「サステナブル」と「SDGs」は、いずれも持続可能な社会の実現を目的とする概念で、深く関係していますが、その意味と範囲は異なります。サステナブル(Sustainable/持続可能)は、環境・社会・経済が長期にわたり健全に機能する状態を指す普遍的な「概念」であり、SDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)は、2015年に国連で採択された17のゴール・169のターゲットからなる具体的な「目標」です。つまり、サステナブルは目指すべき方向性、SDGsは2030年までに達成すべき具体的なゴールセットという関係にあります。企業活動においては、両者を正しく理解し、自社の経営戦略・ESG対応・サステナビリティ開示と一体的に推進することが、これからのスタンダードとなっています。
本記事ではサステナブルやSDGsの概要や両者の違い、サステナブルやSDGsに関連する概念や、サステナビリティやSDGsに取り組む企業の事例などをご紹介します。
INDEX
サステナブルとSDGsの違いを徹底比較(概念・対象・期限・主体)
サステナブルとSDGsはしばしば混同されますが、両者には明確な違いがあります。以下の4つの視点で整理すると、両者の関係性が立体的に理解できます。
2-1. 概念か目標か(位置づけの違い)
サステナブルは「持続可能性」という普遍的な概念・理念であり、明確な期限や数値目標を伴いません。一方SDGsは、サステナブルな社会の実現に向けて、2030年までに達成すべき17のゴールと169のターゲットを具体的に定めた国際目標です。つまりサステナブルは「長期的な方向性」、SDGsは「期限と指標を伴うゴールセット」という違いがあります。
2-2. 対象範囲の違い
サステナブルは環境保全だけでなく、経済・社会・文化を含む幅広い領域を対象とします。SDGsは、貧困・飢餓・教育・ジェンダー・気候変動・パートナーシップなど17領域に具体化され、開発課題と環境課題を統合的に扱う点が特徴です。SDGsの方が対象が具体的・体系的である一方、サステナブルの方が概念としての射程は広いといえます。
2-3. 期限の有無
サステナブルには期限がなく、長期的・継続的に追求すべき価値観として位置づけられます。一方SDGsは「2030年アジェンダ」とも呼ばれる通り、2030年という明確な達成期限が設定されており、毎年国連が進捗を公表しています。期限の有無は、企業のKPI設計やサステナビリティ報告のあり方に直接影響します。
2-4. 推進主体の違い
サステナブルは、個人・企業・NPO・政府など、あらゆる主体が日常的に追求すべき価値観です。SDGsは国連が採択した国際合意であり、加盟193か国の政府が中心となって推進しますが、ターゲットの達成には民間企業の参画が不可欠であることが2030アジェンダで明記されています。日本でも2016年にSDGs推進本部(本部長:内閣総理大臣)が設置され、官民連携で推進されています。
出典:外務省『持続可能な開発目標(SDGs)と日本の取組』(2024年)
サステナブル・SDGsに関連する4つの概念(ESG・SX・CSR・CSV)
サステナブル・SDGsを企業経営の文脈で理解するためには、関連する4つの概念を押さえておく必要があります。既存記事のESG・SXに加え、CSR・CSVを補強することで、企業実務担当者の検索意図に直接応えます。
1. ESG(環境・社会・企業統治)
ESGは、Environment(環境)・Social(社会)・Governance(企業統治)を考慮した経営・投資活動を指します。SDGsが「目標」であるのに対し、ESGはそれを達成する「手段・評価軸」と位置づけられます。MSCIやFTSE、CDPなどのESG評価機関は、企業のサステナビリティ取り組みをESGの3軸で評価し、投資家の意思決定に活用しています。
2. SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)
SXは経済産業省『伊藤レポート3.0』(2022年8月)で提唱された概念で、企業がサステナブルな社会の実現と、自社の長期的・持続的な成長を両立する経営変革を指します。SDGsへの貢献を「コスト」ではなく「価値創造の機会」と捉え、ビジネスモデル変革を伴う点が、従来のCSRと異なる特徴です。
3. CSR(企業の社会的責任)
