを再検討します。課題そのものを事業のステップアップのチャンスと捉え、自社の強みを生かし、新たな市場や製品開発を促すことが重要になります。

(2)バリューチェーン(価値連鎖)の改善を行う

バリューチェーンとは製造工程から販売にいたるまでの企業の利益を生み出すための一連のプロセスのことを意味します。CSVではその製造・生産過程を社会課題解決に向けて見直しを図ることを提唱しています。例えば、いままで多くの二酸化炭素を排出していたのであればそれを減少させる、材料が安定供給できるように供給先の育成を行うなど。バリューチェーンの影響を最小限に抑え、結果的に利益を生み出すことを可能にする取り組みをするのです。

(3)産業クラスターを生み出し地域に貢献する

CSVでは産業クラスターの創出も重要な取り組みの一つです。産業クラスターとは事業分野を取り巻く関連企業などが密集した地域のことを指し、アメリカではシリコンバレーがそれにあたります。地域で研究所や中小・ベンチャー企業などがそれぞれに関りを持つことで、一社では行うことができないような課題にも積極的に取り組めるのです。

強固な産業クラスターを創出できれば地域も活性化され、人材育成やインフラ整備などの社会問題の解決にもつながります。

CSV経営の実践ステップ

CSV経営を自社に導入するには、以下の5つのステップで段階的に進めるのが効果的です。

ステップ1:自社の強み・経営資源の棚卸し

CSV経営は本業を通じた社会課題解決が前提のため、まず自社の独自性・技術・専門性・経営資源を整理します。これがCSV戦略の基盤になります。

ステップ2:取り組むべき社会課題の特定(マテリアリティ分析)

SDGsの17ゴール・自社事業との関連性・ステークホルダーの期待などを踏まえて、自社が取り組むべき重要な社会課題(マテリアリティ)を特定します。

ステップ3:CSV戦略・KPIの策定

特定したマテリアリティに対し、社会価値と経済価値の双方で目標とKPIを設定します。例えば「CO2削減量◯%」と「該当事業の売上◯億円」のような二軸目標が一般的です。

ステップ4:事業活動への組み込みとScope1・2・3算定

CSV戦略を具体的な事業活動に落とし込むとともに、CO2排出量(Scope1・2・3)を算定し、削減施策の優先度を明確化します。CO2排出量見える化クラウドなどのツール活用で効率化が可能です。

ステップ5:情報開示とPDCAサイクル

統合報告書・サステナビリティ報告書・有価証券報告書を通じて、CSV経営の進捗・成果を開示します。SSBJ基準(2025年3月公表)への準拠が、2026年以降の標準対応となります。

出典:経済産業省『価値協創ガイダンス2.0』(2022年8月改訂)

CSV経営を実践する企業事例

グローバル企業におけるCVS経営の事例

(1)ネスレ日本株式会社

ネスレでは「生活の質を高め、さらに健康な未来づくりに貢献する」という目標を掲げ、主に「栄養」面での課題解決に努力しています。2030年までに世界中の子供たちが健康に暮らせるように様々な商品開発、プログラムを発信しています。

出典:ネスレ日本株式会社「共有価値の創造」

(2)トヨタ自動車株式会社

自動車の大手メーカー・トヨタ自動車株式会社は「トヨタ環境チャレンジ2050」として長期的な取り組みを発表しています。工場の生産ラインで排出される二酸化炭素の削減や水の使用量を最小化にする取り組み。また循環型社会の実現に向けて、「エコな素材を使う」「部品を長く使う」「リサイクル技術を開発」するなど多方面にわたっての活動をしています。

出典:TOYOTA「サステナビリティ」

(3)キリンホールディングス株式会社

キリングループは「CSVを経営の根幹に据え、社会と共に持続的な成長を実現していく」と、「健康」「地域社会・コミュニティ」「環境」という3つの分野を掲げCSV活動をしています。また酒類メーカーとしての責任からアルコール有害接種根絶に向けた取り組みなどの積極的な活動をしています。

出典:キリンホールディングス株式会社「社会との価値共創」

(4) 株式会社ファーストリテイリング(ユニクロ)

ユニクロを展開するファーストリテイリングは、2001年に社内に社会貢献室を発足、2005年にグループCSR部を設置し、CSV経営が提唱される前から先進的な取り組みを進めてきました。2010年からはバングラデシュで「グラミンユニクロ」というソーシャルビジネスを開始し、現地の女性の雇用創出と低価格な衣料の提供を両立しています。さらに難民への雇用支援、リサイクルプログラム「RE.UNIQLO」など、本業を通じた社会課題解決の代表的事例として注目されています。

出典:株式会社ファーストリテイリング『サステナビリティ』

(5) パタゴニア

アウトドアブランドのパタゴニアは、「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というミッションを掲げ、CSV経営の代表企業として世界的に知られています。リサイクル素材の積極活用、修理サービス「Worn Wear」、売上の1%を環境団体に寄付する「1% for the Planet」、2022年には会社の所有権を環境保護団体に譲渡するという前例のない決断を実施しました。

出典:パタゴニア『私たちのコミットメント』

 CSV経営とSDGs・ESG経営との関係

CSV経営は、SDGs・ESG経営と深く関連する概念です。それぞれの関係を整理します。

CSV経営とSDGs

SDGsは2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標」で、貧困・飢餓・気候変動など17の目標と169のターゲットで構成されます。CSV経営はSDGsを達成するための具体的な経営手法と位置づけられ、SDGsの17ゴールを事業戦略に落とし込む際の実践フレームとして機能します。

