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日本人の食とカーボンフットプリント:日常の食選びでできる脱炭素アクション

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日本人の食とカーボンフットプリント:日常の食選びでできる脱炭素アクション

地球温暖化対策が喫緊の課題となる中、私たちの日常生活のあらゆる行動が、温室効果ガス(GHG)排出に結びついていることが明らかになっています。その中でも、衣食住の一つである「食」が環境に与える負荷は非常に大きく、国際的な研究では、食料システム全体で世界のGHG排出量の約4分の1から3分の1を占めるとされています。日本においても、食料の生産(農業・漁業)、加工、輸送(輸入)、調理、そして廃棄に至る全過程で、膨大なCO₂が排出されています。特に、豊かな食生活を送る日本人の「食に関するカーボンフットプリント(CFP)」は、ライフスタイル全体を脱炭素化する上で、見過ごせない改善余地となっています。

本記事では、この「日本人の食とCFP」に焦点を当て、カーボンフットプリントの基礎知識から、食品別の排出量ランキング、そして私たち一人ひとりが日常の食選びでできる具体的な脱炭素アクションについて、最新データに基づいて徹底的に解説します。毎日の食事を意識的に選ぶことが、持続可能な社会の実現に直結することを理解し、明日からの食生活を変えるヒントを見つけていきましょう。


INDEX

カーボンフットプリントとは

食に関する脱炭素アクションを理解するための土台として、カーボンフットプリント(CFP)の基本的な概念と、その測定方法について解説します。

CFP(Carbon Footprint of Products)の定義

CFP(Carbon Footprint of Products:製品のカーボンフットプリント)とは、製品やサービスの一生(ライフサイクル)を通じて排出される温室効果ガスの総量をCO₂に換算して表示する仕組みです。食料品の場合、その「一生」は以下の全ての段階を含みます。

  1. 原材料調達: 農業(肥料、農薬の使用)、畜産業(家畜の飼育、飼料生産)、漁業(漁船の燃料)。
  2. 製造・加工: 食品工場での加工、パッケージング。
  3. 輸送・流通: 産地から消費者までの輸送(トラック、船、飛行機)、倉庫での保管(冷蔵・冷凍)。
  4. 消費: 家庭や飲食店での調理(電力・ガスの使用)。
  5. 廃棄・リサイクル: 食べ残しや廃棄された食品の焼却・埋め立て処理。

CFPは、企業や消費者が、製品・サービスの環境負荷を定量的に把握し、比較・選択するための重要な指標となります。

食品の生産・流通・消費で発生するCO₂排出の考え方

食品におけるGHG排出は、CO₂だけでなく、より強力な温室効果ガスであるメタン(CH₄)一酸化二窒素(N₂O)も含まれます。

  • メタン(CH₄): 主に牛などの反芻動物の消化過程や、水田での稲作、有機性廃棄物の埋め立て処理から発生します。メタンはCO₂の約28倍の温室効果があるため、畜産分野のCFPが高くなる主要因です。
  • 一酸化二窒素(N₂O): 主に化学肥料の使用や、家畜の排泄物の管理から発生します。N₂OはCO₂の約265倍の温室効果があります。

CFPの計算では、これらのGHGを全てCO₂の排出量に換算(CO₂換算排出量)して、総量として表します。

日本国内での測定方法と評価基準

日本国内では、環境省やJCCCA(全国地球温暖化防止活動推進センター)などが、CFP算定のガイドラインを策定しています。

  • LCA(ライフサイクルアセスメント)の活用: 食品のCFP算定には、国際標準化機構(ISO)の基準に基づいたLCA手法が用いられます。これにより、特定の食品がどのプロセスで、どれだけの排出を出しているかを詳細に分析します。
  • 統一的なデータベース: 企業間や製品間での比較可能性を確保するため、統一的な排出原単位データ(例:電力1kWhあたりの排出量、トラック輸送1tkmあたりの排出量)が利用されます。
  • 課題: 輸入品が多い日本では、海外の生産段階のデータを正確に把握することが難しく、国や地域、生産方法によってCFPが大きく変動するため、データの精度向上と国際的な整合性が課題となっています。

日本人の食生活とCO2排出量の現状

具体的なデータに基づき、日本人の食事が地球環境に与えている負荷の現状を分析します。

平均的な食事パターンごとのカーボンフットプリント

JCCCAの調査などによれば、日本人の食生活全体におけるCO₂排出量は、1日あたりでCO₂換算排出量が数kgに達すると試算されています。この排出量は、個人の食事パターンによって大きく異なります。

