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GHG削減目標とは?その意味や取り組みを解説

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GHG削減目標とは?その意味や取り組みを解説

気候変動が深刻化する中、GHG削減目標の達成は日本企業にとって避けられない課題です。本記事では、GHG削減目標の基本から具体的な取り組みまでを分かりやすく解説します。GHG削減目標の達成により、企業は地球環境の保全に貢献し持続可能なビジネスを展開することができます。さらに、GHG削減は企業のリスク管理やレピュテーション向上にも寄与し、長期的な競争力を強化します。この記事をご覧いただければ、持続可能な未来に向けた行動が見えてきます!

INDEX

GHG(温室効果ガス)とは?その影響と基本情報

GHGの増加は、地球温暖化を引き起こしさまざまな環境問題を引き起こします。ここでは、GHGの基本情報とその影響についてご紹介します。

GHG(温室効果ガス)とは

GHG(温室効果ガス)とは、地球の表面から放出される熱を吸収し地表の温度を保持する性質を持つガスです。これらのガスの増加は、地球温暖化の主な原因とされています。日本のGHG排出の90%以上は、炭素を含む物質を燃焼させる際に発生する二酸化炭素によるものです。産業革命以降、技術の進歩とともに発電や移動のために化石燃料が頻繁に使われるようになり、この生活スタイルの変化が地球温暖化に寄与しています。また、二酸化炭素以外にも、代替フロンと呼ばれる物質もGHGの一種として知られています。

出典:環境省『こどもも、おとなも みんなつかえる!こども環境白書』p,4.(2019/01/28)

GHG(温室効果ガス)が及ぼす影響

20世紀以降の化石燃料使用の増加により、CO2排出量と大気中のCO2濃度が上昇しています。その影響で、2024年の日本の平均気温は1991〜2020年の平均値より1.48度高く観測史上最高を記録しました。特に1990年以降、日本の平均気温は徐々に上昇し暑い日が増えています。そして、世界では気候変動の影響で多様な気象災害が発生しています。記録的な高温、多数の山火事、大雨による洪水などが続いており、西アフリカの猛暑、南アメリカの干ばつ、中央ヨーロッパの豪雨、北アメリカと南アジアを襲った熱帯暴風雨、ロサンゼルスの山火事などがその例です。2024年は気温だけでなく海面温度も最高値を記録し、大気中の水分量も記録的なレベルに達しました。これらの上昇が地球温暖化の加速を示している可能性があると懸念されています。

出典:経済産業省『気候変動対策の現状と今後の課題について』p,8.9.(2024/06/27)

出典: BBCニュース『2024年世界の平均気温 抑制目標の「1.5度」初めて超える 』(2025/01/10)

GHG削減目標とは?パリ協定とRE100の目標を解説

GHG削減目標を設定する場合、「SBT」や「RE100」などのイニシアチブをもとに取り組むと有効的です。ここでは、この2つのイニシアチブについてご紹介します。

パリ協定の目標達成を目指す「SBT」

SBT(Science Based Targets)とは、パリ協定が求める水準と整合した企業のGHG排出削減目標のことです。これらの目標は、パリ協定の目標達成を目指した削減シナリオに基づいて設定され、実行されることが求められます。そして、SBTは以下のような特徴を持つ国際的なイニシアチブによって支えられています。

・運営機関:CDP、UNGC、WRI、WWFの4つの機関が共同で運営

・目標設定:パリ協定と整合した企業の削減目標を設定

・対象企業:大企業および中小企業が対象で、これらの企業にはそれぞれの異なる      目標設定アプローチがある

出典:環境省『中⻑期排出削減⽬標等設定マニュアル』p,5.6.(2023/03/09)

自社の使用電力を100%再エネ利用「RE100」

RE100は、企業が自らの事業において使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアチブです。

・運営機関:CDPとパートナーシップを結んだThe Climate Groupが運営

・対象企業:「影響力がある」企業が対象

なお、日本独自のイニシアチブとして「再エネ100宣言RE Action」が存在しており、これは日本の企業が再生可能エネルギーの利用拡大を目指す取り組みです。

出典:環境省『中⻑期排出削減⽬標等設定マニュアル』p,5.7.(2023/03/09)

世界のGHG削減状況:現状と日本の進捗は?

