補助金

グリーンファイナンスの普及・拡大促進事業とは?概要・対象・支援内容をわかりやすく徹底解説

  • xのアイコン
  • facebookのアイコン
グリーンファイナンスの普及・拡大促進事業とは?概要・対象・支援内容をわかりやすく徹底解説

地球規模の課題である気候変動対策とカーボンニュートラルの実現には、技術革新だけでなく、社会全体の資金の流れを変えることが不可欠です。これまで化石燃料ベースの経済活動に投じられてきた莫大な資金を、再生可能エネルギー、省エネルギー、環境配慮型技術といった「グリーン」な事業へと誘導する動きが、今、世界中で加速しています。これがグリーンファイナンスです。

日本においても、この資金の流れを加速させるため、環境省が主導する「グリーンファイナンスの普及・拡大促進事業」が注目を集めています。この制度は、国や一部の大企業に留まらず、地域社会全体の脱炭素化を後押しするために、地方自治体、地域金融機関、そして事業会社(特に中小企業)の連携資金循環の仕組みづくりを支援する画期的な取り組みです。本記事では、この重要な支援事業について、その仕組み対象となる活動、具体的な支援内容、そして採択のポイントを、分かりやすく徹底的に解説します。この制度を理解し活用することで、地域経済を活性化させながら、持続可能な社会を実現するための道筋を探っていきましょう。

INDEX

グリーンファイナンスとは何か

「グリーンファイナンス」は、脱炭素社会の実現を語る上で欠かせないキーワードです。その定義と、カーボンニュートラルにおける役割を解説します。

環境・社会に配慮した事業へ資金を流す仕組み

グリーンファイナンスとは、地球環境の改善、持続可能性の確保に資する事業や活動に対して資金を供給する金融の仕組み全般を指します。具体的には、以下の分野への投融資が該当します。

  • 再生可能エネルギー事業: 太陽光、風力、地熱、バイオマスなどの発電・インフラ整備。
  • 省エネルギー・高効率化: 工場やビルの高効率設備への更新、ゼロ・エネルギー・ビルディング(ZEB)化。
  • クリーン・モビリティ: 電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)への転換、関連インフラ整備。
  • サステナブルな資源管理: 廃棄物削減、リサイクル技術、グリーンインフラの整備。

グリーンファイナンスの主な手法としては、特定のグリーンプロジェクトに資金使途を限定したグリーンボンド(緑の債券)や、企業の環境パフォーマンスに応じて金利が変動するグリーンローンなどがあります。

カーボンニュートラルに向けた資金循環の重要性

日本が2050年カーボンニュートラルを達成するためには、今後数十年にわたり、数千兆円規模の大規模な投資が必要だと試算されています。この巨大な資金需要を、公的資金だけで賄うことは不可能です。

グリーンファイナンスは、このギャップを埋める役割を果たします。

  1. 民間資金の動員: 投資家は、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)を考慮するESG投資への関心を高めており、グリーンファイナンスはその受け皿となります。
  2. 投資促進のシグナル: 金融機関がグリーンファイナンスを積極的に行うことで、「この分野は成長性がある」というシグナルを市場に送り、企業の脱炭素投資を後押しします。
  3. 地域分散: 地方の脱炭素化プロジェクト(地域再エネ、公共施設の省エネなど)へ、地域金融機関を通じて資金を供給することで、地域経済の活性化分散型エネルギー社会の実現を両立させます。

グリーンファイナンスは、単なる資金提供ではなく、経済全体を持続可能な構造へと変革する「経済の血液」の流れを変えるための最重要戦略なのです。


「グリーンファイナンスの普及・拡大促進事業」とは

環境省が主導するこの事業は、地域や企業における脱炭素化の取り組みに対し、金融面から支援し、資金の流れを円滑にすることを目的としています。

環境省による脱炭素投資の支援事業

この事業の最大の目的は、「グリーンファイナンス」の仕組みを社会全体に定着させ、脱炭素化に必要な投資を加速させることです。特に、地方においてグリーンファイナンスが普及していない現状を打破するため、以下の活動への支援に重点を置いています。

