CO2排出原単位とは何かをご存じですか。CO2排出原単位は、サプライチェーンのCO2排出量算定方式に必要な単位です。いまやグローバル・サプライチェーンにおいて、脱炭素への重要性は増しています。企業はサプライチェーンでのCO2排出量を算定し可視化することで、環境への負荷の課題に取り組みやすくなり、消費者への信頼性を獲得可能です。
本記事では、法人の皆様が知っておくべきサプライチェーンの脱炭素化の必要性やCO2排出量の算定方法、排出原単位と排出原単位データベースに関する基本的な知識について詳しく解説します。
INDEX
サプライチェーンの脱炭素化の重要性
サプライチェーンについて解説
まずはサプライチェーンについて解説しましょう。サプライチェーンは英語で「Supply Chain」で、日本語で「供給連鎖」という意味になります。製品を製造するための原材料の調達から、配送や在庫の管理、商品の販売、消費、そして再利用に至るまでの一連の流れのことを指します。企業のグローバル化が進展したことで、サプライチェーンはより複雑に拡大しており、それに伴いCO2排出量が増加しています。
エネルギー起源による温室効果ガス排出
サプライチェーンの脱炭素化はなぜ推進されなくてはいけないのでしょうか。エネルギー起源による温室効果ガス排出はScope3において非常に重要なカテゴリの1つです。
人間の産業活動にはエネルギー大量のエネルギーを使用し、2019年度の国内産業のエネルギー起源CO2排出量は、3億8600万トンにもなりました。大量のCO2は地球温暖化を加速させ、世界で気候変動による異常気象が多発し、気温が上昇する危機を招いています。
出典:経済産業省「温室効果ガス排出の現状等」(p.14)(2019)
サプライチェーン排出量を算定する必要性とはなにか?
これまでも企業は、CO2排出削減に取り組んできました。さらなる削減の可能性を推し進めるために、自社のみの排出削減ではなく、算定範囲をサプライチェーン全体に拡大する動きが国際的に高まっています。また、企業によって事業の内容は多義にわたるため、サプライチェーンの部門ごとにその排出状況もさまざまです。
サプライチェーン排出量を算定することで、自社の温室効果ガス排出のホットスポットを知ることができれば、より適切な削減対策を講じることが可能です。
出典:環境省「サプライチェーン排出量の算定と削減に向けて」(p.3.4.5)(2022.3.17)
サプライチェーン排出量とは
サプライチェーン排出量を解説
サプライチェーン排出量とは、サプライチェーンにおけるCO2排出量のことです。事業者のみの排出ではなく、すべての事業活動において排出されたものの合計を指します。サプライチェーンの排出量は、上流、自社、下流と、以下のScope1.2.3で表すことができます。
- Scope1
直接排出量とも呼ばれ、事業者による燃料使用等により、直接排出されるCO2排出量のことを指します。
- Scope2
間接排出量とも呼ばれ、他社から供給された電気や熱、蒸気の使用に伴うCO2排出量のことを指します。
- Scope3
Scope3は、Scope1と2をのぞくサプライヤーから排出される間接的なCO2排出量のことです。「GHGプロトコル(温室効果ガス排出量算定と報告の世界基準)」ではScope3は15のカテゴリに細かく分類されます。

出典:環境省「サプライチェーン排出量の算定と削減に向けて」(p.3)(2022.3.17)
サプライチェーン排出量可視化のメリット
サプライチェーンは年々拡大化し複雑化しているため、サプライチェーンのCO2排出量は見えづらくなっています。しかし、サプライチェーン排出算定法を使用し、排出量を明確化することで、それぞれの部門の課題や問題点が見えてきます。企業は自社のサプライチェーンでの排出量を自覚することが可能になり、サプライヤー同士の連携を深めることが可能です。
脱炭素を推進するためにもサプライチェーンのCO2排出量を算定し、可視化することは大きなメリットとなります。
算定方式に必要な排出原単位とは
原単位とはなにか
そもそも原単位とはなんでしょうか。原単位とは、本来は製造分野で使用されていた単位です。一つの製品を生産するのに必要な燃料や労力、それにかかる時間の量を指し、原単位が小さければ小さいほど生産は合理化されていると考えられます。現在は環境分野において、エネルギー管理やCO2排出の重要な指標としても用いられています。
CO2排出原単位とは
CO2排出量の算定方式の重要な単位として、「CO2排出原単位」があります。CO2排出原単位は「CO2排出係数」とも呼ばれ、経済活動量1単位あたりのCO2排出量のことです。排出原単位は、データベースから選択して使用する基本的な方法と、排出量を直接実測する、または取引企業からデータを提供してもらうなどの方法があります。
後者の方法でCO2排出量を算定する場合は、活動量に排出原単位を乗じることでCO2排出量を知ることができます。

出典:環境省『サプライチェーン排出量の活用について』(p.5)
出典:環境省『サプライチェーン排出量算定の考え方』(p.5)
排出原単位データベースとは?
