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グリーンリスキリングとは?GX人材育成のポイントや重要性を解説

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グリーンリスキリングとは?GX人材育成のポイントや重要性を解説

グリーンリスキリングについて、わかりやすく解説します。最近「働き方改革」の文脈で注目されているリスキリングですが、企業のESG対応進展などにともない需要が増えているGX人材を輩出するグリーンリスキリングは、特に注目されている分野です。本記事ではグリーンリスキリングの概要、目標、企業事例などを取り上げます。グリーンリスキリングによって、埋もれていた人材の活性化や、サステナビリティ対応の大幅な進展を実現できる可能性がありますので、ぜひ最後までチェックしてみてください。

INDEX

グリーンリスキリングの概要

グリーンリスキリングとは労働者の、環境課題などに関する新たなスキル習得です。グリーンリスキリングの概要について解説します。

リスキリングとは

リスキリング(reskilling)とは、新しい職業に就くため、または今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得することを言います。近年では特に、デジタル化によって生まれる新しい職業や、仕事の進め方が大幅に変わるであろう職業につくためのスキル習得を指すことが増えています。リスキリングは「学び直し」と翻訳されることもありますが、「これからも職業で価値を創出し続けるために必要なスキルを学ぶ」という点で、単なる学び直しとは区別されます。特にデジタル化が進展する現代においては、デジタル技術の力を使いながら価値を創造できるように能力やスキルを再開発するリスキリングが、DX時代の人材戦略であると言えます。

出典:経済産業省「リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮流」p6-7(2021/2/26)

GX人材とは

GX人材とは、脱炭素への取り組みに関する制度やルール・消費者や企業の意識・技術やプロダクトについての知見を備え、社内でGXを推進する(できる)人材のことを言います。世の中がカーボンニュートラルへ傾斜し多くの企業が対応を求められる中、GXの取り組みは外部パートナー頼みというケースも少なくありません。しかしスピード感を持って施策を実行しGXを企業成長へつなげるには、社内でGX人材を育成し、「GXが自社にどう関係するのかわからない」「CO2排出量削減に向けたアクションがわからない」「GX関連のビジネスをどうやって考えたらよいかわからない」などの課題に対応することが不可欠です。グリーンリスキリングとは、GX人材をリスキリングによって輩出することであり、これからの事業経営に欠くことのできない人材戦略と言えるでしょう。

出典:環境省「なぜ今、GX人材の育成が必要なのか?」p1

グリーンリスキリングの目標例

グリーンリスキリングには、いくつかの標準的な型があります。グリーンリスキリングで目指す目標の例について解説します。

GXリテラシー標準

カーボンニュートラル社会の実現と新たなグリーン市場創造を目指す官民協創の枠組み「GXリーグ」では、GX人材のガイドラインとして「GXスキル標準」を示しています。「GXスキル標準」は「GXリテラシー標準」と「GX推進スキル標準」で構成され、前者ではGXに関するリテラシーとして身につけるべき知識が、期待される学習項目例として定義されています。「GXリテラシー標準」は組織の中でGXに関わる全ての人材を対象としており、GXを理解し自分ごととして取り組むことが期待されます。具体的な学習項目としては、以下のようなものが挙げられます。

GXの背景自然環境の変化・国際社会の変化・ビジネス環境の変化
何をすべきか気候関連リスクや機会の把握・サプライチェーン排出量の算定・排出削減目標の設定と計画の策定・削減対策の実行・気候変動に関する情報開示・ビジネスモデルの変革
どうすべきか省エネの推進方法・再エネの調達方法・燃料や原料の転換、新素材・NETsの採用・排出量取引やクレジット・サステナブルファイナンス・国や自治体の政策取り組み事例
マインド・スタンスバックキャスト・変化への挑戦・コラボレーション・エンゲージメント・多角的思考・継続学習

出典:GXリーグ「GXスキル標準(GXSS)」p2,3,5,9(2024/5/14)

GX推進スキル標準

GXリーグの提唱する「GXスキル標準」のうち「GX推進スキル標準」は、その名の通りGXを推進する人材を対象としており、GX推進に必要な人材類型とロールの定義が示されています。GX推進スキル標準における人材類型は、以下のように4つ挙げられています。

人材類型ロール定義
GXアナリスト算定企業・組織の経済活動に伴う各種状況について、目的設定、方法設計、分析実施を行うことができる
GXストラテジスト削減計画・経営企画・事業企画環境指標と経済指標の両面を踏まえた計画の立案と承認を得ることができる
GXインベンター事業開発・商品開発・技術開発環境指標と経済指標の両面において大きく推進する重要なビジネスや技術を発見・開発することができる
GXコミュニケーターIR・広報・オペレーション・調達・営業・渉外各ステークホルダーとの対話と交渉を通じて、自社の計画の実現を推進することができる

