千葉県との協定により本格始動したLED照明一括切り替え支援事業。その裏側には、「日本のためになることをやる」という代表・藤井俊嗣氏の信念と、自治体協定型事業での経験から導き出された独自のビジネスモデルがある。製品を売買せず、フェアで透明性のあるプラットフォームとして、自治体・導入企業・施工業者の「三方よし」を実現する。今回は、同社の成り立ちから事業の仕組み、そして「自助・共助」の社会を実現するビジョンまで、詳しく話を伺った。
INDEX
これまでの経験を活かした新たな挑戦
―― まずは御社設立の経緯について教えていただけますでしょうか。
藤井氏:ジェニュイン日本株式会社の法人登記自体は2017年6月なので、すでに8年以上経過しています。ただ、実質的な事業開始は2024年9月からです。
それまでの間、ジェニュイン日本は出資会社として、私自身は別の会社でエネルギー業界における自治体との協定型事業に携わっていました。太陽光パネルと蓄電池の共同購入事業を通じて、自治体・導入者・施工業者をつなぐプラットフォームビジネスのノウハウを蓄積してきました。この事業は全国に拡大し、複数の都道府県で実績を積むことができました。
―― その後、ジェニュイン日本として独立されたのはなぜですか?
藤井氏:当時の事業は、自治体との協定を通じた共同購入事業という新しいモデルの確立に成功し、事業としても一定の成熟期を迎えました。
一方で、私自身は日本のエネルギー自給率向上という社会課題に対して、さらに踏み込んだアプローチを試みたいという想いが強くなっていました。具体的には、より多様なエネルギー関連製品への展開や、地域ごとの課題に合わせたきめ細かな事業設計など、新たなチャレンジをしたいと考えるようになりました。
そのため、昨年7月にジェニュイン日本を事業会社として独立させ、新しいビジネスモデルの構築に取り組むことにしました。これまでの経験を活かしながらも、より柔軟で、地域の実情に即した事業展開を目指しています。

千葉県との協定締結 ― LED一括切り替え支援事業の現状
―― 現在の主力事業について教えてください。
藤井氏:2024年10月7日に千葉県と「LED照明設備一括切り替え等支援事業」の協定を締結しました。これが、ジェニュイン日本として初めての大型プロジェクトです。
2027年に蛍光灯が廃止されることを受けて、県内事業者のLED化を前広に進めていこうという事業です。同時に、脱炭素というもう一つの軸も持っています。千葉県と一緒に、県内の照明をLED化し、普及促進させる3カ年事業として協定を結びました。 LEDは入り口に過ぎません。LED化を進めていくと、同じ省エネという切り口で、高効率空調機や断熱窓、遮熱フィルムといった需要もカバーできてきます。さらに、省エネだけでなく創エネ―太陽光パネルや蓄電池、ソーラーカーポートといった様々なアイテムへと広がっていきます。
「売買しない」という選択 ― 三方よしのビジネスモデル
―― 御社のビジネスモデルの特徴を教えてください。
藤井氏:最大の特徴は、LEDや太陽光パネルといった製品の売買を一切行わないことです。私たちが製品を売買してしまうと、ステークホルダー間において必ず損得勘定が生まれます。そうすると、フェアで公平、透明性のある事業はできません。
私たちはあくまで、LEDを導入したい工場・事業所と、LEDを設置する施工業者をつなぐプラットフォームとして機能します。商売が成立した暁には、施工業者から一定率の手数料をいただくというスキームです。
―― 具体的にはどのような仕組みなのでしょうか。
藤井氏:まず、私たちが運営する専用ウェブサイトを通じて、県内事業者が申し込みを行います。私たちが選定した複数の施工業者が入札し、最適な業者とマッチングされる。契約時に半金、工事完了時に残金を支払う形式で、施工業者のキャッシュフローも改善される仕組みになっています。
そして半金の部分から、私たちに対する手数料を支払ってもらいます。工事完了まで待たずに、私たちにもキャッシュがインしてくるので、比較的早期に収益が実現します。
―― 「三方よし」とおっしゃっていましたが、それぞれのメリットを教えてください。
藤井氏:自治体である千葉県は、県民の税金を基でとした予算措置ゼロで脱炭素施策を推進できます。旗振り役として既存の県や市町村が有する広報ルートを活用し、県の信頼性を背景に県民・事業者の安心感を提供します。
導入企業・事業所は、スケールメリットにより通常より安価に導入できます。私たちが品質・安全性を担保した施工業者のみを選定しているので、千葉県の事業として安心して導入できます。
施工業者は、一度に多くの受注が見込めます。半金・完工時半金の決済スキームでキャッシュフローが改善され、公的事業への参画により企業ブランドも向上します。
誰かが損をして誰かが得をするのではなく、すべてのステークホルダーがメリットを感じられるようにする。これが私たちの事業の根幹です。
―― プラットフォーム運営の裏側で、どのような業務が発生しているのですか?
