GXリーグとは、GXの理念に共感する企業が、社会的課題を解決しながらカーボンニュートラルを実現し、カーボンニュートラル時代に向けてプラットフォームを提供する場です。
GXリーグへの参画は、企業の新たなビジネスチャンスにもつながることから積極的な参画が望まれます。ここでは、GXリーグの基礎知識や参画することで得られるメリット、参画に必要な取り組みなどを実際に参画している企業の活動事例と併せてご紹介します。
INDEX
GXリーグとは
GXリーグとは、カーボンニュートラル達成を実現するために必要な枠組みで、常に向上心をもって脱炭素の活動を行なっています。ここでは、GXやGXリーグについてご紹介します。
GXとは
GX(グリーントランスフォーメーション)とは、経済社会システムの変革を意味する言葉で、その目的は、日本政府が掲げる2050年カーボンニュートラルや2030年までに温室効果ガス排出量を削減する目標を経済成長のチャンスと捉え、温室効果ガス削減と産業競争力向上を同時に実現することです。
政府は、GXには150兆円超の投資が必要とし、GX実現に向け脱炭素成長型経済構造移行推進政略(GX戦略)を掲げるGX推進法を制定しました。
出典:経済産業省『GXリーグ基本構想』p,5.(2022/03/04)
出典:GXL FOR WORLD『GXリーグ活動概要 – ~What is the GX League』p,6.(2023/02/17)
GXリーグとは
GXリーグとは、2050年カーボンニュートラル達成に向けて社会変革を目指す企業が、官公庁や学術機関とともに協力して持続的な成長を実現するために、社会的な課題に取り組むプラットフォームです。
企業においては、脱炭素の活動を行う「GX実践企業」、それを支援する「GX推進金融」、2050年カーボンニュートラル実現のために変革を創出する「イノベーション創出企業」が三位一体となり、互いに取り組みの開示・価値向上や投資、技術の提供などを行うことで、GXへのリーダーシップを発揮し2050年への変革をリードしていきます。

出典:経済産業省『GXリーグ基本構想』p,5.6.(2022/03/04)
出典:GXL FOR WORLD『GXリーグ活動概要 – ~What is the GX League』p,3.6.(2023/02/17)
GXリーグ設立の背景
日本では、世界全体でのカーボンニュートラルへの貢献をするとともに、2050年カーボンニュートラル達成に向けて、2030年までに2013年度の温室効果ガス排出量から46%削減するとし、さらに50%削減することに挑戦し続ける目標を掲げています。
カーボンニュートラルへの挑戦は、社会経済の持続可能な発展と産業競争力を向上させることが重要で、そのためには、自社のみでなく自社に関わる全ての関係者が一体となって、投資を促す社会経済へと大きな変化を遂げることが重要となります。そこで、カーボンニュートラル達成に向けて社会の変革をリードする役割を担う企業を生み出すために設立されたのがGXリーグとなります。
出典:経済産業省『GX リーグ基本構想』p,1.(2022/01/31)
GXリーグの段階的な移行と義務化の概要
GXリーグは、3段階の発展が予定されています。
| フェーズ | 期間 | 特徴と位置づけ | 重要なポイント |
| 第1フェーズ(試行) | 2023年度~2025年度 | 自主的な取り組み。企業は目標(プレッジ)を設定し、その進捗を公開(レビュー)する「プレッジ&レビュー方式」。未達成に対する罰則はない。 | 制度運用とデータ収集のパイロット期間。 |
| 第2フェーズ(本格稼働) | 2026年度~ | 法的拘束力を伴う本格稼働。排出枠の割当や償却が義務化(改正GX推進法に基づく)。 | CO2直接排出量10万トン以上の事業者が参加義務の対象となる見込み(約300〜400社)。 |
| 第3フェーズ | 2033年度~ | 発電部門に対する排出枠の段階的な有償化(オークション)など、さらなる対策強化を予定。 | 制度の進化的な強化と、脱炭素化を促すインセンティブの強化。 |
出典:排出量取引制度の詳細設計に向けた検討方針(経済産業省 GXグループ)
第2フェーズの主要な制度設計と義務内容
第2フェーズでは、制度対象者に対し、以下のルールと義務の適用が予定されています。
- 義務化対象企業(制度対象者)
- 国内の事業活動において、CO2の直接排出量が前年度までの3カ年度平均で10万トン以上の事業者が対象です。
