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CO2削減が期待されるアンモニア混焼とは?わかりやすく解説!

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CO2削減が期待されるアンモニア混焼とは?わかりやすく解説!

アンモニア混焼という言葉をご存知でしょうか。石炭にアンモニアを混ぜて火力発電所などで燃焼させることです。このアンモニア混焼が注目を浴びています。その理由はCO2発生量を劇的に減少させることができるからです。

今回は、アンモニアとはどのような物質なのか、アンモニアが注目を集めている理由は何なのか、アンモニア活用の現状やアンモニア混焼の今後の課題、中小企業にもたらされるビジネスチャンスなどについてまとめます。

INDEX

期待される新エネルギー源、アンモニアとは?

(1)アンモニアの基礎知識

アンモニアは窒素と水素の化合物で、常温・常圧の状態では無色透明、刺激臭のある気体です。アンモニアは圧力を加えたり、冷却されたりすると容易に液化し、液化アンモニア(液安)となります。

用途割合

出典:資源エネルギー庁『アンモニアが“燃料”になる?!(前編)~身近だけど実は知らないアンモニアの利用先』(2021/1/15)

アンモニアから精製される物質は尿素やりん安(リン酸アンモニウム)、硝安(硝酸アンモニウム)などがあり、アンモニア生成物の8割以上が肥料用として消費され、残りはメラミン樹脂や合成繊維のナイロンの原料となります。

液化しやすく、安全な輸送方法が確立しているアンモニアは、パイプラインやタンクローリー、タンカーなどで運ばれます。

(2)アンモニアの需給状況

2019年の世界のアンモニア生産量はおよそ2億トンです。地域別では東アジアやユーラシア大陸、北米が多く、国別では中国、ロシア、アメリカ、インドが多いです。これらの国々に共通するのは、アンモニア生産に欠かせない石油や石炭、天然ガスといった化石燃料が豊富な国々です。消費量と利用料の円グラフ

出典:資源エネルギー庁『アンモニアが“燃料”になる?!(前編)~身近だけど実は知らないアンモニアの利用先』(2021/1/15)

日本のアンモニア消費は108万トンで、8割近くを国内で生産し、残りの2割をインドネシアやマレーシアから輸入しています。

アンモニアの市場価格は原油価格と相関性を持つとされます。その理由は、アンモニアが石油など化石燃料から生成されるからです。

出典:資源エネルギー庁『エネルギー白書2021』

アンモニア混焼が注目を浴びる理由

(1)CO2を削減できる

2020年10月、当時の菅総理大臣は「我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言しました。

カーボンニュートラルを達成するには、部門別で最も多くのCO2を排出している電力分野、中でも火力発電のCO2排出量を削減しなければなりません。

そこで注目されたのがアンモニアと石炭を混ぜて燃焼させるアンモニア混焼技術でした。アンモニアを20%混焼した場合、国内で削減できるCO2排出量は約4,000万トン。50%なら約1億トン、アンモニアだけで発電した場合は、2億トンものCO2が削減できます。

出典:首相官邸『令和2年10月26日 第二百三回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説』(2020/10/26)

出典:資源エネルギー庁『「カーボンニュートラル」って何ですか?(後編)~なぜ日本は実現を目指しているの?』(2021/3/16)

(2)水素を運ぶ「キャリア」になる

アンモニアが注目される2つ目の理由は水素を運ぶ「キャリア」としてアンモニアが利用できることです。アンモニアの化学式はNH3で水素を含みます。そのアンモニアを分解すると水素を得ることができます。

現在、アンモニアとともにカーボンフリーのエネルギー源として注目されているのが水素です。しかし、水素はアンモニアと比べ輸送技術が確立していません。

そのため、輸送技術が確立されてているアンモニアを水素の運び屋として利用し、利用する場所で水素を取り出すことが考えられています。

出典:資源エネルギー庁『アンモニアが“燃料”になる?!(前編)~身近だけど実は知らないアンモニアの利用先』(2021/1/15)