  • 高CFPパターン: 牛肉や乳製品、輸入の魚介類を多く含む欧米型の食事パターンは、平均よりも高いCFPを示します。
  • 低CFPパターン: 伝統的な和食中心の食事パターン(魚介類、野菜、豆類、米が中心)は、肉類消費が少ないため、比較的低いCFPを示します。

特に、動物性タンパク質の消費量と、輸入に頼る食材の消費量が、個人のCFPを決定づける主要因となっています。

肉類、魚介類、乳製品、野菜・穀物の排出量比較

食品のCFPは、その生産方法(特に飼育・栽培方法)に大きく依存しますが、一般的なカテゴリーで比較すると、その排出量の差は歴然としています。

  • 最も高い: 牛肉(家畜の消化によるメタン排出、広大な土地利用、飼料輸送)。
  • 次に高い: 乳製品(生乳生産におけるメタン排出、加工・冷蔵のためのエネルギー消費)。
  • 中程度: 豚肉、鶏肉、養殖魚、卵(飼料生産と畜舎のエネルギー消費が主)。
  • 低い: 米、野菜、果物、豆類(栽培期間中の肥料や農機具の燃料が主だが、畜産に比べて圧倒的に少ない)。

この比較から、「何を食べるか」という選択が、CFP削減の鍵を握っていることが分かります。

外食・加工食品の影響

外食や加工食品は、自宅での調理とは異なる経路でCFPが発生します。

  • 外食: 外食産業では、店舗の空調や照明、大規模な調理設備のエネルギー消費、そして食材のフードロスがCFPに大きく影響します。また、メニューによってCFPの差が大きくなります。
  • 加工食品: レトルト食品や冷凍食品などの加工食品は、原材料調達に加え、複雑な加工工程(加熱、冷却、パッケージング)と、長期保存のための冷凍・冷蔵輸送が加わるため、未加工の食材よりもCFPが高くなる傾向があります。
  • 輸入食品: 遠距離の輸送を伴う食品(例:海外産の牛肉、南米産の豆など)は、船舶や航空機による輸送段階のCO₂排出がCFPを押し上げます。

食品別のカーボンフットプリントランキング

具体的な食品カテゴリーごとのCO₂排出量の目安を知ることは、日々の食の選択を変えるための最も重要なステップです。

最も排出量の多い食品:牛肉・豚肉・乳製品

食品のCFPランキングにおいて、最も上位に位置するのは、主に畜産物です。

食品排出量の特徴(CO₂換算)主要な排出源
牛肉圧倒的に高い(他食品の数倍~数十倍)飼育中のメタン(CH₄)排出、飼料生産のための土地利用、飼料の輸送
豚肉牛肉より低いが、中程度の負荷飼料生産、畜舎のエネルギー消費、排泄物処理。
チーズ高い(牛乳生産と加工に多大なエネルギー)生乳生産(メタン)、濃縮・加工(エネルギー)、長期冷蔵

【具体的な数値例】

牛肉1kgあたりの排出量は、約20〜60kg-CO₂e(CO₂換算)とされており、鶏肉の約10倍、豆類の約50〜100倍にもなります(数値は生産方法や調査機関により変動します)。

中程度の排出量:鶏肉、魚、卵

比較的排出量が抑えられているのは、飼育・養殖期間が短い畜産物や、一部の魚介類です。

  • 鶏肉・卵: 豚肉よりも飼料効率が良く、成長が速いため、CFPは低い傾向にあります。
  • 魚(漁獲): 漁獲方法に大きく依存します。底引き網漁など、燃料消費の多い漁法で獲られた魚はCFPが高く、養殖の場合は、飼料生産の影響が大きくなります。

低排出量:野菜、豆類、穀物

最も排出量が少ないのは、基本的に植物由来の食品群です。

  • 米・穀物: 比較的CFPは低いものの、水田の稲作におけるメタン排出や、乾燥工程のエネルギー消費は無視できません。
  • 野菜・果物: 露地栽培や旬の野菜は極めてCFPが低いですが、温室栽培長距離の航空輸送を伴う場合は、排出量が跳ね上がります。
  • 豆類: 大豆、レンズ豆などの豆類は、生産過程で窒素肥料の必要性が低く、CFPは極めて低い「低炭素食」の代表格です。