CSR(Corporate Social Responsibility)は、企業が社会・環境に対して果たすべき責任を指します。SDGs採択前から存在する概念で、寄付・ボランティアなど「本業外の社会貢献」として捉えられがちでしたが、SDGs時代では「本業を通じた社会課題解決」へと進化しています。CSRはサステナブル経営の出発点であり、SDGs・SXへの橋渡しとなる概念です。
4. CSV(共通価値の創造)
CSV(Creating Shared Value)は、ハーバード大学のマイケル・ポーター教授が2011年に提唱した概念で、社会課題の解決と企業の経済価値創出を同時に実現するアプローチです。SDGsの目標達成と企業の競争力強化を両立させる戦略フレームとして、グローバル企業を中心に採用が進んでいます。
出典:経済産業省『伊藤レポート3.0(SX版伊藤レポート)』(2022年8月)
企業がサステナブル・SDGsに取り組む5つのメリット
サステナブル・SDGsへの取り組みは、社会的責任にとどまらず、企業の競争力強化に直結します。代表的な5つのメリットを紹介します。
1. 企業ブランド価値・ESG評価の向上
投資家・取引先・消費者からサステナブル経営への期待が高まる中、積極的な取り組みは企業ブランド価値の向上に直結します。MSCI・FTSE・CDPなどのESG評価機関は、SDGs貢献度を重要な評価項目に位置づけており、ESG投資資金の流入にもつながります。
2. 投資・資金調達の機会拡大
世界のESG投資残高は、GSIA調査では2022年で約30兆ドル超に達しています。サステナビリティ・リンク・ローン、グリーンボンドなど、SDGs貢献企業を対象とした金融商品が拡大しており、資金調達面でも有利になります。
3. 優秀な人材の獲得と定着
ミレニアル・Z世代を中心に、就職・転職時に企業のサステナビリティ姿勢を重視する傾向が顕著です。デロイトのGlobal Gen Z and Millennial Survey 2024でも、企業の環境・社会への取り組みを採用判断の要素とする若年層が多数派を占めています。
4. 新規事業・イノベーションの創出
SDGsの17ゴールは、年間12兆ドル規模の市場機会を内包すると試算されています(Business and Sustainable Development Commission推計)。気候変動・サーキュラーエコノミー・人的資本などの社会課題は、新規事業創出のヒントの宝庫です。
5. グローバル市場での競争力強化
EUのCSRD、米国SEC開示規則、日本のSSBJ基準など、サステナビリティ情報開示の制度化が世界規模で進展しています。サステナブル経営への対応の遅れは、サプライチェーンからの除外やビジネス機会の損失に直結するリスクです。
出典:内閣府『男女共同参画白書 令和6年版』(2024年6月)/GSIA『Global Sustainable Investment Review』
企業がサステナブル・SDGsを推進する5ステップ
サステナブル・SDGs推進は段階的に進めることで、無理なく成果につながります。一般的な5ステップは以下のとおりです。
ステップ1:自社の現状把握とマテリアリティの特定
まずは自社の事業活動と関連の深いSDGsゴール・ターゲットを特定します。GRI Materiality(重要性)分析・SASB Standardsを参考に、優先課題(マテリアリティ)を絞り込みます。
ステップ2:トップコミットメントと目標設定
経営トップがサステナビリティ方針を社内外に明示し、SBT(科学的根拠に基づく削減目標)など定量的なKPIを設定します。中期経営計画への組み込みが、推進の起点となります。
ステップ3:CO2排出量の可視化(Scope1・2・3算定)
気候変動対策はSDGs目標13に直結し、ほぼ全業種で優先課題となります。Scope1(自社直接排出)・Scope2(電力等の間接排出)・Scope3(サプライチェーン全体)の算定は、サステナブル経営の基本データです。
ステップ4:施策実行とサプライチェーン連携
再エネ電力切替・省エネ・サーキュラーエコノミー・人的資本投資など、目標に応じた施策を実行します。Scope3対応では、サプライヤーへのエンゲージメント(要請と支援)が重要となります。
ステップ5:情報開示とPDCA
2025年3月に公表されたSSBJサステナビリティ開示基準、CDP、TCFD、ISSB(IFRS S1・S2)など、開示制度に基づき情報開示を行い、PDCAを回します。透明性の高い開示が、投資家・取引先からの信頼獲得につながります。
出典:金融庁『記述情報の開示に関する原則(別添)―サステナビリティ情報の開示について』(2023年1月)/SSBJ『サステナビリティ開示基準』(2025年3月)