  • 資金調達支援: 企業や自治体がグリーンボンドやグリーンローンといった新しい手法で資金を調達できるよう、発行にかかる外部専門家費用を支援します。
  • 地域金融機関の能力強化: 地域脱炭素プロジェクトを評価・組成できる、金融機関側の専門人材育成や評価体制の構築を支援します。
  • モデル事業の創出: 地域における具体的な脱炭素プロジェクト(例:公共施設のZEB化、地域新電力事業)に対し、資金調達スキームを確立する支援を行います。

この事業は、特定の設備導入を補助するのではなく、資金調達と金融の仕組みそのものを支援する、ソフト面に特化した補助事業である点が大きな特徴です。

地域や企業のGX(グリーントランスフォーメーション)を加速

本事業は、企業や地域社会のGX(グリーントランスフォーメーション)を資金面から加速させるための重要なテコとなります。

GXとは、単なる環境対策に留まらず、気候変動への対応を成長の機会と捉え、産業構造や社会システム、地域経済を変革していく取り組みです。しかし、この変革には多額の先行投資が必要となります。

この支援事業は、地域金融機関がリスクを取って脱炭素プロジェクトに投融資できるように、プロジェクトの「事業性」「環境貢献度」を評価するノウハウを定着させます。これにより、地域の企業や自治体が、グリーンファイナンスを活用して意欲的な脱炭素投資に踏み出すことを促し、地域主導のGXを強力に推進します。


制度の目的と背景

この制度は、世界的な潮流であるESG金融の波を日本国内、特に地域経済にまで波及させることを目的としています。

民間資金を活用した脱炭素投資の拡大

環境省がこの事業を推進する最大の動機は、公的資金の限界です。脱炭素化投資のボリュームを劇的に増やすためには、公的資金による呼び水効果によって、巨大な民間資金をグリーン分野に振り向ける必要があります。

本事業は、金融機関や企業がグリーンファイナンスの仕組みを確立し、市場の透明性・信頼性を高めることで、国内外の投資家が安心して日本のグリーンプロジェクトに資金を供給できる環境整備を担います。すなわち、補助金はあくまで「初期投資を支援する」ものであり、究極的には補助金なしで自律的に資金が循環する仕組みの構築を目指しています。

ESG金融・サステナブルファイナンスの定着促進

近年、金融市場では、従来の財務情報だけでなく、環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)の要素を考慮したESG金融サステナブルファイナンスが主流となりつつあります。

この制度は、特に日本の地域金融機関に対し、この新しい評価軸を経営に取り込むことを促します。具体的には、取引先企業の脱炭素化への取り組みを評価し、それを融資条件に反映させるようなエンゲージメント(対話)を強化することを支援します。これにより、金融機関自身が、気候変動リスクを管理しつつ、新しい収益機会(グリーン投資)を獲得するサステナブルなビジネスモデルへと転換することを促進します。

地域金融機関との連携強化

地域の脱炭素化プロジェクト(例:市民出資型再エネ事業、中小企業の省エネ改修)は、小規模で多岐にわたるため、メガバンクなどによる大規模な資金提供には馴染みにくい特性があります。

そこで重要になるのが、地域経済を熟知し、中小企業との接点を持つ地域金融機関(地方銀行、信用金庫など)です。本事業は、地域金融機関が、脱炭素分野の知見を持つ地方自治体外部専門家と連携し、リスクを適切に評価し、プロジェクトを組成・育成するハブとなるよう支援します。この連携強化が、地域に根差したグリーン投資を拡大させる鍵となります。


対象となる事業・団体

本事業は、グリーンファイナンスの普及・拡大に貢献する多様な主体や事業形態を対象としています。単一の企業・団体だけでなく、複数の主体の連携による取り組みが特に重視されます。

地方自治体、地域金融機関、事業会社、大学・研究機関など

補助対象となる主な団体・企業は以下の通りです。複数の主体が連携して、共同で事業を実施するコンソーシアム形式での申請が推奨されます。

対象団体役割の例
地方自治体地域脱炭素ロードマップ策定、公共施設等のグリーンファイナンス活用スキーム構築、地域内企業への啓発。
地域金融機関グリーンローンの商品開発、融資先企業の脱炭素評価体制構築、地域再エネファンド組成。
事業会社自社のグリーンボンド発行に向けた準備、中小企業への脱炭素技術提供・資金調達支援(コンサルティング会社など)。
大学・研究機関環境貢献度や事業性の評価手法の開発、地域への普及啓発活動。
各種団体・NPO地域住民の参加を促すためのファンド組成支援、市民ファンドの運用体制構築。