日常の食事改善のポイント

このランキングから導かれる食事改善の最大のポイントは、「動物性食品、特に牛肉・乳製品の消費量を減らし、植物性食品の割合を増やすこと」です。これを実践するだけで、個人のCFPは大きく改善されます。


食の選択でできる脱炭素アクション

個人の日々の「食の選択」は、食料システム全体に大きな変革をもたらす力を持っています。具体的なアクションを整理します。

肉の消費量を減らし、植物性食品を増やす

CFP削減の最大のインパクトをもたらすのが、この行動です。

  • ミートフリーの導入: 週に1~数回、「肉なしデー(Meat-free Day)」を設ける。ランチを肉料理から野菜中心の料理や豆料理に替えるだけでも効果的です。
  • 代替食品の活用: 肉の代替として、大豆ミート、豆腐、納豆などの植物性タンパク質を積極的に取り入れます。これらの食品は、CFPが低いだけでなく、食物繊維やビタミンも豊富です。
  • プラントベースミルクへの転換: 牛乳の一部を、豆乳、オーツミルク、アーモンドミルクなどのプラントベースミルクに置き換えます。これらは、牛乳と比較してメタン排出の影響を受けません。

地産地消や旬の食材を選ぶ

流通・輸送の過程で発生するCO₂排出を減らすための重要なアクションです。

  • 地産地消の推進: 地元の農産物直売所やスーパーの地場産コーナーを利用し、長距離輸送を伴わない食材を選びます。輸送距離が短ければ、その分の燃料消費とCO₂排出を削減できます。
  • 旬の食材を選ぶ: 旬の野菜や果物は、露地栽培が主であるため、温室栽培(暖房のためのエネルギー消費が大きい)と比べてCFPが非常に低くなります。また、旬の食材は栄養価が高く、味も良いため、経済性栄養の面でもメリットがあります。

加工食品・輸入食品の選び方

ライフサイクル全体での排出量を意識した賢い選択が求められます。

  • 過度な加工を避ける: できるだけ未加工に近い食材を選び、家庭で調理することで、工場での複雑な加工やパッケージングによるエネルギー消費を抑えることができます。
  • 航空輸送品の回避: 輸入食品の中でも、特に航空輸送されたものはCFPが極めて高くなります。輸送手段が不明な場合は、なるべく船便での輸入が一般的な穀物や冷凍食品を選ぶなど、意識的な選択が重要です。
  • 環境ラベルの確認: CFPを意識した食品メーカーでは、環境ラベルCFP表示を行っている場合があります。これらのラベルを参考に、環境負荷の低い製品を積極的に選択します。

フードロス削減の工夫(食べきり・保存法)

食料を生産し、せっかく消費者の元に届いたにもかかわらず、廃棄される際のCO₂排出は無視できません。フードロス削減は、最も手軽で効果的な脱炭素アクションです。

  • 計画的な買い物: 必要な分だけを購入し、「もったいない」意識を持って食材を使い切る計画を立てる。
  • 長期保存の工夫: 肉や野菜は、小分けにしてすぐに冷凍保存する、乾燥させるなど、鮮度を保ち、廃棄を減らすための保存法を実践する。
  • 外食での食べきり: 飲食店で注文する際は、食べきれる量だけを注文し、残しそうな場合は持ち帰り(自己責任で)を検討するなど、外食時のフードロスにも配慮する。

日本の食文化と脱炭素の両立

日本の伝統的な食文化には、カーボンフットプリントが低い要素が多く含まれており、これを再評価することが脱炭素社会への移行をスムーズにします。

伝統食・和食の低CFP特徴

伝統的な日本の食文化は、以下の点で低CFPに寄与しています。

  • 魚介類・豆類中心: 和食は、牛肉や乳製品の消費量が少なく、魚介類、米、そして豆類(味噌、醤油、豆腐、納豆)が中心です。豆類はCFPが極めて低いだけでなく、畑の土壌に窒素を固定する効果もあり、環境に優しい食材です。
  • 一汁三菜のバランス: 主食(米)と主菜(魚や豆)、副菜(野菜)を組み合わせる一汁三菜のスタイルは、肉類に偏らず、多様な食材から栄養をバランス良く摂るため、結果的に動物性タンパク質の消費過多を防ぎます。
  • 発酵食品の活用: 味噌や醤油、漬物といった発酵食品は、保存性を高め、食品を無駄なく使い切るための知恵であり、フードロス削減に貢献しています。

