第7次エネルギー基本計画の原案を徹底解説!脱炭素社会を目指す日本の政策の未来とは?

第7次エネルギー基本計画の原案について、わかりやすく解説します。エネルギー基本計画は、我が国のエネルギー政策の方向性を定める重要な計画です。今般発表された第7次エネルギー基本計画の原案に関しては、既にパブリックコメントも実施され、多くの意見が寄せられています。今後の日本における脱炭素社会の実現推進に大きく関わるものであり、注目すべきポイントが多々含まれています。本記事ではエネルギー基本計画のあらまし、第7次エネルギー基本計画原案の概要、同案に対する各種意見などを取り上げます。

目次

  1. エネルギー基本計画の概要

  2. 第7次エネルギー基本計画原案の概要

  3. 第7次エネルギー基本計画に関する各種意見

  4. まとめ:第7次エネルギー基本計画の原案をよく理解し、脱炭素社会実現へ向け協力しよう!

1.エネルギー基本計画の概要

エネルギー基本計画は、我が国におけるエネルギーのあり方を定めるものです。エネルギー基本計画の概要について解説します。

エネルギー基本計画とは

日本では中長期的なエネルギーのあり方を、国が法律に基づき「エネルギー基本計画」という計画の中で定めています。エネルギー基本計画には、日本における将来のエネルギー需要の見通し、使用していくエネルギー源の比率、実現に向けた政策の方向性などの内容が含まれています。エネルギー基本計画は「S+3E」という原則のもとに策定されます。SはSafty(安全性)、3EはEnergy Security(安定供給)・Economic Efficiency(経済効率性)・Environment(環境適合)を意味します。

出典:WWFジャパン「気候変動に対策を ~カギを握る『エネルギー基本計画』とは~」(2024/10/2)

エネルギー基本計画のポイント

エネルギー基本計画では、「電源構成」などについて定められます。日本の電力は大半が、石油・石炭・天然ガスなどCO2を排出する化石燃料から生み出されています。エネルギー基本計画において、再生可能エネルギーを増やしていく方向性が示されれば、発電時の温室効果ガス排出が減って脱炭素化が進むことが期待されます。実際に2021年策定の「第6次エネルギー基本計画」では、2030年度の電源構成で再生可能エネルギーを36〜38%とすることなどが定められています。

alt属性:過去のエネルギー基本計画で示された再生可能エネルギーの2030年目標値

出典:WWFジャパン「気候変動に対策を ~カギを握る『エネルギー基本計画』とは~」(2024/10/2)

2.第7次エネルギー基本計画原案の概要

第7次エネルギー基本計画の原案は、資源エネルギー庁によって2024年12月に発表されました。第7次エネルギー基本計画原案の概要について解説します。

第7次エネルギー基本計画原案の構成

第7次エネルギー基本計画原案は、以下の内容で構成されています。

1.はじめに
2.東京電力福島第一原子力発電所事故後の歩み
3.第6次エネルギー基本計画策定以降の状況変化
4.エネルギー政策の基本的視点(S+3E)
5.2040年に向けた政策の方向性
6.カーボンニュートラル実現に向けたイノベーション
7.国民各層とのコミュニケーション

この中でも特に「5. 2040年に向けた政策の方向性」が主要パートとなっており、以下のような内容が取り上げられています。

項目

主なキーワードの例

省エネ・非化石転換

半導体の省エネ性能の向上

脱炭素電源の拡大と系統整備

脱炭素電源への投資回収の予⾒性

次世代エネルギーの確保/供給体制

水素、バイオ燃料

化石資源の確保/供給体制

供給源の多⾓化

CCUS・CDR

技術開発、貯留地開発

重要鉱物の確保

国産海洋鉱物資源の開発

電力システム改革

脱炭素電源投資確保

国際協力と国際協調

ウクライナ侵略や中東情勢の緊迫化

出典:資源エネルギー庁「エネルギー基本計画(原案)」p2,3(2024/12/17)
出典:資源エネルギー庁「エネルギー基本計画(原案)の概要」p2-8(2024/12/17)

第7次エネルギー基本計画原案における今後のエネルギー需給見通し

第7次エネルギー基本計画原案においては、以下のようなエネルギー需給見通しが示されています。

 

2023年度(速報値)

2040年度(見通し)

