自然電力グループのエネルギーテック企業として、VPP(仮想発電所)プラットフォームの開発・運用を手がける株式会社Shizen Connect。東京電力、東京ガス、大阪ガスをはじめとする大手電力・ガス会社と資本業務提携を結び、家庭用から系統用までの分散型エネルギーリソースをIoT/AIで制御するシステムを提供しています。今回は代表取締役CEOの松村宗和氏と、プロダクトマネジメント部グループリーダーの伊賀賢一氏に、事業の全体像、組織カルチャー、そして働く魅力について伺いました。
INDEX
Shizen Connectの事業概要 ── 自然電力グループから生まれたエネルギーテック企業
――まず、御社の成り立ちと事業内容について教えてください。
松村氏:私たちは自然電力グループに属する会社です。自然電力は2011年の原発事故直後に「自分たちの未来は自分たちでつくる」という思いで設立された会社で、「青い地球を未来につなぐ」というパーパスを掲げています。当初は「1GW(原発一基分)の再エネを作ろう」という大きなミッションを掲げていましたが、すでにその目標を超えています。
現在はグローバルに展開しており、特にデータセンター需要の急激な伸びに注目しています。MicrosoftやGoogleといった企業にPPA(電力購入契約)で電気を供給しており、日本国内では最大規模の実績です。
そうした中で、単に再エネを作るだけでなく、より高度な電力の供給が求められる時代になってきました。そこで「エネルギーテック」、つまりITの会社を作ろうということで誕生したのがShizen Connectです。約2年半前に設立され、再エネをうまく社会に溶け込ませていくためのテクノロジープラットフォームを開発しています。

VPP(仮想発電所)とは ── 分散電源を束ねて「調和」を生む
――VPP(仮想発電所)について、もう少し詳しく教えてください。
松村氏:再エネは「昼に余ってしまう」といった問題があります。EVは「充電が電力システムに負担になる」という問題もあります。
問題は、新しいエネルギーと既存の電力システムがうまく組み合わさっていないことです。
VPPとは、ご家庭のヒートポンプ給湯器、EV、蓄電池、太陽光発電など、バラバラな場所にある分散した電源をインターネット経由で遠隔制御し、まるで一つの発電所のように機能させるコンセプトです。電力システム全体で電気が余っている時にはうまく充電し、足りない時や充電が負担になっているときには放電する。これによって、新しいエネルギーと既存の電力システムが調和する世界を作っていきたいと考えています。
大手電力・ガス会社との共創 ── 資本業務提携によるプラットフォーム戦略
――大手電力・ガス会社と資本業務提携を結んでいるのが特徴的ですが、その背景をお聞かせください。
松村氏:日本中のエネルギーリソースを一つのプラットフォームで動かすためには、一社だけではなく、オールジャパンでみんなが使えるプラットフォームを作る必要があります。そのために自然電力から分社化し、北海道電力、北陸電力、四国電力、JERA、東京ガス、大阪ガスなど、そうそうたるパートナーに出資していただきました。
正直なところ、出資をいただいた上で、さらにシステムも使っていただくという構図になっています。大手企業は組織が大きいので、中長期でコミットしていただく形の方がより強いパートナーシップを組むことができます。まだVPPが「よくわからない」と言われていた時期から資本を入れていただき、最新情報を共有し、時期が来たらシステムを使っていただく。この戦略が功を奏し、家庭用でも系統用でもシステムを採用いただいています。
現在、家庭用低圧のデマンドレスポンスでは東北電力、東京電力EP、北陸電力、東京ガスなどにサービスを提供し、小売電気事業者による商用利用で34%のシェアを獲得。系統用でも10社以上にご利用いただいており、シェアNo.1の位置にあると認識しています。パイプラインは全体で2030年までに1.5GW以上積み上がっている状況です。
AIが生む価値 ── エネルギー市場の予測と自動最適化
――プラットフォームの中核的な技術について教えてください。
松村氏:一番大事なのは、AIによる市場価格の予測、需要量や発電量の予測です。AIで最適な取引計画を考えて市場取引を行い、最適な需給管理を実現する。もちろん制御も重要ですが、一番の価値の源泉はAIの部分だと思っています。
AIの精度については、人間が予測して取引した場合と差が出ないレベルに達しています。十分に実用的なAIとして、すでに市場取引で使われています。