サステナブルに取り組む事業例
多くの企業が、サステナブルな事業活動に取り組んでいます。サステナブルへ取り組む企業の事例をご紹介します。
株式会社ニチレイ
株式会社ニチレイは、「サステナビリティ基本方針」を掲げ、サステナブルな事業活動に取り組んでいます。具体的には、あさりの漁業改善プロジェクトを通じた黄海沿岸の生物多様性の保全(あさりを育む干潟の管理レベル向上)や、トラックドライバーの不足や長時間労働問題という社会課題に対応した次世代輸配送システム(切り離し可能な荷台を活用した中継輸送網)の構築など、社会課題の解決に向けたプロジェクトを実施しています。
出典:株式会社ニチレイ「ニチレイグループ統合レポート2023」p3,94
株式会社MonotaRo
工業用資材のインターネット通販サイト「モノタロウ」を運営する株式会社MonotaROは、サステナブルな社会の実現に向け、気候変動や人権問題など社会問題にも配慮した上で成長を継続することを目指しています。たとえば主要物流拠点における省エネルギーや再生可能エネルギーの導入、環境配慮型商品の開発・提案、ダンボールの削減、破棄商品の社内利用などに取り組んでいます。
出典:株式会社MonotaRo「サステナビリティ 環境(Envionment)」
SDGsに取り組む企業事例
多くの企業が、SDGs達成に貢献する事業を展開しています。SDGsに関連した企業事例をご紹介します。
株式会社コプロ・ホールディングス
建設専門エンジニア派遣を行う株式会社コプロ・エンジニアードを中核会社とする株式会社コプロ・ホールディングスは、SDGsの17の目標のうち5つを取り組むべき優先課題として特定しています。
たとえばSDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」もそのひとつで、外国籍社員数を2021年度34名から2023年度92名まで増やすなど、国籍や宗教に関係なく雇用し仕事を提供することに取り組んでいます。また目標12「つくる責任つかう責任」について、紙使用枚数の削減に取り組んでおり、2021年度2,398,900枚から2023年度1,822,101枚まで減らしています。
出典:株式会社コプロ・ホールディングス「SDGsの取り組み」
株式会社ポピンズ
保育・介護事業を展開する株式会社ポピンズ(以下「ポピンズ」)は、「働く女性の支援」という創業コンセプトを保ち、SDGsの17の目標のうち「5.ジェンダー平等の実現」など3つを自社のターゲットとして掲げています。ポピンズは2020年に日本で初の「SDGs-IPO」すなわちSDGsに資する用途に限定した資金調達を、公募による新規株式公開によって実施しました。
これは日本で初めてのケースとなります。ポピンズではその後もSDGsの目標「5.ジェンダー平等の実現」に関し女性の活躍推進に取り組み、女性役員や女性管理職の登用や保育士など女性の雇用創出、「8.働きがいも経済成長も」に関して保育士の初任給引き上げや現職保育士向けの「保育マネジメント講座」海溝など、SDGsを経営の中心に据えた取組みを続けています。
出典:株式会社大和証券グループ「株式会社ポピンズホールディングスによる新規株式公開に伴う公募による募集株式発行(SDGs-IPO)のお知らせ」p1(2020/11/16)
出典:株式会社日本総合研究所「Second Party Opinion: ポピンズホールディングス」p2(2020/11/16)
株式会社メニコン
株式会社メニコン(以下「メニコン」)は自社のSDGsへの取り組みを、活動内容とSDGsの各ゴールを紐づけて公表しています。たとえば「コンタクトレンズ事業を中心とした安心・安全な製品やサービスを通じた、見える喜びの提供」はSDGsの「3. 全ての人に健康と福祉を」に貢献するものとされています。具体的な取組みとしては、使い捨てコンタクトの宅配事業「メルスプラン」、コンタクトレンズの豊富なラインアップ、近視進行抑制に向けた技術や商品の開発などが挙げられています。
また環境へ配慮した取組みは目標「13.気候変動に具体的な対策を」などに貢献するものとして、工場における廃棄物削減や太陽光発電導入、リサイクル可能な素材を使用した製品の開発、コンタクトレンズのケア用品で培ったバイオ技術を応用した稲わら分解促進剤やたい肥化促進システムの開発などに取り組んでいます。
サステナブルとSDGsに関するよくある質問
1. サステナブルとSDGsの一番の違いは何ですか?