排出原単位データベースとはどのようなデータであり、どのような種類があるのでしょうか。排出原単位データベースに関する基本的な知識についてご紹介します。
排出原単位とは、活動量あたりのCO2排出量のことで、CO2排出係数とも呼ばれています。電気1kWh使用当たりのCO2排出量や廃棄物の焼却1t当たりのCO2排出量などがあります。事業者などが活用できるよう、これらの排出原単位を取りまとめたものが排出原単位データベースです。
出典:環境省『サプライチェーン排出量算定の考え方』(p.5)
排出原単位データベースの種類
排出原単位データベースには様々な種類があります。
- 温対法算定・報告・公表制度における排出係数
- 温対法算定・報告・公表制度における【輸送】に関する排出係数
- 日本国温室効果ガスインベントリ報告書における【冷媒の漏洩】に関する排出係数
- 積み上げベースの排出原単位
- 産業連関表ベースの排出原単位
- 資本財の価格当たりの排出原単位
- 電気・熱使用量当たりの排出原単位
- 廃棄物種類・処理方法別排出原単位
- 廃棄物種類別排出原単位
- 旅客人キロ当たりの排出原単位
- 交通費支給額当たりの排出原単位
- 宿泊数当たりの排出原単位
- 従業員当たりの排出原単位
- 従業員数・勤務日数当たりの排出原単位
- 建物用途別・単位エネルギー使用量当たりの排出原単位
- 建物用途別・単位面積当たりの排出原単位
- 国内排出原単位DB
- 海外排出原単位DB
出典:環境省『サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等のための排出原単位データベース(Ver.2.5)』(2018年3月)(p.2)
サプライチェーン排出量の算定方式
サプライチェーン排出量の算定方式
まずはCO2の排出量の基本的な算定方式をご紹介します。
- 排出量=活動量×排出原単位
活動量とは、事業者の活動の規模に関する量です。この基本方式をもとに、自社のサプライチェーンに当てはまるカテゴリ別に排出量を算定します。カテゴリはそれぞれ前述したScope1.2.3に分類され、合計したものがサプライチェーン排出量になります。
- サプライチェーン排出量=Scope1排出量+Scope2排出量+Scope3排出
このように算定方式を活用することで、企業だけではなく個人でもCO2排出量を算定することが可能になります。可視化されることでCO2削減とともに省エネへの意識も高まり、企業、消費者ともに環境負荷低減に貢献可能です。
排出原単位データベースの選び方
排出原単位データベースには様々な種類があり、スコープに適したデータベースがあります。ここではスコープ1から3ごとに、どの排出原単位データベースを使用するのが適切なのかをご紹介します。
排出原単位データベース:スコープ1の算定
スコープ1は、燃料の燃焼や工業プロセスなどにより事業者が直接排出するCO2排出量のことです。輸送に関する活動に伴うCO2排出量を算定する時は、温対法算定・報告・公表制度における【輸送】に関する排出係数を用います。輸送以外の活動に関する場合は、温対法算定・報告・公表制度における排出係数や日本国温室効果ガスインベントリ報告書における【冷媒の漏洩】に関する排出係数、国内排出原単位DBを用います。
排出原単位データベース:スコープ2の算定
スコープ2は、他社から供給された電気や熱、蒸気の使用に伴い事業者から間接的に排出されたCO2排出量のことです。スコープ2を算定する時は、温対法算定・報告・公表制度における排出係数を用いてCO2の算定を行います。
排出原単位データベース:スコープ3の算定
スコープ3は、スコープ1と2を除く他社からのCO2排出量のことです。スコープ3は15のカテゴリと任意のカテゴリから構成されており、カテゴリごとに用いる排出原単位データベースが細かく定められています。たとえばカテゴリ1「購入した製品・サービス」におけるCO2排出量を算定する場合は、積み上げベースの排出原単位や産業連関表ベースの排出原単位、国内排出原単位DB、海外排出原単位DBのいずれかを用います。
出典:環境省『サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等のための排出原単位データベース(Ver.2.5)』(2018年3月)(p.2.3)
まとめ:排出原単位を理解に基づくサプライチェーンの脱炭素化で消費者からの信頼を高めよう!
サプライチェーンの脱炭素の必要性と、CO2排出量の算定方法に必要な「CO2排出原単位」について解説しました。サプライチェーンがグローバル化するにつれ、環境負荷提言の取り組みの重要性は増すでしょう。企業は自社の取り組みだけではなく、サプライチェーン全体への取り組みを行うことが必須となります。取り組みを明確化し、消費者や投資家への信頼を得ることは企業の環境価値を大いに高めます。
ぜひサプライチェーンの排出量算定を行い社会的信用を高め、持続可能な未来へ貢献する企業へと踏み出してはいかがでしょうか。
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