私はもともとエンジニアなので、最初から「人間が関与しなくてよい」という発想で設計しています。一括の自動化・無人化が基本であり、人間が確認したり補正したりするためのインターフェースは用意しますが、発想自体は「自動化する」ことをベースにしています。AIの時代だからこそ、これをフル活用していきたいと考えています。
経営陣の強み ── テクノロジーと制度設計の両輪
――経営陣の構成について教えてください。
松村氏:私自身はもともとGMOクリック証券の金融情報子会社で代表をしており、株価の予測や通貨やコモディティの情報を出す事業に携わっていました。その後、アステリアでIoT製品の立ち上げも経験しています。金融情報で予測したものをIoTで動かすという技術に知見があり、それが当社のシステム設計にも活きています。
もう一人の重要な人物が、CSO (Chief Strategy Officer)の平尾です。2016年からソフトバンクグループでVPPに取り組み、その後KDDIグループのエナリスで経験を積んでいます。ERA(エネルギーリソースアグリゲーション事業協会)という業界団体の立ち上げ人であり副会長を務め、経産省の審議会にも参加しています。
つまり、平尾が制度設計に関わりながら未来の制度の方向性を把握し、私がそれに基づいて必要なテクノロジーを設計する。この両輪が当社の大きな強みです。大手電力会社や都市ガス会社よりも、この分野では私たちの方が詳しいと自負しています。
組織体制と採用課題 ── 電力×ITの融合人材を求めて
――現在の組織体制と、採用における課題感を教えてください。
松村氏:現在のメンバー数は業務委託のパートナーも合わせると約80名で、プロダクトマネジメント部、事業開発部、オペレーション部、研究開発部、コーポレートプランニング室、コーポレートマネジメント部という構成です。内訳はエンジニアが一番多く、研究開発部だけで30名以上います。一方、事業開発部は4名で回しているのが現状です。
ソフトウェアがある程度完成し、商用化が急速に進み、引き合いも多くいただいている今、最大の課題はビジネスサイドの人材確保です。これ以上の拡大のために、どう体制強化をし推進するのか日々考えています。
もう一つの大きな課題は、「電力システム」と「IT」を両立できる人材の確保です。各部門のリーダーには、両方を理解してほしい。しかし、VPPはまだ新しい技術であり、これを本当に理解している人材は大手電力・都市ガス会社にもほとんどいないのが実情です。ですから、入社時に全てを知っている必要はありません。これから伸びる市場ですので、入ってから知見を広げていただければ、希少価値の高いキャリアを創ることができます。
研究開発の面では、産業用蓄電池というハードウェアの世界から、IoTを経由して、クラウド上のAIまで一貫して扱う必要があります。一般的なIT企業でいう「フルスタック」の範囲がさらに広い。クラウドは分かるけどハードウェアは分からない、AIは分かるけど産業用設備の制御は知らない、という壁があります。弊社ではここをダイナミックに経験できることが魅力の一つかもしれません。
カルチャーと行動指針 ── 未来の顧客価値から逆算する
――御社の行動指針やカルチャーについて教えてください。
松村氏:行動指針として特に大事にしていることが三つあります。
一つ目は「未来の顧客の提供価値をしっかり考える」ことです。VPPはまだ日本では誰も考えていないようなレベルの新しい領域です。だからこそ、今の自社の強みから発想するのではなく、未来にどういう価値が生まれるかを起点に考えてほしい。「今こういうシステムがあるから、こういうことができる」ではなく、「未来にどういうことが起こるのか」から逆算する発想を求めています。
二つ目は「自分の直感を大事にし、仲間と対話する」ことです。カジュアルに話せる環境を意識しており、そういう時間を意図的に作るようにしています。
三つ目は「トラブルの時にこそ冷静に、具体的に伝える」ことです。スタートアップにトラブルはつきものですが、「全くわかってないな」という言い方をすると、そのうち自由に発言できなくなります。しっかり指摘はするけれど、冷静に具体的に伝えて空気を悪くしない。これが未来のことを自由に語れる組織を維持するために欠かせないと考えています。
――伊賀さんから見て、行動指針は社内に浸透していると感じますか。
伊賀氏:はい、私の部署であるプロダクトマネジメント部では、週に一回、アジェンダを決めずにメンバー全員で話す時間を設けています。忙しい時でもあえてこの時間を取ることが大切だと考えています。最初はみんな戸惑いますが、話し始めるとどんどん議論が広がっていきます。仕事のことだけでなく、最近ハマっているものなど何でも話します。
