経営・戦略

エンタープライズリスクマネジメントとは?特徴や必要性、取り組み方について

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エンタープライズリスクマネジメントとは?特徴や必要性、取り組み方について

エンタープライズリスクマネジメントとは、企業価値を高めるための重要な要素です。しかし、その具体的な内容や取り組み方を理解することは、経済を担当する多くの人々にとって難しいかもしれません。ここでは、エンタープライズリスクマネジメント(ERM)の定義からその必要性、特徴、効果に至るまでを詳細に解説し、企業の取り組み方についても触れていきます。

リスクマネジメントは企業の成長と成功を育むための重要な要素あり、ERMの理解と実践は、経済を担当する全ての方々にとって必要なスキルです。これらの知識を身につけることで、あなたの企業はさらなる成長と成功を実現する可能性が広がります。

INDEX

エンタープライズリスクマネジメントとは?

エンタープライズリスクマネジメントとは、全社的視点で企業全体の価値最大化を目指すプロセス志向のアプローチです。従来のリスクマネジメントでは異なるリスクそれぞれに応じた部署が設置されていましたが、エンタープライズリスクマネジメントでは全てのビジネスリスクと機会を統合的に管理します。

また、コーポレートガバナンスの強化、予期せぬ損失への対策、戦略的マネジメントツールの導入といった目的を含んでいるため、一貫したフレームワークにより、企業に関わるすべてのリスクの管理を可能にするマネジメント方法です。

出典:経済産業省「先進企業から学ぶ事業リスクマネジメント 実践テキスト」(平成17年3月)p25

エンタープライズリスクマネジメントの必要性

現代のビジネス環境は、規制緩和による競争の増大、リスクの多様化、経営管理の進化、そして説明責任の増大といった要素により、ますます複雑化しています。こうした背景から、企業全体のリスクを統合的に管理するエンタープライズリスクマネジメントの必要性が高まっています。これは、予期せぬ問題への対応強化と企業価値の最大化を目指すものです。

(1)規制緩和の進展

部門別リスクマネジメントでは、しばしば組織全体としてリスクへの対応策をとるための構造や情報の流通が完全には確立されていないことが多いです。その結果、部門別リスクマネジメントの欠点から以下のような課題が生じる可能性があります。

部門別リスクマネジメントの欠点顕在化する可能性がある問題
全てのリスクに対応する責任者が 明確でない・緊急時にすばやい対応ができない ・リスク対策の実施が管理できず、大 事故や事件が起こる・リスクが発現した事実を最高経営責 任者が把握できない
社内全てのリスク情報が共有化で きていない・複数の部門、部署で同じリスク対策 がとられている・部門、部署の間で重大なリスクが放 置されている・リスク対策の実施が管理できず、大 事故や事件が起こる
社内全てのリスクマネジメント情報 を一元的に把握できない・リスクが発現した事実を最高経営責 任者が把握できない・リターンに対して企業が抱えるリスク の大きさを把握できない

このように顕在化する可能性があり、リスク対策の実施が管理できず、大事故や事件が起こる問題は「全てのリスクに対応する責任者が 明確でない」「社内全てのリスク情報が共有化で きていない」の2つの欠点から顕在化する可能性があります。

(2)リスクの多様化

問題が顕在化した場合、規制緩和を原因とした競合他社の増加や事業領域の拡大・グローバル化や技術進歩等を原因とした柔軟な対応・信頼関係に依存した経営管理・ステークホルダーからの開示要求といった環境変化への対応が困難になるという可能性も考えられます。

対応が困難であると考えられるケース

  • リスク構造の変化に対する柔軟な対応
  • 不祥事の未然防止
  • 説明責任

解決には経営環境が急速に変化する中で、企業全体としてリスクを適切に管理するための統一されたリスクマネジメントシステムの構築が必要です。

(3)経営管理のあり方の変化

突然の問題やスキャンダル防止のため、企業は全社的リスク管理を行い、全リスクを把握すべきです。他社の不祥事を教訓に、企業の事業リスク管理導入が増加しています。

(4) 説明責任の増大

規制緩和やグローバル化により事業機会が広がり、他社との競争に備えリスクを取る必要性が増えました。企業は積極的に対応し、新規事業や競合に対抗するためリスク情報をリアルタイムで理解することが重要です。これにより、説明責任が強化されます。

出典:経済産業省「先進企業から学ぶ事業リスクマネジメント 実践テキスト」(平成17年3月)p12.13

エンタープライズリスクマネジメントの特徴

エンタープライズリスクマネジメントは、リスクの把握から回避策の提案、最善の対応までを全社規模で行う統合的なアプローチです。このシステムを導入することで、各部署の孤立したリスク対策を一元化し、組織全体としてのリスク対策を強化します。

