戦後の首都復興を起源に、東急グループの建設部門として約80年にわたり社会インフラの整備に貢献してきた東急建設株式会社。渋谷駅周辺の大規模再開発をはじめ、土木・建築の両分野で確かな実績を積み重ねてきた同社は、2021年に策定した長期経営計画「To zero, from zero.」のもと、「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」の3つの提供価値を軸に、新規事業への挑戦を加速させている。その中核を担うのが、価値創造推進室 新規事業管理部 再エネ事業推進グループだ。今回は、同部の塩入氏と渡邉氏に、再エネ事業の立ち上げから現在の取り組み、そして求める人材像について詳しく話を伺った。
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東急グループの建設部門として培ってきた強み
―― まずは東急建設について、企業概要を教えてください。
塩入氏:東急建設は、東急グループの建設部門として1946年に創業した総合建設会社です。土木事業と建築事業を柱に、建築が売上の7~8割、土木が2~3割という構成で事業を展開しています。
当社の強みは、何といっても渋谷駅周辺の再開発事業に代表される都市開発の実績です。渋谷ストリームや渋谷スクランブルスクエアなど、異なる事業主体の工事が複雑に関係し合う難易度の高いプロジェクトを数多く手がけてきました。加えて、鉄道関連工事における独自技術も有しており、東急グループとの連携を活かした事業展開は当社ならではの特色です。
事業エリアは国内全般に及び、公共工事も含めて幅広く対応しています。海外においても、タイやインドネシア、ベトナムなど東南アジアを中心に事業を展開しております。
長期経営計画「To zero, from zero.」が示す新たな方向性
―― 新規事業に注力されるようになった背景について教えてください。
塩入氏:実は10年ほど前から、当社の競争優位性に関する議論がありました。当社の強みとして常に挙がるのは「渋谷」と「東急グループ」という二つのキーワードです。しかし、超高層ビルの施工実績などは他の準大手ゼネコンでも十分に対応可能であり、当社だけの特質とは言い切れない面がありました。
さらに、渋谷の再開発や鉄道関連工事が将来にわたって永続的に続くわけではありません。そうした中で、会社として生き残り、持続的に成長していくためには、本業以外にも新たな事業を育てていく必要があると認識するようになりました。
2021年に策定した長期経営計画「To zero, from zero.」では、国内の土木・建築・リニューアル事業を「コア事業」、国際・不動産・新規事業を「戦略事業」と位置づけ、3つの提供価値――「脱炭素」「廃棄物ゼロ」「防災・減災」――を戦略の軸に据えました。特に新規事業については、これら3つの提供価値に資する領域で事業を展開していく方針を定め、2021年に価値創造推進室を立ち上げました。
―― 新規事業として、再エネ以外にはどのような取り組みがありますか?
塩入氏:林業関連の事業のほか、防災・減災の分野では「モクタスキューブ」という可搬型の木造建物を開発しています。これは、建築基準法に適合した木造のユニット建築で、大型トラック1台で搬送・設置が可能です。能登半島地震の際には、復興支援者用宿舎として実際に採用され、要請からわずか3か月で20棟の設置を完了しました。平時にはリースやレベニューシェアのスキームを活用した事業化を進めており、現在は当社の建設現場の仮設事務所としても活用を開始しています。
そのほかにも、まだリリースの段階には至っていませんが、農業に関連する肥料分野のPoCなど、複数の事業シーズを育てている状況です。

ゼロからの出発 ― 再エネ事業の立ち上げと現在地
―― 渡邉様が再エネ事業の立ち上げに携わった経緯を教えてください。
渡邉氏:私は2022年に中途入社し、再エネ事業をゼロから立ち上げるミッションを与えられました。入社時点では、戦略事業として再エネに取り組むことは決まっていたものの、具体的な戦略も、事業推進に必要なルールやツールも何もない状態でした。
まず着手したのは、事業戦略の策定です。外部コンサルタントの知見も借りながら、入社1年目の秋頃には戦略を完成させ、新規事業として再エネ事業に取り組むことを社内に周知しました。2年目からはオンサイトPPA事業を皮切りに具体的な営業活動を開始しました。
現在は、オンサイトPPA、オフサイトPPA、そして系統用蓄電池の3事業を柱として展開しています。実績としては、オンサイトPPAで3件、オフサイトPPAで1件、系統用蓄電池で3件の設備が稼働しています。
―― 中でも蓄電池事業が急拡大しているとのことですが。
渡邉氏:オンサイト・オフサイトPPAについては、すでに世の中に先行するプレイヤーも多く、市場として成熟しつつあります。一方で、系統用蓄電池については、2024年に新制度のもとで市場が本格的に立ち上がった、電力業界の中でも新たなビジネスモデルであり、当社も運良くそのタイミングで参入できたことで、競合他社に先駆けて実績を作ることができました。
2024年7月には、神奈川県相模原市の自社工場で「相模原蓄電所」の営業運転を開始しました。現在はさらに大型の、特別高圧の蓄電所開発にも取り組んでおり、こちらは東京都のクールネット東京「系統用大規模蓄電池導入促進事業」にも採択されました。
ゼネコンだからこそ生み出せるシナジー
―― 既存の建設事業とのシナジーはどのように考えていますか?