中小企業支援を含む地域全体でのグリーン投資推進

本事業の重点テーマの一つは、「地域全体での脱炭素化」であり、その中でも特に中小企業の脱炭素投資を金融面から後押しする仕組みの構築が重要視されます。

  • 中小企業への波及: 単に大企業がグリーンボンドを発行するだけでなく、その資金がサプライチェーンの中小企業の省エネ改修や再エネ導入に繋がるような融資スキームの開発が評価されます。
  • 地域再エネ事業への投融資: 地域の電力消費構造を変革する地域新電力市民参加型再エネファンドなど、地域住民や企業が主体となるプロジェクトへの投融資を促進するための評価・資金調達スキームの確立が重要な対象となります。
  • 地方公共団体の脱炭素化: 自治体の庁舎や学校、病院といった公共施設をZEB(ゼロ・エネルギー・ビルディング)化・省エネ化するためのPPA(電力購入契約)モデルや、ESCO事業といった新しい資金調達・事業モデルの構築支援も対象となります。

支援の内容

この事業の支援内容は、多岐にわたりますが、共通しているのは「金融の仕組みを整える」というソフト支援である点です。設備の購入費用などは補助対象外です。

グリーンボンド・ローン発行支援

グリーンファイナンスの代表的な手法であるグリーンボンド(緑の債券)やグリーンローン(緑の融資)の発行に必要な準備活動を支援します。

  • 外部レビュー費用: 資金使途のグリーン性や、資金管理体制の透明性について、第三者機関の評価(セカンドオピニオン)を受けるための費用。この外部レビューは、投資家や金融機関の信頼性を得るために不可欠です。
  • ガイドライン策定: グリーンボンドやローンのフレームワーク(資金使途、プロジェクト選定基準、資金管理、レポーティングの仕組み)を策定するための費用。
  • 発行・組成アドバイザリー費用: 金融機関や専門コンサルタントによる、発行・組成に向けた助言やコンサルティング費用。

金融機関向け人材育成・体制構築支援

地域金融機関が脱炭素化時代に対応できるよう、組織体制と人材の専門性強化を支援します。

  • 専門研修の実施: 融資担当者や経営層に対し、気候変動リスク、環境貢献度(t-CO2削減量など)の評価手法、ESG評価、グリーンボンド市場の動向などに関する専門研修プログラムの実施費用。
  • 評価ツールの開発: 融資先企業やプロジェクトの環境貢献度トランジション(移行)計画を客観的に評価するための独自の評価指標やツールの開発費用。
  • サステナビリティ部門の設立支援: 組織内にサステナブルファイナンス推進部門を立ち上げるための体制構築費用や、外部専門家の招聘費用。

地域脱炭素プロジェクト形成支援

実際に地域で脱炭素化を実現するプロジェクトを具体化し、投融資可能な案件へと仕上げるための準備活動を支援します。

  • 事業性・環境性調査: 地域新電力、地域熱供給、公共施設のZEB化など、具体的なプロジェクトについて、事業収益性、経済効果、CO2削減効果を詳細に試算・調査する費用。
  • 資金調達スキーム設計: PPAモデル、ESCO事業、地域ファンド、クラウドファンディングなど、地域の特性に合った最適な資金調達・事業運営スキームを設計するための専門家費用。
  • 関係者調整費用: 自治体、地域企業、住民、金融機関といった多岐にわたる関係者間の合意形成や連携体制を構築するための調整費用。

支援の対象経費と補助率

本事業は、設備投資ではなく、ソフト支援に特化しているため、補助対象となる経費の種類も特徴的です。

調査費、外部専門家費用、人件費などが対象

補助対象となる主な経費は、事業を円滑に進めるための「知識」や「ノウハウ」に関わるものです。

経費区分具体的な対象経費の例
外部専門家謝金・旅費グリーンボンドの外部レビュー機関への費用、弁護士・公認会計士・環境コンサルタントへのアドバイザリー費用、講師謝金。
調査・分析費市場調査費用、事業性評価のための費用、CO2削減量算定のための分析費用、各種アンケート調査費用。
事務費・消耗品費計画書、ガイドライン、研修資料などの印刷製本費、会議費。
人件費(一部)事業遂行のために直接従事する職員の人件費(専従性が認められる場合)。ただし、この事業の補助対象とならない場合や、上限が設けられる場合もあります。
広報費事業成果の普及啓発のためのセミナー開催費用、ウェブサイト制作、パンフレット作成費用。