こうした場から自然と、未来の顧客価値について考えたり、仲間と対話したりする文化が根付いていると感じています。

人材育成と働く環境 ── 対話を重視し、裁量を持たせる
――人材育成やオンボーディングの仕組みについて教えてください。
松村氏:弊社がやっていることは、誰も知らない領域だからこそ、まずは私の頭の中は透明性高く伝えるようにしています。月に1度の全社ミーティングと、四半期ごとに行う対面でのミーティングでは、事業状況、実績確認、各部からのトピックをシェアしています。平尾による勉強会も定期的に開催されていたり、講演を聞きに行く、講演に登壇するなど、インプット・アウトプットの機会は様々なクルーにあったり、実践を通した成長がメインです。
また、自然電力グループ全体として研修が非常に充実しています。特にリーダーシップに関する研修が定期的に開催されるなど、カルチャーマッチやマインド面での人の育成・成長にも、ものすごく力を入れている会社です。
オンボーディングに関しては、リモートワークが多い環境なので、全社ミーティングの際には毎度懇親会を開催するなど、コミュニケーションにも重きを置いています。
組織運営としては、私がマイクロマネジメントをしないよう気をつけています。若手が活躍するためにも任せることが大切です。対話の機会は積極的に作りますが、各メンバーの自主性を尊重しています。
――伊賀さんは、マネジメントの面でどのような工夫をされていますか。
伊賀氏:人によってタイプが違うので、画一的なマネジメントでは対応できません。しっかり手順を教えて説明してあげた方がいい人もいれば、逆に縛りすぎると活躍できないので裁量を与える方がいい人もいます。
プロダクトマネジメント部では、部長やもう一人のグループリーダーと毎週30分のリーダー会を開いて、各メンバーの状況を共有しています。お互いにどういうマネジメントがその人に合っているかを話し合いながら、一人で抱え込まずチームとしてマネジメントしていく体制を取っています。
働く魅力 ── 最先端に携わる実感と社会貢献の充実感
――御社で働く魅力について教えてください。
伊賀氏:日本で最先端のことをやっているという実感が一番の魅力です。Shizen Connectに来て、これまで知らなかった新しい知見や技術の多さに驚き、常に学び続けなければならないと痛感する場面が数多くありました。日々、自分の知らなかったことを知り、最先端に携われているという感覚は非常にやりがいがあります。
――松村さんはいかがですか。
松村氏:個人的にこの会社をやっていてよかったなと思うのは、ものすごく世の中のためになっていると実感できることです。再エネを増やすためにITで課題解決に取り組むでという、非常にきれいなストーリーがあります。脱炭素だけでなく、例えばイラン情勢のようなエネルギー安全保障の文脈でも私たちの技術は役立ちます。一点の曇りもなく「いいことをしている」と胸を張って言える仕事です。
もう一つ、大手の電力会社やガス会社の方たちと対等に話ができるのがとても楽しいです。これは我々がVPPの領域では一番先を走っているからであり、普通のITベンダーではなかなかお会いしないような大手企業の要職の方とも対話をしています。それがこの仕事の醍醐味の一つでもあります。

求職者へのメッセージ
――最後に、この記事を読んでいる方々に向けてメッセージをお願いします。
伊賀氏:日本は高齢化社会でインフラの維持がどんどん大変になっていきます。VPPはその一つの解決策になり得ると思って、今働いています。日本のインフラに次世代の技術を残したいと思っている方は、最初はみんなわからないので、臆さず来てもらえるとすごく嬉しいです。そういう志を持って来てくれる方はとてもウェルカムですので、ぜひ一緒に働きたいと思っています。
松村氏:ぜひ一緒に、チャレンジをしていきましょう!
【会社概要】
会社名:株式会社Shizen Connect
代表取締役CEO:松村 宗和
設立:2022年(自然電力グループ)
所在地:福岡市中央区荒戸1-1-6 福岡大濠ビル3F/6F
社員数:約80名
事業内容:VPPプラットフォーム事業、エネルギー管理サービス事業、系統用蓄電池の運用代行事業、IoT機器販売事業
ウェブサイト:https://www.se-digital.net/
【インタビュイー】
松村 宗和氏(代表取締役CEO)
伊賀 賢一氏(プロダクトマネジメント部 グループリーダー)
「GX・ESG特化型転職サービス ASUENE CAREER利用企業インタビュー」