GX推進スキル標準の明示によって、キャリアアップ、キャリアチェンジのひとつとして個人の選択肢が増えることなどが期待されます。

出典:GXリーグ「GXスキル標準(GXSS)」p2,3,54,55(2024/5/14)

脱炭素アドバイザー資格制度の認定資格

環境省ではGX人材に対するニーズの高まりを踏まえ、こうした人材の育成に資する民間資格制度について認定を行う枠組みである「脱炭素アドバイザー資格制度認定ガイドライン」を制定しています。現状以下5つの資格が、脱炭素アドバイザー資格制度として認定されています。

資格制度の名称運営事業者
銀行業務検定試験CBTサステナブル経営サポート株式会社 経済法令研究会
サステナビリティ検定「サステナビリティ・オフィサー」一般社団法人 金融財政事情研究会
炭素会計アドバイザー資格3級一般社団法人 炭素会計アドバイザー協会
GX検定 ベーシックスキルアップAI 株式会社
SDGs・ESG金融株式会社 銀行研修社

グリーンリスキリングは、必ずしも特定の資格取得を目指すものではありませんが、こうした資格制度の存在もリスキリングによるGX人材輩出にはプラスに作用するでしょう。

出典:環境省「脱炭素アドバイザー資格制度の認定資格の公表について」(2023/9/26)

グリーンリスキリングに関する企業事例

日本でも多くの企業でGX人材の輩出に注力しています。グリーンリスキリングに関する企業事例をご紹介します。

関西電力株式会社

関西電力株式会社(以下「関西電力」)では、エネルギー事業の知見をベースにしつつ、GX領域の知見も身に付けるリスキリングの機会を豊富に用意し、社内人材をGX人材として育成しています。関西電力は「脱炭素関連の探索的領域へのリソース配分が必要」「洋上風力発電事業の経験者・専門人材が希少」などの課題に関連して、社内の要員シフトにあたってのリスキリング機会の提供が必要と認識していました。そこで多様なキャリアやフィールドに自発的にチャレンジできる社内公募「e-チャレンジ制度」を活用し、従業員が高いモチベーションのもと、能力を最大限発揮できる環境を整備するとともに、事業間の要員シフトを後押ししました。今後は再エネ事業における人員拡大を見込む中で、魅力的な育成機会を提供するため、社内公募のアップデートも検討しています。

出典:経済産業省「GX関連企業における人材確保に関する取組事例集」p12-13(2025/3)

三菱重工株式会社

三菱重工株式会社は、2024年度から3カ年の中期経営計画で原子力事業を伸長事業と位置付けており、事業拡大に向けた人的リソースの拡充が必要な状況でした。そのため新規採用を大幅に増やしたものの、原子力事業のエンジニアの中で原子力専攻で学んできた学生は3割程度しかおらず、リスキリングが必要でした。そのため入社後、原子力プラントに係る幅広い知識を習得するため、独自の約50項目に及ぶ講座を整備し、新入社員に対しては約3か月をかけて一通りの対面講義を行い、各コマの終了時にはテストやアンケートを実施して理解や知識の定着を図っています。また講座はすべてeラーニングとして社内ポータルにて閲覧可能であり、社員であればいつでもアクセスできるようにしています。

出典:経済産業省「GX関連企業における人材確保に関する取組事例集」p26-27(2025/3)

岩谷産業株式会社

岩谷産業株式会社では、事業の拡大に伴い各分野の専門化が進む中で、時代に即した専門家集団となり続けることが至上命題となると認識していますが、現場の人材のみならず本社機能のスタッフや若手社員にも、脱炭素社会に貢献できる最低限の知識や新領域の開拓に繋がる能力を身に付けることが求められるという課題も感じていました。そこで脱炭素社会での事業拡大に必要な技術力・保安力や現場対応力を有する社員を育成することを目的に企業内大学「イワタニ技術・保安大学」を開設し、社員の参加を募っています。現在約100種類の講座が存在しており、動画視聴の講座のほかに、3か月に1度は外部の有識者を招いて、カーボンニュートラルに関する最新の知識や脱炭素社会とDXの関連性等についての講話も提供しています。

出典:経済産業省「GX関連企業における人材確保に関する取組事例集」p32-33(2025/3)

まとめ:グリーンリスキリングで、不足するGX人材を生み出す

DXやGXといった分野では、人材の不足が多くの企業にとって悩みの種です。キャリア採用で即戦力を補うことも考えられますが、そのような人材は労働市場でも希少なためうまく採用できなかったり、採用後に期待外れだった場合社内でつぶしがきかないというリスクもあります。そこで現在注目されているのが、グリーンリスキリングによるGX人材の育成です。従業員にとっても、GXという新しい切り口でキャリアアップの可能性が広がりますので、モチベーション高く取り組まれることが期待できます。

グリーンリスキリングで不足しがちなGX人材を生み出し、カーボンニュートラルという社会的要請に応えつつ成長戦略を同時に描ける企業を目指しましょう。

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