エネルギー自給率

15.2%

3~4割程度

電源構成

再エネ

22.9%

4~5割程度

原子力

8.5%

2割程度

火力

68.6%

3~4割程度

温室効果ガス削減割合

(2013年度比)

22.9%

※2022年度実績

73%

※暫定値

上記の通り、火力発電の割合を抑えて、その分再生可能エネルギーおよび原子力による発電割合を増やす方向性が示されています。また再生可能エネルギーの中で最も期待されているのは、太陽光発電です(2040年度の見通し全発電量のうち22~29%程度)。

出典::資源エネルギー庁「エネルギー基本計画(原案)の概要」p9-10(2024/12/17)

第7次エネルギー基本計画原案における論点の例

第7次エネルギー基本計画原案にはさまざまな論点がありますが、特に重要なポイントの例として「電源開発」「次世代技術の開発」「燃料調達」が挙げられます。電源開発については、再生可能エネルギーの拡大には電力会社の新たな投資を促進する事業環境の整備が必要です。次世代技術の開発については、ペロブスカイト太陽電池などの普及における国内サプライチェーンの構築が求められます。また燃料調達に関しては、革新技術の社会実装が進まないリスクシナリオに備えた天然ガスの十分な確保が欠かせません。このように第7次エネルギー基本計画原案には、実行にあたって検討を要する事項が多々存在します。

出典:資源エネルギー庁「総合資源エネルギー調査会 第 67 回基本政策分科会に関するコメント」p1-2(2024/12/17)

3.第7次エネルギー基本計画原案に関する各種意見

第7次エネルギー基本計画原案では意見公募が実施されているほか、その策定段階においてもさまざまな意見が関係団体などから寄せられています。第7次エネルギー基本計画原案に関する各種意見についてご紹介します。

第7次エネルギー基本計画原案への意見公募

第7次エネルギー基本計画原案について、意見公募(政令や省令等を定めようとする際に、事前に広く一般から意見を募ること)にて多くの意見が寄せられています。中にはエネルギー基本計画の内容を離れてしまったものも散見されますが、「2050年カーボンニュートラルというシナリオ以外に、複数のシナリオを論議すべき」「原子力への依存を高めるのには疑問」「再生可能エネルギー比率はもっと上を目指すべき」などの意見が見られます。

出典:資源エネルギー庁「エネルギー政策に関する『意見箱』へのご意見」p2-12(2025/1)

経済同友界からの意見

経済同友会からは、原案が発表される前の24年8月に、第7次エネルギー基本計画に向けた意見が公表されています。その中では、第7次エネルギー基本計画には「蓋然性・予見性・具体性のある道筋が不可欠」であると述べられており、「再エネポテンシャルに恵まれない日本は海外有志国との連携も重要」などの見解も示されています。また原子力について「活用すべき」としつつ、「地域の特性に応じて、さらに抜本的に再エネ電源を積み上げ」との意見も表明されています。

出典:資源エネルギー庁「第7次エネルギー基本計画に向けた意見」p3,4(2024/8/2)

日本気候リーダーズ・パートナーシップからの意見

速やかな脱炭素社会への移行を目指し、異業種から245社が集って組成された日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)からも、2024年9月に第7次エネルギー基本計画についての意見が発表されています。その中では「2035年の電源構成における再エネ比率60%以上を目指すべき」との提言が掲げられ、その具体的な施策として「太陽光発電の導入加速」「洋上風力発電の産業化」「電力インフラ整備とカーボンプライシング」が挙げられています。

出典:資源エネルギー庁「第7次エネルギー基本計画に対する意見」p3(2024/9/26)

4.まとめ:第7次エネルギー基本計画の原案をよく理解し、脱炭素社会実現へ向け協力しよう!

第7次エネルギー基本計画は、2024年12月に原案が発表されました。その中には化石燃料による発電の割合を引き下げ、再生可能エネルギーと原子力による発電割合を引き上げる方針が盛り込まれています。気候温暖化に歯止めをかけるため、温室効果ガスの排出量削減は待ったなしという状況を反映した電源構成を目指すものと言えるでしょう。再生可能エネルギーは原案以上にもっと推進するべきという意見もある中、各企業もグリーン電力への切り替えなどの対応を検討することが、今後はいっそう求められるでしょう。

第7次基本計画の原案をよく理解し、脱炭素社会実現へ向け各企業・産業が協力していきましょう。

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