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Scope3のカテゴリ1とは?算定方法や取り組み事例も紹介

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Scope3のカテゴリ1とは?算定方法や取り組み事例も紹介

Scope3のカテゴリ1について、わかりやすく解説します。温室効果ガスのサプライチェーン排出量を算定することは、いまや企業にとって欠かすことのできない重要事項です。しかし自社からの排出量と違って、購買先や販売先での排出量を計算することは、なかなか容易ではありません。

中でもScope3カテゴリ1については対象が広範囲に及ぶことが多く、算定について頭を抱えている担当者も多いのではないでしょうか。本記事ではScope3カテゴリ1の概要、算定方法を解説し、カテゴリ1に関する先進的な取り組み事例をご紹介します。

目次

INDEX

1.Scope3のカテゴリ1とは

Scope3カテゴリ1は、温室効果ガスのサプライチェーン排出量の中でも特に重要なカテゴリです。Scope3カテゴリ1の概要を解説します。

Scope3とは

Scope1、2、3とは、製品の製造から廃棄までのサプライチェーン全体における温室効果ガス(GHG)排出量の分類で、GHGの排出量算定について定められた国際的な基準「GHGプロトコル」で示されています。各Scopeの概要は以下の通りです。

分類概要具体例
Scope1自社が直接排出するGHG加工のために石炭を燃焼してCO2を排出
Scope2自社が間接排出するGHG電力会社から供給される電気が石炭火力発電でCO2を排出
Scope3原材料仕入れや販売後に排出されるGHG調達した原材料の製造過程や、販売した製品の使用でCO2を排出

このように製品のサプライチェーンにおける「上流」「下流」にあたる場面で排出されるGHGがScope3とされています。

alt属性:Scope1・2・3

出典:資源エネルギー庁『知っておきたいサステナビリティの基礎用語~サプライチェーンの排出量のものさし「スコープ1・2・3」とは』(2023/9/25)

Scope3のカテゴリ1とは

Scope3には、細かい15のカテゴリが含まれます。具体的には以下の通りです。

カテゴリ1購入した製品・サービス原材料など
カテゴリ2資本財生産設備など
カテゴリ3Scope1,2に含まれないエネルギー活動発電燃料の採掘など
カテゴリ4輸送・配送(上流)調達物流など
カテゴリ5事業から出る廃棄物廃棄物の輸送委託など
カテゴリ6出張従業員の出張
カテゴリ7雇用者の通勤従業員の通勤
カテゴリ8リース資産(上流)リース資産の稼働
カテゴリ9輸送・配送(下流)小売店での販売など
カテゴリ10販売した製品の加工中間製品の加工
カテゴリ11販売した製品の使用使用者による製品使用
カテゴリ12販売した製品の廃棄使用者による製品の廃棄など
カテゴリ13リース資産(下流)他社に賃貸しているリース資産の稼働
カテゴリ14フランチャイズ自社が主宰するフランチャイズ加盟社の活動
カテゴリ15投資株式投資など

このようにScope3の分類は多岐にわたりますが、その中でカテゴリ1は「購入したサービス・製品」と定義され、具体的には原材料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達などの活動が含まれます。

出典:資源エネルギー庁『知っておきたいサステナビリティの基礎用語~サプライチェーンの排出量のものさし「スコープ1・2・3」とは』(2023/9/25)

Scope3のカテゴリ1が注目される理由

Scope3のGHG排出量を算定することによって、自社のみならずサプライチェーン全体での排出量削減に向けた取り組みが期待されます。特にカテゴリ1は原材料の調達先に対して軽量化やコンパクト化を求めるなどによって製品価値の向上にもつながるため、導入しやすい削減対策が見いだせる可能性が高いと考えられています。

たとえば食品メーカーが包装材メーカーに対して、包装用トレーの軽量化を要請したケースなどがこれに当たります。このようにGHG排出量をサプライチェーン全体でとらえることで排出削減に関わる事業者が増え、CO2削減方法の選択肢を拡大することができます。

またサプライチェーン排出量の開示を求める動向は国際的に拡大しており、Scope3カテゴリ1をはじめとするサプライチェーン排出量の算定と削減は、ESG投資の呼び込みなど事業者の資金調達でも重要性を増しています。

出典:環境省『サプライチェーン排出量の算定と削減に向けて』p16,20,25,27,28(2023/3/1)

2.Scope3カテゴリ1の算定方法

Scope3カテゴリ1の排出量算定には、いくつかの方法があります。Scope3カテゴリ1の算定方法について解説します。

積み上げ方式(一次データ活用)

積み上げ方式とは、排出量を算定する自社が購入・取得した製品またはサービスに係る資源採取段階から製造段階までの排出量をサプライヤーごとに把握し、積み上げて算定する方法です。数式で表すと、「CO2 排出量=Σ{(サプライヤーごとの排出量※)}」となります。 

積み上げ方式ではサプライヤーごとに把握された排出量(一次データ)を積み上げるため、高い算定精度が期待できます。一方でサプライヤーが排出量データを把握できない場合や、サプライヤーからデータを入手できない場合は、算定が困難になるというデメリットもあります。

出典:環境省・経済産業省『サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン (ver.2.7)』pⅡ-8,9(2025/3)

排出原単位方式(二次データ活用)

排出原単位方式とは、排出量を算定する自社が購入・取得した製品またはサービスの物量または金額データに、製品またはサービスごとの資源採取段階から製造段階までの排出原単位(二次データ)を乗じて算定する方法です。

