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商用車等の脱炭素化に向けた取り組みとは?国・企業・自治体の最新動向と支援策を徹底解説

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商用車等の脱炭素化に向けた取り組みとは?国・企業・自治体の最新動向と支援策を徹底解説

現代社会において、商用車(トラック、バス、タクシー、バンなど)は、私たちの生活と経済を支える物流・運輸の基幹です。しかしながら、その利便性の裏側で、商用車が排出する二酸化炭素(CO₂)は、運輸部門全体の温室効果ガス排出量において大きな割合を占めており、2050年カーボンニュートラル実現に向けた最も重要な課題の一つとなっています。日本政府は、この商用車分野の脱炭素化を加速させるため、環境省、国土交通省、経済産業省が連携し、EV(電気自動車)FCV(燃料電池車)といったゼロエミッション車(ZEV)への転換を強力に支援する各種施策を打ち出しています。これには、車両導入への補助金、充電・水素インフラの整備支援、デジタル技術を活用した運行効率化の促進などが含まれます。

本記事では、この喫緊の課題である商用車等の脱炭素化に向けた国の政策全体像EV/FCV導入の具体的な支援制度、そして先進的な企業や自治体の取り組み事例を徹底的に解説します。脱炭素化を単なるコストではなく、運輸業界の競争力強化と持続可能な物流体制への転換の好機と捉えるための道筋を整理していきましょう。


INDEX

商用車の脱炭素化が求められる背景

商用車の脱炭素化は、国際的な環境目標の達成と、国内の物流体制維持という両面から、避けて通れない課題となっています。

運輸部門が温室効果ガス排出の約2割を占める現状

日本のGHG(温室効果ガス)排出量のうち、運輸部門が占める割合は、最終エネルギー消費ベースで約2割に上ります。その中でも、トラックやバスなどの商用車は、自家用車よりも走行距離が長く、大型であるため、一台あたりの燃料消費量・CO₂排出量が大きくなります。

この現状を放置すれば、日本が国際公約として掲げた2050年カーボンニュートラルの目標達成は極めて困難になります。特に、運輸部門の脱炭素化は、エネルギー消費構造を大きく変えるグリーントランスフォーメーション(GX)の成否を握る鍵となります。

物流・配送需要の拡大によるCO₂排出課題

近年、eコマース(電子商取引)の急速な普及やサプライチェーンの多様化に伴い、物流・配送需要は拡大の一途を辿っています。特に、都市部やラストワンマイル(最終拠点から顧客への配送)における小型商用車の運行頻度が増加しており、運行台数や走行距離の増加が、GHG排出量の削減努力を相殺してしまうという構造的な課題に直面しています。

この需要拡大に対応しつつ排出量を削減するには、単なる燃費改善ではなく、「排出量ゼロ」を実現できるEVやFCVといったゼロエミッション車(ZEV)への大規模な転換が不可欠です。

2050年カーボンニュートラル実現に向けた国の方針

日本政府は、2050年カーボンニュートラル実現に向けたロードマップの中で、運輸部門に対し、非常に野心的な目標を設定しています。

  • 2040年までの電動化目標: 中長期的な目標として、2040年までに販売される新車について、乗用車だけでなく商用車についても非化石燃料車へ転換を図る方針が示されています。
  • 国際的な要請: 日本はパリ協定やG7などの国際的な枠組みにおいても、運輸部門の脱炭素化を主導する立場が求められており、これは国内企業がグローバルなサプライチェーンで競争力を維持するための必須条件ともなっています。

商用車の脱炭素化は、もはや環境対策ではなく、国の経済戦略、産業競争力、そして国際的な信頼性に直結する国家的な課題として位置づけられています。


政府が推進する商用車脱炭素化政策の全体像

商用車の脱炭素化は、単一の省庁の所管にとどまらず、複数の省庁が連携し、技術開発、インフラ整備、需要創出を統合的に進めています。

環境省・国交省・経産省の連携による取り組み

商用車の脱炭素化は、以下の三省庁がそれぞれの役割と専門性を活かし、三位一体で推進されています。

省庁主要な役割と支援策
環境省需要創出・補助金: EV/FCV導入補助、充電インフラ整備補助。地方自治体との連携によるモデル事業支援。CO₂排出削減効果の最大化。
国土交通省インフラ・規制: 道路運送車両法に基づく技術基準整備、運行管理の効率化促進。物流現場の課題解決。
経済産業省技術開発・産業支援: 蓄電池・水素技術のイノベーション支援、車両メーカーへの開発補助、サプライチェーン全体の競争力強化。

