発電・エネルギー

エネルギー自給率で差をつける!企業の挑戦と成功戦略

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エネルギー自給率で差をつける!企業の挑戦と成功戦略

エネルギー問題が世界的な課題となる中、日本においてもエネルギー自給率の向上が非常に重要になっています。現在、日本のエネルギー自給率は他国と比べてかなり低い状況で、その背景には地理的な条件やエネルギー資源の制約といった多くの課題が関係しています。本記事では、日本が直面しているエネルギー自給率の現状とその背景を詳しく解説し、その重要性について一緒に考えていきます。また、エネルギー自給率を高めるために積極的に挑戦を続け、成果を挙げている企業の取り組み事例を通じて、成功へとつながる鍵となる戦略を探ってみます。

INDEX

日本のエネルギー自給率の現状と背景

日本のエネルギー自給率は他国に比べて非常に低く、国内資源の乏しさから化石燃料の大半を海外に依存している状況です。

エネルギー自給率とは

エネルギー自給率とは、私たちが日常で使うエネルギーのうち、どれだけを自国でまかなえるかを示す指標です。ここでいうエネルギーとは、石油や石炭、天然ガスといった化石燃料や、太陽光、風力、原子力など、自然から直接得られる「一次エネルギー」を指します。一方、電気やガスは、この一次エネルギーを加工して作られる「二次エネルギー」です。

簡単に言えば、エネルギー自給率は「自国でどの程度エネルギーを生産・供給できるか」を測る重要な指標です。この数値が高いほど、エネルギーの安定供給が可能になり、外部依存を抑えることで経済的な自立性を高めることができます。特に、持続可能な成長やリスク管理を重視する企業にとって、この指標は戦略的な意思決定において欠かせない要素といえるでしょう。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁『日本のエネルギー自給率は1割ってホント?』(2025/01/08)

日本のエネルギー自給率

日本のエネルギー自給率は2022年度で12.6%と、世界的に見ても低い水準です。特に、主要先進国が集まるG7の中では、自給率が最も低い国となっています。例えば、カナダは186%と群を抜いて高く、米国は104%と自国内でエネルギーをほぼ賄える状況にあります。一方でイタリアは23%で、日本はその次に位置していますが、12.6%とさらに低い数値です。

日本の化石燃料輸入先

alt属性:日本の化石燃料輸入先

出典:経済産業省 資源エネルギー庁『日本のエネルギー自給率は1割ってホント?』(2025/01/08)

出典:経済産業省『今後のエネルギー政策について』p.35(2023/06/28)

自給率が低い背景

日本のエネルギー自給率が低い背景には、国内で利用可能な資源の少なさがあります。現在、日本のエネルギー消費の大半を占めているのは化石燃料で、その割合は実に83.5%に及びます。しかし、これらの資源は国内でまかなえる量が極めて少ないため、多くを海外から輸入せざるを得ないのが現状です。例えば、石油の原料である原油はその99.7%が外国産であり、天然ガスは97.8%、石炭は99.7%が海外から調達されています。このような輸入依存が高い状態では、国際的な市場の変動や輸送経路の問題によるリスクが日本のエネルギー供給に直接影響を及ぼす可能性があります。こうした課題を克服するには、国内で生産できるエネルギーを増やし、自給率を向上させる取り組みが欠かせません。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁『日本のエネルギー自給率は1割ってホント?』(2025/01/08)

エネルギー自給率向上の重要性

エネルギー自給率を高めることは、単なる資源確保にとどまらず、「環境負荷の低減」「エネルギー価格の安定化」「企業競争力の強化」 といった、多方面での価値をもたらします。本章では、これらの観点から、エネルギー自給率向上がなぜ今、企業にとっても国家にとっても重要なテーマとなっているのかを詳しく見ていきます。

環境負荷の低減

2022年の世界全体の温室効果ガス排出量は574億トン(CO2換算)に達し、過去最高を記録しました。その背景にはエネルギー起源CO2の排出増加が主な要因とされています。2021年の国別エネルギー起源CO2排出量を見てみると、中国が世界全体の31.8%を占め、米国が13.6%、インドが6.8%、ロシアが5.0%、日本は3.0%と続いています。特に日本では、温室効果ガス排出量の中でエネルギー起源CO2の割合が85%と高く、主要国の中でも最も高い数値となっています。また、日本政府は「第6次エネルギー基本計画」に基づき、2030年度の電源構成として再生可能エネルギーを36%〜38%、原子力を20%〜22%と見込んでいます。温室効果ガスの削減を進めるためには、非化石エネルギーのさらなる導入と、それを支える取り組みの加速が求められています。エネルギー自給率を高め、クリーンエネルギーの利用を進めることは、環境負荷の低減を進めるための重要なステップであり、持続可能な社会の実現に向けた不可欠な取り組みです。

