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Scope3排出量削減を支援する補助金とは?企業間連携による省CO2設備投資促進事業を徹底解説

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Scope3排出量削減を支援する補助金とは?企業間連携による省CO2設備投資促進事業を徹底解説

2050年のカーボンニュートラル実現に向け、日本企業の脱炭素経営は「自社」の枠を超え、サプライチェーン全体へと広がっています。その中で、多くの企業が最大の壁として直面しているのが「Scope3(スコープ3)排出量」の削減です。

自社の工場やオフィスでの削減(Scope1・2)とは異なり、仕入先や販売先での排出をコントロールすることは容易ではありません。こうした課題を解決するため、環境省は企業同士が手を取り合って設備投資を行うことを支援する「企業間連携による省CO2設備投資促進事業」を創設しました。

本記事では、この補助金制度の概要から、対象となる事業内容、活用によって得られるメリット、さらには申請に向けた具体的な実務対応までを徹底的に解説します。


INDEX

Scope3排出量とは何か【なぜ削減が難しいのか】

脱炭素の議論で頻出する「Scope3」ですが、なぜこれが補助金の対象となるほど重要、かつ困難な課題なのでしょうか。

Scope1・2・3の違い

温室効果ガス(GHG)排出量の算定・報告の国際基準である「GHGプロトコル」では、排出源を以下の3つの範囲(Scope)に分類しています。

  • Scope1: 自社による直接排出(燃料の燃焼、工業プロセスなど)。
  • Scope2: 他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出。
  • Scope3: 上記以外のバリューチェーン全体での間接排出(原材料の調達、輸送、製品の使用・廃棄など)。

Scope3が企業排出量の大部分を占める理由

製造業や流通業など多くの業種において、企業全体の排出量の7割から9割以上がScope3であると言われています。例えば、自動車メーカーであれば、鉄鋼などの原材料を作る工程や、販売した車が道を走る工程の排出が、自社工場の排出をはるかに上回ります。

サプライチェーン全体での対応が求められる背景

近年、Appleやトヨタ自動車などのグローバル企業が、取引先(サプライヤー)に対して「2030年までにカーボンニュートラル」を要求する動きが加速しています。Scope3を削減しなければ、サプライチェーンから除外されるリスクがあるため、今やScope3対応は「あれば良いもの」ではなく、ビジネスの「参入条件」となっているのです。


本補助金事業の位置づけと目的

環境省が推進する「企業間連携による省CO2設備投資促進事業」は、日本の脱炭素化を加速させるための戦略的な一手です。

環境省が本事業を創設した背景

Scope3削減の必要性は理解していても、中小企業が多いサプライヤー側には、最新の省エネ設備を導入する資金力が不足しているケースが多々あります。また、発注側企業も「他社の設備」に投資することには慎重になりがちです。この資金的なギャップを埋めるのが本補助金の狙いです。

「企業間連携」を重視する理由

これまでの補助金は「個社」の設備投資を支援するものが主流でした。しかし、Scope3削減には、発注側(川下)が要件を出し、受注側(川上)がそれに応えるという「連携」が不可欠です。本事業は、複数の企業が協力して削減に取り組む姿勢を評価し、支援します。

日本の脱炭素政策・温暖化対策との関係

日本政府が掲げる「GX(グリーントランスフォーメーション)推進戦略」においても、産業全体の構造転換が求められています。本事業は、個別の省エネだけでなく、産業クラスターやサプライチェーン全体を低炭素化することで、日本全体の排出削減目標達成に寄与することを目指しています。


企業間連携による省CO2設備投資促進事業とは

本事業の正式名称と、そのユニークな仕組みについて整理しましょう。

事業の正式名称と概要

正式名称は「環境省 令和8年度(2026年度)二酸化炭素排出抑制対策事業費補助金 企業間連携による省CO2設備投資促進事業」です(※年度により名称が微調整される場合があります)。 サプライチェーンを構成する複数の企業が協力し、LCA(ライフサイクルアセスメント)の視点で高い削減効果が見込まれる設備を導入する際に、その費用の一部を国が補助します。

