企業必見!カリフォルニア州の気候変動開示義務化がもたらす影響とは?

カリフォルニア州は、企業に気候変動に関する情報開示を義務付ける法律を導入しました。企業は毎年、GHG排出量や気候リスクへの対策を報告する必要があり、透明性を高めることが目的です。

この記事では、この法律の背景や具体的内容、日本企業「アスエネ株式会社」が設立した「Asuene USA Inc.」の取り組みを解説します。気候変動対策が求められる今、企業に必要な準備と広がるチャンスを一緒に理解していきましょう!

目次

  1. 気候変動開示義務化について

  2. カリフォルニア気候変動開示義務化について

  3. カリフォルニア気候変動開示の具体的な内容

  4. AsueneがAsuene USA Inc.を設立

  5. まとめ:カリフォルニアの気候変動開示義務化を理解し国際的な動向にも注目しよう

1.気候変動開示義務化について

近年、気候変動の影響が明らかになり対策が急がれているため、企業に対する気候変動関連情報の開示義務化が進んでいます。

TCFDについて

TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)は、金融安定理事会(FSB)が2015年に設置した国際的な開示イニシアチブです。賛同企業には、「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4項目に関する情報を開示することを求めています。これにより気候に関連するリスクと機会の企業財務に与える影響が開示されることを目的としています。カリフォルニアでは、このTCFDのガイドラインに基づいて、企業の気候変動に関する情報開示義務化が進んでいます。また、日本の賛同企業数は2023年2月22日時点で1,211社で英国や米国を上回り世界最大ですが、他国と比べて賛同機関に占める金融機関の割合は低いです。

出典:環境省『地域金融機関におけるTCFD開示の手引き』p,9.(2023/04/07)

TCFDが提言している開示項目

TCFDには以下の4つの提言があります。

・ガバナンス:気候関連のリスクと機会について組織のガバナンスを開示し、取締役会の監督方法と経営陣の役割を記述します。

・戦略:気候関連の短期・中期・長期のリスクと機会を記述するとともに、事業や戦略、財務計画に与える影響を開示し、異なる気候シナリオ(2℃以下を含む)を考慮した戦略のレジリエンスを示します。

・リスク管理:気候関連リスクを特定、評価、マネジメントする方法を開示し、それに必要なプロセスと全体的なリスクマネジメントへの統合を記述します。

・指標と目標:気候関連リスクと機会の評価、マネジメントに使用する指標と目標を開示します。戦略とリスクマネジメントに即した指標、Scope1、Scope2および場合によってはScope3のGHG排出量と関連リスク、設定した目標とそのパフォーマンスを記述します。

出典:環境省『地域金融機関におけるTCFD開示の手引き』p,12.(2023/04/07)

国際的な気候変動開示の状況

気候変動問題への対応の動向は、NGFS(環境に配慮した金融のための国際ネットワーク)や各国の中央銀行がリスク管理的な観点から示しています。また、ISSB(行動研究に関する国際的な学会)などと連携するTCFDが情報開示の面で注目されています。その一方で、IFRS(国際財務報告基準)を中心に非財務情報を財務諸表に組み込む議論が活発であり、多くの非財務情報開示基準設定主体がISSBに統合されています。そして、日本では2022年6月に金融庁の報告に基づき有価証券報告書にサステナビリティ情報の記載欄が新設されています。これに伴い2023年1月に開示府令が改正され、2023年3月期から適用されています。

出典:環境省『地域金融機関におけるTCFD開示の手引き』p,14.15.16.(2023/04/07)

2.カリフォルニア気候変動開示義務化について

カリフォルニア州では、企業がその持続可能性に関する情報を公開することが義務付けられています。ここでは、カリフォルニア気候変動開示義務化についてご紹介します。

カリフォルニア気候変動開示義務化とは

カリフォルニア州は、2023年10月7日、「気候関連企業データ説明責任法(SB253)」と「温室効果ガス:気候関連財務リスク(SB261)」を成立させ、これは企業に気候変動関連の情報開示を求める全米初の法案となりました。「気候関連企業データ説明責任法(SB253)」は、2025年1月1日までに、年間総収益が10億ドルを超えるカリフォルニア州の企業などに対して、州委員会に情報を公開する規則を策定・採択するものです。また、「温室効果ガス:気候関連財務リスク(SB261)」は、2026年1月1日までに、そしてその後は隔年で対象企業に気候関連財務リスクと対策を開示する報告書を作成し、自社のウェブサイトで公開することを求めています。

出典:独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)『カリフォルニア州知事、全米初の気候変動関連の情報開示法案に署名(米国) | ビジネス短信』(2023/10/26)

出典:California Legislative Information『Bill Text - SB-253 Climate Corporate Data Accountability Act.』(2023/10/09 )

出典:California Legislative Information『Bill Text - SB-261 Greenhouse gases: climate-related financial risk.』(2023/10/09)

カリフォルニア気候変動開示義務化を決定した背景

2021年1月20日、当時のバイデン政権は気候変動対策を政策の柱としパリ協定への再参加を表明しました。さらに、前政権の環境政策を見直し気候変動対策に関する大統領令を発表し、2050年までにGHG排出量をゼロにすることを目指しました。そして、カリフォルニア州の気候変動政策は、2006年に制定された「カリフォルニア地球温暖化解決策法」に基づき、大気資源委員会(CARB)が「気候変動スコーピング計画」を作成し施行しました。この計画は5年に一度改定され、2009年、2013年、2017年に改定されています。その後、温室効果ガスに関する健康安全法のセクションが追加され、2023年10月7日に州知事によって承認されました。

