発電・エネルギー

LNGとLPGは何が違う?注目される理由とは?都市ガスについてもわかりやすく解説!

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LNGとLPGは何が違う?注目される理由とは?都市ガスについてもわかりやすく解説!

二酸化炭素排出量が少ないエネルギー源として、LNGやLPGに対する注目が高まっています。どちらも液化されたガスという点では同じですが、輸入元や用途に違いがあります。

この記事では、LNGとLPGがそれぞれどのようなガスであるのかやメリット・デメリット、共通点と相違点などを整理します。

INDEX

LNGとは?

LNGとは何か

LNGとは、Liquefied Natural Gasの略称で、日本語では「液化天然ガス」と訳されます。天然ガスは常温・常圧では気体であるため、気体のままパイプラインで輸送するか、-162℃まで冷却し液化させてタンカーなどで輸送します。

出典:資源エネルギー庁「第3節 一次エネルギーの動向」

1969年まで、天然ガスは国産のものを利用しており、1次エネルギー供給量の1%に過ぎませんでしたが、LNGの輸入がはじまると、その比重は徐々に高まり、2014年度には過去最高の24.5%に達します。

出典:資源エネルギー庁「第3節 一次エネルギーの動向」

天然ガスの用途別消費量の推移

出典:資源エネルギー庁「第3節 一次エネルギーの動向」

輸入されたLNGの半分以上が発電用として用いられ、30%強が都市ガス用として利用されています。

LNGのメリット

LNGには環境性や供給安定性に優れているというメリットがあります。

CO2排出量は石炭と比べ約6割ほどに、窒素酸化物の排出量は石炭の2割~4割ほどに抑えられます。硫黄酸化物に至っては、ほとんど排出しないことから、もっともクリーンな化石燃料といえます。

出典:資源エネルギー庁「【インタビュー】「LNGは環境性・供給安定性・経済合理性のバランスのとれたエネルギー」-広瀬 道明氏(前編)」

LNGの輸入先(2019年度)

出典:資源エネルギー庁「第3節 一次エネルギーの動向」

主な輸入先はオーストラリアやマレーシア、ロシア、ブルネイ、アメリカなどで、石油の主な輸入先である中東への依存率は17%に過ぎません。中東情勢の影響を受けやすい石油に比べ、天然ガスは地政学的リスクが低く、安定的に供給を受けられる資源だといえます。

また、液化して大量に輸送できる天然ガス(LNG)は、輸送コストが低い船舶で運搬できるという長所もありますので、経済面でも優れているといえます。

出典:資源エネルギー庁「第3節 一次エネルギーの動向」

LNGのデメリット

LNGのデメリットは2点です。1点目のデメリットはコストがかかることです。LNGの産地はオーストラリアをはじめとし、日本から遠く離れた外国です。そこから輸送するにはそれなりの輸送コストがかかります。

さらに、LNGを冷却するコストやLNG専用船の建造・運用コスト、LNGの貯蔵コストなどもかかります。-162度以下を維持するには、それ相応の設備が必要となるからです。

燃料別の二酸化炭素排出量の例

出典:環境省「燃料別の二酸化炭素排出量の例」

2点目のデメリットはCO2を排出することです。上にあるデータは燃料別のCO2排出量を比較したものです。LNGは化石燃料のなかではもっともCO2を排出しませんが、それでも一定量のCO2を排出してしまいます。

LPGとは?

LPGとは何か

LPGとは、Liquefied Petroleum Gasの略称で、日本語では液化石油ガスと訳します。プロパンガスとブタンガスを原料に作られるガスの総称をLPGというと考えてよいでしょう。

LPGはLNGよりも高い温度で液化します。その理由は、原料のプロパンが-42℃、ブタンが-0.5℃で液化するからです。

LPガスの用途

出典:資源エネルギー庁「災害に強い分散型エネルギー、LPガスの利活用」

LPGは、家庭用ガスや工業用ガス、化学原料、自動車の燃料などとして使用されます。

LPGのメリット

LPGのメリットは、利便性が高いことです。LNGよりも高い温度で液化するLPGは液化させた状態でボンベに詰め、使用場所に持っていくことができます。

また、LNGを使用する都市ガスの場合、ガス管を張り巡らさなければなりませんが、LPGはその必要がありません。ボンベに詰められたLPGは、電力が無くても独立して稼働できます。そのため、停電時でも使用できるという長所があります。

こうしたLPGのメリットは東日本大震災の時に遺憾なく発揮されました。自衛隊が炊き出しなどの活動を行う際、エネルギー源として利用されたのはボンベに詰められたLPGでした。設置が容易であることから、災害時に建てられた仮設住宅などでもLPGは使用されました。

出典:資源エネルギー庁「災害に強い分散型エネルギー、LPガスの利活用」

出典:資源エネルギー庁「災害に強い分散型エネルギー、LPガスの利活用」

LPGのデメリット

LPGは、LNGに比べ価格が高いというデメリットがあります。その理由は、価格設定の違いにあります。LNGは、公共料金として扱われ、2017年まで価格が規制されていました。そのため、比較的低い価格水準を維持します。

