今、企業の脱炭素対応は「見える化」から「実行」フェーズへと移行しています。その中でも不動産領域への脱炭素化に向けた対応は不動産価値や企業価値にも影響を与える重要なテーマとなっています。次の課題として浮上しているのが「自社保有の建物・不動産の排出量削減をどのように実行するか」です。特に自社ビルや工場、倉庫などの保有不動産はCO2排出量の大きな割合を占める一方、設備投資や運用の制約から対策が進みにくい領域でもあります。こうした課題に対し、グリーンビル認証取得や省エネ施策の実行支援に加え、不動産に関わるサステナビリティ領域全般(不動産ESG戦略、社会的インパクト実装など)を横断的に支援しているのがLongevity Partnersです。
本記事では、不動産に特化した脱炭素コンサルティングの特徴と、企業不動産の脱炭素化を実装するためには何から始めるべきかについて、Longevity Partners株式会社 代表取締役の川井氏に話を聞きました。

INDEX
不動産分野のCO2排出は世界の約4割。英国発コンサルティングが担う建物の脱炭素化支援

Longevity Partners(ロンジェビティ パートナーズ)は、建築・不動産分野に特化したサステナビリティコンサルティング企業として2015年に英国ロンドンで創業しました。グリーンビル認証(LEED・BREEAM・CASBEEなど)取得支援やエネルギー削減戦略の策定にとどまらず、省エネルギー診断やDD(デューデリジェンス)などの技術的な支援、ESG不動産戦略から各国規制対応、さらには社会的インパクト不動産の支援まで、不動産に関わる幅広いサステナビリティ領域を一貫して支援しています。当社は、不動産の脱炭素・ESG対応を「戦略から実行、認証、さらには社会的インパクト創出まで一気通貫で支援できる」点が特徴です。
当社が不動産分野に特化している背景には、建築・不動産分野が世界のCO2排出量の約4割を占めるとされている構造があります。パリ協定では地球温暖化を1.5℃以内に抑える目標が掲げられていますが、その実現には建物のエネルギー効率の改善が不可欠とされています。
現在はロンドンを拠点に、パリ、アムステルダム、ミュンヘン、ミラノ、ヘルシンキ、マドリードなど欧州各都市に加え、北米ではニューヨーク、シアトル、オースティンにも拠点を展開しています。各地域の規制や市場動向を踏まえたサステナビリティ支援を提供していることが特徴です。
当社はこうしたグローバルな実績を背景に、2022年に日本法人を設立しました。現在はグローバルに不動産投資を行う金融機関や不動産ファンドを中心に、日本におけるサステナビリティ対応を支援しています。
欧州では、エネルギー性能が一定基準を満たさない建物は賃貸や売却に制約が生じるケースもあり、建物の環境性能が資産価値に直接影響する規制が整備されています。そのため機関投資家や不動産ファンドは、環境性能を重視した投資判断を行っています。当社は、日本企業が海外拠点を含めたサステナビリティ対応を進める際にも、各地域の規制や認証制度に基づいた実務支援を提供できる体制を整えています。
自社ビル・工場の脱炭素化が次の課題に。企業が保有する不動産に向けた削減の実行支援

