リサイクル業界は、私たちの生活に欠かせない社会インフラでありながら、その実態はあまり知られていない分野かもしれません。そんなリサイクル業界において、神戸市に本社を置き、古紙をはじめとする資源物や廃棄物全般のリサイクルを手掛ける企業として、関西を中心に全国へとネットワークを拡大している企業があります。
今回は、1956年に創業し、来年で70年を迎える大本紙料株式会社の若山氏、中村氏にお話を伺いました。
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草の根から始まった全国ネットワークの構築
——まず、御社の企業概要と事業内容について教えてください。
若山: 私ども大本紙料は、1956年に創業した神戸市に本社を置く、古紙等の資源物や廃棄物全般のリサイクルを行う企業です。神戸市並びに兵庫県および関西を中心とした各地にリサイクル工場を構え、来年で創業から70年を迎えます。
現在では古紙のみにとどまらず、総合資源リサイクル企業を目指し、産業廃棄物中間処理場を運営するなど、廃棄物関連事業全般の強化に取り組んでいます。また、関東においても営業拠点やリサイクル工場を展開するなど、関西から全国へと事業拠点を拡大中です。
——全国展開について、どのような戦略で取り組まれてきたのでしょうか?
若山: 実は私どものような古紙問屋や廃棄物業者で、全国津々浦々に直接直営工場があるような会社というのはあまり存在しないんです。産廃業者さんですと、プライムに上場しているような企業もありますが、それでもある程度一部の地域での展開となっています。
もともと古紙回収業というのは、本当に一人で始めているところが多く、私どもも創業者はリヤカーを引いてお店を回って回収することからスタートしたという逸話を聞いています。そういった中で、当社が特に大事にしているのは、協力してくれる会社、仲間を増やしていくという方向性です。
例えば、神戸でお仕事をいただいているお客様から「今度北海道にお店を出すから、大本さんなんとか手伝ってよ」と言われることがあります。その時に「うちは北海道に工場がないのでできません」と言ってしまうと、取引も広がりませんし、お客様との関係もそこで終わってしまいます。
そこで、北海道で信頼できる同業他社さんと関係を築いて、協力していただくという形で対応することが多いんです。要は、自社で全部何でもかんでもできるというよりは、そういった仲間とのネットワーク、グループ作りを重視してきたのが当社の特徴だと捉えています。
顧客ニーズに応える中で生まれた事業拡大
——ネットワーク拡大の背景には、お客様のニーズがあったということですね。
若山: まさにその通りです。もともと私どもは古紙回収業だけだったんです。ただ、創業当初から本当に長いお付き合いをしていただいているある企業様がいらっしゃいまして、その企業様がどんどん業務を拡大されていく中で、幸いにして信頼関係を構築することができました。
新しいエリアでどんどん依頼が増えるたびに、我々もそちらに進出して直営工場を設けたり、仲間の企業作りを進めました。また、「古紙だけでなく、廃棄物も大本でやってほしい」というようなご要望をいただいて、業務を拡大するようになったりもしました。
中村: 一般廃棄物の許可を持ったり、産業廃棄物の処理許可なども取得して、事業を拡大してきました。スタートのきっかけは、やはりお客様のご要望があってのことですね。

総合資源リサイクル企業への挑戦
——「総合資源リサイクル企業」を目指すとおっしゃいましたが、具体的にはどのようなイメージでしょうか?
若山: 古紙といった資源物が我々のメインではありますが、一方で、廃棄物というのは今、日本全体の問題でもあります。いかにして廃棄物量を削減するか、いかにしてリサイクル率を高めるか。これは環境保全や廃棄物処理に関する法体系において定められていることでもあります。
最近のサーキュラーエコノミーや3Rといった流れが非常に強く求められている中で、我々としても、ただ古紙を回収します、廃棄物を処理しますというだけでなく、企業様における新たなニーズをもっと掴んで、貢献するような形を明確に作っていかなくてはいけないと考えています。
そのために、脱炭素への取り組みはもちろん、まずは排出量の算定から始めているところです。また、これまでは単純に処分するだけだったものを、いかにリサイクル率を高めるかということに取り組んでいます。
さらに、自社でそういったことを行うだけでなく、例えば「こういうネットワークでこういった業者さんはこういったものをリサイクルできますよ」といった、最適な処理方法を提案するコンサルタント的な業務も増やしていきたいと思っております。
環境・サステナビリティへの取り組み
——お客様からのサステナビリティに関するニーズはどのようなものが多いですか?
