気候変動対応が企業経営の中心課題となるなか、環境への取り組みは「社会的責任」から「経営の必須要件」へと進化しています。アスエネは、国内外の脱炭素・ESG・サステナビリティ市場の動向を体系的に整理した「クライメートテック カオスマップ2025年版」を公開しました。

本カオスマップは、「算定・評価」、「クレジット」、「経営総合支援」「エネルギー・技術」の4つの主要領域から、日本企業が直面する課題とビジネスチャンスを俯瞰。クライメートテック産業の拡大と、サステナビリティ経営の“実装フェーズ”を可視化する内容となっています。

日本・グローバルの制度整備が加速させる「サステナビリティ経営」への転換

2025年、日本企業を取り巻く環境規制は急速に変化しています。

特に注目されるのが、サステナビリティ基準委員会（SSBJ）による新しい開示基準の策定です。2026年度以降は、有価証券報告書への非財務情報の統合開示が予定され、財務情報と環境情報を一体的に開示する時代が到来します。脱炭素・ESGに関する情報の定量的な開示は、企業にとって投資家・取引先・金融機関からの信頼を得る前提条件となり、対応の遅れは資本調達や取引のリスクに直結しつつあります。

同時に、企業や自治体によるScope1-3の開示要請も拡大しています。これまで大企業中心だった取り組みが中小企業にも波及し、業界全体がデータで連携する流れが進んでいます。自治体では公共入札要件に脱炭素基準を盛り込み、再生可能エネルギーの導入やカーボンクレジット活用による地域レベルのGX（グリーン・トランスフォーメーション）推進も本格化しています。

さらに国際的にも、欧州で「CBAM（炭素国境調整メカニズム）」や「CSRD（企業サステナビリティ報告指令）」が施行され、製品製造時のCO2排出量開示が輸出条件化されるなど、日本企業にも直接的な影響を与えています。こうした流れは、環境対応を「規制遵守」から「企業価値を支える基盤」へと変化させました。制度の変化が示すのは、脱炭素・サステナビリティがもはや一過性のトレンドではなく、経営そのものを変革する構造変化の波であるということです。

これらの変化は、企業にとってリスクであると同時にチャンスでもあります。脱炭素を経営戦略に組み込むことは、投資家・顧客・社会などのステークホルダーとの関係性構築において重要な手段となります。気候変動対策がコストではなく持続的な成長と競争力の源泉へと転換しつつある、それが2025年の日本企業を取り巻く現実です。

拡大する主要4領域が企業の成長を支える。クライメートテックの全体像

算定・評価：信頼できる「データ経営」への転換

企業の環境・社会的な影響を定量的に可視化する動きが加速しています。CO2排出量の見える化はもちろん、エネルギー使用量や廃棄物、水資源、取引先のESG評価までを含めた「統合的な見える化」が進展。こうしたデータは、もはや環境報告のためだけではなく、企業の信頼性や投資判断を支える経営情報として活用されています。

特にISSB、CDP、TCFDといった環境イニシアチブへの開示基準への対応を見据え、AIや自動化ツールによって正確かつ効率的にデータを集約・分析する仕組みが整いつつあります。

エネルギー・技術：効率化とレジリエンスを両立する経営インフラ

再生可能エネルギー、省エネ設備、蓄電池などの技術革新が進み、企業活動を支えるエネルギーの脱炭素化と最適化が広がっています。再生可能エネルギーの導入や電力需給の最適化は、環境対策にとどまらず、エネルギーコスト削減と事業継続性（BCP）向上にも直結しています。

デジタル技術を活用したエネルギーマネジメントやスマートグリッド化が進み、環境と経営合理性を両立するための“次世代インフラ”として注目されています。

カーボンクレジット：環境価値を経済価値へ変える仕組み

削減・吸収の取り組みを社会的・経済的価値に転換する動きが加速しています。政府主導のJ-クレジット制度や新しいボランタリーカーボンクレジット市場の拡大により、企業は自らの削減努力を「資産」として活用できる時代に入りました。森林保全、再生可能エネルギー導入、バイオ炭などの多様なプロジェクトを通じて、環境価値と経済価値の両立を図る取り組みが進んでいます。2024年度から始まったGX-ETS（排出量取引制度）の試行も追い風となり、クレジット取引の透明性と信頼性がさらに高まっています。

経営総合支援：サステナビリティを「経営戦略」に変える伴走支援

脱炭素・ESGを一時的なプロジェクトにとどめず、経営そのものに組み込む動きが活発です。第三者検証や監査、サステナビリティ人材の育成、ESG情報開示支援など、企業が持続的に環境・社会価値を創出するための基盤整備が急速に進んでいます。コンサルティングや金融機関による支援も拡大し、経営の意思決定そのものが「サステナビリティを前提とする」時代へと移行しています。

これら4領域は相互に補完しながら企業の変革を支えています。「算定・評価」で現状を把握し、「エネルギー・技術」で改善し、「カーボンクレジット」や環境活動への投資で価値化し、「総合経営支援」で持続させる。この循環構造こそが、日本のクライメートテック市場拡大を牽引する原動力です。

企業や自治体に求められる次の一手は「統合的な気候戦略」への転換

いま、企業や自治体に求められているのは、個別施策を超えた全社的なサステナビリティ戦略の統合です。CO2排出量だけでなく、エネルギー効率化、資源循環、開示体制、リスクマネジメント、人材育成などを一体的に進めることで、持続的な成長と競争力を両立できます。

特に重要なのが、サプライチェーン全体での連携です。製造や物流など各プロセスで排出量データを共有し、取引先と協働して削減策を実行する企業が増えています。これらの動きは、環境負荷削減に加え、投資家や顧客から信頼される企業づくりにも直結します。

また、自治体や地域企業も、再エネの地産地消や地域クレジット市場の創出を進めるなど、官民連携による取り組みを強化中です。気候変動対策を「共創のテーマ」として捉え、ビジネスと社会が一体となって持続可能な仕組みを構築することが求められています。

まとめ：クライメートテック市場の拡大を、持続可能な成長の機会に

2025年のクライメートテック産業は、環境対応を超えて経営・金融・テクノロジーを融合する新たな成長市場へと進化しました。制度整備と社会的要請の高まりが、企業にとってのリスクであると同時に変革のチャンスでもあります。

アスエネが発表した「クライメートテック カオスマップ2025年版」は、この広がる市場を俯瞰し、自社が取り組むべき領域を見定めるための羅針盤です。

持続可能な社会と企業成長の両立を実現するために、いま、企業は次の一歩を踏み出す時期にあります。

クライメートテックの波は、経営の未来そのものを形づくっています。

※ロゴ・企業名の掲載について
・本カオスマップのロゴ掲載に仕様上問題がある場合、早急に対応致しますので、誠にお手数ではございますが、 「press@asuene.com」までご連絡ください。
※本カオスマップは当社が独自の判断に基づき作成しているものです。掲載を辞退した企業は除いています。