今、世界のGHG削減状況はどのようになっているのでしょうか。ここでは、世界と日本のGHG削減状況をご紹介します。

世界のGHG削減の現状

国連環境計画(UNEP)が発表した「Emissions Gap Report 2023」によると、2022年の世界全体のGHG排出量は約574億トン(CO2換算)で、前年から1.2%増加し過去最高を記録しました。この増加率は2000年代の平均2.2%に比べて減少しているにもかかわらず、COVID-19パンデミック前の10年間の年平均0.9%をやや上回っている状況です。つまり、GHG排出量の増加は以前よりも緩やかになっているものの、まだ増加傾向にあるということです。

出典:環境省『令和6年版 環境・循環型社会・生物多様性白書』p,54.55.(2024/05/23)

日本のGHG削減の現状

2022年度の日本におけるGHG排出量と吸収量は約10億8,500万トン(CO2換算)となりました。これは、2021年度に比べて2.3%(約2,510万トン)減少しています。さらに、2013年度に比べると22.9%(約3億2,210万トン)の減少が見られます。これらの結果は、日本が掲げる2030年度目標および2050年のネットゼロ(GHG排出量の実質ゼロ)達成に向けた重要な進展を示しています。具体的には、2030年までにGHG排出量を2013年比で46%削減し、2050年までにネットゼロを目指す取り組みが進行中です。

2030年度目標及び2050ネットゼロに対する進捗

alt属性:2030年度目標及び2050ネットゼロに対する進捗

出典:環境省『2022年度の温室効果ガス排出・吸収量(概要)』p,2.(2024/04/11)

GHG削減に欠かせない「Scope1・2・3」を徹底解説

企業がGHG削減目標を設定する場合、重要となるのが「Scope1・2・3」です。ここでは、その「Scope1・2・3」についてご紹介します。

企業の直接的GHG排出「Scope1」

Scope1(スコープ1)とは、企業が燃料の燃焼や製品の製造を通じて直接排出するGHGを指します。具体的には、メーカーが製品を作る際に石油を化学的に加工することでCO2を排出したり、製造工程で石炭を燃焼して熱エネルギーを利用する際にCO2を排出したりする場合がこれにあたります。他にも、企業がガスコジェネレーションシステムを設置し、他の連携先や不動産テナントにエネルギーを供給する際にCO2を排出するケースもあります。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁『知っておきたいサステナビリティの基礎用語~サプライチェーンの排出量のものさし「スコープ1・2・3」とは』(2023/09/26)

企業の間接的GHG排出「Scope2」

Scope2とは、企業が他社から供給された電気、熱、蒸気などを使用することで間接的に排出されるGHGを指します。具体的には、企業がオフィスビルに拠点を構えている場合、その電力が電力会社から供給されています。その電力が石炭火力発電などの化石燃料を使用して発電されていると、企業はその電力を通じて間接的にCO2を排出していることになります。このように、企業は直接はCO2を排出していないものの、石炭火力発電で生成された電力を使用することによって、間接的にCO2を排出していることになります。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁『知っておきたいサステナビリティの基礎用語~サプライチェーンの排出量のものさし「スコープ1・2・3」とは』(2023/09/26)

サプライチェーンでのGHG排出「Scope3」

Scope3とは、企業のサプライチェーン全体を対象にしたGHGの排出を指します。具体的には、企業が製品の製造や販売に関連して間接的に排出するGHGが含まれます。そして、サプライチェーンには「上流」と「下流」があり、Scope3は企業のサプライチェーン全体、つまり「上流」と「下流」の両方から排出されるGHGを対象としています。これは、15のカテゴリーに細かく分類され、サプライチェーン全体のGHG排出源の全てが対象となっています。