この連携により、技術開発(経産省)からインフラ整備(国交省)、そして市場普及(環境省)に至るまで、切れ目ない支援が実現されています。

「商用車等の脱炭素化ロードマップ」策定の背景

政府は、2050年目標に向けた具体的かつ実行可能な道筋を示すため、関係業界団体や専門家を交えた議論を経て、「商用車等の脱炭素化ロードマップ」を策定しています。

このロードマップは、単にZEVの導入目標を示すだけでなく、車両の用途・走行距離・積載量といった商用車の多様な特性に応じた、最適な技術オプション(EV、FCV、代替燃料)の導入戦略や、インフラ整備の時期、サプライチェーン全体での排出削減策など、具体的なアクションプランを含んでいます。

2030年・2040年に向けた削減目標の方向性

ロードマップや政策文書では、以下のような中長期的な目標の方向性が示されています。

  • 2030年目標: ZEVの普及を加速させ、特に小型商用車(バンなど)や、定時・定ルート運行が明確なバスなどにおいて、一定割合以上のZEV導入を目指す。この時期は、車両のラインナップ拡充とインフラの初期整備を達成するフェーズと位置づけられます。
  • 2040年目標: ZEVの販売比率を大幅に高め、新車販売における非化石燃料車100%を目指す方向性。特に航続距離や積載量に課題のある大型トラック・トレーラーなどにおいては、FCVや代替燃料が重要な役割を担うことになります。

これらの目標達成に向け、国は毎年、補助金制度の拡充や規制緩和、技術基準の見直しなど、具体的な施策を機動的に実施しています。


技術別に見る脱炭素化の方向性

商用車の脱炭素化は、乗用車とは異なり、その多様な用途と過酷な運用環境から、単一の技術に頼るのではなく、複数の技術オプションを組み合わせるマルチパス戦略が取られています。

電動化(EVトラック・EVバン)の普及

EV(電気自動車)は、短・中距離の配送や、都市内物流、ラストワンマイル配送を担う小型・中型商用車において、最も早期に普及が期待される技術です。

  • メリット: 走行時の排出量がゼロであることに加え、低速走行が多い都市内では燃費効率が良い。また、騒音や振動が少ないため、夜間・早朝配送にも適しています。
  • 課題: バッテリーのコスト、充電時間、そして特に大型車における航続距離積載量への影響(バッテリー重量による積載量の減少)が課題です。

国は、このEV導入の初期コストとインフラ課題を解消するための補助金や充電設備整備支援に重点を置いています。

水素燃料電池車(FCV)の商用利用促進

FCV(燃料電池車)は、EVの課題を解決する、特に大型・長距離輸送における脱炭素化の切り札として位置づけられています。

  • メリット: 航続距離が長く、大型トラックでも長距離の輸送に適しています。また、水素充填時間がEVの充電時間と比べて大幅に短いため、稼働率を重視する物流業務に適しています。
  • 課題: 車両コストがEV以上に高額であること、そして水素製造・供給・充填ステーションといったインフラ整備がまだ限定的であることが課題です。

国は、幹線道路沿いや物流拠点など戦略的な立地での水素ステーション整備支援や、車両価格の引き下げに向けた技術開発支援を強化しています。

バイオ燃料・合成燃料など代替燃料の活用

EV・FCVへの転換が難しい、既存のディーゼル車や、大規模なインフラ整備が追いつかない過渡期においては、代替燃料の活用が重要視されています。

  • バイオディーゼル燃料(BDF): 廃食油などから製造され、既存のディーゼルエンジンでも利用可能な燃料。原料調達や製造コストが課題。
  • 合成燃料(e-fuel): CO₂と水素から合成される燃料で、理論上カーボンニュートラルを実現可能。既存のインフラをそのまま利用できるメリットがあるが、製造コストが極めて高いのが課題です。

これらは、「電動化・水素化が難しい領域や期間」における現実的な排出削減策として、技術開発と供給体制の構築が並行して進められています。

運行効率化・物流最適化による間接的削減

車両の動力源転換だけでなく、運行そのものの効率化によるGHG排出削減も重要な柱です。

  • 運行管理の最適化: AI・IoTを活用したルート最適化、積載率の向上、空車回送の削減。
  • 共同配送: 複数事業者が連携し、配送ルートを統合することで、総走行距離と運行台数を削減。
  • エコドライブの推進: ドライバーへのエコドライブ教育と、デジタル技術による運行データのフィードバック。

