気候変動の未来予測や対策について、わかりやすく解説します。近年の気候変動は温室効果ガスによる地球温暖化の影響でもたらされているとみられ、世界中で異常気象による災害が増加しています。
これは決して一時的な現象ではなく、このまま放置しておけば地球の未来には大きな危機が待ち構えていることとなります。本記事では気候変動の概要や影響、気候変動がもたらす未来についての予測、世界中で求められる気候変動対策について取り上げます。
気候変動とは何か:温暖化のメカニズムとその影響
気候変動とは、長期的な気象状態の変化のことを言います。気候変動の概要とその影響について解説します。
気候変動のメカニズム
気候変動とは、数十年間単位で気象の平均が変化していくことを言います。たとえば雨量の変化や気温の上昇などは、気候変動の一例です。そして近年問題となっている気候変動が、地球温暖化です。
地球の大気に含まれる二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素などは、地球から宇宙へ熱が逃げることを妨げて地球を暖める「温室効果」があります。しかし19世紀以降人間が、石炭、石油、天然ガスといった化石燃料を燃やしたり森林を伐採していることが原因で温室効果が増大し、地球温暖化が進んでいます。
出典:IPCC「気候変動 2021:みんなのためのサマリー」p3,6(2021/8)
気候変動による影響
近年の地球温暖化は、地球表面の平均気温上昇、降雨量の増加、動植物の生息域の移動、雪氷や凍土の融解、海面水位の上昇、海水の酸性化などを引き起こしています。こうした現象は、熱波、大雨、干ばつ、熱帯低気圧などの異常気象という形で世界中で発生し、農業や居住環境など人間社会へも深刻な悪影響をおよぼします。
たとえば極端な高温と干ばつは、穀物の不作、家畜の死、林野火災などのリスクを増加させます。また海面上昇と暴風雨は、高潮や沿岸浸水の被害を増大させます。このように複合的な極端現象は、それぞれが個別に発生したケースと比較して、さらに甚大な被害をもたらします。
出典:IPCC「気候変動 2021:みんなのためのサマリー」p4,5,8(2021/8)
出典:IPCC「AR6 政策決定者向け要約」p8(2022/12/22)
気候変動がもたらす食糧・健康・水資源への影響
温暖化による気候変動は、将来の地球にどのような影響をおよぼすのでしょうか。気候変動がもたらす未来予測について解説します。
食糧危機の可能性
地球温暖化は農林水産分野でもさまざまな影響をおよぼし、食料危機をもたらす可能性があります。たとえば水稲においては、記録的な高気温の影響によって収穫量が大きく低下した事例が観測されています。
また暖冬や春以降の高気温で病害虫が大量発生すると、果実の食害や早期落果につながります。高気温は乳用牛の日射熱病、採卵鶏の熱死や規格外卵の増加の原因にもなります。さらに温暖化でもたらされる暴風雨は、作物の品質低下や収穫量減少を引き起こします。
そのうえ海水温の上昇は海の生態系をも変えてしまい、漁獲量や養殖水産物の出荷量低下といった事象を引き起こします。このように気候変動による食糧危機のリスクは、既に現実化しつつあるのです。
出典:農林水産省「農林水産分野における気候変動への適応に関する取組」p4(2025/2)
健康被害の拡大
地球温暖化による気温の上昇は、熱中症の増加という人体への直接的な悪影響をもたらします。また気温上昇に伴う暴風雨や洪水の発生によって多くの死傷者が出るケースも、世界各地で増えています。
さらに地球温暖化は、感染症の増加にもつながると言われています。これは蚊など感染症の媒介生物が気温や降雨量の変化によって大量発生することにより、マラリアなどへの罹患率が高まることによります。
そのほかにも、気温上昇による暑熱ストレスなども指摘されています。このように地球温暖化による気候変動は、人類の健康被害を拡大させる可能性があります。
出典:環境省「地球温暖化と感染症」p2,5,6,7,8,9(2007/3/8)
水資源の不安定化
地球温暖化による気候変動は、大雨や干ばつといった異常気象を発生させ、利用可能な水の量に大きな影響をおよぼします。また気候変動にともなう水温の上昇は、水中の生態系を変化させ、水質の低下を招くという指摘もあります。