栄養バランスを保ちながら排出量を減らす工夫

脱炭素食=栄養不足ではありません。むしろ、植物性食品を増やすことで、健康的な食事に近づきます。

  • タンパク質の置き換え: 肉類を減らす分、魚、卵、大豆製品で良質なタンパク質を補います。
  • 旬の野菜の多様化: 旬の野菜を積極的に取り入れることで、多様なビタミンやミネラルを摂取し、栄養の偏りを防ぎます。
  • 持続可能な漁業の選択: 魚を選ぶ際は、資源管理が適切に行われているMSC認証などのラベルがついた水産物を選ぶことで、環境負荷を総合的に低減します。

学校給食・企業食堂での取り組み事例

集団給食の場は、大規模なCFP削減と、次世代への意識啓発に大きな効果を持ちます。

  • 給食での「和食の日」: 学校給食で「和食の日」や「地場産デー」を設けることで、子どもたちに伝統食の良さと地産地消の重要性を教え、結果的に低CFPの献立を提供します。
  • 企業食堂の低炭素メニュー: 企業や大学の食堂で、低CFPメニュー(例:大豆ミート使用、野菜・豆類中心)を積極的に提供し、CFPラベルを表示することで、社員・学生の食の選択を促します。

企業・自治体の取り組み

個人のアクションを支えるためには、企業や自治体による食料システム全体の変革が不可欠です。

食品メーカーのCFP表示・環境ラベル

消費者が賢い選択をするための情報提供として、食品メーカーによるCFPの表示が重要性を増しています。

  • CFPの算定・公開: 自社製品のライフサイクル全体(農場から廃棄まで)のGHG排出量を算定し、パッケージやウェブサイトでCO₂排出量(CFP)を公開する企業が増加しています。
  • 環境ラベルの導入: CFPの削減努力や、持続可能な生産方法(例:森林破壊のない飼料利用)を認証する環境ラベルを導入し、消費者の購買を促しています。
  • サプライチェーンの変革: 原材料調達において、低炭素な農法を採用しているサプライヤーを選定したり、再生可能エネルギーで製造されたパッケージ素材に切り替えたりするなど、サプライチェーン全体での排出削減努力を進めています。

自治体によるフードロス削減・地産地消推進

地方自治体は、地域社会の食料システムを改善するための政策を推進しています。

  • フードバンク・フードドライブの支援: 食べきれない食品を寄付するフードドライブ活動を支援し、生活困窮者支援とフードロス削減を両立させる仕組みを強化。
  • 生ごみ処理の脱炭素化: 生ごみを焼却処分するのではなく、メタン発酵(バイオガス発電)や堆肥化を促すことで、廃棄物処理時のGHG排出量を削減。
  • 地産地消のインフラ整備: 地域農産物の直売所や、学校給食への地場産品供給を円滑化するための流通インフラを整備し、地産地消率の向上を支援。

スーパー・外食チェーンでの低炭素メニュー提供

消費者の行動に最も近い小売業や外食産業の役割は大きいです。

  • 低CFPメニューの開発: 外食チェーンで、植物性食品持続可能な漁業で獲られた魚介類を積極的に使用した低CFPメニューを開発・提供。
  • 店頭での情報提供: スーパーの店頭で、旬の食材や地場産品の情報を目立つように表示し、消費者の環境に優しい選択を促す。
  • 需要予測の精度向上: AIを活用した需要予測システムを導入し、商品の過剰発注や、見切り品発生のタイミングを最適化することで、店舗レベルでのフードロスを削減。

日常生活で取り入れる簡単なステップ

脱炭素アクションは、特別なことをするのではなく、日々の生活習慣に小さな工夫を加えることから始まります。

週1回の「肉なしデー」

最も効果的で取り組みやすいアクションが、「週1回のヴィーガンまたはベジタリアンの食事」の導入です。

  • 試行錯誤: 週に1回、夕食の主菜を豆やキノコ、豆腐などに置き換えることから始めます。慣れてきたら、ランチも意識的に変えていきます。
  • 代替食の活用: 大豆ミートやプラントベースミルクは、味や食感のバリエーションが豊富になっており、無理なく肉や牛乳の代替として活用できます。