単独企業の設備投資との違い

最大の違いは、「申請の形」です。

  • 従来型: 自社の工場を省エネ化するために自社で申請。
  • 本事業: 「A社の製品を製造するために、サプライヤーB社の設備を更新する」といった、企業間の合意に基づいた共同プロジェクトとして申請。

サプライチェーン全体での削減を狙う仕組み

本事業は、単なる「古い機械の買い替え」ではなく、「その設備を入れることで、サプライチェーン全体(Scope3)でどれだけCO2が減るか」という定量的な削減効果が審査のポイントとなります。


補助対象となる事業内容・設備投資の例

どのような設備投資が補助の対象となるのでしょうか。

省CO2に資する設備導入

基本的には、エネルギー起源のCO2排出を抑制する高効率設備が対象です。

  • 例: 高効率ボイラー、空調設備、コンプレッサー、変圧器、LED照明、ヒートポンプ、コージェネレーションシステムなど。

生産プロセスの高度化・効率化

単体設備の更新だけでなく、生産ライン全体の自動化や、エネルギー管理システム(FEMS)の導入による効率化も対象になり得ます。特に、発注側企業の製品仕様に合わせた専用ラインの省エネ化などは、本事業の趣旨に強く合致しています。

取引先と連携した設備更新の考え方

例えば、飲料メーカー(発注者)が、容器メーカー(サプライヤー)に対し、再生プラスチックを利用した軽量容器の製造を依頼するとします。その際、容器メーカーが導入する「軽量化・低炭素化に対応した最新成形機」などが、連携事業の投資対象として考えられます。


補助対象となる事業者・連携の形

「誰が」「どのような組み合わせで」申請できるのかが重要です。

補助金の対象となる企業規模・業種

原則として、国内の民間企業(株式会社など)であれば、大企業・中小企業を問わず対象となります。ただし、中小企業が連携に含まれる場合や、地方公共団体と連携する場合に加点されるなど、普及を促進するための傾斜が設けられています。

企業間連携の具体的なパターン

  • パターンA(垂直連携): 発注元企業と、そのサプライヤー(1次、2次など)の連携。最もスタンダードな形です。
  • パターンB(水平連携): 同一地域内の複数の企業が、共同で利用する蒸気供給設備や廃熱利用設備を導入する形。
  • パターンC(異業種連携): 廃熱を持つ工場と、それを活用する近隣施設などの連携。

サプライヤー・発注者双方の役割

  • 発注者: 削減目標の提示、技術指導、あるいは補助金の交付を受けた後の製品買い取りの継続性などが求められます。
  • サプライヤー: 設備の実際の運用、日々の排出量データの管理、削減実績の報告などを担います。

補助率・補助金額の考え方

投資判断を左右する補助水準について見ていきましょう。

補助金の基本的な支援水準

年度や事業区分により変動しますが、一般的には以下の水準が想定されます。

  • 補助率: 1/3以内、あるいは1/2以内(中小企業や先進性の高い事業の場合)。
  • 補助上限額: 数千万円から数億円規模(大規模な設備更新も視野に入ります)。

事業規模と補助金活用のバランス

設備投資額があまりに少額な場合は、申請にかかる工数(コンサル費用や書類作成)に見合わない可能性があるため、ある程度まとまった金額(例えば数千万円以上の投資)での活用が推奨されます。

投資判断における注意点

補助金は「後払い」です。また、採択される前に契約・発注した設備は対象外(事前着工の禁止)となるため、スケジュール管理が極めて重要です。


本補助金を活用するメリット

単なる金銭的支援以上の価値が、本事業にはあります。

Scope3排出量削減の実効性向上

自社で「サプライヤーさん、減らしてください」と要望を出すだけでなく、補助金を活用した具体的な投資提案ができるため、Scope3削減のスピードが劇的に上がります。

サプライチェーン全体での脱炭素推進

連携を通じて、サプライヤーの脱炭素意識が高まり、データの共有もスムーズになります。これは、将来的な排出量開示(ISSBやCSRD対応)に向けた強力な基盤作りとなります。

ESG評価・取引先からの信頼向上

「国の補助金に採択された先進的な企業間連携事例」として外部に公表できるため、投資家や金融機関からのESG評価が高まります。また、サプライヤーにとっても「主要顧客との強固なパートナーシップ」の証明になります。