(1)全社的にリスクの把握と管理が可能になる

組織全体が予期しうる全てのリスクを見極め、そのリスクが現実化した場合の対応策を事前に計画し、適切なリスクコントロールを通じて被害を最小化するプロセスを意味します。

(2)全社的なリスク回避方法の提案と最善な対処が可能になる

組織全体が未来の重大なリスクを予測し、その回避策を提案するだけでなく、万一危機が発生した場合の最善の行動計画を策定し、緊急時により特化したアプローチ体制を作ることです。

出典:経済産業省「先進企業から学ぶ事業リスクマネジメント 実践テキスト」(平成17年3月)p26

エンタープライズリスクマネジメントの効果

エンタープライズリスクマネジメントは企業全体のリスクを把握し、予期せぬ危機を未然に防ぐ力を高め、最善の対策を提供することで企業の安全性と信頼性を向上させます。

(1)ステークホルダーへの信頼性と透明性:事業リスクマネジメントシステムの経済的な導入戦略

事業リスクマネジメントシステムの導入は初期費用など大きな費用が必要ですが、様々な進め方により大きな費用がかからず導入できた例もあります。

(2)企業イメージの向上:自社人材の活用と外部コンサルタントの違い

外部のコンサルタントを利用する場合と自社の人材のみで取り組む場合では大きな差が出てきます。

(3)リスク対策にかける費用の配分を適切に行うことが可能になる

当該作業を実施する人材は外部のコンサルタントを利用する必要がなく大きな支出がありません。

(4)リスクとリターンをバランスさせる段階的な実施による負荷分散

当該作業を実施する人材は、一度にすべてのことをスタートさせるのではなく、できることを一つ一つ確実に実施していくこと で作業にかかる負荷を分散することが可能です。

出典:経済産業省「先進企業から学ぶ事業リスクマネジメント 実践テキスト」(平成17年3月)p20

エンタープライズリスクマネジメントの取り組み

企業の競争力向上のため、エンタープライズリスクマネジメントの導入が不可欠です。エンタープライズリスクマネジメントは組織全体のリスクを統合的に理解し、適切に管理することで企業価値を高めます。ここでは、取り組み方についてご紹介します。

(1)リスクマネジメント行動指針・基本目的策定する

リスクマネジメント行動指針に基づきリスクマネジメントを基本目的として明確に設定することが望ましいでしょう。

(2)リスクマネジメント方針をスローガンとして掲げる

多くの企業において、社内で決めたリスクマネジメントのなかでも、特に重要視するべきことは一言単位のキーワードで表されています。スローガンや単純な言葉で表されることで社内での認知や理解向上が見込めます。

スローガンの例

  • トータルリスクマネジメント戦略
  • 一人一人がリスクマネジャー 
  • その場にいる人がリスクマネジャー 
  • 何かあったら必ず一報を
  • Business Continuity - 事業継続

(3)リスクマネジメント方針を社内外に表明する

表明したリスクマネジメント方針

【社内】

イントラネットを利用し、メールや掲示板で最高経営責任者から表明される イントラネットを利用し、メールや掲示板で最高経営責任者から表明される

朝礼や全体会議など社員全員が集合する場で、最高経営責任者から表明される 朝礼や全体会議など社員全員が集合する場で、最高経営責任者から表明さ

【社外】

ホームページを利用して公開する ホームページを利用して公開する

企業情報の開示書類(アニュアルレポート、CSR報告書など)に詳細に記述する

出典:経済産業省「先進企業から学ぶ事業リスクマネジメント 実践テキスト」(平成17年3月)p82~.84

まとめ:企業価値の向上に向けてエンタープライズリスクマネジメントに取り組もう!

エンタープライズリスクマネジメントとは、企業全体のリスクを統合的に管理する手法であり、その必要性と特徴は現代の不確実なビジネス環境を生き抜くための戦略的な視点です。組織全体のリスクを一元的に把握し、その影響を最小化しつつ機会を最大化することを可能にします。

組織がエンタープライズリスクマネジメントに取り組む際には、リスクの洗い出しや評価、それに対する対策の策定と実施などが必要となります。これらを実行することで、ERMは組織のリスク選択を最適化し、企業価値の向上に寄与します。つまり、ERMは企業価値向上を目指す全ての組織が取り組むべき積極的な戦略であり、経済担当者にとってはその理解と実践が必須と言えるでしょう。

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