- 義務対象者である親会社等が、密接な関係にある子会社も含めて一体で義務を履行することも可能となっています。
- 排出枠
- 企業は政府から排出枠を無償で受け取ることができます。
- 割当量は、主に2023〜2025年度の排出実績を基準に算定され、ベンチマーク方式とグランドファザリング方式を組み合わせた算定方式が検討されています。
- 算定基準は、温対法や省エネ法に基づく標準的な方法が適用されます。
- 排出量報告
- 本制度では、エネルギー起源CO2及び非エネルギー起源CO2のうち、制度対象者が直接排出したもの(いわゆるScope1)について、算定・報告が求められる予定です。
- 第三者保証
- 排出枠の割当申請や排出実績の報告にあたり、経済産業省に登録された第三者機関による確認が義務付けられます。
- 市場と価格安定化措置
- GX推進機構が排出枠の取引市場を運営し、透明性の高い取引を確保します。
- 排出枠の価格が急騰・急落した場合に備え、政府による上限・下限価格の設定や、市場介入による価格安定化措置が導入される予定です。
- 罰則の導入
- 償却期限までに排出実績に相当する排出枠を償却できなかった場合、「未償却相当負担金」(仮称)などの課徴金の適用が予定されており、第1フェーズとの最大の違いとなります。
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GXリーグ参画で得られる3つのメリット
GXリーグ参画は、カーボンニュートラル達成に有利な立場となり自社のビジネスチャンス拡大の期待につながります。ここでは、GXリーグ参画で期待できる3つのメリットをご紹介します。
カーボンニュートラル達成に有利な情報が得られる
GXリーグは、カーボンニュートラル達成をビジネスチャンスとしている企業が自由に意見や情報交換ができる場や、公共と民間の協力による規則作成や賛同企業の中長期的な経営戦略、事業開発、研究テーマの開発などに向けて異業種を超えて対話を行う場を提供しています。そのため、GXリーグに参画することで自社の考えを超えた、カーボンニュートラル達成に有利な情報を得ることができます。
出典:経済産業省『GXリーグ基本構想』p,8.(2022/03/04)
出典:経済産業省『GX リーグ基本構想』p,4.(2022/01/31)
出典:GXL FOR WORLD『GXリーグ活動概要 – ~What is the GX League』p,4.(2023/02/17)
自社のビジネス拡大の期待がある
カーボンニュートラル達成という未来のビジョンを実現するために、新しい市場を創出し、技術を社会に実装して事業化するためのルール整備(ルールメイキング)を進めることで、生活者に価値を提供し、市場を活性化させることができます。具体的には、CO2フリー製品の情報を可視化するために、IoT、センサーなどを活用した測定手法の高度化を導入したり、森林由来のクレジットを創出するために、デジタル技術導入や生産管理のIT化を図ることなどが挙げられます。

出典:経済産業省『GX リーグ基本構想』p,4,5.(2022/01/31)
出典:経済産業省『GXリーグ基本構想』p,8.(2022/03/04)
出典:GXL FOR WORLD『GXリーグ活動概要 – ~What is the GX League』p,4.(2023/02/17)
自主的な排出量取引でカーボンニュートラル達成へ
GXリーグでは、2030年に向けて自主的に高い温室効果ガス排出削減目標を設定し、この目標に向けて毎年の取り組み状況を報告、中間地点での評価を行い、目標達成が見込めない場合は、直接排出分に関してカーボン・クレジット市場を活用して自主的なクレジット取り引きを行うものとしています。そのため、GXリーグ参画企業は、自主的な排出量取引によってカーボンニュートラル達成の期待があります。
出典:経済産業省『GXリーグ基本構想』p,8.(2022/03/04)
出典:経済産業省『GX リーグ基本構想』p,5.(2022/01/31)
出典:GXL FOR WORLD『GXリーグ活動概要 – ~What is the GX League』p,4.(2023/02/17)

GXリーグ メリットを活かすために必要な企業の取り組み
GXリーグに参画するにあたって、企業が必ず実行するべき取り組みがあります。ここでは、GXリーグに参画する企業に必要な取り組みをご紹介します。