これらの間接的な削減策は、ZEV導入による直接的な削減効果と相乗効果を生み出します。


商用車のEV・FCV導入事例

国の支援制度を活用し、商用車のZEV導入を先行して進める企業や自治体の事例は、今後の脱炭素化のモデルケースとなっています。

物流大手企業によるEVトラック導入の成功例

日本の大手物流企業やスーパーマーケットチェーンなどは、自社の脱炭素目標達成のため、特に小型・中型EVトラックの導入を積極的に進めています。

  • 事例: 大手宅配便業者が、都市内集配用の小型バンを数千台規模でEVに順次置き換え。初期導入コストは補助金でカバーしつつ、夜間の安価な電力で充電することで、燃料費の大幅な削減を実現。
  • 成功パターン: 自社の物流センターに大容量の充電設備(ディポチャージ)を設置し、運行ルートと充電スケジュールを綿密に管理することで、航続距離の課題をクリア。運行データに基づいた充電管理システムが、安定稼働を支えています。

地方自治体・配送業者のゼロエミ車活用事例

地方自治体においても、公用車やごみ収集車、コミュニティバスなど、定ルート・定時運行が明確な車両からZEV化を進めています。

  • 事例: ある地方都市では、市内バス路線のうち、運行距離の短いルートをFCVバスに転換。地域の水素ステーション(国交省・経産省の補助事業を活用)と連携することで、ゼロエミッションの公共交通を実現。
  • メリット: 災害時にFCVバスやEVが移動電源として活用できるため、地域のレジリエンス(強靭性)向上に貢献し、市民の理解を得やすいというメリットがあります。

共同配送やラストワンマイルでの新モデル

中小の運送事業者が連携する共同配送において、ZEVが導入される事例も増えています。

  • 事例: 複数の小売店や食品卸業者が共同で、都市中心部の配送に共同利用型のEVバンを導入。配送ルートの重複を解消しつつ、EVを活用することで、CO₂排出量を削減。
  • 新モデルの創出: ラストワンマイル配送に特化したEVバイクや超小型モビリティの導入は、配送の効率化と同時に排出量ゼロを実現し、新たな地域密着型の配送モデルとして注目されています。

インフラ整備と課題

商用車の脱炭素化の成否は、車両の進化だけでなく、それを支える充電・水素インフラの整備にかかっています。

充電設備・水素ステーションの整備現状

国は、ZEV導入の障壁を取り除くため、インフラ整備への支援を強化しています。

  • 充電インフラ: 環境省や経産省の補助金により、企業の営業所や物流センターなど、商用車のディポ(拠点)における大容量急速充電設備の設置が進んでいます。また、公共の充電ステーションの設置数も増加傾向にあります。
  • 水素ステーション: 経済産業省を中心に、大型FCVトラックの運行が想定される主要幹線道路沿いや、大規模な物流拠点近郊に、高圧・大容量の水素ステーションの整備が進められています。

商用車向けインフラの課題(容量・立地・コスト)

インフラ整備は進んでいるものの、商用車特有の課題が残されています。

  • 大容量・高出力の必要性: 大型EVトラックは、乗用車とは比較にならないほど大容量のバッテリーを搭載するため、短時間で充電を完了させるには超高出力(例:メガワット級)の充電設備と、それに耐えうる電力契約が必要であり、コストと電力供給の調整が大きな課題です。
  • 立地の制約: 水素ステーションは、安全性の観点から立地が制限されることが多く、物流事業者が利用しやすい幹線道路沿いやインターチェンジ近郊といった戦略的な場所での整備が急がれています。
  • イニシャルコスト: 水素ステーションの建設・運用コストは極めて高額であり、車両の普及と並行してインフラの低コスト化と利用率の向上が求められます。

官民連携によるインフラ整備支援の取組

これらの課題を乗り越えるため、国は「官民連携」による集中的な支援を行っています。

  • 補助金による初期投資支援: 充電設備や水素ステーションの建設費用に対し、国が最大で2/3〜1/2程度を補助することで、民間事業者の投資リスクを軽減しています。
  • 規制緩和と標準化: 高出力充電設備の技術基準や、水素ステーションの設置規制の緩和、さらには充電・充填規格の国際標準化に向けた取り組みが進められています。

