この記事は、カーボンニュートラルと金融についての説明、中央銀行がカーボンニュートラルへの取り組みに与える影響について解説します。金融機関はカーボンニュートラルを目指す企業やプロジェクトに資金を提供する役割を持つ重要な存在です。金融機関の中でも中央銀行が今後の気候変動に対してどのような役割を担うのかを解説します。
INDEX
カーボンニュートラルと金融
カーボンニュートラルと金融機関の関係性について解説します。
(1)カーボンニュートラルとは?
カーボンニュートラルとは、私たちが生活やビジネス活動において排出する二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの量を、吸収または削減することによって、温室効果ガスの排出を実質的にゼロの状態にすることを指します。
カーボンニュートラルを実現するには、私たちのCO2排出量を減らす努力と、自然を保護・育成することが大切です。その他にも、エネルギー効率の良い製品を使ったり、再生可能エネルギーを利用したりすることでもカーボンニュートラルを促進することが出来ます。
出典:経済産業省『「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?』(2021/2/16)
(2)カーボンニュートラルと金融の関係性
カーボンニュートラルへの移行には、膨大な資金が必要であり、企業や国家は、排出削減プロジェクトや持続可能なエネルギーインフラの構築など、低炭素経済への投資を行う事が必要です。
そこで、金融機関はカーボンニュートラルに関するプロジェクトへの資金提供や融資を通じて、カーボンニュートラルを支援する取り組みを行うと共に、環境に配慮した投資やグリーンファイナンスの枠組みを整備し、投資家は環境面を考慮した金融政策を行います。
また、カーボンニュートラルを実現することで、金融機関はカーボンニュートラルによる企業への影響というリスクを軽減することができます。具体的には、林業や漁業、畜産業など一次産業に属する企業は地球温暖化の影響を他企業に比べ、強く受けます。そこで、金融機関がリスクを最小化する取り組みを行う取り組みを事前に行うことで、金融機関への影響も間接的に抑えることができます。
カーボンニュートラルは環境に与える悪影響を減らす取り組みですが、それだけでなく、経済への影響が大きいという特徴もあるため、リスク管理の観点からも、企業や金融機関は、カーボンニュートラルを実現することで、将来のリスクを減らし、持続可能なビジネスを築くことができると考えられます。
出典:金融庁「金融機関によるトランジション・ファイナンスを通じた脱炭素化支援を推進していくための官民の取組について」(2023/3/1)
出典:経済産業省『カーボンニュートラル実現に向けたトランジション推進のための金融支援制度(利子補給事業等)』
中央銀行とカーボンニュートラルへの取り組み
中央銀行とカーボンニュートラルの関わりについて解説します。
(1)中央銀行とカーボンニュートラルの関わり
中央銀行は気候変動が経済に与えるリスクを評価し、金融の安定を守るために対策を考え、環境に優しい企業やプロジェクトに投資することで、カーボンニュートラルの推進を支援します。さらに、中央銀行は金融政策や規制を作ることで、金融機関が環境に配慮した活動を促します。そのため、中央銀行の取り組みは、経済の安定と環境の保護を両立させるために重要な役割を果たしています。
出典:一般社団法人 全国銀行協会『気候変動問題への銀行界の取組みについて』(2022/6)p3
(2)中央銀行とカーボンニュートラルの関わりの具体例
COP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)以降、世界全体でカーボンニュートラルの注目が高まっており、中央銀行も気候リスクに対応するための取り組みを行っています。
- 各国の中央銀行の取り組み
世界の120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げており、中央銀行も環境に配慮した金融政策を行うことで、カーボンニュートラルを目指す企業に対して貸出金利を優遇しています。
