固定価格買取制度(改正FIT法)とは?改正理由や変更点を解説
- 2022年06月15日
- 発電・エネルギー
再生可能エネルギーの普及を目的とし2012年7月1日に施行した固定価格買取制度(FIT法)ですが、国民の費用負担が大きくなるなどの問題が明るみになり、2017年4月に改正されました。
この記事では固定価格買取制度(改正FIT法)に関して、法人の皆さまが知っておくべき基礎知識についてご紹介します。
目次
- 固定価格買取制度(改正FIT法)の基礎知識
- 固定価格買取制度が改正された理由
- 固定価格買取制度改正での変更点
- まとめ
1. 固定価格買取制度(改正FIT法)の基礎知識
2017年4月に施行した固定価格買取制度(FIT法)ですが、増大した国民負担などの問題点を解消するために、2017年4月に改正され、固定価格買取制度(改正FIT法)が誕生しました。
この記事では、そもそも固定価格買取制度(FIT法)とはどのような制度なのかや、2021年現在の太陽光発電の買取料金、申請方法についてご紹介します。
そもそも固定価格買取制度(FIT法)とは?
2012年7月に施行された固定価格買取制度(FIT法)は、再生可能なエネルギー源を用いて発電した電気を、電気事業者が一定の期間買い取ることを義務づけた制度です。
固定価格買取制度(FIT法)は、資源が尽きず、かつCO2を排出せず環境に優しい再生可能なエネルギーの普及を促進させる目的で生まれました。
再生可能なエネルギー源には次のようなものがあります。
▪太陽光
太陽の光を太陽光パネルにあてることで電気を発生させます。
▪風力
風車が風で回転するエネルギーにより電気を発生させます。
▪地熱
地下からくみあげた蒸気や熱水でタービンを回すことで、電気を発生させます。
▪水力発電
水を高いところから落下させ、その力で水車を回し、電気を発生させます。
▪バイオマス
動物の糞尿や食品廃棄物など生物資源を燃焼したりガス化することでタービンを回し、電気を発生させます。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁『なっとく!再生可能エネルギー』
買取料金はどれくらい?
ここでは政府が推奨している5つの再生可能エネルギーの中で、企業が最も導入しやすい太陽光発電の買取料金をご紹介します。
認定NPO法人環境エネルギー政策研究所が公表したデータによると、日本における太陽光発電は、2018年に6.5%であったのに対し、2019年は7.4%に増加しています。
買取価格については、電気事業者が自由に決めることはできず、国が一律で定めています。
2021年1月に経済産業省調達価格等算定委員会は、令和3年度以降の太陽光買取価格の委員長案を次のように発表しています。
▪10kW未満
2021年度19円/kWh(税込)
2022年度17円/kWh(税込)
▪10~50kW
2021年度12円/kWh (税別)
2022年度11円/kWh (税別)
出典:経済産業省『令和3年度以降(2021年度以降)の調達価格等についての委員長案』
申請方法
太陽光発電による電力を買い取ってもらうために必要となるのが、経済産業局に対する申請です。電力の規模により申請方法が異なる点にご注意ください。
50kW未満の売却を希望する場合は、web上で申請が完了します。経済産業省資源エネルギー庁の専用サイトに、必要書類のデータを送信し、認定を待ちます。経済産業省は、認定までにかかる期間の目安を3ヶ月としています。
50kW以上の太陽光発電の売却を希望する場合は、入札区分となるため、経済産業局と指定入札機関である一般社団法人低炭素投資促進機構の両方に必要書類を郵送しなければなりません。
出典:環境省資源エネルギー庁『2020年度中のFIT認定の申請にかかる期限日について』(2020/6/17)
2. 固定価格買取制度が改正された理由
なぜ固定価格買取制度は改正されたのか?2012年7月に施行した固定価格買取制度(FIT法)は、2017年4月に改正されました。
固定価格買取制度(FIT法)が改正された理由は、増えてしまった国民負担を軽減し、太陽光発電導入の偏りを解消するためです。
ここでは固定価格買取制度(FIT法)が改正された2つの理由についてご紹介します。
国民負担の軽減
固定価格買取制度(FIT法)は、再生可能エネルギーを電力会社が一定期間定められた料金で買い取ることを義務づけたものです。
買い取りにかかる費用は、私達国民が毎月の電気料金に「再エネ賦課金」を上乗せする形で負担しています。
新電力ネットが公表しているデータによると、電気使用量が5,000kWh/月の企業が負担する再エネ賦課金は次のように推移しています。
出典:新電力ネット『再生可能エネルギー発電促進賦課金の推移|RENEWABLE』よりアスエネが作成
再生可能エネルギーの買い取り件数が増えたことにより、賦課金も増えています。それは国民の負担が増えたことも意味しています。
太陽光発電導入の偏りの解消
固定価格買取制度(FIT法)は、もともと5種類の再生可能エネルギーの普及の促進を目的に施行されましたが、太陽光に偏るという現象が起きました。
資源エネルギー庁が公表したデータによると、2016年6月末時点で太陽光が導入量と認定量ともに全体の約9割を占める結果になりました。
太陽光発電導入の偏りを解消することも固定価格買取制度(FIT法)が改正された理由の1つです。
出典:資源エネルギー庁『H28年11月 電源種別(太陽光・風力)のコスト動向等について』
3. 固定価格買取制度の改正での変更点
固定価格買取制度(FIT法)が改正されたことで、どのような変化があったのでしょうか?ここでは、FIT法改正で生じた変更点についてご紹介します。
認定制度の変更
固定価格買取制度(FIT法)の改正に伴い、認定基準に新たに9つの基準が加わっています。
- 適切な点検・保守を行い、発電量の維持に努めること。
- 定期的な費用・発電量等の報告をすること。
- 系統安定化について適切に発電事業を行うこと。
- 設備の更新または廃棄の際に、不要になった設備を適切に処分すること。
- 電力会社と接続契約を締結していること。
- 土地利用に関する法令を遵守すること。
- 適切な期間内に運用を開始すること。
- 発電設備の安全性に関する法令を遵守すること。
- 設備の設置場所において事業内容等を記載した標識を掲示すること。
このように認定基準を追加し、審査を厳しくした背景には、FIT法の時に大量に発生してしまった設備の未稼働率を下げたいとの目的があります。資源エネルギー庁は2016年5月に、未稼働の太陽光案件が31万件あると公表しています。
出典:資源エネルギー庁『改正FIT法による制度改正について』
買取先の変更
固定価格買取制度(FIT法)が改正される前は、電気の買い取りは小売電気事業者が行っていましたが、改正後は送配電事業者に一本化されています。
出典:資源エネルギー庁『改正FIT法による制度改正について』
買取価格の決定方法の変更
これまでは1年ごとに買取価格の検討が行われてきましたが、毎年買取価格が変わると事業の見通しが立てにくいとの問題を解消するために、太陽光発電をのぞいて、他の再生可能エネルギーは数年単位で固定されることになりました。
4. まとめ
この記事では、法人の皆さまが知っておくべき固定価格買取制度(改正FIT法)についてお伝えしました。
固定価格買取制度(FIT法)が改正されたことで、認定制度や買取先、買取価格の決定方法が大きく変わりました。
太陽光発電を含め、再生可能エネルギーへの取り組みをご検討されている法人の皆さまは、今回ご紹介した内容をぜひ参考にされてください!