アンモニア活用の現状

(1)アンモニアの活用状況

肥料以外のアンモニア利用の研究の中で、最も技術開発が進んでいるのが火力発電所での混焼です。アンモニアの混焼は既存の設備を大きく変えることなく実行できるので、コスト面でも実現しやすいというメリットがあります。

2018年段階で32%を占める石炭火力発電において、アンモニアの混焼が進めばCO2の排出削減を効果的に進めることができます。混焼からアンモニアだけを燃焼させる専焼へと移行すれば、それだけカーボンニュートラル達成の可能性が高まります。

出典 資源エネルギー庁『本のエネルギー 2021年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」』

(2)大規模実証実験の開始

2021年10月6日、株式会社JERAと株式会社IHIが愛媛県で大規模なアンモニア混焼実験を開始したことを発表しました。

これまで、燃料アンモニアの混焼は比較的小規模な試験炉で行われてきました。しかし、実用化するためにはより大きな施設での大規模な実証実験が欠かせません。この実験結果を踏まえ、2024年度には大規模なアンモニア混焼を実施したいと考えています。

出典:IHI『碧南火力発電所5号機における燃料アンモニアの小規模利用の開始について』(2021/10/6)

アンモニア混焼の大規模実験が順調に推移すれば、いずれ、アンモニア専焼の火力発電所も登場し、よりCO2が削減できるかもしれません。

アンモニア混焼の課題

(1)燃料アンモニア製造過程で発生するCO2

カーボンフリーのエネルギー資源として注目されるアンモニア。しかし、実用化やCO2の排出削減ではまだまだ課題が多いのが現状です。課題の一つが製造過程で発生するCO2です

現在、アンモニアの原材料として用いられている水素は天然ガスなど化石燃料由来のものを多く含んでいます。そうなると、燃焼でCO2が発生しなくても、製造でCO2が発生しているので、厳密な意味でカーボンフリーなエネルギー資源ではありません。

そこで、アンモニアの原料となる水素を、太陽光発電と自ら作り出そうという取り組みが検討されています。福島再生可能エネルギー研究所では、再エネ由来の電力でつくった水素でアンモニアを合成しようと実験を進めています。

再エネ由来でのアンモニア製造方法イメージ

出典:資源エネルギー庁『アンモニアが“燃料”になる?!(後編)~カーボンフリーのアンモニア火力発電』(2021/1/29)

(2)サプライチェーンの脆弱性

アンモニアはCO2削減に大きく貢献する可能性があることがわかってきました。しかし、現在、世界で生産されているアンモニアの8割が肥料用です。そのため、燃料用に割くことができるアンモニアはまだ少ないのです

もし、この状態でアンモニアの燃料使用が加速すれば、アンモニアが高騰してしまい、十分な供給を受けられなくなるかもしれません。アンモニアの利用研究と同時並行で、アンモニアの安定供給を図る必要があるのです

そのために、政府は燃料アンモニア導入官民協議会を創設。大手商社の三菱商事や丸紅、輸送を担う日本郵船、火力発電所の技術を持つJERAやIHI、そして資源エネルギー庁などでアンモニアのサプライチェーン構築を協議し始めました。

出典:資源エネルギー庁『アンモニアが“燃料”になる?!(前編)~身近だけど実は知らないアンモニアの利用先』(2021/1/15)

出典:資源エネルギー庁『アンモニアが“燃料”になる?!(後編)~カーボンフリーのアンモニア火力発電』(2021/1/29)

まとめ:アンモニア関連事業は中小企業にとって新たなビジネスチャンス!

菅前総理のカーボンニュートラル宣言以降、日本政府によるCO2削減の動きは加速しつつあります。その動きの一つがアンモニア混焼の推進です。アンモニア混焼の推進は従来と異なった新たなビジネスチャンスを生み出すと考えられます。

クリーンエネルギーを使ったアンモニアの製造や輸送、副産物である水素の活用、燃料電池の生産など中小企業が参入できる余地はまだまだあります。中小企業にとって長期的な展望にもとづき、将来に向かって投資することは極めて重要なのではないでしょうか。

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