さらに気候変動による海面の上昇によって、陸上における地下水の塩水化や塩水の河川遡上なども懸念されます。このようなことから、乾燥亜熱帯地域において再生可能な地表水及び地下水資源が著しく減少することや、水不足を経験する人の増加が、気候変動の結果として予想されています。
世界各地では水資源配分、水質汚濁、水の所有権、水資源開発などの問題を巡って多くの「水紛争」が起きており、気候変動が地域の紛争につながる可能性も否定できません。
企業に求められる気候変動対策
気候変動対策には、いくつかのアプローチ方法が存在します。今後私たちが求められる気候変動対策について解説します。
気候変動の「緩和策」
地球温暖化の原因である温室効果ガスの排出を減らし、気候変動の原因をできるだけ抑えることを「緩和」と言います。緩和策として、以下のような例が挙げられます。
・節電など省エネルギーを推進する
・再生可能エネルギーを活用する
・CO2を吸収する森林を保全し増加させる
よく耳にする「脱炭素」や「カーボンニュートラル」という取り組みは、この「緩和」に向けた行動です。緩和策は世界各国で進められており、日本でも2013年度をピークに温室効果ガスの排出量は減少傾向に転じています。
出典:国立研究開発法人国立環境研究所「気候変動影響と対策 2-2 緩和」
気候変動への「適応策」
気候変動対策として「緩和」との両輪に位置づけられるのが「適応」です。適応とは、気候変動の影響に対処し、被害を少なくする対策のことを言います。適応策としては、以下のような例が挙げられます。
個人による緩和
・こまめな水分補給やエアコンの適切な使用による熱中症予防
・ハザードマップ確認による避難経路確認
・雨水貯留槽など治水設備の整備
事業者による緩和
・農作物における高温耐性品種への転換
・災害に対する事業継続計画(BCP)の策定
・漁業分野における養殖の水温管理
地球温暖化は今なお進んでおり、緩和だけでは対処できないと考えられています。そのため緩和策と同時に適応策も取ることで、気候変動がある程度進んだ場合でもその影響や被害を最小限に抑えることが必要です。
出典:国立研究開発法人国立環境研究所「気候変動影響と対策 2-3 適応」
気候変動に対する国際協調
地球規模で起きている温暖化やそれに伴う気候変動に対応するには、世界各国が力を合わせることが極めて重要です。1992年に国連の下「気候変動に関する国際連合枠組条約」が採択され、世界全体で地球温暖化対策に取り組んでいくことが決定し、同条約に基づき1995年から毎年、気候変動枠組条約締約国会議(Conference of the Parties; COP)が開催されています。
特に2015年にフランス・パリで開催されたCOP21においては、気候変動に関する国際枠組みである「パリ協定」が採択され、世界共通目標である2℃目標の設定や、すべての国による削減目標の5年ごとの提出・更新などが盛り込まれました。パリ協定の目標を達成するには、あらゆる分野で国際的な協力や支援が求められます。
また近年では企業、自治体、都市、市民など、国以外の主体の自発的な活動が活性化しており、気候変動対策においても政府間だけではなく、民間同士の国際協力も必要な時代になっています。
出典:環境省「気候変動の国際交渉|世界中で何が起こっているの? ~地球温暖化対策の国際交渉の概況~」
出典:財務省「気候変動に関する国際協調-国際関係論の視点から」p11,15,16(2023/8/22)
まとめ:未来の気候変動激化への確実な対策を
地球温暖化にともなう気候変動は着実に進行しており、私たちは来るべき未来に備えて「緩和」「適応」両面から手を打つ必要に迫られています。気候変動によりもたらされる食糧・健康・水資源などへの悪影響は、悲観的なシナリオを想像させるものです。
しかしパリ協定をはじめとする気候変動対策への国際協調の動きは、私たちを勇気づけ、明るい未来への道筋を示しています。気候変動対策には、個人や事業者の単位でも取り組むことができることがたくさんあります。
未来の気候変動激化に備え、確実な対策を進めましょう。
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