サプライチェーンにおけるESG経営とは?取り組むメリットや企業事例をご紹介!
- 2023年07月31日
- SDGs・ESG
ESG経営は、気候変動や人権などの課題に関する問題意識の高まりとともに、長期的な企業の発展に不可欠な概念として普及しています。今回はESG経営がサプライチェーンにもたらすメリットや取り組む企業の事例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
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ESG経営の概要と重視されている背景
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サプライチェーン全体でESG経営を行うメリット
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ESG時代に求められるサプライチェーンマネジメント
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ESGに配慮した取り組み事例
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まとめ:ESG経営に取り組んで持続可能的な企業成長につなげよう
1. ESG経営の概要と重要視されている背景
国際社会におけるサステナビリティ社会の実現に向けて、ESGが重視されています。ここではESG経営の概要と重要視されている背景を解説します。
(1) ESGの観点を重視した経営
ESG経営とは、国際社会における気候変動問題や人権問題等の深刻化する現状を危惧し、環境(Environment)・社会(Society)・ガバナンス(Governance)の3つの要素(ESG)を重視する経営方法です。近年では脱プラスチック化やカーボンニュートラル(CO2排出量削減に向けた動き)といった環境問題、労働者の待遇改善、ダイバーシティの推進などがESG経営の一環として重視されています。
出典:環境省 『ESG検討会報告書』(2017年1月)p8~9
(2) 環境問題への対応が重要視されている
環境問題は、甚大な経営リスクの一つです。現在、気候変動や人為活動によるCO2排出量の増加が重視されていますが、他にも森林破壊や海洋汚染、動植物の減少および絶滅等の環境破壊が深刻化しています。ESGの目標である持続可能な世界を実現するためには、ESGの観点を主体とする経営形態をとり、環境の変化へ対応していくことが重要になっています。
出典:環境省 『ESG検討会報告書』(2017年1月)p8~9
(3)投資家の評価指標として重要視されている
ESG経営は、2006年に国連が提唱した責任投資原則の中で、国際的な社会課題を解決し持続可能な世界を実現するための国際目標として紹介され、投資家が企業の長期的な存続を評価するための指標として注目し始めました。
ESG経営投資市場では、投資家はESGをどのくらい達成できているか、どのような取り組みをしているのかという観点から企業を評価しているのが現状です。
出典:日本銀行 『ESG 投資を巡るわが国の機関投資家の動向について』(2020年7⽉)p4~6
2. サプライチェーン全体でESG経営を行うメリット
サプライチェーン(Supply Chain)とは、原材料の調達から生産、加工、流通、そして販売により消費者に提供されるまでの一連の流れを指すものであり、この一連のつながりを鎖(Chain)に見立てた言葉です。市場のグローバル化に伴い、サプライチェーンは全世界規模に拡大しており、流通コストや地政学的リスクなどが企業の収益に大きく影響するようになりました。
サプライチェーンマネジメントは、このような一連の流れを最適化するために、各工程の運営方法やリスクなどを管理することです。また、IT化によって消費者の行動が多様化し、需要や販売状況についてもビッグデータを用いた分析ができるようになるなど、サプライチェーンマネジメントへの取り組み方も変化してきています。
持続可能な世界の実現には、政府および企業のESG活動が必要とされています。では、サプライチェーン全体でESG経営を行う企業にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。
出典:経済産業省 『サプライチェーンリスクと危機からの復旧 』
出典:経済産業省「SDGs経営ガイド 」(2019年5月)p.12~14
(1) 持続的な企業イメージの向上
ESG経営への取り組みは、利益だけを追及するのではなく、環境問題や社会問題に取り組むという姿勢をアピールできます。現在の企業活動は、一つの会社だけで消費者へ製品やサービスを提供することはできません。中小企業はもちろん、大手企業もさまざまな場面で供給網がつながっています。
SDGsやESGについての情報が豊富になり、消費者もサステイナブルな製品やサービスに関心を持っています。自社の長期的視点に立った取り組みを明確に伝えることで、消費者とのつながりが深く強固になり、最終的には自社の成長に寄与することができます。
