「排出量分配方式」とは?初心者でもわかるサプライチェーンCO2排出量算定の完全ガイド

kw 排出量分配方式

「排出量分配方式」とは?初心者でもわかるサプライチェーンCO2排出量算定の完全ガイド

 排出量分配方式について、わかりやすく解説します。サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量を算定することは、企業が事業活動を行う上で非常に重要です。地球温暖化に歯止めをかけるためには、各企業が自社に関係した温室効果ガス排出量を正確に把握する必要があるためです。本記事ではサプライチェーン排出量の概要のほか、排出量を分配する方法に関して「一次データ」「排出原単位」それぞれを使用する場合についてご紹介します。

目次

  1. サプライチェーン排出量とは

  2. 一次データを用いて排出量を分配する方式

  3. 排出原単位を用いて排出量を分配する方式

  4. まとめ:自社に適した排出量分配方式を用いて、サプライチェーン排出量を算定しよう!

1.サプライチェーン排出量とは

 サプライチェーン排出量を把握することは、企業が温室効果ガス排出量を減らすにあたっての第一歩と言えます。サプライチェーン排出量について解説します。

✔プライチェーン排出量とは

 サプライチェーン排出量の定義は、原材料調達、製造、物流、販売、廃棄など、事業活動全体の流れから発生する温室効果ガス排出量のことを指します。

✔対象範囲

 この排出量には、自社内での直接的な排出(Scope1)だけでなく、自社事業に伴う間接的な排出(Scope2およびScope3)も含まれます。

✔排出量の計算方法

 サプライチェーン排出量は、「Scope1排出量+Scope2排出量+Scope3排出量」という式で算定されます。

alt属性:サプライチェーン排出量

出典:環境省「サプライチェーン排出量全般」(2023/03/01)

サプライチェーン排出量算定の意義

 サプライチェーン排出量を算定することで、企業は以下のようなメリットを得られます。

■排出量の多いプロセスの特定

 特に排出量が多いプロセスを明らかにし、それに基づいて効果的な環境対策の方向性を決めることができます。

■排出量削減の実現

 サプライチェーン全体で削減を目指すことで、自社だけでは難しい排出量削減も可能になります。

■ビジネスチャンスの拡大

 サプライチェーン上の他の事業者にも削減の選択肢を提供することで、新たなビジネス機会を生み出すことができます。

■社会的要請への対応

 排出量の算定や開示は社会的な要請となっており、これを行うことで企業の信頼性を高め、資金調達などにも良い影響を与えます。

出典:環境省「なぜサプライチェーン排出量を算定するのか?」p13,20,27,28(2023/03/01)

2.一次データを用いて排出量を分配する方式

サプライチェーン排出量を算定する際には、自社以外の排出量をどのようにして把握するかが重要なポイントとなります。その中でも、一次データを使用して排出量を分配する方式について解説します。

一次データによる排出量の分配とは

関係する取引先から提供を受ける排出量のデータを、「一次データ」と言います。この一次データを使用してサプライチェーン排出量を算定する方法が、「一次データを用いて排出量を分配する方式」です。具体的には各取引先から、「昨年度の貴社向け⽣産に係る排出量は**トンでした」のような報告を受けることとなります。取引先から見ると、自社の総排出量の一部を報告先へ配分する形です。取引先が当該報告先1社のみならば、自社排出量の100%が配分されます。

出典:環境省「サプライチェーン排出量の算定の考え⽅」p51,53(2023/03/01)
出典:CDP「スコープ3排出量算定の考え方について」p11,18(2022/05/19)

一次データによる排出量分配のメリット・デメリット

一次データによるサプライチェーン排出量の算定には、取引先の削減努力が算定結果の総排出量に反映されるというメリットがあります。またデータが管理され、透明性が高まる点もポイントです。一方で一次データのデメリットとして、収集や更新が大変であり、取引先が多い場合など全てのデータを把握するのはほぼ不可能であることが挙げられます。このため実務上は、次項で解説する「排出原単位」を用いる算定方法が主流となっています。

出典:環境省「サプライチェーン排出量の算定の考え⽅」p52,53(2023/03/01)

3.排出原単位を用いて排出量を分配する方式

サプライチェーン排出量の算定においては、排出原単位を用いる方式が一般的です。排出原単位による排出量分配方法について解説します。

排出原単位による排出量の分配とは

サプライチェーン排出量算定にあたって、「排出量=活動量×排出原単位」という算定式を⽤いる⽅法が、「排出原単位を用いて排出量を分配する方式」です。活動量とは、電気の使用量・貨物の輸送量・廃棄物の処理量などを指します。排出原単位とは、活動量あたりのCO2排出量です。排出原単位はさまざまなデータベースによって情報提供されており、たとえば環境省は「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース」「IDEAv2(サプライチェーン温室効果ガス排出量算定⽤)」という二つのデータベースを公開しています。

出典:環境省「サプライチェーン排出量の算定の考え⽅」p51,54,56(2023/03/01)

二次データによる排出原単位のメリット・デメリット

排出原単位は産業平均などによって設定されていることが多く、このように業界などでくくられたデータを「二次データ」と呼びます。二次データによる排出原単位には、入手が容易であるというメリットがあります。一方で自社や 取引先の排出削減活動が反映されず、活動量が増えれば排出量も単純に比例して増えてしまうというデメリットもあります。またデータが活動の実態と整合していない場合、算定量の正確性に影響を与える可能性も懸念されます。

出典:CDP「スコープ3排出量算定の考え方について」p11,18(2022/05/19)

企業ごとに設定された排出原単位もある

排出原単位には、産業平均などの二次データで設定する方法以外に、排出量を直接計測する方法や取引先から排出量の算定結果の提供を受けるなど、一次データによって設定する方法もあります。特に上場企業の公開情報などをもとに、企業別の排出原単位をデータベースとして提供する「ASUENE」などのサービスも存在します。こうしたサービスを利用すれば、「収集が容易」という二次データのメリットと、「削減努力や活動実態が算定結果に反映される」という一次データのメリットを同時に得ることができます。

出典:環境省「サプライチェーン排出量算定の考え方」p5(2023/03/01)
出典:PR TIMES「CO2排出量見える化・削減・報告クラウドサービス『ASUENE』に、企業別の排出原単位の機能を追加」(2024/12/25)

4.まとめ:自社に適した排出量分配方式を用いて、サプライチェーン排出量を算定しよう!

サプライチェーン排出量の算定は、環境問題への関心の高まりとともに、今や社会的な要請となっています。サプライチェーン排出量を正確に算定するためには、取引先の排出量をどのように配分するかが重要なポイントです。一次データ・二次データそれぞれに長所と短所がありますが、企業別の原単位を活用する方式を採用することで、両者のメリットを同時に享受することが可能です。

自社に最適な排出量分配方式を選択し、サプライチェーン排出量を算定することで、排出量の実態を把握し、削減に向けた具体的なアクションを起こしましょう。

アスエネでは、CO2排出量の「見える化」や「削減支援」を通じて、企業の環境目標達成を強力にサポートしています。企業別の排出原単位データを活用できる機能や、排出量算定の効率化を図るサービスを提供しており、サプライチェーン全体の環境負荷軽減に貢献します。ぜひ、アスエネのサービスをご活用ください。

持続可能な未来を共に築きましょう。詳しくは公式サイトをご覧ください!

ASUENEの詳細はこちらをクリック👈

 

資料 この1冊でLCAの基礎を徹底解説資料 サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説
サプライチェーン全体のCO2排出量Scope1〜3算定の基礎を徹底解説