最大の違いは「概念か目標か」です。サステナブル(持続可能性)は環境・社会・経済が長期にわたり健全に機能する状態を指す普遍的な「概念」であり、明確な期限はありません。一方SDGsは、そのサステナブルな社会の実現に向けて、2030年までに達成すべき17ゴール・169ターゲットを定めた国際的な「目標」です。つまり、サステナブルは目指すべき方向性、SDGsはその具体的な到達点という関係にあります。
2. サステナブル・SDGsとESG経営はどう関係しますか?
ESGはサステナブル・SDGs達成の「手段」と「評価軸」です。SDGsが目指すべき社会的ゴールであるのに対し、ESGはそのゴールに向けて企業が取り組むべき「環境・社会・企業統治」の3軸を示します。投資家はESG指標で企業のサステナビリティ取り組みを評価し、SDGsへの貢献度合いを判断します。2025年3月公表のSSBJサステナビリティ開示基準でも、人的資本・気候関連リスクなどESG関連指標の開示が求められており、サステナビリティ経営と一体的に推進すべきテーマです。
3. 中小企業もSDGsに取り組む必要がありますか?
はい、中小企業にも取り組みが求められる時代です。大企業がScope3(サプライチェーン全体のCO2排出)開示を進める中で、取引先である中小企業にもサステナビリティ対応が事実上必須となるケースが拡大しています。資源エネルギー庁・環境省も中小企業向けの支援策(補助金・無料診断)を拡充しており、早期に取り組むことで、取引機会の確保と新たなビジネスチャンスにつながります。
出典:環境省『すべての企業が持続的に発展するために』(2020年3月)/『令和7年版 環境白書』(2025年)
まとめ:サステナブルとSDGsの違いを理解し、持続可能な経営を実現しよう
サステナブルであることとSDGsは深い関係にあり、それぞれ企業の事業活動における重要なテーマです。サステナブルであることが普遍的な課題だとすると、SDGsはそれをより具体的な形に落とし込んだものと言えるでしょう。サステナブルな社会の実現へ貢献することは、現代においては企業の責務であると同時に、成長戦略でもあります。
サステナブルやSDGsについて十分に理解し、持続可能な世界の実現へ貢献する事業活動を行いましょう。
・サステナブルは「持続可能性」という普遍的な概念であり、SDGsは2030年までに達成すべき17ゴール・169ターゲットを定めた具体的な目標。両者は概念と目標、対象範囲、期限、推進主体の4点で明確に異なる。
・関連概念としてESG・SX・CSR・CSVの4つを押さえることで、サステナブル経営の全体像が立体的に理解できる。
・企業の取り組みは①ブランド価値向上 ②資金調達機会 ③人材獲得 ④新規事業創出 ⑤グローバル競争力強化の5つのメリットをもたらす。
・推進の基本は、現状把握→トップコミット→Scope算定→施策実行→開示の5ステップ。2025年3月公表のSSBJ基準を契機に、サステナブル経営と情報開示を一体で進めることが、これからの企業経営に不可欠。
サステナブル経営とSDGs達成を、サステナビリティ情報開示から支援
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