若山: 一番身近なものとしては、これまで埋め立てていた廃棄物を、リサイクルできないかという相談が強いですね。特に数年前からのプラスチック問題もあり、プラスチック関係の引き合いは強いと感じています。
お客様の方でも、まだまだ漠然として明確になっていないところから、「なんとかできないか」「何かないか」といった相談が多いですね。
——御社自身の環境への取り組みについて教えてください。
中村: 大本紙料自体の取り組みとして、例えば電気に関しては100%再生可能エネルギー由来のものを利用するという契約をしております。また、SDGsなどが話題になるずっと以前から、太陽光パネルを本社工場の上に設置して利用しています。
最近では昨年ぐらいから、工場内で使用しているフォークリフトの電動化を進めています。我々の古紙工場で使うようなフォークリフトは、一般的に皆さんが想像されるものよりもはるかに大きく、持ち上げられる重量も大きいかなりの大型リフトなんです。
大型リフトの電動化は世の中にもまだほとんど導入されていない中で、メーカーさんとも相談して、かなり早い段階で導入させていただきました。西日本で初だったと伺っています。
——そうした取り組みの根底にある考えはありますか?
若山: 個人的に思うのは、そもそも僕たちは世間一般の企業さんと違って、廃棄物リサイクルという、まさにこの環境問題に直結することが主な業務なわけです。我々が「弊社自体は何もしてません」というのでは、説得力がないと考えています。
私たちはリサイクル、脱炭素、再資源化の、いわば最前線にいる立場として、まず自らこういう姿勢をとっているということを示していくのが必要なのかなと思っております。
市場の変化と挑戦
——古紙の市場環境についてはいかがでしょうか?
中村: 古紙の回収量は、2007年をピークとして、昨年度は約7割の水準となっており、3割減少している状況です。人口減少とデジタル化の進展により、紙製品の使用量も減少しており、今後も一層この傾向が続くと予想されます。
若山: 十年前と比較しても明らかに減少傾向にあります。新聞・雑誌などは特に顕著に減少しています。比較的維持されているのはダンボール程度で、リサイクル可能な紙については今後も減少が続く見通しです。
——そのような市場環境の中で事業が拡大している要因は何でしょうか?
若山: 幸いなことに、仕事量自体は大幅に増加しています。5年前、3年前、さらには昨年と比較しても継続的に拡大している状況です。これは営業による新規開拓の取り組みと、長年培ってきた取引先様との信頼関係によるものと考えています。
古紙の回収量が減少する中でも、一定のシェアを維持できており、取引先数も着実に増加しています。特に現在は、企業様において廃棄物処理に関するリスク意識が高まっていることが影響していると思われます。
廃棄物処理については排出者責任が法的に定められており、最終的な責任は排出企業様に帰属するため、信頼できる業者への依頼を重視される傾向があります。当社に対して「大本に任せておけば安心」という評価をいただいていることが、業務拡大につながっていると考えています。

組織体制と働く環境
——組織体制について教えてください。
中村: 経営陣の下に、総務部門、営業部門、業務部門、各工場が並列で配置されています。営業については、東京支店があり、営業本部の下に管理部、開発部、推進部の3部署を設置しています。
事務部門は神戸の本社に集約されており、営業部門と業務部門は同一建物内で業務を行っています。営業部門は部署としては分かれていますが、同じオフィススペースで業務を行っており、もともとは一つの部署でした。風通しの良い職場環境が特徴で、営業担当者と同じオフィスに役員も在席しているため、迅速な報告・相談が可能な環境を整えています。
企業文化と価値観
——大切にしている企業文化について教えてください。
若山: 当社の企業理念は「地球環境保全のため、資源リサイクル及び廃棄物適正処理を推進する」というものです。創業当初から現在まで一貫して当社の中核を成しています。
また、行動指針として「大きい会社より良い会社」「約束第一、人や期待を裏切らない」を掲げています。これらの理念や行動指針が当社が最も重視している価値観であり、社員一人一人に浸透していると考えています。
——職場の雰囲気について教えてください。
若山: 良い意味で自由度の高い職場環境です。過度に厳格な管理は行わず、各自の自主性を重視した運営を行っています。日常的なコミュニケーションも活発で、自由な社風の中で各自が働きがいを感じながら業務に取り組んでいます。
失敗に対しても寛容な企業風土があります。前向きな取り組みの結果生じたミスについては、過度に責任を追及することはありません。また、個人に対する売上ノルマなどの設定も行っていません。