渡邉氏:複数の観点からシナジーが見込めると考えています。
まず、オンサイトPPAについては、建物との結びつきが本質的に強い事業です。建築会社で再エネ事業を行うにあたり、まず取り組むべき領域だと考え、再エネ部門の最初の事業として着手しました。再エネ事業を開始するまで当社は、建築事業のお客様から「東急建設でPPAもできますか?」と問い合わせをいただいても、対応できませんでしたが、現在ではそのようなお客様の期待に応えられるようになりました。また、自社の建物に他の工事会社が手を加えることを敬遠されるお客様は少なくありませんので、建物を建てた会社がそのまま太陽光設備の設置・運用までワンストップで対応できる点は、お客様にとっても大きな安心材料になると思います。
オフサイトPPAは、オンサイトPPAのご提案が難しいお客様や、より多くの電力を再エネ電力にしたいとのニーズをお持ちのお客様に対応するために開始しました。渋谷などの都市部や鉄道関連の工事を請け負うことが多い当社では、オンサイトPPAに適している大きな屋根を持つお客様ばかりではありません。そういったお客様に対しても電力の再エネ化を提案できるオフサイトPPAは、重要なバックアップアイテムだと考えています。
系統用蓄電池については、再エネの導入拡大に伴う電力系統の不安定化という社会的課題の解決に貢献する効果があります。現在は建築事業との直接的な連携はほとんどありませんが、我々が再エネ事業の中で太陽光を中心に自然変動電源を推進する以上、系統の安定化も両輪で取り組むべき責務であると考えて、参入しました。加えて、系統用蓄電池事業を通して獲得した運用ノウハウを応用し、将来的には建物へ蓄電池を設置しZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)を実現するなど、建築事業にシナジーがある事業モデルも見据えています。
事業拡大に向けた課題と展望
―― 今後の事業拡大に向けた課題は何でしょうか?