【重要な注意点】

  • 設備投資費・運営費は対象外: 実際に導入する太陽光パネル、省エネ機器、建物の改修費用など、ハードウェアに関わる費用は一切補助対象外です。
  • 汎用性の高い経費の制限: 通常の業務で利用するパソコンや一般的な事務用品など、本事業以外でも利用できる汎用性の高い経費は、補助対象とならないか、厳しく制限されます。

補助率や上限額の目安を紹介

補助率と上限額は、国の予算や公募年度によって変動しますが、概ね以下の水準となることが多いです。

  • 補助率: 原則として1/2以内または2/3以内
    • 特に、地域金融機関や自治体による波及効果の高い先進的な取り組みや、中小企業支援に直結する仕組みづくりに対しては、補助率が2/3に設定されるなど、優遇される傾向があります。
  • 上限額:数千万円から数億円規模
    • 本事業は、大規模な金融スキーム構築や、複数の地域金融機関を巻き込んだ人材育成プログラムなど、広範囲な活動を支援するため、上限額は高めに設定されることが多いです。

補助金額は、申請者が計画した事業の規模、内容の先進性、そして環境省が重点を置くテーマとの合致度合いによって決定されます。


応募・採択までの流れ

グリーンファイナンスの普及・拡大促進事業は、通常の補助金とは異なり、金融スキームの構築という性質上、事前の調査や連携体制の構築に時間を要します。

公募要領の確認

環境省や事業を執行する団体(例:一般社団法人)が公開する最新の公募要領を熟読します。特に、補助対象事業の具体的な定義、補助対象経費の範囲、審査基準、および提出書類の様式を正確に理解することが必須です。

事業計画書・申請書類の作成

補助事業の核となる事業計画書を作成します。以下の要素を盛り込み、説得力のある内容に仕上げる必要があります。

  1. 現状分析と課題: 申請主体(地域、金融機関など)の現状の脱炭素化に関する課題と、グリーンファイナンス普及の阻害要因を特定。
  2. 目標設定: 補助事業を通じて達成したい具体的な目標(例:グリーンローン実行額の目標、育成する人材の数、CO2削減ポテンシャル)。
  3. 事業内容と実施体制: 実施する具体的な支援内容(例:研修カリキュラム、評価ツール開発計画)、および、自治体・金融機関・外部専門家がどのように連携し、事業を遂行するかという明確な役割分担
  4. 波及効果と再現性: 構築するスキームが、他の地域や金融機関に容易に横展開できる再現性と、地域全体に及ぼす波及効果を示す。
  5. 資金計画: 補助対象経費(外部専門家費用など)の積算根拠と、自己負担分の調達方法を明確に示す。

提出・審査・採択発表

  • 提出: 指定された期間内に、指定された方法(多くは電子申請システム)で、全ての申請書類を提出します。
  • 審査: 書類審査の後、必要に応じて申請団体に対するヒアリング審査が実施されます。このヒアリングでは、事業計画の実現性、リーダーシップ、そして連携体制の強固さが問われます。
  • 採択発表: 環境省から採択結果が通知され、採択された場合は、補助金交付に向けた正式な手続きに入ります。

実施報告・成果共有

  • 事業の実施: 交付決定後、計画に従って事業を実施します。この際、経費の執行については厳格なルール(証憑の管理、費目の制限など)を遵守する必要があります。
  • 実績報告: 事業完了後、かかった経費の詳細、事業で達成した成果(例:策定したガイドライン、実施した研修実績、評価ツールの試行結果)、そして波及効果の測定結果をまとめた実績報告書を提出します。
  • 成果共有: 補助事業で開発されたガイドラインや評価ツール、成功事例などは、環境省を通じて広く社会に共有され、グリーンファイナンスの普及に役立てられます。