自社の温室効果ガス排出量削減
2050年カーボンニュートラルに賛同し、1.5度の努力目標実現のために移行戦略を立て、直接および間接の排出を対象とした目標設定範囲を設けること、そして、2030年までの中間地点でも目標を設定します。
また、GXリーグの基本構想に基づいて、企業は毎年目標達成の進捗度合いを公表し、自らが設定した削減目標に届かない場合は、国内の直接排出に関してカーボンクレジットや企業間の自主的な超過削減分の取引を実施したかも公表します。
出典:経済産業省『GX リーグ基本構想』p,3.(2022/01/31)
サプライチェーンでのカーボンニュートラル
サプライチェーン上流の事業者に対しては、2050年までの排出量削減を支援し、サプライチェーン下流の利用者や消費者に対しては、自社の製品やサービスに対する炭素フットプリント(CFP)表示などを通じて、積極的な付加価値を提供するとともに排出量削減の意識を高めていきます。
出典:経済産業省『GX リーグ基本構想』p,3.(2022/01/31)
自社の製品やサービスによる市場への環境貢献
市民社会、教育機関、NGOなどと気候変動についての対話を通じて得た気づきを、自社の経営戦略に取り入れ、自社内で新しいアイデアや革新的な製品・サービスを生み出し、他の関係者と協力して効果的な削減を促すことを目指します。また、クレジットや他の手段を使ってカーボンオフセット製品を市場に導入し、環境に配慮した市場を広げることも同時に目指していきます。
出典:経済産業省『GX リーグ基本構想』p,4.(2022/01/31)
GXリーグ参画企業の取り組み事例
中国電力株式会社
中国電力株式会社は、カーボンニュートラルの実現に向けて2022年6月にカーボンニュートラル推進本部を設置、2023年4月に「中国電力グループカーボンニュートラル戦略基本方針」を公表し、2030年度に小売電気事業と発電事業のCO2排出量を2013年度の半分にする目標を掲げています。
GXリーグでは、おもに市場のルール形成のWG(ワーキンググループ)に関わっていて、「適格カーボンクレジットWG」「GX経営促進WG」「GX人材市場創造WG」に参画し、カーボンニュートラル時代の市場創造に向けて新しいルールを作っています。
出典: GXリーグ公式WEBサイト『中国電力株式会社』(2024/01/31)
株式会社商船三井
株式会社商船三井は、株式会社商船三井さんふらわあと協力し、内航海運分野において国土交通省が掲げる2030年までに2013年度比の17%削減を目指す目標を超えて、19%削減を目指すことを決めました。
しかし、内航海運分野では、多くの小規模事業者が環境投資に十分な資金を持っていないため、燃料転換など高額な投資が進んでいないという現状の中、海上輸送は他の貨物輸送と比べて環境負荷が少なく、社会全体の温室効果ガス削減に貢献しており、GXリーグを通じて内航海運分野での温室効果ガス削減を促進していくことを目指しています。
出典:GXリーグ公式WEBサイト『株式会社商船三井』(2024/01/31)
富士通株式会社
富士通株式会社は、国内のGXについて議論することを目的としGXリーグに参画、社会全体として、企業の評価と投資に関する適切なルールを民間企業主体として積極的に形成し、GX活動を促進することを目指しています。
また、ビジネスを通じてお客様や社会の環境課題を解決する一環として、J-クレジット発行に向けた環境価値創出プロセスを簡素化する「簡易創出基盤」の取り組みを開始、製品のカーボンフットプリントなど多様な環境価値をデジタル化し普及させることを目指しています。
出典:GXリーグ公式WEBサイト『富士通株式会社』(2024/01/31)
まとめ:GXリーグのメリットを有効活用し環境貢献企業としての確立を!
GXリーグとは、カーボンニュートラル実現をビジネスのチャンスとし社会変革を目指す企業が、行政機関と協力をして課題に取り組む場であり、カーボンニュートラル時代に有効なプラットフォームです。企業はGXリーグに参画することで、カーボンニュートラルを実現するための情報を得たり、自主的な排出取引で目標を達成できるメリットがあります。
GXリーグに参画するには、自社の温室効果ガス排出量を削減するだけでなく、サプライチェーン全体での取り組みが必要です。ぜひGXリーグの知識を深め、環境への貢献を目指し、カーボンニュートラル時代のリーダーとなるような企業を目指しましょう。