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今後の企業経営に必要なSXとは何か?具体的事例を紹介します

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今後の企業経営に必要なSXとは何か?具体的事例を紹介します

SXとは、企業の持続的成長と社会問題の解決を両立させる考え方です。まだまだ新しい考え方ですが、少しずつ事例が積み重なりつつあります。

今回は、SXの概念やSXが必要とされる理由、SXと似た言葉であるDXとの違い、SXの事例などについてまとめます。

INDEX

SXとは何か

(1)SXとは何か

SXとは、「sustainability transformation」の略語です。

経済産業省が作成した「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会中間取りまとめ〜サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の実現に向けて〜 」というレポート中で、SXという言葉が用いられたことにより、注目が集まりました。

企業の稼ぐ力の持続化・強化と社会のサステナビリティ(あるべき社会の姿)を重視するESGの両立を図る経営や、投資家との対話が必要であるとされました。

(2)企業のサステナビリティ

日米欧上場企業のROE・ROAの推移(加重平均)

出典:経済産業省「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 中間取りまとめ ~サステナビリティ」(2020/8/28)(p16)

企業のサステナビリティ(持続的成長)を上げるには、ROE(自己資本利益率)を向上させなければなりません。2014年に公表された「伊藤レポート」後、ROEを重視するべきとの意識は高まりつつありますが、欧米と比較するとまだまだ改善の余地があります。

研究開発費・営業利益の推移の日米比較&従業員一人あたりの能力開発の動向

出典:経済産業省「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 中間取りまとめ ~サステナビリティ」(2020/8/28)(p20)

また、2017年の「伊藤レポート2.0」では、研究開発費、人的能力開発費、IT 投資の伸びが弱いことや、中長期的に成長するには、これらに投資する必要があることが指摘されています。

(3)社会のサステナビリティ

社会のサステナビリティを考える際に無視できないのが、不確実性の増大です。地球環境問題では、温暖化が急速に進行しているため、異常気象などの天候リスクが増大しつつあります。

このようなリスクを完全に排除することはできない以上、不確実性をもたらす事象の確率を減らすか、発生した際にリカバリーできる仕組みをつくるなどの対策強化が必要となるでしょう。

今後、各企業は自社の利潤を追求するのみならず、CO2の排出削減やグリーンエネルギーの使用などにより社会のサステナビリティに配慮した経営を行わなければならないでしょう。

(4)投資家との対話

出典:経済産業省「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 中間取りまとめ ~サステナビリティ」(2020/8/28)(p17)

SXを考えるうえで欠かせないのが、企業と投資家の対話です。しかし、両者の関心事には大きな隔たりがあります。

企業側は売上高や利益率、利益伸び率などを重視する一方、投資家側は資本コストや総還元傾向、ROIC(集めたお金をどれだけ効率よく使ったかを示す指標)、ESGに関する指標を重視しているため、両者に乖離が発生しています。

SXが必要とされる理由

なぜ、経済産業省は2020年のレポートで聞きなれないSXを大きく取り上げたのでしょうか。そこには、不確実性の増大という時代の大きな変化がありました。主な不確実性は以下の通りです。

  • 新型コロナウイルスの流行による経済危機
  • サプライチェーンの寸断
  • 第四次産業革命の進展
  • 温暖化をはじめとする気候変動問題

新型コロナウイルスによるパンデミックは、世界経済に大きなダメージを与えました。世界各国の大都市がのきなみロックダウンし、経済がマヒ状態となります。

新型コロナウイルスの影響を受けたサプライチェーンの寸断の一例

出典:経済産業省「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 中間取りまとめ ~サステナビリティ」(2020/8/28)(p38)

発展途上国ではワクチンの不足などから労働力の確保ができなかったため、工場がストップするなどの事態が発生しました。そのことにより、サプライチェーンが寸断され、混乱に拍車がかかりました。

出典:経済産業省「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 中間取りまとめ ~サステナビリティ」(2020/8/28)(p37)

また、徐々に進展してきた第4次産業革命の動きも、不確実性の一つです。ITやAI、Iot技術の発展は、これまでの社会構造を大きく変えようとしているからです。もちろん、地球温暖化によるリスクの増大も不確実性増大の大きな要因です。

世界の不可欠性指標の推移

出典:経済産業省「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 中間取りまとめ ~サステナビリティ」(2020/8/28)(p37)

こうした不確実性の増大もあり、2020年1月段階でかつてないほどに不確実性指数は増大しました。今日、ロシアによるウクライナ侵攻や台湾有事などが取り沙汰されている事から考えても、不確実性は否が応にも増しているといえるでしょう。