出典:California Legislative Information『Bill Text - SB-253 Climate Corporate Data Accountability Act.』(2023/10/09 )

出典:California Legislative Information『Bill Text - SB-261 Greenhouse gases: climate-related financial risk.』(2023/10/09)

出典:独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)『米国・カリフォルニア州の 気候変動対策と産業・企業の対応』p,5.9.(2021/05/19)

3.カリフォルニア気候変動開示の具体的な内容

ここでは、「対象企業と開示方法」や「開示する情報」、「適用開始日」などカリフォルニア気候変動開示の主な内容についてご紹介します。

対象企業と開示方法

カリフォルニア気候変動開示の対象となるのは、以下の基準に当てはまる企業です。

(1)米国法に基づき設立された企業

(2)年間総売上高が10億ドル(SB253)または5億ドル(SB261)を超える企業

(3)カリフォルニア州で事業を行う企業

そして、開示方法はSB253では、CARBが契約した排出量報告組織に報告書を提出し、SB261では気候関連財務リスク報告書を各企業のウェブサイトで公表します。

出典:金融庁『事務局説明資料』p,13.(2024/03/26)

開示する情報

SB253は、2026年以降、毎年前事業年度分のScope1.2のGHG排出量を報告し、2027年以降はScope3も含めたGHG排出量を報告します。Scope3に関しては、その正確性の確保が難しいことを考慮し、合理的な根拠に基づく誠実な情報開示は行政処分の対象外で、2030年までは報告の不提出のみ罰金対象となります。一方、SB261は、2年に一度、TCFDやISSB基準などに従って、気候変動に関連する財務リスクと軽減措置の報告書を作成することが求められます。基準に従った開示ができない場合は、その理由と対策を説明する必要があります。また、グループ内の子会社が対象の場合は、親会社が統合報告書を作成・公表すれば、子会社の個別開示は必要ありません。

出典:金融庁『事務局説明資料』p,13.(2024/03/26)

いつから適用されるのか

SB253は、2026年以降に前事業年度のScope1・2のGHG排出量を報告し、2027年以降に前事業年度のScope3のGHG排出量を報告することが求められます。そして、SB261に基づくTCFDまたはその承継機関などの基準に従った開示は、2026年1月1日までに初回開示を行うことが求められます。

出典:金融庁『事務局説明資料』p,14.(2024/03/26)

4.AsueneがAsuene USA Inc.を設立

Asuene USA Inc.とは

Asuene USA Inc.は、日本のスタートアップ企業「アスエネ株式会社」がアメリカに設立した現地法人です。カリフォルニア州ロサンゼルスに拠点を置き、アメリカ全体の脱炭素化を推進しています。主なサービス内容は、カーボンアカウンティングプラットフォームを提供し、企業のGHG排出量の測定、報告、削減をサポートします。

出典:ASUENE『ASUENE』(2024/12/20)

出典:ASUENE『Asuene expands global presence with launch of Asuene USA in Los Angeles, California | News』(2023/11/21)

Asuene USA Inc.設立の背景

米国は世界第2位のGHG排出国であり、アスエネにとって企業の脱炭素化に大きな機会を提供しています。さらに、Asueneは米国市場の重要な役割を認識し2050年までに排出量をネットゼロにすることを目指しています。そして、アスエネは日本を代表する気候テック企業として世界的な成功を目指しており、Asuene USAは、米国の新たな気候変動対策への取り組みに合わせて、米国企業がネットゼロエミッションを達成するための支援に力を入れています。

出典:ASUENE『Asuene expands global presence with launch of Asuene USA in Los Angeles, California | News』(2023/11/21)

5.まとめ:カリフォルニアの気候変動開示義務化を理解し国際的な動向にも注目しよう

カリフォルニア州の気候変動開示義務化は、全米初となる「気候関連企業データ説明責任法(SB253)」と「温室効果ガス:気候関連財務リスク(SB261)」の制定によって実現しました。これにより、企業は気候変動によるリスクや対策を開示することが義務付けられました。2006年の「地球温暖化解決策法」を基盤とし、2023年10月にGHG排出量に関する新たな法改正が承認されたことで、企業に対する透明性と責任が一層求められています。

Scope1・2・3のGHG排出量や財務リスクの開示義務化は、企業が持続可能な社会を目指す具体的な行動を促します。この動きはカリフォルニア州だけでなく、国際的な気候変動対策にも影響を与える重要なステップです。

こうした中、日本の気候テック企業「アスエネ株式会社」は、ロサンゼルスに「Asuene USA Inc.」を設立し、アメリカ企業の脱炭素化を支援しています。Asuene USAは、カーボンアカウンティングプラットフォームを通じて、企業のGHG排出量の測定や削減をサポートし、新たな規制への対応を後押ししています。

カリフォルニア州の取り組みは、未来に向けた大きな一歩です。この変化を捉え、持続可能な社会に向けた企業の対応と国際的な動向に注目していきましょう。

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