CSV経営とESG経営

ESG経営は、Environment(環境)・Social(社会)・Governance(企業統治)を重視する経営手法です。CSV経営の実践はESGの「E」と「S」に直接貢献し、ESG評価向上を通じて投資家・金融機関からの資金調達にも好影響を与えます。Scope1・2・3の算定とサステナビリティ情報開示は、CSV経営とESG経営の双方に必須のインフラとなっています。

出典:外務省『JAPAN SDGs Action Platform』

 CSV経営に関するよくある質問

10-1. CSV経営とCSRの最大の違いは何ですか?

CSRは社会的責任を果たすこと自体を目的とし、本業とは別の活動(寄付・ボランティア等)として行われることが多いのに対し、CSV経営は本業を通じて社会課題の解決と利益獲得を両立させる経営手法です。CSRが「コスト」「責務」として位置づけられがちなのに対し、CSV経営は「戦略」「競争優位の源泉」として捉えられる点が決定的な違いです。

10-2. 中小企業でもCSV経営は実践できますか?

はい、可能です。むしろ中小企業ならではの強み(地域密着・意思決定の速さ・専門性の高さ)を活かしたCSV経営は、大企業にない独自性を発揮できます。大企業のサプライチェーンに参加することで、同じ社会課題への取り組みを共有できる点も中小企業にとってのメリットです。

10-3. CSV経営に取り組む際の最初のステップは何ですか?

まず自社の強み・経営資源を棚卸しし、SDGs・ESGの観点から取り組むべき重要な社会課題(マテリアリティ)を特定することが第一歩です。続いて、CO2排出量の可視化(Scope1・2・3算定)を進めることで、環境関連のCSV施策の優先度を明確化できます。アスエネのCO2排出量見える化クラウドの活用により、効率的にCSV経営の基盤を整備できます。

出典:経済産業省『SDGs経営ガイド』(2019年5月)

まとめ:CSV経営の理解を深め、脱炭素経営の一歩を踏み出そう

・CSV経営は、本業を通じた社会課題解決と経済的利益の両立を目指す経営手法で、2011年のポーター教授論文以来、世界中の企業が導入。

・CSRが社会的責任の遂行を目的とするのに対し、CSV経営は戦略・競争優位の源泉として位置づけられる点が決定的な違い。

・メリットは①ブランド向上②差別化③新規事業創出④ESG・SDGs対応⑤人材獲得の5つ。デメリットは①長期視点必要②評価基準難③連携必要④説明責任の4つ。

・実践には①強み棚卸し②マテリアリティ特定③戦略策定④Scope算定⑤情報開示の5ステップが効果的。アスエネのCO2排出量見える化クラウドが、その基盤整備を支援する。

CSV経営・共有価値の創造とは何かを解説しました。これまで社会は大量消費に向けて突き進んできましたが、現在は地球環境の未来のためにもあらゆる面で考え直さなければならない時期に来ています。CSV経営は企業の経済活動における利益の追求と社会課題の解決は矛盾しないことを提唱しており、それを受け入れる企業は増え続けています。企業において今後CSV経営はますます注目されていくことでしょう。

自社にCSV経営を取り入れ、社会と未来に貢献する企業として踏み出すことをぜひ検討されてはいかがでしょうか。

CSV経営のサプライチェーン基盤を支える「ASUENE SUPPLY CHAIN」

CSR/ESG・安全衛生など多様な調査を一括管理できるクラウドサービスで、本業を通じた社会課題解決と持続可能な調達体制の構築を支援します。ASUENEの詳細を見る

  • xのアイコン
  • facebookのアイコン

タグから探す

人気記事ランキング

役立つ無料ガイド集​​

まとめて資料請求

related/ 関連記事

Pick UP/ 注目記事

GUIDE BOOK/ 役立つ無料ガイド集

  • 人気No.1

    サービス概要

    この資料で分かること
    サービス概要、利用プラン
    CO2削減実行までの基本
    効率的な各種算定方法など

    サービス概要、利用プランなどを知りたい方はこちら

    資料ダウンロード

  • 他社事例を
    知りたい方はこちら

    アスエネ事例集

    掲載企業(一部)
    株式会社コメダホールディングス
    GMOペイメントゲートウェイ株式会社
    日本トムソン株式会社 ...など

    他社事例を知りたい方はこちら

    資料ダウンロード

  • 製品別のCO2排出量を
    見える化したい方

    CO2排出量の基礎

    この資料で分かること
    Scope1-3の見える化
    Scope1-3算定のメリット
    Scope3算定手順

    製品別のCO2排出量を見える化したい方はこちら

    資料ダウンロード

  • 最新のSDGsの
    取り組みを知りたい方

    SDGs資料

    この資料で分かること
    最新のSDGsの企業取組一覧

    最新のSDGsの取り組みを知りたい方はこちら

    資料ダウンロード

  • 近年の気候変動の
    状況を知りたい方

    温暖化資料

    この資料で分かること
    気候変動の状況や対策についてのまとめ

    近年の気候変動の状況を知りたい方はこちら

    資料ダウンロード