——評価基準について教えてください。
若山: 数値化が困難な側面もありますが、最も重視するのは顧客からの評価です。売上数字だけでなく、顧客満足度を重要な指標として考えています。
当社では長期的な取引関係を重視しており、5年から10年、長い場合は創業当初からの取引を継続している企業様もあります。このような長期にわたる顧客との良好なコミュニケーションが維持できることが、重要な評価軸となっています。
働く魅力とワークライフバランス
——働く魅力について教えてください。
若山: 業務における社会的意義とやりがいを直接的に実感できることが大きな魅力です。資源物や廃棄物の回収・処理は社会インフラとしての役割を担っており、社会にとって不可欠な業務であることを、特にコロナ禍の期間に強く実感しました。
リサイクル業界は一般的には厳しい職場として認識される場合もありますが、私自身は自分の子供に対して、リサイクル業務に従事していることを誇りを持って伝えています。
中村: コロナ禍において他業種が業務縮小に直面する中、当社は逆に取引量が増加しました。これにより、社会インフラとしての重要性を改めて認識し、人々の生活が続く限り必要とされる業界であることを実感しています。長期的に安定した職業として選択できる安心感があります。
また、現在の部署ではワークライフバランスの実現ができています。残業時間は月平均10時間以下で、中には月間残業時間がゼロの社員も増加しています。定時退社後に運動や趣味に時間を充てる社員も多く、充実したプライベート時間を確保できています。
有給休暇の取得も自由度が高く、申請手続きのみで取得可能です。子供の学校行事や旅行計画も立てやすい環境です。電子申請システムの導入により、上司への配慮を気にすることなく休暇申請ができるようになりました。

現在の課題と求める人材
——現在の課題について教えてください。
中村: 最大の課題は人材不足です。人口減少による慢性的な人手不足に直面しています。関西圏において構築した静脈物流ネットワークを維持・発展させるためには、人材の継続的な確保が不可欠です。
また、業務効率化の観点からDX推進も重要な課題です。従来からアナログ業務が中心の業界特性があり、紙ベースの伝票処理などが残存しています。デジタル化による業務改善を積極的に進めたいと考えていますが、当社にはデジタル技術の専門人材が不足しており、業界特有の事情を理解した上での具体的な施策実行に課題があります。
業界知識については入社後に習得していただけるため、技術面での専門知識を有している方に、ぜひご協力いただきたいと考えています。
——社員の定着率についてはいかがでしょうか?
若山: 定着率は非常に高い水準にあります。1年から2年の勤務を経た後に退職する社員は極めて少なく、入社後に当社の魅力を理解していただけることが多いと考えています。ただし、新規応募者の確保が課題となっています。
事業拡大に伴うM&Aや新拠点展開により、優秀な営業担当者を管理職として抜擢する機会が増えており、拡大部門への人材配置が進む一方で、既存部門への人材補充が追いついていない状況です。
読者へのメッセージ
若山: リサイクル・廃棄物業界は、あらゆる方にとって身近な存在である一方、厳しい業界として敬遠される傾向があり、その実態は十分に知られていないのが現状です。
しかし、気候変動対策や持続可能な社会実現に向けた取り組みが世界的な最重要課題として認識されている現在、当社を含む業界の役割は極めて重要性を増しています。
業界全体でのリサイクル促進が環境問題解決に貢献するためには、社会全体の理解と協力が不可欠です。この機会に、リサイクル・廃棄物問題への関心をより一層高めていただければと思います。
求人に関するメッセージ
創業以来、地域密着型の草の根回収リサイクルネットワークを構築してきた実績と、社会全体における循環型社会実現への機運の高まりにより、当社は右肩上がりの成長を続けています。
そのような成長の中で、人材不足が最大の課題の一つとなっています。営業部門、工場内作業員、運転手すべてにおいて継続的な採用活動を行っており、環境問題への関心をお持ちの方のご応募をお待ちしております。
企業情報
- 会社名: 大本紙料株式会社
- 設立: 1956年
- 本社所在地: 神戸市
- 事業内容: 古紙等資源物・廃棄物全般のリサイクル、産業廃棄物中間処理
- 展開エリア: 関西中心に全国展開
70年近い歴史を持ちながらも、常に社会のニーズに応え続ける大本紙料株式会社。環境問題への関心が高まる中、同社のような専門企業の役割はますます重要になっています。社会インフラを支える使命感を持ちながら、働きやすい環境も整備されている同社で、環境分野でのキャリアを考えてみてはいかがでしょうか。