しかし、LPGは価格規制がなく、ガス会社が自由に料金を設定できました。ガスのような生活必需品の場合、消費者より供給者が優位に立つため、料金が割高になりやすいのです。

出典:資源エネルギー庁「都市ガスの小売全面自由化

LNGとLPGの共通点と違い

(1)LNGとLPGの共通点

LNGとLPGの共通点は、3点あります。1点目は液化させることで輸送しやすくできることです。ガスを液化できれば、パイプラインを張り巡らさなくても船舶や車両で輸送できます。それにより、コストを低減できます。

2点目は、両者とも輸入に依存するエネルギーだということです。輸入先の違いはありますが、海外から輸入しているという点は同じです。

3点目は、他の化石燃料に比べCO2排出量が少ないということです。LPGのCO2排出量は都市ガスに劣るものの、原油を下回っています。

出典:日本LPガス団体協議会「LPガスは クリーン エネルギー」p4

(2)LNGとLPGの違い

LNGとLPGの違いは、3点あります。

1つ目の違いはガスの重さです。空気の重さを1とした場合、LNGは0.6と空気より軽いガスです。一方、LPGは1.5で空気より重いガスです。その結果、LNGが漏れた時、建物の上部に集まるのに対し、LPGは建物の下にたまります。

2つ目の違いは熱量です。LNGの発熱量は45MJ/m3であるのに対し、LPGの発熱量は102MJ/m3です。つまり、LPGの火力はLNGの2倍強であるといえます。

3つ目の違いは供給形態です。LNGは地下にパイプラインを埋設し、消費する場にガスを供給しますが、LPGは消費場所に取り付けられたガスボンベからガスが供給されます。

それにより、LPGはボンベさえ運べれば全国どこでも設置可能であるのに比べると、LPGはパイプラインが整備された都市部でのみ利用できるという違いが生まれます。

CO2排出量が少なく環境負荷を低減できる都市ガス

政府は2050年までのカーボンニュートラルを目指し、環境負荷の少ない都市ガスに注目しています。

(1)環境負荷の低い都市ガス

都市ガスとは道路の下のガス管を通じて各家庭に供給されるガスのことです。都市ガスの原料はメタンを主成分とする天然ガス(LNG)です。LHGの大半は海外からの輸入によって賄われています。

都市ガス事業の概要

出典:経済産業省「都市ガス事業における地球温暖化対策の取組み」(p3)

都市部を中心に供給され、2016年度には約377億㎥の都市ガスが販売されました。家庭用は全体の4分の1ほどで、残りの4分の3は産業用・業務用として供給されています。

都市ガスの主成分である天然ガスはCO2の排出量が石炭や石油よりも少ないため、環境負荷の低いエネルギーだといえます。

(2)都市ガス製造段階でのCO2削減

都市ガス製造工程でのCO2削減

出典:経済産業省「都市ガス事業における地球温暖化対策の取組み」(p.4)

都市ガス製造工程でもCO2排出削減を試みています。たとえば、原材料として用いていた石油・石炭系のガスをLHGに切り替えたり、都市ガス製造工場に省エネ機器を用いたり、冷熱利用設備を導入することで従来よりもCO2排出量を抑制できるようになりました。

(3)都市ガス消費段階でのCO2削減

都市ガス消費段階でのCO2排出削減の効果

出典:経済産業省「都市ガス事業における地球温暖化対策の取組み」(p.10)

都市ガス消費段階でもCO2の排出削減が試みられています。その理由は、製造工程のCO2排出削減よりも消費段階での排出削減の方が圧倒的に効果的だからです。

具体的には低炭素機器の導入によりCO2排出量を大幅に削減できる可能性があります。

都市ガス消費段階でのCO2排出削減の効果

出典:経済産業省「都市ガス事業における地球温暖化対策の取組み」(p10)

コージェネレーションシステムとは、発電の際などに発生する廃熱を回収してエネルギーとして利用する方法です。このほかにも家庭用燃料電池やガス空調、天然ガス自動車などの普及により大幅なCO2排出削減が見込まれます。こうした取り組みを通じて都市ガスの普及を図り、CO2の排出削減を進めることで環境負荷を低減できます。

まとめ:中小企業もより環境負荷の少ないLNG・LPGへのエネルギーシフトの検討を

2020年のカーボンニュートラル宣言以来、日本でも脱炭素社会実現のための行動が求められるようになりました。影響力が大きい大企業は積極的に脱炭素に向けた行動をとりつつあります。この流れは、いずれ中小企業にも波及するでしょう。

しかし、大企業に比べ資金面での余裕に乏しい中小企業が脱炭素にとりくむのは容易なことではありません。中小企業ができる脱炭素の取り組みの一つに、LNGやLPGの積極的利用があります。たとえば、業務で使用する車両をLPG車にするという選択肢があります。LPG車は燃料コストが安いためタクシーなどで利用されていますが、それを業務用車両として利用することもできるでしょう。

あるいは、経済産業省が行う「天然ガスの環境調和等に資する利用促進事業費補助金」を利用した設備投資をしてもよいでしょう。脱炭素社会への潮流はもはや止めることができない大きな流れです。中小企業であっても、そうした流れに敏感に対応することが求められるのではないでしょうか。

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