「CO2の見える化って聞いたことありますか?」「取引先から環境対応について質問されたことはありますか?」など、最近では中小企業のみなさんの間でもこうした話題が上ることがあるのではないでしょうか。大手企業では今、環境・脱炭素への対応がほぼ義務化され、急務となっています。そして大手企業と取引を行う中小企業にとっても、この流れを無視することはできません。実際に環境に配慮した取り組みへの対応を取引先に要望する事案が増えています。一方で多くの中小企業にとって脱炭素への取り組みは「どこから始めればいいのか全くわからない」「ノウハウがそもそも社内にない」といった課題があります。
こうした背景を受け、東京都は中小企業が無料で「CO2排出量の見える化」に取り組むことができる支援制度を開始しました。この制度を使うと一定期間「CO2排出量の見える化」のサービスを無料で使用することができます。また将来、大手企業から環境対応を求められる場面に備え、今のうちに準備しておくことができ、経営リスクの回避にもつながります。本記事では、この制度を活用して実際に「CO2排出量の見える化」を進めている中小企業の事例を紹介します。
【実例紹介】東京都の支援でアスエネを活用する中小企業
● 山口証券印刷株式会社
大正10年に創業した同社は、創業以来大手鉄道会社のきっぷや有価証券の製造を手掛けてきました。今は時代の変化に合わせて、店頭購入型のネット決済専用プリペイドカードの製造も手がけていて、これが主力事業となり、そのシェアは国内トップを誇っています。もともと環境に配慮した取り組みは進めており、森林の持続可能性を保証する国際的な認証制度のFSC認証も取得しています。さらに、主力のプリペイドカードも、プラスチックから耐久性の高い紙素材に替えることで、脱プラスチックを進めてきました。
そんな中、2027年には一部の上場企業を対象に、取引先に対してのCO2排出量の報告も義務化されることを新聞などの報道で目にしました。プリペイドカード製造の取引先はグローバルに市場が広がる大企業ばかりです。そのため、将来的に自社にも取引先から要請が来る日はそう遠くないと思い、CO2排出量の見える化を始める必要性があると認識しました。そんな時、東京都中小企業振興公社経由で、補助金の活用により「アスエネ」を最初の半年間は無償で導入できるという情報に触れ、活用を決めました。今は「アスエネ」の導入とコンサルタントのサポートを通じて、CO2排出量の見える化を本格化させていきたいと考えています。そして今後、取引先からくると思われるCO2排出量の報告に対しても対応ができるように準備を進め、取り引きが続けられるように備えていくことを目指しています。
https://asuene.com/interview/yamaguchi-s-p/
● たなべ物産株式会社
創業以来93年間、同社は八王子を地盤に地域密着で事業を展開しています。事業を時代と共に変化させ、現在は金属性建具工事業を主力とし、主に窓(サッシ)やドアといった建具を専門的に扱っています。同社は建設業の一次下請けに位置付けられ、設計から現場での取り付け作業までを一貫して行っています。
ここ数年、窓やサッシは建物の断熱性能を左右し、省エネ効果を大きく高められる要素として注目されるようになってきました。そんな中、こうした建設業界の流れの中で、環境対応を進めなければ今後の事業方針を誤りかねないという危機感がありました。しかし、知識がない中でCO2排出量の見える化に取り組み始めるのは非常に難しいと感じていました。そんな時、地元の信頼する商工会議所からの紹介をきっかけにアスエネを導入を決めました。
そして、まずは「アスエネ」を活用して、電気使用量からCO2排出量の見える化に取り組んでいます。
これを機に、今後は設備の更新などの判断にCO2削減の視点を加えるなど、経営の意思決定に「CO2排出量」という新しい軸を加えていきたいと考えています。また「アスエネ」は、機械に詳しくない担当者であっても、直感的に操作ができるため、八王子の他の企業にも勧めたいと思っています。
https://asuene.com/interview/tanabe-bussan/
● 福田総合研究所
同社は、上場を準備している企業からプライム上場企業まで、幅広い企業規模のお客さまに、株主との関係性を構築するためのIRコンサルティングを提供しています。これまでもCO2排出量の見える化システムを使ったことがありましたが、使い勝手がわるく十分に活用できていませんでした。そんな中、東京都の補助で無償で導入できる「アスエネ」を知り、CO2排出量の見える化ができるクラウドサービスと脱炭素経営に関する基礎知識を学べるe-ラーニングを一緒に導入しました。e-ラーニングでは、「なぜ今取り組むべきなのか」、「どのように算出すればよいのか」など、脱炭素の目的を理解することができます。この最初の一歩を学習できることが、システムを有効活用するためには効果的だと考えます。また、専門的な言葉ではなく、一般向けに分かりやすい言葉で説明されているため、非常に理解しやすい点も気に入っています。
このe-ラーニングで脱炭素経営の目的を理解してから、見える化システムを活用したことで、お客さまに対してのコンサルティング支援にも説得力を与えられると考えています。
https://asuene.com/interview/fukuda-ir/
何故いま、CO2排出量の見える化に取り組むのか?
紹介した3社のように、CO2排出量の見える化は一部の大企業による取り組みだけでなく、中小企業も主体的に取り組むことで、様々なメリットがあります。
既にお伝えしたように、大企業ではサプライチェーン全体に環境配慮の取り組みを広げていく動きがあり、取引先の中小企業でも、環境配慮に適切に対応する必要性が高まっているのです。また、規制の強化や業界動向の変化により、将来的に要請される可能性があります。そのため早めに対応を進めておくことが、経営リスクの回避につながります。
さらに、実際に以下のような効果を得られた中小企業もあります。
「CO2排出量も見える化し、削減すべき領域がわかってからは、排出量削減に取り組めています。実際、LED照明に切り変えたり、フォークリフトのアイドリングの時間を抑えたりと具体的な取り組みにつながりました」(製造業)
「算定結果をプレスリリースで配信したところ、早速、電子情報分野や自動車分野などからの問い合わせがありました」(製造業)
「省エネ法と地球温暖化対策推進法への対応なども含めて「アスエネ」で算出したデータを活用し、これからも継続的にサステナビリティレポートを発刊していきます」(メーカー)
このように、CO2排出量の見える化がコスト削減や新たなビジネスの創出に影響が出ています。
東京都の支援なら、専門知識がなくても始められる
見える化には専門的な知識が必要と思われがちですが、東京都の支援制度で導入できるアスエネなどを使用すると専門知識がなくても簡単に見える化を始めることができます。アスエネは、電気料金の請求書など必要なデータを入力・アップロードするだけで見える化ができ、自動読み取り機能もあるため、担当者の負担を減らしながら精度の高いデータを得られます。 さらに、脱炭素の基礎をオンラインで学べる e-learning も提供されており、「何のためにやるのか」「どう進めるのか」を理解した上で取り組むことができます。
このようなサービスは東京都の支援制度を利用すれば無料で導入することができ、さきほど紹介した3社のように、ヒト・モノ・カネといった中小企業が脱炭素経営を進めるための「ハードルの高さ」を下げることができます。
CO2排出量の見える化をする中小企業が少しずつ増えています。東京都の支援を活用して、脱炭素経営の一歩を踏み出してみてください。
・企業の脱炭素経営に向けた計画策定支援事業
https://www.planning-support.tokyo-co2down.jp/