渡邉氏:最も切実な課題は人材の確保です。これまでは、事業の収益基盤が確立するまで、いたずらに人員を増やすことは控えてきました。しかし、各事業で一定の収益が立ち始めた今、いよいよ本格的な拡大フェーズに入ったと考えています。
現在、再エネ事業推進グループは私を含めて5名体制です。蓄電池事業の担当1名、太陽光事業の担当2名、技術担当1名、そして全体の取りまとめを担う私、という構成です。正直なところ、少数精鋭で事業を推進している状況であり、会社からも期待されている更なる再エネ事業の拡大を加速するためにも、増員が急務です。
もう一つの課題は、再エネ事業をとりまくめまぐるしい市場変化への対応です。規制強化や部材価格の上昇などの逆風も多く、従来の成功事例の踏襲ではうまくいかない環境に変わりつつあります。政策動向や市況を的確に把握・理解し、知恵を絞った事業構想を立てられるかどうかが、これからの再エネ業界での成否を分けると考えています。
また、太陽光や蓄電池にとどまらず、今後登場する新たな再エネ技術にも広くアンテナを張っていきたいと考えています。企画部門においては、将来の技術トレンドをウォッチし、次の事業の種を見出していける人材を求めています。
多様性を力に変える組織カルチャー
―― 組織のカルチャーや大切にしている価値観について教えてください。
渡邉氏:一言で表すなら「多様性」です。メンバー全員が中途採用で入社しており、それぞれ異なる業界・職種でのバックグラウンドを持っています。共通の文化がないからこそ、各自がこれまで培ってきた知見やスタンダードを尊重し合うことを大切にしています。
「うちのやり方はこうだから」と型にはめるのではなく、一人ひとりが自分なりの考えや経験をしっかりぶつけてほしいと思っています。将来的にはチームとしての共通の価値観を醸成していきたいですが、今はむしろ多様性を伸ばしていく段階だと捉えています。
塩入氏:コア事業である建設部門は、どうしても画一的な考え方になりがちで、新しいことに取り組む動機づけが難しい面があります。その点、新規事業部門は会社の中でもかなり色が違います。ベンチャー投資や社内アイデアコンテストなど、従来のゼネコンの概念からは大きく離れた取り組みも行っています。
―― 中途入社されて、会社に対する印象は変わりましたか?
渡邉氏:正直に言えば、入社前はゼネコンに対して「堅い」「変化が遅い」というイメージを持っていました。しかし実際には、しっかりと説明すれば理解してもらえますし、想像以上に社内の協力者が多いということを実感しています。特に経営層を中心に、新規事業への理解が着実に浸透してきている手応えがあります。もちろんすべてが順風満帆ではありませんが、成果が出始めたこともあり、チャレンジを応援してもらえる土壌は確かにあると感じています。

ASUENE CAREERで求める人材像
―― どのような人材を求めていますか?
渡邉氏:現在、5つのポジションでの採用を検討しています。大きく分けると、案件開発・営業のリーダー候補、設計・案件管理などの技術分野のリーダー候補、企画系の担当者、技術分野の担当者、そして電力市場での運用担当です。
共通して求める資質としては、再生可能エネルギーの普及と、それに付随する電力系統安定化の問題に対して、強い課題意識を持っていることです。短期的な事業性やトレンドだけでなく、長期的な視座を持ち、社会的意義を理解した上で事業に取り組める方が望ましいと考えています。
読者へのメッセージ
―― 最後に、御社に関心を持つ読者へメッセージをお願いします。
塩入氏:当部署は2021年の立ち上げから約5年を経て、ようやく事業としての基盤が整いつつある段階です。先が見えない中、手探りで進めてきた時期もありましたが、中途採用で入社された方々の知見があったからこそ、ここまでの成果を上げることができました。
今後も、外部から新たに加わっていただく方の知見を最大限に活かしながら事業を推進していきたいと考えています。その分、プレイヤーの皆さんには自ら考え、自ら動くことを求める場面も多くなりますが、その分、事業づくりの手応えをダイレクトに感じられる環境です。自分の考えを主張し、形にしていきたいという方に、ぜひ参画いただきたいと思っています。
渡邉氏:中途入社する方にとって、非常に馴染みやすい部門だと思います。全員が中途入社で、それぞれの経験や強みを活かしながら事業を作り上げている組織です。ゼネコンだからといって硬直的な組織を想像されるかもしれませんが、当部門は新しいことへの挑戦を歓迎する風土があります。再生可能エネルギーを通じて社会課題の解決に貢献したいという志を持つ方と、ぜひ一緒に働きたいと考えています。
【企業概要】
・社名:東急建設株式会社(英文社名 TOKYU CONSTRUCTION CO., LTD.)
・創業:1946年3月12日(創立1959年11月11日)
・設立:2003年4月10日
・事業内容:総合建設業
・資本金:163億5,444万円(2025年3月31日現在)
・代表取締役社長:寺田 光宏
・従業員数:2,494名(2025年3月31日現在)※連結従業員数 2,845名
・本社所在地:東京都渋谷区渋谷1-16-14 渋谷地下鉄ビル
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