数式で表すと「CO2 排出量=Σ{(自社が購入・取得した製品またはサービスの物量または金額データ)×(排出原単位)}」となります。二次データは「排出原単位データベース」などによって入手できますので、自社が購入・取得した製品またはサービスの物量または金額データがあれば、サプライヤーからデータを取得する必要はなく、比較的容易に排出量を算定できる点が排出原単位方式の特徴です。

一方で自社にて把握している物量・金額データの分類区分と、使用する排出原単位の区分が適合していない場合は、算定精度が低くなってしまいます。算定に物量データと金額データのどちらを用いるかについては、物量データの方が算定精度の観点からは望ましいとされています。

出典:環境省・経済産業省「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン (ver.2.7)』pⅡ-8,9,10(2025/3)

Scope3カテゴリ1算定におけるよくある質問

・排出原単位方式で、排出原単位データベースの中に該当する品目が見つからない場合はどうするのか

日本標準商品分類等を参考に、排出原単位が存在する当該活動が含まれる上位項目を特定し、その上位項目の排出原単位を使用することができます(例:「液晶テレビ」は該当なし→「ラジオ・テレビ受信機」の排出原単位を適用)。

・カテゴリ1は「購入した製品・サービス」だが、具体的にどのような製品・サービスが対象なのか

「購入した製品」は、算定事業者の営利活動に関連した物品(メーカー等が製品製造にあたり調達する原材料等、卸売業者や小売業者が仕入れる最終製品等)のほか、事務用品、ユニフォーム、社員食堂用の食材等も該当します。

「購入したサービス」は、クリーニング、修理・修繕、外部のレンタルサーバー利用などが該当します。ただし、他のカテゴリに含まれるものは対象から除外します。

・カテゴリ1とカテゴリ2(資本財)のいずれに該当するか迷った場合はどうするのか

算定事業者の会計上の取り扱いに準じて、固定資産に位置付けられるものをカテゴリ2、その他の購入製品をカテゴリ1に計上します。

出典:環境省『サプライチェーン排出量算定におけるよくある質問と回答集』p24,25,27(2023/3)

3.Scope3カテゴリ1への先進的な取り組み事例

Scope3カテゴリ1は、サプライヤーとの対話などに活用できます。企業における先進的な取り組み事例をご紹介します。

高砂香料工業株式会社

化学業界のBtoB企業である高砂香料工業株式会社(以下「高砂香料工業」)では、グループ全体のGHG排出量においてScope3カテゴリ1の原料調達に関わるものが非常に大きな割合を占めていたため、原料調達に関してはさらに細かく企業・原料レベルで排出源を分析し、削減施策を検討しました。

たとえば石油化学由来原料から植物由来への転換、消費原料や原料品目数の見直しなどが挙げられます。高砂香料工業では、たとえ削減効果が小さくても初期段階で成果を挙げることを重視し、クイックウィン施策から先行着手する形でロードマップに落とし込んでいます。

出典:環境省『SBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブック』p133(2023/3)

株式会社アシックス

スポーツ用品大手の株式会社アシックス(以下「アシックス」)では、GHG排出の多くをScope3カテゴリ1が占めており、排出を削減するためにはサプライヤーの協力が不可欠です。そこでアシックスはサプライヤーとの取引要件に、排出削減の取組を導入していくことにしました。

具体的には「再生可能エネルギーの明確な導入計画がある」「排出削減目標(1.5度目標)を設定し、開示している」「石炭を燃料として使用する設備を新規導入しない」「国際サステナビリティ団体Sustainable Apparel Coalition(SAC)による環境自己評価ツールHigg FEMを導入している」「継続して省エネに取り組んでいる」という5項目を求めています。

出典:環境省『SBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブック』p139(2023/3)

塩野義製薬株式会社

塩野義製薬株式会社(以下「塩野義製薬」)では、原材料調達や医薬品製造委託などによって、同社のGHG排出量のうち約65%をScope3カテゴリ1が占めています。製薬業界ではサプライヤーの専門性が高いため、サプライチェーンの変更が難しいと言われています。

そこで塩野義製薬では、将来にわたって取引が見込まれるサプライヤーとのエンゲージメントによる排出削減活動に取り組んでいます。多くのサプライヤーに対して効果的にエンゲージメントしていくために、サプライヤーの状況確認、サプライヤー説明会、重要サプライヤーとの個別交渉(排出削減依頼、個別支援)というプロセスを毎年実施する計画となっています。

出典:環境省『SBT等の達成に向けたGHG排出削減計画策定ガイドブック』p141(2023/3)

4.まとめ:Scope3カテゴリ1の算定を通じサプライチェーン排出量の削減を実現

Scope3カテゴリ1は、多くの企業にとってサプライチェーン排出量の大きな割合を占めるカテゴリとなっています。そのためScope3カテゴリ1の算定は、サプライチェーン排出量削減の第一歩と言えるでしょう。

算定にあたっては排出原単位方式を用いるのが一般的ですが、一次データ積み上げ方式によってより精度の高い算定とすることができます。サプライヤーからのデータ収集は手間や困難を伴うこともありますが、サプライヤーエンゲージメントの良いきっかけにもなります。

Scope3カテゴリ1の算定を通じて、サプライチェーン排出量の削減を実現していきましょう。

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