採択のポイント

競争率の高いこの事業で採択を勝ち取るためには、単なる調査研究ではなく、「地域を変える」ための実行力と仕組みづくりをアピールする必要があります。

地域金融機関との協働性

この事業の核は「金融の普及」であるため、地域金融機関が主体的に関与しているか、または協力関係が明確かが最重要の審査ポイントとなります。

  • 単なる顧客ではない: 金融機関は、単に融資先の情報を集めるだけでなく、事業計画の策定段階から、専門知識を持つパートナーとして深く関与している必要があります。
  • コミットメント: 地域金融機関の経営層が、本事業を通じてサステナブルファイナンスを今後の経営戦略の柱に据えるという強いコミットメントを示していることが求められます。

資金循環モデルの再現性・波及性

構築しようとするグリーンファイナンスの仕組みが、その地域固有の事情に依存しすぎるものであってはなりません。

  • 再現性: 策定したグリーンローンやボンドのフレームワーク、または評価ツールが、他の地域の金融機関他の自治体でも応用可能であり、汎用性が高いことを示す。
  • 波及効果: 構築された資金循環スキームが、地域の中小企業全体、または主要産業全体の脱炭素投資をどれだけ誘発し、地域経済全体にポジティブな影響を与えるかを定量的に(またはロジカルに)示す。

脱炭素効果・環境貢献度の明確化

支援する活動が、最終的にどれだけのCO2排出量削減ポテンシャルを持つのか、そのロジック数値を明確に示すことが不可欠です。

  • 最終的なインパクト: グリーンローンの商品開発であれば、「このローンによって今後5年間で〇〇件の脱炭素プロジェクトが生まれると想定され、その合計削減効果は〇〇t-CO2/年である」といった、最終的な環境貢献度まで見通して計画を立てる必要があります。
  • 指標の明確化: 支援を受けて開発する評価ツールやガイドラインが、GHGプロトコルや既存の国際基準に準拠し、客観的に環境貢献度を評価できる指標を含んでいることを示します。

期待される効果と導入メリット

この事業は、単に補助金を受け取る企業・団体だけでなく、地域社会全体に多大なメリットをもたらします。

地域のGX推進力強化

この事業を契機に、自治体、金融機関、事業会社が一体となって脱炭素化を地域成長のエンジンと捉える意識が定着します。

  • 計画と実行の連動: 自治体が策定した「地域脱炭素ロードマップ」と、金融機関の「投融資戦略」が連動することで、地域全体での脱炭素化の取り組みに実行力が生まれます。
  • 人材の育成: 研修プログラムを通じて、脱炭素プロジェクトの目利きや組成ができる金融人材が地域に根付くことで、継続的なグリーン投資が可能になります。

ESG投資を呼び込む仕組みの構築

グリーンボンドやグリーンローンの発行支援を受けることで、地方の自治体や企業であっても、国際的なESG投資マネーを呼び込むための基盤が整います。

  • 信頼性の向上: 第三者レビューを受けたグリーンファイナンスの枠組みを持つことで、その事業の透明性・信頼性が高まり、国内外の機関投資家からの評価と関心が高まります。
  • 資金調達先の多様化: 従来の銀行融資に加えて、債券市場やサステナブルファンドからの資金調達が可能となり、資金調達チャネルの多様化が実現します。

金融機関・企業の信頼性・価値向上

グリーンファイナンスへの積極的な取り組みは、金融機関と融資先企業の双方にとって、企業価値とブランドイメージの向上に直結します。

  • 金融機関の価値向上: 気候変動リスクを適切に評価・管理し、グリーンな成長を支援する金融機関として、市場でのレピュテーション(評判)が向上します。
  • 企業の競争力強化: 中小企業が脱炭素化に取り組むことは、大企業との取引(グリーン調達)や、消費者からの評価において競争優位性を高める要素となります。

これまでの採択事例

過去にこの事業や類似の支援事業で採択された事例は、今後の申請主体にとって大きな参考となります。

地方銀行によるグリーンボンド発行支援事例

  • 概要: 地方銀行が主体となり、地方自治体の支援を受けて、地域特化型グリーンボンドのフレームワークを策定。
  • 成果: 資金使途を地域内の中小企業の省エネ改修や、地産地消型再エネ事業に限定。外部レビューを経て、数年間にわたり総額数百億円規模のボンドを発行するスキームを確立。調達資金を地元の優良脱炭素プロジェクトに安定的に投融資することで、地域内の資金循環を実現。