脱炭素化を支援する補助金・支援制度

商用車をEV・FCVに転換する際の最大の障壁である「初期コスト」を解消するため、国は複数の補助金制度を用意しています。

環境省「商用車等の脱炭素化促進事業」概要

環境省が主導するこの事業は、商用車のZEV導入と、それに必要なインフラ整備を包括的に支援するものです。

  • 目的: CO₂排出削減効果の高いZEVの導入を促進し、国内における普及を加速させること。
  • 対象: 地方自治体、運輸事業者、荷主企業、リース事業者など。
  • 特徴: 車両導入だけでなく、インフラ整備(充電設備)もセットで支援することで、車両導入後の安定運用を確保することを重視しています。

EV・FCV導入補助、充電設備補助の内容

具体的な補助金の内容は、年度によって変動しますが、構造は以下のようになっています。

補助対象補助内容の目安
EV・FCV車両本体車両価格と従来の同等車種との差額の一部(例:1/3〜2/3)。特に航続距離の長い大型車や、FCVは優遇される傾向があります。
充電設備(V2L/V2H含む)設備費用、工事費用の一部(例:1/2〜2/3)。特に、複数の商用車を同時に充電できる大容量・高出力な設備や、再生可能エネルギーと連携した設備は優遇されます。
外部給電設備災害時に移動電源として活用できるV2L(Vehicle to Load)V2H(Vehicle to Home)機器の導入費用も対象となる場合があります。

これらの補助金は、車両の初期コストを大幅に引き下げ、ガソリン・軽油の燃料費削減効果と合わせることで、投資回収期間(Payback Period)を現実的な範囲に収めることを可能にします。

地方自治体の追加支援制度・連携プロジェクト

国の補助金に加え、地方自治体独自の追加支援策も重要です。

  • 上乗せ補助金: 一部の自治体では、国の補助金に加えて、車両導入費や充電設備費用に対し独自の上乗せ補助金を設定し、地域内のZEV導入を強力に後押ししています。
  • モデル地区整備: 地域内の物流拠点と連携し、ZEVを集中導入する「モデル地区」を指定し、集中的な充電インフラ整備や、再生可能エネルギー供給体制の構築を支援するプロジェクトも展開されています。

企業・自治体の取り組み事例

商用車の脱炭素化は、個々の企業の努力だけでなく、サプライチェーン全体、そして地域社会を巻き込んだ連携によって成果を上げています。

大手運輸会社のサプライチェーン全体での削減施策

大手運輸会社は、自社の車両ZEV化だけでなく、取引先や荷主を巻き込んだサプライチェーン全体の排出削減に取り組んでいます。

  • グリーン物流調達: 荷主企業と協力し、ZEVを使用する運送事業者を優先的に利用したり、インセンティブを付与したりするグリーン物流調達の仕組みを構築。
  • 共同配送とモーダルシフト: デジタル技術を活用し、複数の荷主の貨物を共同で配送する共同配送を推進。また、長距離輸送をトラックから鉄道や船舶(モーダルシフト)に切り替えることで、間接的なCO₂削減を実現。

自治体によるゼロエミ車導入支援・モデル地区整備

自治体は、地域の脱炭素化と同時に、公共サービスの向上を目指しています。

  • 公用車・公営バスのZEV化: 公用車や公営の路線バス、ごみ収集車などを計画的にZEVに転換。これにより、地域内でのZEVの認知度向上と、ZEVの市場形成をリード。
  • モデル地区(ゼロエミッション物流エリア)整備: 物流拠点や工業団地を脱炭素化のモデル地区に指定し、再生可能エネルギー供給と大容量充電インフラをパッケージで整備。地区内の企業に対し、インフラ共有を前提としたZEV導入を促す。

中小事業者への支援ネットワーク構築

日本の物流を支える中小事業者の多くは、資金力や情報・人材が不足しており、ZEV導入への障壁が高いのが現状です。

  • リース・レンタルスキーム: 初期コストの負担を軽減するため、補助金を活用したリース・レンタル事業を中小事業者向けに展開。
  • 技術・情報提供ネットワーク: トラック協会や地域金融機関と連携し、ZEV導入による燃料費削減効果の試算や、最適な充電計画に関する情報提供・コンサルティングネットワークを構築。

データとデジタル技術の活用

商用車の脱炭素化は、EV・FCVというハードウェアの転換に加え、運行を最適化するデータとデジタル技術によって支えられています。

運行管理システムによるCO₂可視化・効率化

デジタルタコグラフやGPSを活用した運行管理システム(OMS)は、単なる動態管理に留まらず、CO₂削減のための重要なツールとなっています。

  • 排出量の可視化: 車両ごとの燃料消費量や走行距離データに基づき、リアルタイムでCO₂排出量を算定・可視化。ドライバーや運行管理者に対し、削減目標に対する進捗状況をフィードバック。
  • エコドライブ評価: アクセル・ブレーキ操作のデータを分析し、エコドライブ(燃費を抑えた運転)のスコアを評価。ドライバーへの継続的な教育とモチベーション向上に活用。