食品の旬・産地を意識した買い物

  • カレンダーの確認: 買い物前に、今が何の野菜や魚のであるか、簡単にチェックする習慣をつけます。旬の食材は、安価で美味しく、環境負荷も低いという三拍子が揃います。
  • 産地表示の確認: 商品の裏側などに表示されている産地表示を確認し、遠方からの長距離輸送品や、航空便で輸入された高CFP品を意識的に避けるようにします。

残さず食べる工夫、冷凍・保存活用

家庭内でのフードロスを防ぐための具体的なテクニックです。

  • 「使い切りレシピ」の活用: 野菜の皮やヘタ、使いかけの端材など、普段捨ててしまいがちな部分を活用する「使い切りレシピ」を試します。
  • 食材管理の徹底: 冷蔵庫内の整理整頓を徹底し、手前に「賞味期限が近いもの」を配置するなど、在庫を可視化して管理します。
  • 冷凍庫の活用: 冷凍できる食材(肉、魚、野菜、ご飯など)は、すぐに使い切れないと判断した時点で速やかに冷凍し、鮮度を保ちます。

家庭でのカーボンフットプリント見える化

  • アプリの活用: 最近では、購入した食材や食事の記録から、おおよそのCFPを自動で計算し、グラフ化してくれるスマートフォンアプリも登場しています。
  • 意識の継続: 家庭内のCFPを見える化することで、「昨日は肉が多かったから、今日は豆にしよう」といった意識的な行動変容を促し、家族全員で脱炭素に取り組むモチベーションを維持します。

今後の展望と課題

食の脱炭素化は、個人の努力だけで完結するものではなく、政策、技術、そして社会システム全体の変革が求められます。

個人の食行動と政策の連携の重要性

  • 需要の創出: 消費者が低CFP食品を選ぶ意識を持つことで、企業や生産者に「低炭素な製品を供給する」というインセンティブが働き、市場全体がグリーン化へと誘導されます。
  • 政策的支援: 政府は、CFPの低い農法(例:環境保全型農業)や、代替タンパク質技術への研究開発支援、そしてグリーン物流インフラへの投資を強化する必要があります。

カーボンフットプリント表示の拡大

CFP表示は、欧州などでは既に広がりを見せていますが、日本ではまだ限定的です。

  • 基準の統一: 企業間でのCFP表示の算定基準の統一化と、その信頼性を担保するための認証制度の整備が急務です。
  • 普及の促進: 消費者がCFP表示を理解し、購買行動に反映させるための普及啓発活動を国や自治体が主導する必要があります。

国際的な食の脱炭素指標との整合性

日本の食料システムをグローバルに通用させるためには、国際的な指標との整合性を確保することが重要です。

  • トレーサビリティの強化: 輸入食品の生産過程におけるGHG排出量を正確に把握するため、国際的なサプライチェーンにおけるトレーサビリティシステムを強化する必要があります。
  • 国際協力: JCM(二国間クレジット制度)などを活用し、日本企業が途上国でCFPの低い農法や加工技術を普及させることで、グローバルな食料システムの脱炭素化に貢献することが求められます。

まとめ:栄養と環境負荷のバランスを踏まえた持続可能な食選びが不可欠

私たちの「食」は、地球環境に大きな影響を与える一方で、CO₂排出量を減らすための最も身近で強力なアクションの機会を提供しています。

「日本人の食に関するカーボンフットプリント」の分析が示す通り、牛肉や乳製品などの高CFP食品の消費を減らし、米、野菜、豆類などの低CFP食品の割合を増やすという選択が、脱炭素社会の実現に直結します。

この変革を成功させるための鍵は、次の二点に集約されます。

  1. 個人の賢い選択: 毎日の食事において、旬・地場産・植物性を意識した食材を選び、フードロスを徹底的に削減するという意識的な行動変容を継続すること。
  2. システム的なサポート: 企業や自治体がCFP表示、低炭素メニュー開発、フードロス削減インフラの整備を通じて、個人の持続可能な食選びを容易にする環境を提供すること。

今こそ、「栄養と環境負荷のバランスを踏まえた持続可能な食選び」を新たな食の基準とし、個人、家庭、企業、そして行政が協力することで、健康と地球環境を守る脱炭素社会を達成することが不可欠です。


【参考文献・出典】

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