出典:経済産業省「SDGs経営ガイド 」(2019年5月)p.26
(2) 投資や融資の優遇
企業において、ESG経営は投資家や金融機関が資金提供を判断する評価指標となっています。従来は財務諸表を見て投資判断をしていましたが、投資家の目線もESG経営をしているかが判断基準に加わっています。
また、投資家や金融機関の評価はサプライチェーン全体にも及んでおり、対応に遅れるとサプライチェーンから排除されてしまう可能性すらあるのが現状です。サプライチェーン全体でESG経営の取り組みが評価されれば銀行などからの評価も上がり、投資先として選ばれることにも繋がります。
出典:経済産業省「SDGs経営ガイド 」(2019年5月)p.12~14
(3) 労働環境の改善
ESG要素の「Social(社会)」では、労働環境の改善が大きなポイントです。国際規範に沿ったESG経営により、働きやすい環境づくりが期待できます。従業員一人一人が働きやすい環境にしようという意識が生まれれば、結果働きやすい環境ができていきます。その結果、従業員の定着率が高いと安定的な会社運営ができていると評価され、金融機関や株主などからの評価も上がる可能性があるでしょう。
出典:経済産業省 『SDGsとESGの社会的(Social)側面』(2019年2月)p18
3. ESG時代に求められるサプライチェーンマネジメント
国際競争力強化のため積極的なアウトソーシングを活用する企業が増える中、ESGの観点においては、サプライチェーン全体をサステナブルに管理することが求められています。では、ESG時代に求められるサプライチェーンマネジメントとはどのようなものなのでしょうか。
(1) クリーンエネルギーの活用
ESGでは、温暖化防止や省エネ化等の環境負荷の軽減、生物多様性の保全などが求められ、クリーンなエネルギーの利用や気候変動への具体的な対策が必要になります。サプライチェーン全体として、風力発電や太陽光発電による電力を増加させることや、温室効果ガスであるCO2を排出する石炭火力発電の利用を減らす必要があります。
出典:経済産業省 クリーンエネルギー戦略 中間整理(2022年5月13日)p100
(2) 生産および物流の高度化
生産および物流を取り巻く環境が変化している中、商品を生産・保管し配送するだけではなく、効率化と環境負荷低減への取り組みなど、求められる役割は根底から変わりつつあります。生産および物流の高度化を実現することは、ESGの社会への貢献が期待されており、生産・物流DXや標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化が求められています。
出典:国土交通省 総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)概要 p1~3
4. ESGに配慮した取り組み事例
企業がESG経営に取り組むことは、単に社会問題を解決するだけではなく、経営上のリスク回避や業績アップの効果も期待されています。事実、多くの企業がESGに配慮した事業運営を始めています。最後に、ESGに配慮した企業の取り組み事例をご紹介します。
(1) 株式会社リコー
株式会社リコーは2017年4月に日本企業では初めて、温室効果ガスの削減や有限資源の使用を抑制することで、気候変動を悪化させないようにする取り組みを宣言するRE100に加盟しました。リコーグループは、2030年までに再生エネルギーを電力消費の50%に切り替えるとしています。
また、生産拠点の取り組みでは、2019年度から中国、タイ、日本の5つの生産拠点で、A3複合機の組み立て生産を行う全社屋の使用電力を再エネ電力に切り替えており、サプライチェーンを巻き込んでESGに配慮した取り組みを行っています。
出典:リコー 再生可能エネルギー使用率の2030年度目標を50%に引き上げ(2021.03.02)
(2) 花王株式会社
花王株式会社は、サプライチェーン全体のトレーサビリティ確保や、資源保護、環境保存や安全、人権などの社会的課題の解決に貢献するため「調達に関わるサプライチェーンESG推進ガイドライン」を公開しています。具体的な取り組み内容として、取引先に、花王の「調達基本方針」「調達先ガイドライン」の理解を求めた上で、持続可能な原材料調達に向けた活動を実践しています。
出典:花王株式会社 推進ガイドライン 調達に関わるサプライチェーンESG(2021/08/24)
※上記2社の取り組み情報は()に記載されております日付時点になります。現在の情報は各社ホームページをご参考ください。
5. まとめ:ESG経営に取り組んで持続可能的な企業成長につなげよう
サプライチェーン全体でESG経営を行うことは、変化が著しく予測が難しい社会の中で、持続的に発展するために不可欠な時代になっています。ESG経営をサプライチェーン全体で推進するため、サプライヤーへの働きかけやグリーン調達の徹底、持続可能な調達など、ESGに取り組んでいる企業は日本でも増えてきておりますので事例を参考にしてみてはいかがでしょうか。