また、金融機関はネットゼロコミットメントを達成するための移行計画のフレームワークをつくることを検討しており、銀行業界でも、カーボンニュートラル行動計画フェーズ2において、個人向けの環境配慮型商品・サービス(預金・ローン等)の提供や、空調温度緩和の取組みなどが進められています。
- 日本銀行の取り組み
日本銀行は、気候変動対応に資するための取り組みについて一定の開示を行っている金融機関を対象に、そうした取り組みの一環として貸出金利を優遇することを検討しています。
具体的には日本銀行が気候変動に関する開示情報の収集・分析や、気候変動に関する研究の推進、金融機関に対する貸出金利の優遇などを行っています。
また、日本銀行の雨宮副総裁は、中央銀行が気候変動問題に取り組むうえで重要な論点となる、「中央銀行の責務」と「市場中立性」の問題について説明し、日本銀行が気候変動に対するリスク管理の一環として、金融機関に対して気候変動に関する情報開示を求めることが必要であると述べています。
- 気候変動対応オペ
日本銀行は、気候変動に取り組むための「気候変動対応オペ」を行っています。これは、気候変動に関する情報を集めたり分析したりすることや、研究を進めること、金融機関に対して特別な貸出金利を提供することなどが含まれます。
日本銀行は、金融機関に気候変動に関する情報を開示するよう求めたり、貸出金利を優遇するなど、具体的な取り組みを行っています。これらの取り組みは、気候変動に対するリスク管理の一環として行われています。
出典:一般社団法人 全国銀行協会『気候変動問題への銀行界の取組みについて』(2022/6)p9-p13
中央銀行とカーボンニュートラルの未来の展望
今後カーボンニュートラルを達成するに当たって、中央銀行はどのような動きをするのかをまとめました。
グリーンファイナンスの普及と環境への積極的な投資
中央銀行は環境への配慮を重視し、積極的にグリーンファイナンスを推進していくほか、具体的には、銀行や金融機関は、カーボンニュートラルを目指す企業やプロジェクトに対して優遇金利を提供し、環境に配慮した投資を促進します。
この中央銀行の取り組みにより、グリーンファイナンスが広まり、環境に負荷をかけない経済活動が増加することで、企業や個人は環境への意識を高め、持続可能な経済への転換が進むと考えられます。
気候変動リスクの適切な評価と予防策の強化
中央銀行は気候変動が経済に及ぼすリスクを適切に評価し、金融の安定を守るために対応策を講じます。また、環境への影響を受けやすい業種や地域に対しては、リスク管理や防災対策の支援を行い、環境リスクに対する備えを進めます。
カーボンニュートラルへの移行を支援する国際協力の強化
中央銀行は国際的な協力を通じて、カーボンニュートラルへの移行を支援し、異なる国や地域の中央銀行が情報共有やベストプラクティスの交換による持続可能な金融政策の実現を目指します。
さらに、中央銀行が環境に配慮した金融機関やプロジェクトに対しては国際的な資金提供や投資を行うことで、カーボンニュートラルへの移行を加速させる役割を果たすなど、より広範な影響を持つカーボンニュートラルの実現が可能となります。
中央銀行の環境基準と評価
中央銀行は環境に対する貢献度を評価するための指標を導入し、金融機関や企業の環境への取り組みを評価します。これにより、中央銀行の要請に応えるため金融機関や企業が積極的に環境への配慮を行う傾向となり、カーボンニュートラルの実現可能性を高める働きをします。
出典:一般社団法人環境金融研究機構『中央銀行は気候リスクにどう対応すべきか ~世界の動向を展望する~』(2023/3)
まとめ:中央銀行、地方銀行はカーボンニュートラルに関する投資、情報提供を行っているため、困ったら各機関にアクセスして情報を手に入れよう!
中央銀行は、気候変動による金融市場への圧力やサステナブルな成長への取り組みの重要性を認識しており、金融機関の役割に変化が生じています。そのため、積極的な投資や情報提供も行っており、カーボンニュートラルに力を入れているため、投資ないし融資を受けたい場合、相談したい場合などは各機関にアクセスしてみましょう!