温暖化対策の国際条約・パリ協定の概要について徹底解説
- 2022年06月15日
- その他
バイデン新政権が誕生し、アメリカが2021年2月19日にパリ協定に復帰したことで、パリ協定という言葉をよく聞くようになりました。パリ協定とは、1997年12月に採択された京都議定書の後継となる、2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みです。
この記事では、地球温暖化対策への取り組みに関心のあられる法人の皆さまが知っておくべき、パリ協定の概要やルール、日本の取り組みについてご紹介します。
目次
- パリ協定の概要に関する基礎知識
- パリ協定のルールに関する概要
- パリ協定を受けての日本の取り組み概要
- まとめ:パリ協定の概要を学び、温暖化対策への理解を深めよう!
1. パリ協定の概要に関する基礎知識
パリ協定は、先進国だけでなく途上国も含めた、温室効果ガス削減を目指す国際的な枠組みです。ここでは、京都議定書からパリ協定に取って代わった背景や、パリ協定が掲げる長期目標など、パリ協定の概要についてご紹介します。
パリ協定とは京都議定書の後継となる条約である
パリ協定は、1997年12月に採択された2020年までの気候変動問題に関する国際的な枠組みである京都議定書の後継となるもので、2015年12月にパリで開催された「国連気候変動枠組条約締約国会議」において合意されました。
55カ国以上が参加し、世界における総排出量のうち55%以上をカバーする国が批准することが発効するための条件でしたが、地球温暖化問題に対する関心の高さから、2016年11月4日に発効に至っています。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁『今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~』(2017/8/17)
パリ協定が誕生した背景
京都議定書は、先進国だけに法的拘束力のある数値目標を設定しており、途上国に対しては数値目標などを義務付けていませんでした。先進国だけを温暖化問題への取り組みの対象とする内容が問題視されたことが、パリ協定の誕生につながっています。
パリ協定では各国に、目標の設定が義務づけられていますが、目標を達成することまでは義務化されていません。京都議定書と比較すると、法的拘束力は弱いですが、先進国だけでなく途上国も含めて世界各国が温暖化対策に取り組むことを約束したという点において評価することができます。
パリ協定の長期目標
パリ協定とは、2020年以降における温室効果ガス削減のための国際的な枠組みです。世界共通の長期目標として『2℃目標の設定。1.5℃に抑える努力を追求すること』、それを達成するために『今世紀後半に人為的な温室効果ガス排出量を実質ゼロにすること』を掲げています。2℃目標には、産業革命前の世界の平均気温上昇と比較して2℃より低く保つという意味合いがあります。
出典:外務省『2020年以降の枠組み パリ協定(2020/4/2)』
2. パリ協定のルールに関する概要
地球温暖化についての科学的な研究の収集や整理を行う政府間機構のIPPC(気候変動に関する政府間パネル)が2018年10月に公表した『1.5度特別報告書』によると、産業革命前よりもすでに地球は約1℃も温暖化しており、1.5℃を大幅に超えないためには、2050年前後にCO2排出量が実質ゼロになる必要があるとの見解を示しています。
ここでは、パリ協定が長期目標を達成するために、どのようなルールを設定しているのか、パリ協定のルールに関する概要についてご紹介します。
出典:環境省『環境省における気候変動対策の取組(2020/9/1)』
削減目標の5年ごとの提出と更新
パリ協定に参加する全ての国は、それぞれに削減目標を5年ごとに提出・更新する必要があります。また世界全体としても、5年ごとに目標に合う削減ができているかを評価することがルールとして定められています。
出典:環境省『「日本のNDC(国が決定する貢献)」の地球温暖化対策推進本部決定について(2020/3/30)』
削減状況の「見える化」
パリ協定では、CO2削減への取り組みについての透明性(情報開示)も重要視されています。パリ協定に参加する全ての国が、CO2排出量削減の取り組み状況について、国連に報告し、検証を受けることがルールで定められています。
途上国への資金と技術支援
パリ協定では、先進国だけでなく、途上国も温室効果ガス削減への取り組みが求められています。途上国の温室効果ガスの削減を促進させるために、先進国が中心になって、途上国への資金や技術支援を行っています。
途上国に対する資金支援は、京都議定書でも定められていたルールですが、パリ協定では先進国の協力だけでなく、途上国に対しても自主的に資金を提供することを推奨しています。
3. パリ協定を受けての日本の取り組み概要
パリ協定を受け、日本は温室効果ガスの排出量を2030年までに2013年度比で26%削減、2050年までに80%削減するという目標を設定しています。また、日本が目標を達成するために進むべき方向として、低排出型社会と経済を両立させる方針を固めています。
ここでは、日本が掲げる温室効果ガス排出量削減の目標と、日本が目指す低排出型社会と経済を両立させた社会とはどのようなものなのかについてご紹介します。
日本が掲げる温室効果ガスの排出目標
菅新政権になったことにともない、日本は2050年までに、国内の温暖化ガスの排出を実質ゼロにすることを宣言しましたが、パリ協定が発効された当初は、温室効果ガスの排出量を2030年までに2013年度比で26%削減すること、2050年までに80%削減するという目標を設定していました。
削減する温室効果ガスの詳細については、環境省が『日本の約束草案(2020年以降の新たな温室効果ガス排出削減目標)』において次のように公表しています。(数値は2013年度比です。)
- エネルギー起源CO2:25%減
- 非エネルギー起源CO2:6.7%減
- メタン:12.3%減
- 一酸化ニ窒素:6.1%減
- HFC等4ガス:25.1%減
出典:環境省『日本の約束草案(2020年以降の新たな温室効果ガス排出削減目標)』
低排出型社会と経済の両立
日本は、上記のように温室効果ガス削減に関して野心的な目標を設定しています。この野心的な目標を達成するための政策として、2030年までにエネルギーミックスを実現させることを宣言しています。
エネルギーミックスを実現させるための手段として、経済産業省は『長期エネルギー需給見通し』において、徹底した省エネルギーの推進とともに、再生可能エネルギーの最大限の導入、火力発電の効率化、原発依存度を可能なかぎり低減させることを公表しています。
4. まとめ:パリ協定の概要を学び、温暖化対策への理解を深めよう!
この記事では、温室効果ガス削減の取り組みに関心のある法人の皆さまが知っておくべき、パリ協定の概要やルール、日本の取り組みなど基本的な知識についてお伝えしました。
バイデン新政権と菅新政権が誕生したことで、一気に温室効果ガス削減への興味関心が高まっています。企業がサステナブルな企業になるためには、環境問題への配慮や取り組みは欠かせません。。パリ協定について学び、温暖化対策への理解を深め、アクションにつなげましょう!