2021年のエネルギー起源CO2
排出量(国別)

alt属性:2021年のエネルギー起源CO2 排出量(国別)

出典:経済産業省『第 3 章 GX・カーボンニュートラルの実現に向けた課題と対応』p,58.59.60(2024/05/27)

エネルギー価格の変動への強化

燃料価格の高騰に円安が重なり、化石燃料の輸入額が増加しています。原油輸入CIF価格は2018年秋まで上昇し、その後5万円/kl前後を維持していましたが、2022年2月のロシアによるウクライナ侵略を受けて急騰し、7月には約10万円/klに達しました。LPガス輸入価格も影響を受け、2020年度には約4.7万円/トンと低下していたものが、2022年度には過去最高の約9.8万円/トンとなりました。また石炭輸入価格も上昇し、2022年にはロシア炭の輸入禁止措置などを受けて原料炭が約53,000円/トン、一般炭が約59,000円/トンに達しましたが、その後価格は再び下落しています。このように、エネルギー価格の変動が日本経済に与える影響は大きく、安定したエネルギー供給を確保しつつ、価格変動への強い耐性を持つ持続可能なエネルギー体制を構築することが重要となります。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁『日本のエネルギー自給率は1割ってホント?』(2025/01/08)

出典:経済産業省『第2部 エネルギー動向』p,99.101.102.103.104(2024/05/27)

企業の経済成長を促進

エネルギーは経済活動の根幹を支える存在であり、そのコストは企業の事業活動や経済全体に深く影響します。国際競争力を維持するためには、経済効率性を高めることで、国際的に適正な価格でエネルギーを供給することが重要です。政府は現在GX(グリーントランスフォーメーション)関連投資への支援を強化しており、これにより企業が国内に拠点を維持し、新たな投資を呼び込むための基盤を整えています。一方で、脱炭素化に伴う社会全体のコスト増加を最小限に抑えるには、まず経済的な合理性が高い対策から導入することが必要です。これにより、エネルギー供給の安定性を確保しつつ、持続可能な社会を築くための基盤をさらに強化し、経済成長につなげていくことが期待されます。

出典:経済産業省『エネルギー基本計画』p.15(2025/02/13)

エネルギー自給率を向上させるための取り組み

エネルギー自給率を高めるためには、再生可能エネルギーの普及を進めるとともに、省エネ技術をさらに向上させることが大切です。また、地域ごとに分散型のエネルギーシステムを構築することで、地域に根ざした安定したエネルギー供給が実現し、持続可能な社会づくりに寄与します。

再生可能エネルギーの普及

再生可能エネルギー(再エネ)は、温室効果ガスを排出せず地球温暖化を防ぐ脱炭素エネルギー源です。再エネは国産エネルギーとして日本のエネルギー安全保障にも欠かせません。2023年2月に定められた「GX基本方針」では、国民負担を軽減しつつ地域と共生しながら再エネの普及を進める方針が示されました。世界的にも発電コストが下がり、競争力を持つ電源として普及が進む好循環が生まれています。特に、導入が比較的早い太陽光発電は重要で、日本では2012年の固定価格買取制度(FIT制度)をきっかけに再エネの普及が急速に進みました。その一方で、防災や景観、環境への配慮、設備廃棄問題、さらにFIT制度終了後の事業継続や再投資の停滞といった課題も顕在化しています。これらの課題を解決し、地域との調和を図りながら再エネを普及させることが重要です。責任ある事業運営の確立によって、持続的な導入拡大が可能となり、安定したエネルギー供給と環境保護の両立が期待されています。

出典:経済産業省『第 3 章 地域と共生した再生可能エネルギーの最大限の導入』p181,182(2024/05/27)

省エネ技術の強化

日本はエネルギー資源を海外に多く輸入に頼っているため、限りある資源を効率的に活用することが求められています。これにより、合理的なエネルギー需給構造の実現と温室効果ガスの排出削減を目指しています。例えば、運輸部門では、乗用車やトラックのエネルギー効率を高めるとともに、貨物輸送業者や荷主がAIやIoT技術を活用して連携し、省エネをさらに推進する取り組みが期待されています。産業部門でも省エネ法を活用した規制や支援を通じて省エネが進められてきましたが、エネルギー消費効率の改善が足踏み状態です。また、特定事業者の約半数が消費効率の悪化を示しており、これを改善するためには省エネ設備への投資の促進や、複数の事業者による連携を活用して省エネ手段の多様化が必要です。

出典:経済産業省『第 2 章 徹底した省エネルギー社会の実現とスマートで柔軟な消費活動の実現』p166.169.173(2024/05/27)

