再生可能エネルギーの活用につながる!炭素税を導入する国の方針とは
- 2022年06月15日
- その他
近年、世界的に導入が検討されたり、実際に施行されている炭素税。そもそも炭素税とは何なのか、なぜ必要なのか、世界各国の導入状況や日本の現状についてチェックしましょう。
目次
-
炭素税とは
-
世界各国の炭素税の導入状況
-
日本の炭素税導入への取り組み
-
まとめ:炭素税の導入は環境問題への対策
1. 炭素税とは
炭素税は、CO2排出を伴うエネルギーに対して税金を設置しCO2を生み出すと税金の支払いが増えるという仕組みです。炭素税による歳入は、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の普及・活用に利用されます。
なぜ炭素税が必要なのか
炭素税が必要とされる背景は、全世界共通の課題として取り組まれている地球温暖化の抑制が挙げられます。
日本では、温暖化のための税として既に「地球温暖化対策税」として化石燃料に対して課税されるという仕組みがあり、CO2の1トンあたり289円課税されています。
一方で、環境に対する税金として税率が低すぎるという課題があります。地球全体の気温上昇を2度以内に抑えるというパリ協定の目標達成にはCO2の1トンあたり40ドル〜80ドル(4,500円〜9,000円)程度にする必要があるとされています。1990年に世界で初めて環境に対する税制を実現したフィンランドではCO2の1トンあたり9,625円、スウェーデンに至っては14,400円となっており日本との税率の違いが顕著に現れています。
2020年10月に菅義偉内閣総理大臣が、2050年に温室効果ガスの排出をゼロとするカーボンニュートラルを目標に定めたこともあり、CO2排出抑制強化の一環として炭素税の導入が検討されています。
出典:日本貿易振興機構(JETRO)『世界で導入が進むカーボンプライシング(前編)炭素税、排出量取引制度の現状(2021年9月10日)
炭素税の対象となるエネルギーの種類
炭素税の対象となるエネルギーは、石炭や石油・天然ガスといった化石燃料で、それぞれ炭素を含有する割合で税率をかけるという仕組みです。
炭素税が導入されると、化石燃料を用いて製造された製品は原価が高くなり商品価格もアップします。再エネで製造された製品と比べて、消費者から見ると割高に感じられて競争力が落ちることに繋がるので、経済面でもCO2排出を抑制する理由になります。
出典:「環境・持続社会」研究センター(JACSES)『炭素税とは』
2. 世界各国の炭素税の導入状況
世界各国の炭素税の導入状況はさまざまで、既に導入している国や地域も多いです。
最初に炭素税を導入したフィンランド
フィンランドは1990年に世界で初めて炭素税を導入した国です。炭素税の導入自体は環境への取り組みの一環ではありますが、一方で一般財源に組み込まれているが故に増税も多くなっています。
炭素税の導入で経済と環境の発展を両立させるスウェーデン
スウェーデンは、フィンランドに続き世界で2番目に炭素税を導入した国です。炭素税の税率は段階的な引き上げもあり2017年時点でCO21トンあたり119ユーロと非常に高い傾向があります。
しかし、炭素税の導入とともに法人税を53%から30%へ大きく引き下げたり、企業へのアナウンスを早い段階から行うなど経済への影響を抑えながらCO2排出抑制を進めており1990年に比べて、2015年でGDPが69%アップしつつもCO2の排出は25%減少しています。
また、炭素税によって得た税収を低所得者層への税負担の軽減に利用するなどの取り組みも注目されています。
出典:みずほリサーチ&テクノロジーズ『世界の先進事例から考える、日本におけるカーボンプライシングのあり方』
アメリカや他のEU諸国の炭素税への取り組み
アメリカにおいて炭素税は導入されていません。代わりに石炭物品税や燃料物品税といった形で化石燃料に対しての課税が行われています。
また、フランスでは2014年に炭素税が導入されました。新たな枠として税を取る形ではなく、既に導入されていたエネルギー税の炭素税分を切り出して段階的に引き上げることを見込んでいます。税収の活用先は、所得税や法人税の軽減やグリーンエネルギー化の支援など産業面へ投下される予定です。
さらに、EUでは2026年から国境炭素税を導入することを明らかにしました。国境炭素税は脱CO2への取り組みが活発でない国からの輸入品に対して関税をかけるという仕組みです。全世界的な課題である地球温暖化に対してメリットはありますが、貿易摩擦など経済面での影響が懸念されています。
出典:環境省『諸外国における炭素税等の導入状況』P8,P24
3. 日本の炭素税導入への取り組み
日本における炭素税導入は現在どんな進捗なのでしょうか。
炭素税に対しての日本の状況
日本では、現在「地球温暖化対策のための税」が施行されています。脱炭素社会に向けて、化石燃料に対して課税されるというものですが、世界の炭素税に比べて圧倒的に税率が低いものとなっています。パリ協定で定められた全世界の気温上昇を2050年までに2℃未満とする場合、1トンのCO2あたりで40ドル〜80ドル(4,500円〜9,000円)程度にする必要があるとされていますが、現在は289円と大きくかけ離れています。
しかし、化石燃料に対して一律の税率アップとなると経済への影響も大きくなってしまいます。そこで炭素税を導入し、段階的な引き上げを計画しているのです。
現時点では日本における炭素税の導入時期などは未定ですが、EUで2026年から国境炭素税が導入されることが決定するなどの外部要因もあり、より検討が進められることが予想されます。
炭素税導入と環境問題の関係
炭素税の導入は、CO2抑制など環境問題への取り組みとして活用しやすい税制度です。カーボンニュートラルの実現のために現在の取り組みではなかなか難しいということもあり、炭素税にかかる期待も大きいものとなっています。
一方で、単に締め付けが厳しくなるだけでは脱炭素に向けた取り組みの気概を削いでしまう可能性も否定できません。現状では、地球温暖化対策のための税は特別税収として再エネの利活用やクリーンエネルギーへのシフトのための助成金などのみに使用されることが決まっています。経済と脱炭素を両立させているスウェーデンのように経済と環境問題を解決するために仕組みとして使うことも検討すべきだと考えられます。
4. まとめ:炭素税の導入は環境問題への対策
炭素税は、化石燃料にそれぞれ含まれる炭素量により税率を変えるという税制度です。地球規模での課題となっている温暖化の原因であるCO2排出を抑えるために、単に意識付けをするだけでなく化石燃料を使うと経済的にも負担がかかるという仕組みです。具体的には、化石燃料を使って製品を作ると炭素税がかかり原価が上がるため製品単価も高くなるという形で価格面で不利になることに繋がります。
炭素税を導入することでより早く、より多くのCO2削減を図ろうとしており、実際に北欧を中心に導入も進んでいる税制度です。
日本では、既に「地球温暖化対策税」という税があり、CO2の1トンあたり289円課税されていますが、パリ協定の目標達成にはCO2の1トンあたり40ドル〜80ドル(4,500円〜9,000円)程度にする必要があるとされています。
つまり、炭素税の導入による税負担の増加の可能性は高いと考えられます。
企業としては、エコに繋がる活動が企業評価に繋がる現代において、CO2を削減するために再エネの活用などによって化石燃料を使うことを極力控えていくことで原価高騰を避けて価格競争で同業他社に先んじられる可能性もあります。ぜひ、この機会に自社の行動を見直し、クリーンエネルギー化を進めることをおすすめします。