「Scope1・2・3」

alt属性:「Scope1・2・3」

出典:経済産業省 資源エネルギー庁『知っておきたいサステナビリティの基礎用語~サプライチェーンの排出量のものさし「スコープ1・2・3」とは』(2023/09/26)

GHG削減目標達成に向けた企業の取り組み事例

株式会社ワールド

大手アパレルメーカーの株式会社ワールドは、2030年までにアパレル商品のGHG排出量を商品あたり20%削減することを目標にしています。そのために、使用する素材をサステナブル素材に切り替えることで、サプライチェーン全体の排出量をサプライヤーと協力して見える化し、その結果をもとにして自社の排出削減計画を立てています。例えばバージンウールの場合、羊の飼育から紡績工場までの過程で、多くのGHGが排出されます。一方、リサイクルウール(反毛)の場合、回収品自体の排出量はゼロです。考慮すべきは、回収作業や回収品を使用可能な状態にするための処理過程における排出量のみです。さらに、ウールのリサイクルは手作業が中心となるため、紡績工場での排出量を抑えることができます。

出典:環境省『別添 – 環境省モデル企業事例集』p,3.5.(2022)

ソフトバンク株式会社

大手電気通信事業者のソフトバンク株式会社は、2022年8月にサプライチェーン全体の排出量をScope3も含めて、2050年までに実質ゼロにすることを目指すネットゼロ宣言を発表しました。この取り組みは、SBTi(科学的根拠に基づく目標イニシアティブ)のネットゼロ基準を参考にしており、Scope3の排出削減を進めるための計画を立てています。SBTiのネットゼロ目標を達成するためには、排出量を90%以上削減しなければなりません。そのため、削減の進捗を見ながら具体的な施策の実施時期を決め、最終的には自力で90%以上の削減を目指しています。さらに、サプライヤーにはネットゼロに向けたガイドラインを提供し、一緒に取り組んでいきます。今後、ビジネスの変化に合わせて排出源も変わる可能性があるため、その都度施策を見直し、必要に応じて早めに実行するなど、目標達成に向けて柔軟に調整していきます。

出典:環境省『別添 – 環境省モデル企業事例集』p,8.9.(2022)

リコージャパン株式会社

多様な業界の経営・業務課題を解決するためのソリューションを提供するリコージャパン株式会社(以下リコー)は、日本初のRE100参加企業です。リコーは、2050年までにバリューチェーン全体での温室効果ガス排出量を実質ゼロにし、2030年までにスコープ1と2の排出量を30%削減、スコープ3の排出量を15%削減するというSBT認定の目標を掲げ、2015年にCOP21の公式スポンサーを務めた経験から、2017年4月にパリ協定を踏まえた目標を発表し、これらの目標達成のために「徹底的な省エネ」と「再生可能エネルギーの積極的な利用」を組み合わせたアプローチを採用し、RE100にも参加しています。

出典:自然エネルギー財団『RE100参加の経緯 (日本企業として初)』(2019/02/01)

まとめ:GHG削減目標を実現し、未来を守るためにできること

GHG(温室効果ガス)の増加は地球温暖化を引き起こし、その結果として気候変動やさまざまな環境問題をもたらします。例えば、異常気象の増加や海面上昇、生態系への影響などが挙げられます。こうした問題に対処するために、GHGの削減目標を達成することが非常に重要であり、これを実現するためには企業が積極的に取り組む必要があります。企業がGHG削減目標を設定する場合には、国際的なイニシアチブ「SBT」や「RE100」をもとに「Scope1・2・3」をしっかりと把握して設定することが重要となります。アスエネでは、GHG削減目標など持続可能な未来へつなげるヒントを提案しています。ぜひ、参考にして企業の持続性の向上につなげてみませんか。

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