地域ごとの分散型エネルギーシステムの構築

地域における再生可能エネルギー(再エネ)の活用状況は、供給と需要のバランスによって異なります。余剰分を地域外に販売できる地域、自給が可能な地域、他地域から再エネを購入しなければならない地域に分かれています。再エネ活用には、景観や騒音への配慮を含む地域との共生が重要であり、条例の制定による調和や維持管理の促進も求められます。また、地域資源の活用を最大化する取り組みに加え、送電容量の制約や適地不足、コスト増加への対応として、供給地と需要地の近接化やEVを利用した地産地消の推進が必要です。さらに、自治体が共同購入やオンサイトPPAモデルを主導することでコストを削減し、設置のハードルを下げる取り組みも進められています。これらの取り組みにより、地域では経済の活性化や雇用の創出、災害に強い環境が期待され、日本全体ではエネルギー自給率の向上や化石燃料輸入費用の削減につながります。

出典:環境省『地域における再エネの意義と課題解決にむけて』p.4.8(2021/05/25)

エネルギー自給率向上に挑む企業の企業事例

最後に、エネルギー自給率を高めるために積極的に挑戦を続け、成果を挙げている企業の取り組み事例をご紹介します。

あいの風とやま鉄道株式会社

富山県富山市の鉄道事業者「あいの風とやま鉄道株式会社」は、省エネ型車両の導入と地域で生産された再生可能エネルギーを活用し、CO2排出量の削減と電力の地産地消を実現しました。具体的には、富山県営水力発電所から供給される「とやま水の郷でんき」を使用することで、CO2排出量を導入前の約6割削減しています。さらに、新型車両では回生電力の利用やVVVFインバータ制御装置、照明のLED化などによって消費電力が抑えられ、燃費向上やランニングコスト削減といった副次的効果も得られました。この取り組みは、環境負荷を減らしつつ効率的な運行を可能にしています。

再生可能エネルギーの地産地消

alt属性:再生可能エネルギーの地産地消

出典:環境省『6 運輸分野の脱炭素化推進事業』p,23.24.25(2023/08/09)

株式会社リコー

事務機器や光学機器の製造・販売を行っている「株式会社リコー」は、3Dプリンター技術を活用し樹脂製の水車翼を開発、下水処理場などで導入を進めています。この技術は、水力発電装置のランナー部分で世界初となる樹脂製部材の実用化に成功し、必要な強度と耐水性を兼ね備えています。そして、この技術を用いたピコ水力発電機は、従来のものと比べ約80%軽量化、製造コストを約30%削減し、生産期間も数か月から数日へと短縮されました。低流量・低落差の水源を活用することで地域の自然環境を生かし、持続可能なエネルギー供給を実現します。自治体にとって導入しやすく、効率的で環境に優しい選択肢として注目されています。

出典:一般社団法人新エネルギー財団『新エネ大賞-New Energy Award』(2025/01/29)

沖縄県久米島

沖縄県久米島では、太陽光発電、蓄電池、そして海洋温度差発電を活用し、エネルギー自給率100%を目指しています。海洋温度差発電による再エネ自給率の向上と、発電後の海洋深層水を活用した地域経済の活性化を目的に実証実験を実施しました。さらに、公共施設の屋根に第三者所有モデル(TPO)を利用した太陽光発電設備を設置し、蓄電池を平常時は再エネの変動に対応するため、災害時には非常用電源として活用しています。運転計画は各施設の需要や発電量予測をもとに立て、系統運営者と共有することで島全体の柔軟性向上を図っています。この取り組みは、地域の自然資源を最大限に活用し、持続可能なエネルギー供給と地域産業の発展を目指しています。

まとめ:エネルギー自給率の向上で企業競争を勝ち抜こう

エネルギー自給率は、国内で使うエネルギーをどれだけ自国で生産できるかを示す指標です。日本は資源が少なく、ほとんどの化石燃料を海外に頼っているため、エネルギー自給率を高めることが急務です。自給率の向上は、環境負担の軽減やエネルギー価格の安定を実現し、企業の競争力強化にもつながると期待されています。企業は、再生可能エネルギーの普及を進め、太陽光や風力といった地域資源を活用してエネルギー供給の自立を目指すと共に、技術革新を通じて省エネを強化し、効率的なエネルギー利用を推進することが重要です。さらに、地域ごとに分散型エネルギーシステムを構築し、地元資源を活用することで安定したエネルギー供給を実現しながら、地域社会との共生を深めることができます。

エネルギー自給率の向上を目指して、持続可能な社会の実現に貢献しながら、新たな市場や事業機会を広げていきましょう。

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