藤井氏:ウェブサイトの構築・維持、オンライン説明会の開催、チラシの印刷・配送、そして申込者の進捗を一元管理するシステムの運営、県民の皆さんからの問合せなどの受付対応。これらすべてを私たちが担っています。
申込者ごとに「申込完了」「現地調査済み」「見積もり待ち」といったステータスを管理し、スムーズな進行をサポートします。また、問い合わせや時には苦情にも対応するカスタマーサービス機能も欠かせません。これらの費用やランニングコストが、事業運営には必要です。
―― これまでの経験が現在の事業に活きているのですね。
藤井氏:はい。自治体との協定型事業の経験は貴重な財産です。ただし、ジェニュイン日本では、これまでとは異なるアプローチも取り入れています。
例えば、LEDという異なる製品カテゴリーからスタートし、そこから高効率空調機や断熱窓など、より幅広いエネルギー関連製品へと展開していく戦略です。また、BtoB(事業者向け)とBtoC(一般消費者向け)の両面で事業を設計している点も特徴です。 事業規模については、全国展開を視野に入れていますが、まずは千葉県での実績をしっかりと積み上げることに注力しています。製品を売買しないプラットフォームモデルのため、私たちの収益は取引総額の一部を手数料として受け取る形になります。
日本の持続性を実現するために
―― 藤井様が最も大切にしている理念について教えてください。
藤井氏:脱炭素は重要な社会課題であり、国や自治体が掲げる方向性には賛同しています。ただし、私が事業を通じて実現したいのは、より根本的な課題である「日本の持続性」です。
日本は食料自給率が約40%、エネルギー自給率が20%未満という状況にあります。海外からの供給が途絶えた場合のリスクを考えると、エネルギーの地産地消や自給率向上は、国家レベルで取り組むべき課題だと考えています。
―― エネルギー事業は「入り口」だとおっしゃっていましたね。
藤井氏:そうです。例えば、太陽光パネルと蓄電池を導入した住宅では、災害時にも電力を確保できます。さらに断熱性能を高めることで、エネルギー効率の高い生活環境を実現できます。
このように、個々の住宅や事業所がエネルギーの自給自足体制を整えることが、地域全体、ひいては日本全体の強靭化につながると考えています。これが、私たちが目指す持続可能な社会の姿です。
―― 藤井様の考える「自助」と「共助」について、もう少し詳しく教えてください。
藤井氏:今の日本では、公的な制度や施策について、自分自身で情報を集めて判断する機会が少ないと感じています。例えば、税制や社会保障制度について、「国が決めたことだから」と受け入れるだけでなく、なぜそうなっているのか、自分にとって最適な選択は何かを考えることが重要だと思います。
公助―公的支援に頼るだけでなく、まず自助―自分で情報を収集し、判断する力を持つ。そして自助ができるようになれば、共助―地域や他者を支える余裕も生まれてきます。
私たちの事業は、その自助のきっかけを提供するものです。例えば、オール電化の家庭では年間約50万円の電気代がかかります。30年間で約1500万円です。一方、太陽光パネルと蓄電池を300万円で導入すれば、長期的には大きなメリットがあります。
こうした客観的な情報を提供し、「どちらを選択されますか?」とお聞きする。誘導するのではなく、ご自身で考えて判断していただく。そして、その判断が良い結果につながる経験を積み重ねていただくことで、自律的な意思決定ができる方が増えていくと考えています。
―― 「共通価値の創出」についてもお考えをお聞かせください。
藤井氏:千葉県、導入企業、施工業者、そして県民。すべてのステークホルダーが共通の価値観を持ち、それぞれにメリットを感じられる仕組みでなければ、事業は持続しません。その共通価値をどのように設計し、創出していくかが、私たちの事業の核心です。
具体的には、地域の事業所が適切にLED化を進めることで、電気代削減と脱炭素への貢献を両立できます。施工業者は安定的な受注機会を得られ、自治体は予算を使わずに施策を推進できる。このように、経済合理性と環境配慮を両立させた事業設計が、共通価値の創出につながると考えています。
また、東京一極集中から地域分散へという流れの中で、地域ごとの共通価値をどう作り出すかも重要なテーマです。最終的には、各家庭や事業所という最小単位での自律性を高めることが、地域全体の持続性向上につながります。
―― エネルギー以外の分野への展開も視野に入れられていますよね?