近年、多くの企業でScope1-3排出量の算定が進み、CO2排出量の見える化は一定程度進んできました。しかし、排出量を把握した後に「どこから削減に着手すべきか」が明確にならない企業も少なくありません。
特に自社ビルや工場、物流施設など企業が保有する不動産は、エネルギー消費量が大きいにもかかわらず、設備更新や運用変更の判断が難しい領域です。設備投資にはコストが伴い、現場のオペレーションにも影響するため、削減の実行が進まないケースが多く見られます。
当社はこうした企業不動産の脱炭素化を、戦略策定から実行フェーズまで支援しています。支援の第一段階は、建物のエネルギー利用状況の可視化です。建物全体のエネルギー消費量を用途別に分析し、照明、空調、ガス利用などのエネルギー構成を整理します。
そのうえで削減余地のある領域を特定し、省エネ施策を提案します。例えば既存設備を活用した運用改善や空調設定の最適化、設備管理システムの活用など、快適性を維持しながらエネルギー消費を削減する方法を検討します。
また、グリーンビル認証の取得支援も重要なサービスの一つです。認証取得は単なる環境評価ではなく、資産価値の向上や投資家への説明責任にもつながる取り組みです。LEEDやBREEAMなどの国際的な認証制度に基づき、建物の環境性能を評価し、必要な改善策を整理します。
実際の支援事例として、日本のJ-REIT(不動産投資信託)が保有する研究施設でBREEAMを取得したプロジェクトがあります。この施設は約300,000平方メートルの大規模建物で、J-REITでは初めて同認証を取得した先進的な事例の一つです。
また都内の商業ビルでは、テナントが使用するエネルギー量を把握できないという課題がありました。当社はテナントへのヒアリングを通じてエネルギー利用状況を整理し、設備改善を提案しました。その結果、テナントの光熱費削減と建物の環境性能向上を両立に寄与し、テナント満足度の向上にもつながっています。
このように当社は、戦略策定にとどまらず削減プロジェクトの実行まで伴走する支援体制を提供しています。今後重要に重要なってくるのは、「認証を取得したことを説明する」だけではなく、「認証取得したことで何が変わるのか/何が変わったのか」を測定する体制を構築することだと考えています。例えば、認証取得後のCO2排出量の削減量、従業員満足度、光熱費削減額、テナントビルであれば、入居率や再契約率など、認証取得に伴う投資・費用対効果に係るKPIを設定することで、認証取得の価値が可視化されると考えています。
建物・不動産の環境性能が事業継続力に直結。海外基準を踏まえた経営判断の支援

当社のコンサルティングにより、企業は保有不動産のエネルギー利用状況を把握し、削減施策を段階的に実行できるようになります。これらの取り組みは単なる環境対策にとどまらず、光熱費削減や設備運用の最適化など経営面の効果も生み出します。
さらに近年は、気候変動リスクへの対応も重要なテーマとなっています。気温上昇による空調負荷の増加はエネルギーコスト上昇につながる可能性があります。また洪水や台風など自然災害への備えも、建物運用の重要な要素です。
こうした背景から、建物のレジリエンス(災害耐性)や環境性能を評価する取り組みは、企業の事業継続計画とも密接に関係しています。当社はこうした気候変動リスクを事前に可視化・評価し、企業が適切な対策を検討できる状態をつくる支援も行っています。
加えて、最近では国土交通省が「社会的インパクト不動産」実践ガイダンスを発表したこともあり、社会的インパクト創出に関する相談件数が日本国内でも増えています。環境性能に加えて、不動産の「社会的価値」の創出・評価も新たなテーマとなっており、当社は、こうした領域においても支援を拡大しています。
日本においても、製造業や物流企業、ホテル業など多くの企業が大規模な建物を保有しており、その運用は企業の脱炭素戦略に大きく影響します。Longevity Partnersは、日本企業が国内外の拠点を含めて不動産の脱炭素化を進める際のパートナーとして、グローバル基準に基づいた支援を提供していきます。
まとめ
企業の脱炭素経営において、保有不動産のエネルギー削減は重要なテーマです。排出量の見える化が進んだ現在、多くの企業が次の段階として削減の実行方法を模索しています。
Longevity Partnersは、不動産に特化したサステナビリティコンサルティング企業として、建物のエネルギー分析から削減プロジェクトの実行、グリーンビル認証取得、さらにESG戦略や社会的インパクト不動産支援までを一貫して提供しています。 特に、複数拠点を保有している企業や、エネルギーコストの上昇、ESG開示対応に課題を感じている企業にとっては、不動産の環境性能を定量的に把握することが、次の打ち手を考えるうえで重要です。どの拠点から優先的に着手すべきかを見極めることは、CO2削減だけでなく、コスト最適化や資産価値の維持にも関わる経営判断の土台になるでしょう。