企業はこうした不確実性を織り込んで、企業成長のための施策を実施しなければならないのです。

SXとDXの違いとは

SXと似た言葉に、DXがあります。DXは「Digital Transformation」の略語で、デジタル技術を浸透させることで、人々の暮らしをより良いものへと変化させることです。

DXは、会社の業務を単純にデジタルに移行するわけではありません。デジタル化することで、人々の生活を便利にすることが重要です。

DXの概要出典:経済産業省「DX-#01 経産省のデジタル・トランスフォーメーション」(2018/8/18)

行政機関を例にとると、いままで当たり前だった申請するたびに書類を作成することや記入漏れの修正といった煩わしい作業をDX化することで簡略化できるのです。

即効性が期待できるDXに対し、中・長期的な成果を期待するSXは、考え方の時間軸に大きな違いがあるといえます。

SXの事例

SXの事例としてどのようなものがあるのでしょうか。今回は3つの企業の事例を取り上げます。

(1)富士通株式会社

総合エレクトロニクス企業の富士通は、サステナビリティ経営に積極的に取り組んでいる企業です。企業の長期的な成長と、社会問題の解決を両立させるため、GRB(グローバルレスポンシブルビジネス)を設定しました。

GRBで設定された重要課題は7つです。

  • 人権・多様性
  • ウェルビーイング
  • 安全衛生
  • 環境
  • コンプライアンス
  • サプライチェーン
  • コミュニティ

これらの課題解決を通じ、イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能なものとしていくため努力すると宣言しています。

出典:富士通株式会社「持続可能な社会に向けた富士通のサステナビリティ経営」

(2)広島県

広島県では「D-EGGS-PROJECT」と題して、県が中心となって行うSXの実証実験プロジェクトが行われています。広島県が県内企業に実証実験への参加を呼び掛けた結果、30社がエントリーしました。

テーマは次の9分野です。

  • 新型コロナへの地域医療のレジリエンス強化
  • コロナ禍でのWell-being維持・向上
  • NewNormal時代のワークスタイル
  • モビリティの自動化・パーソナル化
  • 「密」回避の行動変容を促す地方観光モデル創出
  • コロナ禍での食文化発信・食スタイル
  • スタジアム観戦に縛られないチーム応援・交流の深化
  • 社会システムのレジリエンス強化( 循環経済化 )
  • 特別枠

30社の大半が県内の中小企業で、コロナ禍によって大きな影響を受けてきた会社です。2021年11月2日に成果発表会が行われました。

出典:D-EGGS-PROJECT「D-EGGS プロジェクト最終採択30EGGS結果発表!!」

出典:D-EGGS-PROJECT実証実験30件の成果発表会は2日間のライブ配信を開催!

(3)ジャパン・サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ

ジャパン・サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ(J-CEP)は、持続可能な成長を目指す企業が住民や行政、大学などと連携し、サーキュラーエコノミーの推進に取り組む新事業共創パートナーシップです。

たとえば、福岡県北九州市では「MEGURU BOX」を設置し、プラスチック資源の分別・回収や使用済みの資源を同じ用途の別製品に生まれ変わらせる「水平リサイクル」の実現に取り組んでいます。

この取り組みに参加したのは、小売業のハローディ、サンキュードラッグと北九州市の2つの市民センター(貴船市民センターと貫市民センター)、海洋プラスチック問題に取り組むクリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)などです。

行政機関と民間企業がケースバイケースで連携し、持続可能な社会の実現を目指します。

出典:ジャパン・サーキュラー・エコノミー・パートナーシップ

まとめ:SXは中小企業の未来にも大きな影響を与える

今回はSXについてまとめました。SXは、経済産業省がとりあげた考え方で、企業の持続可能性の強化と社会の抱える問題解決を同時に達成することを目指しています。

民間企業は利益の追求が優先で、社会的な問題解決は公共セクターが対処するというのが過去の常識でした。しかし、今後は企業もその活動を行う際に、社会問題の解決を無視できません。

ただ、これを単なる重荷ととらえるのはもったいないです。SXを推進し、企業成長と社会問題の解決を両立できるとアピールすることで企業イメージの向上やサステナビリティを重視する投資家や金融機関との取り引きが可能となるかもしれません。

中小企業こそ、SXについて深く知り、経営の継続と新たなビジネスチャンス獲得の一挙両得を狙うべきではないでしょうか。

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