AI・IoT活用で燃費改善・最適ルート選定

AI(人工知能)とIoT(モノのインターネット)技術は、運行の効率を極限まで高めます。

  • 最適ルート選定: リアルタイムの交通情報、天候、車両の積載状況に加え、充電インフラの利用状況地形などをAIが解析し、燃料消費が最も少なくなる最適ルートを自動で選定・推奨。
  • 予知保全と燃費改善: IoTセンサーが収集した車両データをAIが解析し、故障の予知保全を行うとともに、車両のコンディションを最適化することで、燃費(電費)性能の維持・改善に貢献。

モビリティデータ共有による社会全体の効率化

個別企業のデータを地域社会や他の事業者と共有することで、物流全体の最適化を図る取り組みも進んでいます。

  • 空車回送の削減: 運送事業者間で、空車回送中のトラックの情報を共有し、帰り荷のマッチングを効率化。
  • 地域共同物流プラットフォーム: 自治体などが中心となり、地域内の物流データを集約・分析するプラットフォームを構築し、共同配送のポテンシャルを特定・促進。

今後の展望と課題

商用車の脱炭素化は道半ばであり、今後の政策・技術開発が成功の鍵を握ります。

中小事業者への導入コスト・運用課題

現在の最大の課題は、日本の物流を支える中小事業者への普及です。

  • コスト障壁: 補助金があっても、依然としてEV・FCVの初期コストは高く、中小事業者の資金繰りを圧迫します。また、リースやレンタルスキームの普及が急務です。
  • 運用・充電の不安: 運行管理者やドライバーのZEVに関する知識や経験が不足しているため、「充電が間に合わない」「トラブル対応ができない」といった運用面での不安を払拭するための教育・サポート体制の強化が必要です。

車両・インフラの同時普及が鍵

ZEVの普及(車両)と、それを支えるインフラの整備は、「鶏と卵」の関係にあります。

  • シナジー効果: インフラがないと車両は売れず、車両がないとインフラ投資が進みません。国は、「需要と供給を同時に創出する」ための集中的な政策投資を継続する必要があります。
  • メガワット級充電の実現: 特に大型EV向けに、電力会社やインフラ事業者が連携し、メガワット級の超高出力充電インフラを、物流のボトルネックとなる場所に戦略的に整備することが、今後の最重要課題となります。

技術開発・国際連携による新たな可能性

長期的には、技術革新と国際的な協調が、脱炭素化を加速させます。

  • 全固体電池: 航続距離と充電速度の課題を一挙に解決しうる全固体電池などの次世代バッテリー技術の実用化。
  • クリーン水素の製造: FCV普及の前提となる、再生可能エネルギー由来の安価なクリーン水素の大量製造技術と、国際的な供給網の構築。
  • JCM活用: JCM(二国間クレジット制度)などを活用し、日本の優れたZEV技術を途上国へ展開することで、グローバルな排出削減に貢献しつつ、技術の量産効果によるコストダウンを図る国際連携も重要です。

とめ:インフラと連携を踏まえた中小事業者のGX支援が急務

商用車等の脱炭素化は、日本の経済構造と物流インフラの未来を左右する重要テーマです。単に地球環境を守るだけでなく、燃料コストの変動リスクから解放され、グローバルなグリーン調達基準に対応できる「運輸業界のGX(グリーントランスフォーメーション)」そのものです。

この巨大な変革を成功させるための鍵は、次の二点に集約されます。

  1. インフラ整備の加速: 特に大型車に必要なFCV用水素ステーションやEV用メガワット級充電設備など、高コスト・高難度のインフラ整備を、官民が連携して戦略的に進めること。
  2. 中小事業者への支援: 補助金、リース、情報提供ネットワークといった多角的な支援を通じて、日本の物流を支える中小事業者が不安なくZEV導入に踏み切れる環境を整備し、脱炭素化の取り組みを点から面へと拡大させること。

今こそ、「インフラと連携を踏まえた中小事業者のGX支援」を急務とし、国・企業・自治体が一体となって取り組みを加速させることが、持続可能で強靭な物流体制と、カーボンニュートラル社会の実現を確実なものとします。


【参考文献・出典】

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