藤井氏:はい。私たちが持っているプラットフォームは、別にエネルギーだけに限定されるものではありません。国や地域の困りごと―例えばヘルスケアやメディカルといった分野でも、このスキームは活用できます。
私たちは、市民や県内事業者を集めるのが得意なプラットフォームを持っています。その上に載せるものは、エネルギーでなくてもいい。もう少し先を見ると、そういった展開も視野に入ってきます。


組織体制と今後の展開
―― 現在の組織体制について教えてください。
藤井氏:現在、当社で働いているメンバーは最大で7名程度です。組織としてはまだ立ち上げ期ですが、事業機能としては明確に役割分担をしています。
第一に、自治体との窓口となり、プロジェクトの推進・マネジメントを行う営業機能。
第二に、LEDや太陽光パネルを設置する施工業者を審査・管理するサプライヤー管理機能。
第三に、事業を県民の皆様に認知していただくためのマーケティング機能。自治体の予算を使わないスキームですので、限られたリソースの中で効果的・効率的な広報戦略を立案・実行することが求められます。
第四に、県民や県内事業者からの問い合わせに対応するカスタマーサービス機能。そしてバックオフィス機能です。
現状は少数精鋭で運営していますが、事業拡大に伴い、各機能を強化するための人材採用を急いでいます。
―― 今後の展開について教えてください。
藤井氏:千葉県での事業は第一歩です。次年度以降の事業実現のために、いくつかの都道府県と話を進めています。千葉県での実績をもとに、全国に展開していく計画です。
LEDは入り口で、そこから高効率空調機、断熱窓、太陽光パネル、蓄電池、ソーラーカーポートなど、幅広い省エネ・創エネのアイテムへと広がっていきます。
―― 事業規模としてはどれくらいを目指されていますか?
藤井氏:自治体との協定型事業では、1県あたりの事業規模が数億円から10億円程度になる可能性があります。これを複数の都道府県で展開していけば、相応の事業規模になると考えています。
ただし、繰り返しになりますが、当社の収益は取引総額の一部を手数料としていただく形です。製品を売買しないため、在庫リスクやキャッシュフローリスクは限定的ですが、その分、収益率も異なります。
当面は事業基盤の確立と実績の積み上げを優先し、段階的に事業規模を拡大していく計画です。
求める人材像とカルチャー
―― どのような方が御社で働いていらっしゃるのでしょうか。
藤井氏:当社は立ち上げ期のベンチャー企業として、新しいビジネスモデルに挑戦していますので、変化を楽しみ、チャレンジ精神を持った人材が集まっています。
私自身、商社での経験を経て、エネルギー業界という新しい領域に挑戦してきました。その際に大切にしてきたことが二つあります。一つは「日本の社会課題解決に貢献する事業をする」、もう一つは「新しい領域に挑戦し続ける」ということです。
こうした価値観に共感し、自ら成長機会を求める方が、当社の文化にフィットすると考えています。
―― 年齢によって求めるものは変わりますか?
藤井氏:キャリアステージによって、仕事に求めるものは変化すると考えています。
若手の方には、自身のスキルアップやキャリア形成、そして経済的な成長を含めた総合的なチャレンジの場として、当社を活用していただければと思います。
一方、ミドル・シニア層の方には、より大きな社会的インパクトを創出することや、次世代により良い社会を残すことへの共感を期待しています。自身の経験を活かしながら、社会課題の解決に貢献したいという想いを持った方と、一緒に事業を推進していきたいと考えています。
―― 具体的な働き方について教えてください。
藤井氏:自治体への対峙の仕方、事業の引っ張り方、ステークホルダーの巻き込み方には、絶対にノウハウがあります。まずはそれを吸収・習得してもらうために、私と一緒に自治体に行き、私が話している内容や進め方を見てもらいます。
現在も、33歳の営業担当が私とともに自治体を訪問し、学んでいます。その上で、自分なりの色をつけていく。これも一つのチャレンジです。
積極的にチャレンジする限り、内容や意図をしっかり共有してくれる限り、どんどんやってもらって構いません。危ないと思ったら修正しますから。
読者へのメッセージ
―― 最後に、御社に共感してくださる方へメッセージをお願いします。
藤井氏:当社は現在7名という少数精鋭の組織ですが、目指しているのは全国規模での事業展開です。小さな組織から大きな社会的インパクトを創出していく過程に、やりがいや成長機会を感じていただける方と、ぜひ一緒に働きたいと考えています。
私たちが取り組んでいるのは、エネルギーという切り口から日本の持続性を高める事業です。50年後、100年後の次世代に、より良い環境を残すための仕事だと自負しています。
フェアで透明性のある事業運営、自助・共助の社会実現、そして地域の共通価値創出。こうした理念に共感していただける方、そして私たちと一緒に新しい価値を創造していただける方との出会いを、心よりお待ちしています。
企業情報
社名:ジェニュイン日本株式会社
代表取締役社長:藤井俊嗣
設立:2017年6月(2024年9月から実質的に事業開始)
事業内容:LED照明一括切り替え支援事業、環境機器の一括導入促進事業、脱炭素関連プラットフォーム事業
協定自治体:千葉県(2024年10月7日協定締結、https://value-share.jp/)
ウェブサイト:https://genuine-nippon.co.jp/
インタビュー協力
藤井俊嗣氏
代表取締役社長。25年間の商社勤務を経て、エネルギー業界に参入。自治体との協定型事業により、太陽光パネルと蓄電池の共同購入事業を全国に展開した経験を持つ。2024年9月、ジェニュイン日本株式会社として新たな事業をスタートさせ、千葉県とLED照明一括切り替え支援事業の協定を締結。「日本の社会課題解決に貢献する」という信念のもと、日本のエネルギー自給率向上と地域の持続性実現に向けた事業を展開している。