自治体×企業連携の脱炭素プロジェクト

  • 概要: 地方自治体と地域新電力会社、地域金融機関が連携し、公共施設と民間施設の脱炭素化を同時に行う合同事業スキームを構築。
  • 成果: 公共施設の屋根をPPA(電力購入契約)モデルで再エネ化し、その再エネ電力を地域新電力が買い取り、地域の企業や住民に供給するスキームを設計。この事業のファイナンスを地域金融機関が行うためのリスク評価モデルを開発。

地域再エネ事業への投融資拡大事例

  • 概要: 複数の信用金庫が共同で、地元の中小企業や農業従事者が主体となる小規模再エネ(例:営農型太陽光、小水力)プロジェクトへの投融資を促進するための評価体制を構築。
  • 成果: 小規模再エネ特有の不確実性(例:発電量の変動、土地利用の制限)を評価するための独自のサステナブル評価ツールを開発し、融資担当者への研修を実施。これにより、これまで投融資に消極的だった小規模再エネ案件への融資実行件数を大幅に増加。

これらの事例は、「地域金融機関の関与」「外部専門家の活用」「再現性のある仕組みづくり」が成功の共通項であることを示しています。


まとめ:民間資金と地域連携を踏まえた資金循環モデルの構築が最重要

環境省が推進する「グリーンファイナンスの普及・拡大促進事業」は、脱炭素社会の実現に向けた資金調達と金融の仕組みを、地域レベルで定着させるための極めて重要なイニシアチブです。

本事業が目指すのは、一時的な補助金の投入ではなく、補助金なしで自律的に機能する持続可能な資金循環モデルの構築です。その成功の鍵は、次の二点に集約されます。

  1. 民間資金の動員: グリーンボンドやグリーンローンなどの金融手法を活用し、国内外のESG投資マネーを、地方の脱炭素プロジェクトに確実に導く仕組みを構築すること。
  2. 地域連携の深化: 地域金融機関が、自治体や事業会社、専門家と強固に協働し、脱炭素化を新たな収益機会と捉えて積極的に関与すること。

この支援制度を最大限に活用し、「民間資金と地域連携を踏まえた資金循環モデルの構築」を図ることは、地域のGXを加速させ、持続可能な地域経済を確立するための最重要戦略です。金融・企業・行政が一体となることで、日本全体でのカーボンニュートラル実現に大きく近づくことができるでしょう。


【参考文献・出典】

  • xのアイコン
  • facebookのアイコン

タグから探す

人気記事ランキング

役立つ無料ガイド集​​

まとめて資料請求

related/ 関連記事

Pick UP/ 注目記事

GUIDE BOOK/ 役立つ無料ガイド集

  • 人気No.1

    サービス概要

    この資料で分かること
    サービス概要、利用プラン
    CO2削減実行までの基本
    効率的な各種算定方法など

    サービス概要、利用プランなどを知りたい方はこちら

    資料ダウンロード

  • 他社事例を
    知りたい方はこちら

    アスエネ事例集

    掲載企業(一部)
    株式会社コメダホールディングス
    GMOペイメントゲートウェイ株式会社
    日本トムソン株式会社 ...など

    他社事例を知りたい方はこちら

    資料ダウンロード

  • 製品別のCO2排出量を
    見える化したい方

    CO2排出量の基礎

    この資料で分かること
    Scope1-3の見える化
    Scope1-3算定のメリット
    Scope3算定手順

    製品別のCO2排出量を見える化したい方はこちら

    資料ダウンロード

  • 最新のSDGsの
    取り組みを知りたい方

    SDGs資料

    この資料で分かること
    最新のSDGsの企業取組一覧

    最新のSDGsの取り組みを知りたい方はこちら

    資料ダウンロード

  • 近年の気候変動の
    状況を知りたい方

    温暖化資料

    この資料で分かること
    気候変動の状況や対策についてのまとめ

    近年の気候変動の状況を知りたい方はこちら

    資料ダウンロード