活用にあたっての注意点・ハードル

成功のためには、あらかじめ困難なポイントを把握しておく必要があります。

連携企業間での合意形成の重要性

「どちらが主体となって申請するか」「補助金以外の自己負担分をどう分担するか」「将来の製品単価にどう反映させるか」といった、企業間のセンシティブな交渉が必要です。

排出削減効果の算定・説明責任

補助金申請書には、極めて精緻なCO2削減計算が求められます。導入前のベースライン排出量と、導入後の予測排出量を、科学的根拠(エビデンス)とともに示す必要があります。

事業計画作成時に注意すべきポイント

「古いから買い替える」だけでは不採択になるリスクがあります。「なぜこの連携が必要なのか」「この投資によってサプライチェーンのどの部分の排出が、どれだけ減るのか」というストーリー性が問われます。


企業が今から準備すべき実務対応

公募が始まってからでは間に合いません。今すぐ動くべき3つのステップです。

自社Scope3排出量の把握

まず、自社のScope3のどのカテゴリ(特にカテゴリ1:購入した製品・サービス)に排出が集中しているかを特定します。削減すべき「主戦場」を決めることがスタートです。

連携候補となる取引先の洗い出し

主要なサプライヤーの中から、脱炭素に意欲的、かつ設備更新のニーズがある企業をリストアップします。トップ同士、あるいは環境担当部署同士での初期的な意向確認を始めましょう。

補助金申請を見据えた体制整備

社内の財務、法務、調達、そして環境部門が連携するタスクフォースを編成します。外部のコンサルティング会社やアスエネのような算定プラットフォーム事業者の知見を借りることも、成功率を高める近道です。


今後のスケジュールと最新情報の確認方法

2026年度(令和8年度)の事業に向けて、アンテナを高く張っておきましょう。

事業公募・採択の流れ

  • 12月〜1月: 予算案の閣議決定、概算要求の公表。
  • 3月〜4月: 執行団体の決定、公募要領の公開。
  • 4月〜5月: 公募開始(申請書の提出)。
  • 6月〜7月: 審査・採択決定。
  • 採択後: 設備の契約・発注・工事。

次年度以降の展開可能性

Scope3削減は2030年に向けてさらに加速するため、この手の「企業間連携」をテーマにした補助金は、今後も継続・拡充される可能性が高いと言えます。

情報収集で押さえるべき公式サイト

  • 環境省 脱炭素経営ポータル: 補助金情報のほか、算定ガイドラインなどがまとまっています。
  • 一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)等: 実際に補助金を執行する団体のサイトをブックマークしておきましょう。

まとめ:Scope3削減に向けたサプライヤーとの共創投資を踏まえた脱炭素化が重要です

「企業間連携による省CO2設備投資促進事業」は、これまでの「自社完結型」の環境対策から、サプライチェーン全体を巻き込んだ「共創型」へのシフトを象徴する制度です。

Scope3の削減は、一企業の努力だけでは決して達成できません。自社の技術や資金力、そして国の補助金という外部リソースをサプライヤーに提供し、共に価値を生み出す姿勢こそが、これからの脱炭素経営の本質です。

企業にとっての重要な示唆は以下の通りです。

  1. 「Scope3削減」をリスク管理ではなく、サプライヤーとの信頼関係を深める「機会」と捉えること。
  2. 補助金を活用することで、投資回収期間(ROI)を短縮し、攻めの脱炭素投資を実現すること。
  3. 正確な排出量算定を基盤に、説得力のある連携プロジェクトを構築すること。

今後、「Scope3削減に向けたサプライヤーとの共創投資を踏まえた、戦略的な脱炭素化の推進」を早期に決断した企業こそが、グローバルなサプライチェーンにおいて最も信頼されるリーダーとして、永続的な競争優位を築くことになるでしょう。


参考文献・参考リンク

  • 環境省|Scope3排出量削減のための企業間連携による省CO2設備投資促進事業(PDF資料) https://www.env.go.jp/content/000335890.pdf
  • 環境省|エネルギー起源CO2排出削減に向けた補助事業一覧(2026年度) https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/enetoku/2026/
  • 環境省|サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン
  • アスエネ株式会社|Scope3削減・サプライヤーエンゲージメント支援サービスのご案内
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